第51話 「プロメテウスの晩餐(中)」【2001年5月19日 PM6:30 帝国軍 相馬原基地・屋上】「大咲大尉」「ああ、利府陣中尉か…どうした、彼女たちの面倒は見なくてもいいのか?」「…勘弁してくださいよ」先日の正体発覚以来毎日のようににこやかな顔の水月と遥にいいように弄ばれ、それを横から大咲にからかわれ続けている孝之(ヘタレの自業自得)であったが、物憂げな表情で帝都の方を見ていた大咲の様子が気になって声をかけたのだった。 「…今夜でしたね」「…諸星大尉から聞いたのか?」「ええ、詳しい事情とかまでは知りませんけど…大尉の紹介で今日の会合があるという事くらいは」「……院辺次官は私の叔父でな、現在の帝国を維持するためにかなりの無理を繰り返しその結果様々な方面からの恨みを買って来た…殊に帝都城の方からは殺しても飽き足りないと言われかねん程にな…」「…」「まあ流石の叔父上も今度ばかりは年貢の納め時になるかも知れん…どうやらあの諸星大尉殿は我々の想像を絶する御仁のようだからな」「それはどうでしょうね?」「む? どういう意味だ利府陣中尉?」「諸星さんは別に誰かと争いたい訳じゃないと思うんですよ、そりゃ確かにどうしようもなく聞き分けのない相手なら容赦しないでしょうが、ちゃんと話をする気があるならどんな人とだってまず話し合いから始めると思います…なにせ『あの香月博士』とすら話し合う人ですからね」(利府陣中尉…)自分の不安を和らげるように語りかけてくる孝之の思い遣りについ心がよろめきそうになる大咲大尉だったが… 「ふ…私を気遣ってくれるのは有難いがな中尉、そろそろ後ろの方を振り向いたほうがいいのではないか?」「……言わないで下さい、お願いですから」からかいまじりの大咲の忠告に世にも情けない声で孝之はそう返答した…何故なら… 「ふ~ん…そんなに後ろを見たくないんだ~~利府陣中尉は~~~」「そうみたいだね~~」地獄の底から聞こえてくるような気すらする自分が良く知る二人の声に孝之はがっくりと肩を落とす。 (誰か助けてくれ~~~~~!) 速瀬水月のヘッドロックと涼宮遥の暗黒波動が孝之に襲いかかるまであと数秒であった… 【7:00PM 帝都 銀座8丁目・日本料理屋 吉祥】「プロメテウス…?」「そう、かの有名なギリシャ神話に出て来る英雄にして人類の恩人の名前だね」「…それが合衆国政府が諸星大尉に付けたコードネームだと?」「かの傲慢なる大国の首脳としては最高レベルとも言うべき評価をこの諸星大尉に付けていると言えるだろう」「…」 …いやいや、何とも居心地の悪いお話ですなあ~~~挨拶に始まって美味い料理を肴に酒を注ぎ交わしながら四方山話で互いの腹の探り合い(ああ、沙霧君は無言で観戦してたけど)をやっていたのだが、突然最近の私の仕事ぶりに始まって難民に対する援助の成果をヨイショしまくり(事情を知ってる人間にだけは皮肉とあてこすりが混じっていると分かるが)、更には合衆国政府が私に付けたコード名の話になったんだよ。…まあそれまで私についていたのはあの忌々しい『M-78』というファイル名そのまんまだったから変えてくれたのはいいんだが、また随分と御大層な人の名前を持って来たものだ。 プロメテウス…ギリシャ神話においてゼウスの意志に背いて人類に火を与え、文明の祖となった人物の名だ。ちなみに大洪水を防ごうとしてゼウスに見破られ失敗するエピソードもあるのだが、自分の立ち位置や世界の現状を考えるとあんまり笑う気になれないネーミングだよな……どこまで意図してこの名前を私に付けたのかねあの人達は?まああんまり気にしても仕方がないし、それより問題は何故院辺次官がこの話題を私ではなく沙霧大尉の方に振ったのかだが…おそらくはこれから始まるであろう駆け引きの裏の事情を知らない沙霧大尉が話に参加しやすい話題から始める事で彼を誘導して上手く動かそうと考えているのかも知れないが……さて、この次官殿は承知の上でそうしてるのかな?