第1話 新たなスタート
2002年1月某日
人類の存亡をかけた一大反攻作戦。
00ユニットによる諜報の結果判明したBETAの本丸であるオリジナルハイヴへの強襲作戦。
その名は『桜花作戦』。
外延部に存在するハイヴへの一斉攻撃を囮に、オリジナルハイヴを少数精鋭の部隊で強襲するという荒唐無稽な作戦だが、第4計画直属の特務部隊であるA-01隊員の挺身によりオリジナルハイヴ攻略は成功した。
桜花作戦の生還者は2名という結果に終わった。
この数字はリスクとリターン、またはコストという面で見れば十分良い結果なのだろう。
しかし、生還者の一人である白銀武にとってはそうではなかった。
自分の中では気持ちに整理をつけていた。
桜花作戦の成功は、彼女らの挺身によって得られた最良の未来である。
これを否定することは、彼女らの挺身を否定することになると。
しかし、無意識に『何故もっと良い未来にできなかったのか』、『なぜ皆で生還できなかったのか』とも考えている彼も居た。
だが、過ぎ去ったことを悔やんでもどうにもならない。
過去を変えることは不可能なのだから。
いや、以前の彼なら因果導体としてループしていた頃の彼なら可能であっただろう。
しかし現在の彼は因果導体ではなくなり、数多のループから開放された存在になっている。
だがそれでも彼は考えてしまう。
白銀武は甘く、優しすぎる故に。
その甘さと優しさ故に考えてしまうのだった。
夕呼に霞との別れの会話をしていると、白銀の体が光に包まれ始めた。どうやら別れの時のようだ。
「先生、この世界のことを頼みます。俺、この世界のためにやりたいことはまだまだありましたけど、できないみたいです。申し訳ないんですが、先生に託します」
「わかったわ。私があんたの思いを受け継いであげる。だから安心して元の世界に返りなさい。さよなら。『ガキ臭い救世主』さん」
夕呼と別れの会話の最中もずっと俯いていた霞だが、決心したのか武の顔を見つめながら話し出した。
「私も白銀さんの思いを受け継ぎます。白銀さんやA-01の皆さんのことを誇らしく語っていきます。そして必ず世界を救って思い出をたくさん作ります」
「ああ、そうだな。皆を誇らしく語ってくれ。そんで思い出をいっぱい作れ。誰のものでもない、霞だけの思い出を」
「はい」
社は笑顔で見送ろうと決めていたのに、気づいたら涙を流していた。
武は涙をぬぐってやろうとして、体が半透明になっていることに気づいた。
徐々に消えてゆくタケルを見ながら、霞は強い意思のこもった瞳で見つめながら誓った。
「私は白銀さんのことを忘れません。・・・この世界の皆が忘れても、私は必ず覚えています」
霞の言葉からは強い意志を感じる。世界を変える力に抗うように、自分にとって大切な人との記憶、思い出を守るために。
「白銀さんがどこの世界に居ても、私が見ています。絶対に忘れません。そして・・・今だから言えます。私はあなたが好きでした」
驚くタケルだったが、すぐに「そうか、ありがとうな霞」と返事ができたのは霞の素直な気持ちがうれしかったためだ。
返事を聞いた霞は涙ながらも微笑んでいた。
「・・・また・・・・・・ね、白銀さん」
「ああ・・・・・・またな・・・霞」
消え行く視界の中で、少年と少女は『別れの挨拶』ではなく、『再会の挨拶』を交わすのであった。
そして彼は旅立って行った。
最愛の想い人によって再構成された情報は因果の壁を越え、世界の壁を越え、『元の世界』へと―――
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平行世界の集合点、因果の海にて
『俺はこれで解放されるのか。
開放されて良いのだろうか。
でも俺はこんな結果で満足しているのか。
俺に力が、知識が、覚悟があればもっと良い未来をみちびけたのではないのか。
それにこの世界にはまだたくさんのBETAが居る。
確かに俺はこの世界にとって異邦人だ。
でもここは俺が居た世界であり、守りたい世界でもあるんだ。
このような考えは[傲慢であり、わがまま]であることも理解している。
だけど、それでも、俺はこの世界を救いたい。
もっと良い未来があったのではないか』
武は世界の壁を越えながら後悔をしていた。
そしてこの思いが奇跡を生むことになるとは誰も気づかなかったのであった。
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XXXX年XX月XX日
目は覚め、覚醒しているが、視界がぼやけて何も見えない。
顔に手を当てると、涙が大量に流れていることに気づいた。
(何故だ、何故俺は泣いているんだ?)
そう考えた瞬間、様々な記憶が脳裏をよぎりだした。
「!!」
平和な世界では級友であった仲間達と共に訓練する自分。
ロボットを操縦し、醜悪な異性起源種と戦う自分。
同じ基地に配属された仲間、先輩、後輩、同期、そして愛する者を失い、迷い、苦しみながらも戦い抜いた記憶。
彼はこの世界の記憶を全て取り戻した。
このBETAによって全てを壊され、狂わされた世界の記憶を。
彼、白銀武は疑問に思う。
なぜ、自分は記憶を鮮明に持っているのか。
そもそも自分は2回目の世界で純夏と結ばれたことにより、因果導体から解放され、ループもしないはずではないのだろうか。
そうこう考えているうちにあることに気づく。
「待てよ。今の状況は不明だが、これだけ記憶があるってことはこれからの未来を変更することは可能なんじゃないか?」
そう、武は2回目の幕引きに納得していなかった。
『もっと自分が覚悟を持っていれば・・・』と。
1回目では力も知識も無く足手まといになった。
2回目では覚悟が足りず、仲間達に助けられてばかりいた。
しかし、現在3回目ではどうだ。
力もあり、覚悟もある。
さらにはある程度の知識まで持っている。
今の自分ならば、先輩、後輩、同期、そして愛する者達を失うことなく第4計画を成功させることができるかもしれない。
武はそのことを喜び、一人室内で雄叫びを上げた。
「これで、これで皆を救うことができるかもしれない!! 夕呼先生を手伝うことができる!! 霞との思い出を作ることもできる!!」
そして無意識のうちに、まるで誰かに誓うように、そして自分に言い聞かせるかのように叫んでいた。
「俺はこの世界を守る。そして今までの分の恩を返すんだ!!」
一通り叫び終わると、武は横浜基地へと向かう準備をしながら記憶の関連付けを行っていた。
が、関連付けに由来する頭痛により作業は中断されていた。
「うぎゃーーーーーーーーー」
正確には不定期的な痛みにより床を転げまわっていたのであった。
「痛ぅ、これで何回目の不意打ちだよ。せめてタイミングがわかれば覚悟が決まるんだけどな。でもこれが記憶の関連付けってやつか。半端無い情報量だな、これじゃあ流石の00ユニットでもODLが劣化するわけだ」
武は一通り痛みが治まり、程度の記憶の整理がついたところで荷物の整理を再開した。
ここで可能な限り全ての記憶を引き寄せることは可能なのだろうが、激しい頭痛が伴うため、ある程度引き出したところで止めることにした。
なぜなら記憶の流入の規模が徐々に大きくなり、入ってくる情報量に比例して頭痛も悪化してきたためである。
これは1回目と2回目のループの記憶に齟齬があり、異なる記憶が複数あることに気づき、思い出そうとしたときから情報量が多くなったために気づいた。
「あの痛みは半端じゃないぞ。純夏はあんなのに何回も耐えたってことか。本当に根性だけは人一倍あるよなあいつ・・・。っ痛ぅ、またきやがった」
自分の半身とも言える幼馴染の行動を苦笑しながら思い出し、これがきっかけに記憶の流入が起こり再び床を転がりだした。
このように記憶の流入のスパイラルwith頭痛と戦いながらも、横浜基地へと向かう荷造りをなんとか進める武であった。
「とりあえず基地に着いたら夕呼先生に相談してなんらかの対策を練ろう。霞とかに協力してもらえれば何とかできそうな気もするし。つうか、一人で処理するには情報が多すぎて溺れちまうよ」
まず今回のループの基本方針として、今までどおり横浜基地にお世話になるつもりでいる。
そして207B分隊やヴァルキリーズに積極的に関わり、彼女達のレベルアップを促すことで生存率を高める予定だ。
さらになるべく多くの私物を横浜基地に持ち込むことを決めている。