この沙霧尚哉という男が他の誰でもない自分自身を『外道』と呼んで切り捨てることが出来る本物の確信犯だという事を… 「…それで次官殿、その御大層な仇名を付けられたこの成り上がり者をいくらで向こうに売るのかもう決まったのでしょうか?」「…なに?」私の言葉に院辺次官は平然と顔色一つ変えず、そのかわり沙霧君の顔に鬼の相が浮かび始める。「いやなにね沙霧大尉どうも最近周囲を気にせずに仕事に打ち込み過ぎたようで、私の仕事ぶりが邪魔で仕方ないという声が主に外務省やそれからこの院辺次官殿のいらっしゃる内務省あたりから聞こえてきて、更には米国にこの邪魔者を売り飛ばせないかという事に…」 「事実なのか?」 …鉄の錘を呑みこんだらこんな声が出せるんじゃないだろうかと思える声が私の言葉を遮るように響いた。沙霧君、そう怒るものじゃないよ…って言っても無駄か(やれやれ…)「未だ佐渡島を異星起源種に占拠され、国家存亡の危機は継続中だ…その中で暮らす国民、殊に難民の困窮は目に余る物がある、それを少しでも和らげようと奔走した男を邪魔者扱いした上に新技術を欲する彼の国に売り飛ばすだと…? 一体あなた方の頭の中にはどんな虫が湧いているというのだ!?」「新技術を欲する…か、いいやそうではないのだよ沙霧大尉…米国がこの諸星大尉を欲している理由は更に大きな物なのだ」「…む?」院辺次官の意外な言葉に沙霧君は戸惑うような顔をする…まあ基本この男は単細胞なのかもね。「現在のBETA大戦の状況は帝国のみならず人類全体もまた追い詰められつつある、そこでこの諸星大尉は帝国や他の国々が国土を失った場合の避難先…未だかつてない巨大な避難施設の建設に携わっているのだよ」「巨大な…避難施設?」「そう、その施設の存在を知っているのは世界各国の政府や軍の首脳部のみだがね、米国がこの男を手に入れたがっているのはこの避難施設の建設と管理と行っているのがこの諸星大尉だと知っているからなのだ」「………」無言で私に「事実なのか?」と尋ねて来た沙霧君にほんの少しだけ頷く事でそれを肯定すると、彼は今まで以上に険しい表情で院辺次官を睨み据える。「院辺次官、それが事実であれば余計にあなた方が救い難く思えますな! それを承知でこの諸星大尉を米国に売るという事は即ち帝国国民の安全な避難先をも彼の国に売り渡すという事ではありませんか!」 いかんなあどうも、おそらく彼の脳内では今重要な二者択一がされつつある筈だ…目の前にいる院辺次官を殺すか殺さないか……ではなく、今ここで殺すかあるいは後で戦術機甲大隊を率いて内務省へ突貫をかけるかの二者択一だ。…ここは少し頭を冷やしてもらわんとね。 「ああ、その心配なら無用ですよ沙霧大尉、すでに帝国の全国民が避難出来る分の避難場所は別に確保して権利も殿下と総理に譲渡済みですから」「…な!」「…ほう」私のその言葉で流石のお二人も愕然としたようだ(笑)、まあ流石の院辺次官も既に帝国全国民分の避難場所が確保されているというのは予想していなかったのだろう。「私がその避難場所の建設に関する作業に援助を頂く代わりに煌武院殿下と榊総理に提示した見返りが、帝国臣民を最優先で避難させる分を確保するという物でした。そしてその管理権は既に殿下の手許にお渡ししてありますので、もしそれをあなた方内務省が管理したいと仰るのであれば殿下と総理にお話を持って行くべきでしょうな、院辺次官殿?」「……」私の言葉で院辺次官は押し黙り、沙霧君の方はようやく得心が行ったようだ…先程からの話が私の持っている手札や情報を内務省が接収するための駆け引きなのだという事が。だがその手札が私ではなく悠陽殿下の手許に渡っているとなれば内務省は殿下に頭を下げて乞い願うしかない…本来それを回避するために私をここに呼び出したのにそれでは何の意味もない事になる訳だ。「諸星大尉、君が建設している『人類の避難場所』は現在国土を失っている国家だけでなくBETAの侵攻に怯える前線や後方の国家にとってもあまりにも魅力的過ぎる代物だ、それを帝国だけが独占しているとなれば…」「当然、世界中からの嫉妬と反感を買う事になる…ですから私はそれとは別の一部を米国の手に渡るように仕向けたのですよ、彼らにもそれを保有して貰う事で帝国に向かうであろう嫉妬と僻みを分散させる事が出来ますから」「成程、だがそれだけで上手く世界の非難をかわせるのかね?」「当然難しいでしょうね…ですが榊総理がその場合は自分が全てを一身に引き受けると仰いました」「ふむ…」「総理が…」それぞれに思っている事は違うだろうが似たような複雑な表情で唸る御二方…さて、今度はこっちから斬り込みますかね?「院辺次官、今申し上げた通り榊総理も煌武院殿下も自分の立場を危険に晒しても構わないという覚悟でこの件に臨んでいます、あなた方がこれに口を挟むのであればあなたが直接殿下や総理とお話をされるより他はないと思いますが?」「……」 どうやら次官殿は苦悩しておられるようですな、まあその理由は大体見当がついてますが。「…それほど信用が出来ませんか煌武院殿下が、いえむしろこの場合は政威大将軍制がと言うべきでしょうかね?」「…む?」「ほう、良く分かっているようだね諸星大尉」それを聞いた沙霧君は不愉快げに顔を顰め、それとは逆に院辺次官殿は愉快げに口元を歪めた。「政威大将軍殿下による国家の直接統治、あなた方があの方と直接話をされるのを極力避けておられるのはそれを恐れての事でしょう?」「…確かにそう言えるかも知れんな」その院辺次官の言葉で沸騰したのはもちろん沙霧君の脳天だ(キレると思ったよまったく…)「院辺次官! あなたは…あなた方官僚はこの期に及んでまだ自分たちの権益を守りたいがために国家の意思統一を拒もうというのか!!それが仮にも行政の中枢たる内務次官の言葉なのか!? そもそもあなた方官僚が国が存亡の危機にある状況を無視してそれぞれの権益確保に拘った事が帝国の現状を招いた一因なのだという自覚すらないのか!!」…もし刀を持ってたら間違いなく斬りかかっていたなこの男は(外で待ってる駒木中尉に刀を預けさせて良かったよまったく)だが彼の言っている事はある意味正論だ。98年の本土防衛戦の時、いやそれ以前の段階から帝国はBETAの襲来に備えた国家防衛体勢を取ろうとして来た。だが軍事と表裏一体となった国家総動員体制を築くには強力な指揮権が必要となる。政威大将軍の権限は事実上封じられ政府の力は軍と官庁の双方を操るには明らかに力不足だった…この状況での国家総動員体制の準備を始めるという事は即ち政・官・軍の間での綱引き、更には政党同士で、軍同士で、そして各官庁同士での権益確保のための醜い争いが勃発するのはある意味必然だったのかもしれない(誰だって自分だけが損をするのは御免だからだ…強い調整役がいないとババを引いた者が身ぐるみ剥がれる可能性もある)もちろん彼ら官僚とて何もやりたくてそんな愚を犯した訳では決してない。だが強い指導力を欠いた状況での国家行政の大幅な変更はこの国の官僚が最も苦手とするところだった…誰が言ったかは知らないが「日本の官僚機構は平時の国家運営に関しては間違いなく世界一のエリート集団だが、想定外の非常時には世界屈指の無能集団に変わる」という言葉の通りになった訳だ。その停滞を何とかするために榊総理は政治家たちを、そして院辺次官は官僚たちをあの手この手で口説き、時には脅してまでして意見を取り纏めたがいかんせん予想より遥に早いBETAの侵攻で多くの兵士や民間人の命が失われる事となった。さらに続く国家の混乱と危機…これをどうにかするために目の前の院辺次官殿は『禁じ手』に手を出す。 