この理由としてまず第1に、取引のためだ。
前回までのループではBETAの襲来を予報することによて信用を得た。
しかし、それでは遅すぎる。
もっと早期に信頼関係を気づけていたら未来は違っていたのではないだろうか。
この信頼を得るために未知の技術を提供するのだ。
第2に今回のループでは幾つか先生にお願いをする予定でいる。
その際、交渉材料になりそうなもの、譲渡したり、研究用に提供することで貸しを作っておけそうなものいくつか用意する必要がある。
武という人物は、本来物で人の心を買う方法は嫌いだ。
しかし、甘い理想ばかり言っていられないのが現状であり、場合によっては夕呼先生の変わりに交渉の場に立つことも考えた結果、未来の練習と思い開きなおすことにしたようだ。
この未知の技術に横浜基地、いや、夕子先生は喰いつくだろう。
なぜならこの技術の存在が因果律量子論の証明にもなるからだ。
武の存在でも自説の証拠にはなるだろう。
しかし、人間が証拠と言うのは説得力が弱い。
因果律量子論や多元世界の証拠として人間を扱う場合、「口裏を合わせた」、「たまたまその情報を知っていた」、「演技だった」と考えた場合、反論が難しい。
しかし、未知の技術という物的証拠ではそうはいかない。
なぜならば現在解明されていない、開発されていない技術だから未知なのだ。
その様なものが存在することがおかしい。
まるでオーパーツのような存在になる。
これ以上の証拠はないだろう。
そして副次的効果として、夕呼先生の頭脳、第4計画関連の技術スタッフならこれらを解析することで技術のブレイクスルーを促すことができるかもしれない。
例えばプレスタ2だって集積回路の塊だ。
並列処理能力や演算能力はかなり高い。
噂では演算処理能力の高さから一時期に某国によって「輸出規制」がかけられたとも聞く。
ネットでも「ゲーム機の処理能力としてオーバースペック」と評価されたこともあった。
もしかしたらこの技術を00ユニットに応用できるかもしれない。
「とりあえず俺の部屋にあった本に教科書、授業のノート、モニター、プレスタ2にソフト一式、ゲームガイに携帯電話も用意するか。あとは・・・」
部屋を見回すと、ゲーセンで取ったぬいぐるみが目に入ってきた。
「そうだ!! この辺りの人形なんかを霞のお土産に持っていこう。あいつ喜ぶかな。うーん、あの『うささん』のセンスを考えるキモカワ系を選ぶべきか、ストレートに可愛い系で攻めるべきか、迷うな」
そうこうしているうちに荷物がまとまった。
「ふーむ、とりあえずドラムバックに詰めるだけ詰めたな。後は、こいつを持っていったん外に出てからもう一度家に戻って隠せば終了だな」
今回タケルは、確立の霞からの持ち出し方法を考えていた。
方法は簡単だ。
自分の部屋が確立の霞の状態のときに必要な荷物を持ち出し、屋外で中身を確認することでこの世界にこれらの荷物が存在すると言う観測を行う。
これにより、存在の確定を行うのだ。
そして持ち出した荷物のうち、大型のものをもう一度自宅の中に戻す。
これは大荷物を持って基地近くをうろつけば良くて不審者、下手をすればテロリストに間違われる可能性もあるためだ。
夕子先生は1回目の世界ではゲームガイだけでも平衡世界から来たことをある程度予測していたくらいだ。
2回目のときのような方法でアポを取ってゲームガイ辺りを提供すればある程度信用を買えるだろう。
荷物を運び込むのはそこからだ。
前回までの経験から、2-3日である程度の自由行動を許されると予想し、今回の荷物持込作戦を実行することにしたのだ。
盗まれる可能性も考慮したのだが、隠し場所はこの横浜なのだから可能性は低いと考えた。