本土防衛軍首脳部と結託した上で城内省幹部を抱き込み、政威大将軍殿下の威を借りて実質的な指揮権を揮いはじめたのだ。 月詠大尉が彼を蛇蠍の如く忌み嫌っているのはこれが理由である。彼女たちの側から見れば悠陽殿下が出してもいないどころか存在すら知らない命令を彼女が出したかのように国民に見せかけて軍部や各省庁を院辺次官と乃中大将らが結託して牛耳っているとしか見えなかったのだろう…ある意味その通りではあるしね。だが自分の保身と権力の確保に汲々としていただけの乃中大将と違いこの人の場合は自分の役割を果たすためには他に方法がなかったのだと私は思っている。内務次官の権限は国政から地方行政に至るまで実に複雑で広範囲な物であり、だからこそその複雑なバランスをこの混乱した事態の中で調整しなくてはならない立場にある彼には将軍の『権威』とそして軍部との密接な協力関係が必要だったのだ……たとえそれが腐臭を放つ穢れた絆であったとしても。だがそれなら将軍が復権した今なら悠陽殿下に跪いてこれまでの行いを詫び、今後は仰せに従いますと言ってしまえば今後の仕事もやり易くなると思えるだろうが…おそらくこの人には別の心配事があるのだろう、それは多分…… 「沙霧大尉、確かに殿下の親政を受け入れれば国の意思統一は図れるかも知れんし、またあの方は政治的な判断力も優れておいでだから誤った判断を下す事もないだろう…あの方が将軍である限りは、だがね」「…なに?」院辺次官のお言葉に沙霧君が戸惑ってますか…では私も話に加わりましょうかね。「つまりこういう事だよ沙霧大尉、今の殿下…煌武院悠陽様が将軍家である間は問題ないがそれが将来別の人間に交代した時、もしもこの国の方向を誤りかねない人物が将軍の座に就いたらどうなるか…この院辺次官殿の心配はそこにあるのですよ」「! それは…しかし…」思いもよらない言葉に沙霧君は戸惑っているが、まあ忠君愛国の志という者はよくも悪くもそういう発想はあまりしない物だろう。だがしかし、国家という『システム』の管理を職務としている院辺次官殿は常に不測の事態における『部品交換』が発生するケースを考えておかねばならない…たとえそれが『政威大将軍』という神聖不可侵な部品であっても、いやだからこそと言うべきか。「…沙霧大尉、私とて帝国の現状を考えれば煌武院殿下の指導力を強化して国の運営を円滑にして行くのが上策であると思っている、しかしそれはあくまでも現在の将軍家…煌武院殿下の下であればという話だ。現在の五摂家やその周辺にはあまりにも時代錯誤な考えに取り憑かれた人が多すぎるのだよ、もしも今の殿下に万一の事がありそういった方々の代表が将軍の座に就けばどうなると思う?」「…」「現にあの方を将軍の座から引きずり降ろそうとする動きもあるし、そこの諸星大尉がそれらの動きを牽制するために色々と動いておられるようだがね」「な…!」…おやおや、さすがによく調べておいでですな内務次官殿は。「この場合問題なのは現在の将軍家の能力よりもむしろそれを選抜する制度の旧弊なのだ、今が国家存亡の淵にあるからこそもしそれらの旧弊やしがらみの権化とも言うべき人物が将軍の座に就けばどうなるか…」「だからこそあなた方は煌武院殿下の能力を認めていたにも関わらず彼女に対して『敬して遠ざける』態度をとってきたのでしょう? だが結局はそれが本土防衛軍の一部によからぬ野心を持つ勢力を作り出し、この沙霧大尉たちのように殿下を敬うあまり過激な考えを持つ人間たちをも生み出した………まあ、おそらくあなたはその双方が潰し合ってくれる展開を望んでいたのかも知れませんがね」「それはむしろ君が色々と手助けをしてやまないあの榊総理の方だろう? おそらくあの人は自分自身を生贄の羊にしてまでそういう方向に持って行こうとしていたと思うのだがね?」「…そして全てが終わった後はあなた方官僚が今までどおりに国家を支配出来るという訳か、実に結構な話だな!」 沙霧大尉の吐き捨てるような言葉に私と院辺次官はそれぞれに意味合いの異なる苦笑で応じた。 「そう怒りなさんな沙霧大尉、別にこの人だって何も好き好んでここまで悪辣な企みを巡らせてきた訳じゃない、他に道がなかっただけでしょう……しかし院辺次官、例えあなたが思い描いた通りに事が動いたとしてもそうなっては犠牲が大き過ぎますし、もし目算が狂って本土防衛軍の統帥派のような連中が帝国軍の中枢を抑えてしまったらどうします?将軍家の抑止も力を持たない状況で彼らが増長すれば結局は軍部による政治行政への介入が始まり、それこそかつての大戦時のようなあなた方内務省と軍部の癒着による国の支配…たとえ望まずとも内務省がその機能を果たすためにはそうするしかなくなってしまうのでは?」「……」「……」今度は沙霧大尉と院辺次官がそれぞれ表情の違う沈黙で私の言葉に応えた。狭霧大尉は押し殺した怒りを、院辺次官は陰鬱な苦悩をそれぞれ自分の瞳に映している。「次官、現状それらの野心や暴発を防ぐ手はただ一つ、殿下の主導によって甲21号を攻略し国民に安心と平穏を与えるしかないでしょう。逆にそれが為されれば不穏な事を考えたり、あるいは殿下を引き摺り降ろそうなどと考える人間の数も減少すると思いますが?」佐渡島奪還が悠陽殿下の主導で成功したとなればどんな野心家も迂闊に彼女を引き摺り降ろしたり国を乗っ取ったりしようとは考えないし、またそれらを支持する人間も減るからだ。「そして再びこの国に政威大将軍制度が古のままで復活する…かね? すでに21世紀になっているのに19世紀に逆行しろと?」…まあ当然その不安があるわな、だがしかし院辺さんよあなたは先を読み過ぎてませんか?「少々先を見た皮算用が過ぎるのではないですか次官? 国が滅ぶか否かの方が遥かに重要な案件でしょう、いくら避難先が確保されていようと国土を失った国家や国民にどんな未来があると思いますか?」「……」分かっているのだこの人ももちろん…ただあまりにも抱え込んだ物が多すぎて身動きがとれないだけで。「…先日煌武院殿下と榊総理が同席される場で将軍制度を含めた国のあり方を変えるべきか否かについての話が出ました」「む…」「なに!?」「もちろん一介の成り上がり者に過ぎない私はただ御二人の話を伺うだけでしたが、殿下の指導力が強くなれば大きな改革も可能であろうとの見解で一致されていたと記憶していますが」「そうか…」院辺次官は目を閉じて思考に耽っているように見える…いや、実際には彼の中ではとっくに答えは出ていてその踏ん切りをつけるためにこの場を設けたのだと私は思っているのだが。 やがて目を開けた彼は私を見詰めて聞いて来た。「諸星大尉、将軍家は摂家を抑えることが出来ると思うかね?」「それについてはこれからの成り行きを見て頂きたいとだけ申し上げておきましょう……おそらく近日中にあなたの懸念に対する答えが出ると思いますがね」私のその言葉に院辺次官は静かに頷いた…やれやれこれで問題の一つ目は何とかなるか。「だが大尉、佐渡島を奪還するにはまだ大きな問題がある…いや、君がその問題の中心にいると言ってもいいだろうな」「…そう言えばそうでしたかね」「…何だと?」 …さて、ここから第二幕という訳か(まったく…酒の味すら楽しめないよホント) 第52話に続く 【おまけ・第二幕の元凶?】「…香月博士、諸星さんが内務省の次官さんとお話をしているそうです」「へ~、誰に聞いたの…ってもちろんアンタのペットからの情報よね霞?」「…はい、駒之介さんが教えてくれました」「ふ…ふふふ……さ~あコウモリさん、アンタが散々引っ掻き回したせいでこっちは苦労してるんだから責任はキッチリ取ってもらうわよ~~♪ 下手を打ったら撃ち殺しちゃうから~~(本気の目)」(…怖いです博士)