もし仮に拘束時間が多少長引いたとしても、重力異常が生じ、さらに廃墟である柊町には人が居ない。
唯一人が生活している横浜基地からの外出者なども少ないため、2、3日置いておく程度なら盗まれる心配も無いだろうと判断したのであった。
「良し、これでこいつらも確立の霞から抜け出せたはずだ。後は、横浜基地に向かって夕呼先生や霞たちに会いに行くだけだな」
全ての準備が終えると、武はバックを持って外出し、帰宅後にゲームガイ以外の荷物を隠蔽してから横浜基地に向かい進み始めた。
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外は相変わらず廃墟になっていたが、いくつかの違和感を覚えながら歩いていたが、基地の麓の坂から見上げた瞬間に違和感の正体に気づくことができた。
「ったく、なんで基地が建築途中なんだ?」
そう、横浜基地の一部の施設には幌がかけられ、建設用の足場を組まれた建物など、自分の記憶には無いものだらけであった。
「唯一の相似点は門兵の二人か。だけど、詰め所がプレハブってのはどうよ」
いつもの門兵を懐かしく思いながら、彼らの詰め所がプレハブであることに突っ込んでみた。
いや、プレハブに罪は無い。
ただ、建築中とはいえ基地内への出入りを管理する第一関門がプレハブでは心許なくないのだろうか。
「いや、問題はそこじゃないか。おそらく俺は原因不明の事態によりいつもの時間よりも前にこの世界に来ちまったってことだよな。俺が来たときは基地機能の大半は完成していたから1年近くは逆行しているのか?」
考えながら歩き、門兵のところにつく頃には答えを出していた。
そう、答えは
『原因はわからない。とりあえず今できる行動をして行こう』
というものであった。
実際にいくつかの世界で香月夕呼から教授されたとはいえ、彼の頭脳では因果律量子論をマスターしきることはできなかった。
それはそうだ。
白銀武は戦士であって、科学者ではない。
得意分野がまったく違うのだ。
基礎知識は解っても応用や学問の神髄まで理解できなかったし、時間も無かった。
しかし、ある程度の仮説は考えている。
おそらく、今までの世界とは呼び出された因果関係が異なるのだろう。
原因が異なれば結果も異なる。
これは因果律量子論でもいえる。そして観測されることで事象は現実のものとなる。
ここまで考えて、後は夕呼先生と話しながら考えることにした。
先ほども述べたように彼は学者ではない。
いくら考えても答えを出せないのであれば、その時間は無駄になる。ならば今できることにその時間をまわし、解決できそうな人とともに疑問を解決する方が効率的と判断したのだ。
ここまで考えていると、ちょうど門兵たちの前についたので今まで通り、夕子先生にアポをとることにした。
「おい、こんなところで何をしているんだ?」
アジア人顔の伍長が俺に話しかけてきた。
「廃墟を散歩してきたのか? BETAに占領されていた土地なんだから何も無いだろうに。変わったやつだな」
黒人系の門兵もにこやかに声をかけてくる。
「そう言わないでください。この街は俺の故郷なんですから」
そう答えると二人はすまなそうな表情になり、
「そいつはすまないことを言った」「申し訳ない」
と言うが、武は気にせず、
「気にしないでください。廃墟で何も無いってのは真実ですから」
と返したところで門兵達は職務を思い出したようだ。
「そう言ってもらえると助かる」「そうだ、隊に戻るんだろ。外出許可証とIDの照合をさせてくれ」
来たか、と思うと道中シミュレーションしていたように受け答えることにした。
「いやー、実は外出許可証とIDを持っていないんですよ」
「何、貴様無断外出とID不携帯だと言うのか!?」
「どうやって基地から抜け出した!? 貴様を逃亡罪の容疑で緊急逮捕する!! そこを動くな。今MPに連絡して連行してやる」
笑顔で今の状況を話したら、一瞬で間合いを開けられ、銃を向けられる。
前まではここまでしっかりとした対応をされなかったことを考えると、後方ボケはまだ起こっていないようだ。
「ちょっと待った。俺はこの基地の訓練兵では無い。極秘任務でここの訓練兵の制服に近いものを着ているだけだ」
「なぜ訓練兵の服装を真似る必要があるのだ」
「それこそ極秘ですよ、それも香月副司令のね。極秘任務を完了したいので香月副司令に連絡を取ってもらえないでしょうか?」
「わかった、まずは連絡を取ろう」
小銃を突きつけながらもアジア系の男は通信機を手に取った。
「おい、いいのか?」
「仕方無いだろう、見覚えの無い訓練兵風の服を着た日本人が着たら連絡を入れろとの命令だってある」
アジア系の男が通信機で連絡を取っている間も、黒人系の男は武に銃を向けていた。
その間に武は
(ふむ、2回目のときは組み伏せたりできるくらい隙だらけだったのにな。流石にまだ緊張感は持続しているって所か?)
などと考えていた。
しばらくすると、アジア系の男が近くに来て、通信機を渡してきた。
「副司令の直属の方がお前に話があるそうだ」
武は今までに無い展開に困惑しつつも通信機を受け取ると、そこからは知らぬ男の声が聞こえ、問いかけてきた。
『貴様は誰だ?』
「白銀 武です。香月博士に取り次いでもらうはずだったのですが…あなたはどなたでしょうか?」
『香月博士は今忙しくてな、俺が代理だ。さて、白銀君。君が本当にシロガネタケルであり、香月博士の極秘任務に関係しているという証拠を聞きたいのだがね』
「そうですね、では符丁を言いますので聞いてください。
『我は五ではなく四の成功を願う者、
因果の彼方から姫の召喚に応じ、馳せ参じる者、
鏡の中に囚われた純なる姫を助け、00の称号を姫に授ける者なり』
以上です。どうでしょう?」
『ぶわっはははは、何とも厨房臭い台詞だな。ふむ、まあ合格か。いいだろう、伍長たちに通信機を返してくれ。直ぐに迎えを出そう』
失礼なことを言われ、武はむすっとしながらアジア系の門兵に通信機を返し、黒人系の門兵を見ると彼らは通信機越しに指示を受けたのか銃を下げてくれた。
「すまないな。極秘任務中の仲間に銃を向けて」
「気にしないでください。そちらの対応が正しいんです。俺が同じ立場だったら同じことをしていますよ」
「そういってくれると助かるよ。それと、もう少ししたら副司令の部下の方が迎えに来るそうだから待っていてくれとのことだ。」
伍長たちと会話していると、基地のほうから見覚えのある金髪の女性と見覚えの無い男性が歩いてきた。
金髪の女性はピアティフ中尉に間違いは無いが、男性仕官にはまったく見覚えが無い。
見た目の身長は約180cm、顔立ちは日系の黒髪、特に重力に逆らうかのように上に逆立った前髪が特徴的だ。
他に、外見年齢は20代前半程度で階級章と衛士徽章から判断できたこととして、大尉で衛士のようだ。
「伍長たち、ご苦労だった。どうやら副司令は忙しさのあまり、正規の命令書を発行する前にこいつを任務に送り出したらしい。こちらの不手際で迷惑をかけた」
話の内容的に男性は夕呼先生の副官や秘書官的な役割をしているようだ。
このような人物は前回まで見覚えがない。
「さて、シロガネタケル君。ついてきてもらおうか。何、安心しろ。『今回も』検査を行うが、『前よりも』早く終わるだろう。その後直ぐに博士に会うことになるさ」
今までに無い状況のため、武は男性の意味深な台詞に気づくことは無かった。