『第12話』1998年1月18日 夕方 帝都城 応接の間会談の話しはXM3から政威大将軍の復権の件を経て、それに連なる『白銀武』に関する話しに移行していく。「皆さんは香月博士が提唱している『因果律量子論』については何処までご存知でしょうか」武はそこで一旦口を閉じて周りの反応を見たのだが、やはり夕呼独自の新理論なので皆あまり知らない様子。その事を確認してから再度口を開いて説明を続けた。「この理論では、今自分が存在しているこの世界と似た様な他の世界、つまり平行世界の存在が仮説立てられています。 そして香月博士は平行世界が存在する事を実証する為の実験を行い、私はその被験者となりました。 香月博士曰く、私はその実験に必要である因果に干渉し易い存在で、実験には最適な人材だったそうです」平行世界の存在実証の為の実験で武がその被験者になったと言う話しは真っ赤な嘘。だがそれを知らない皆の表情は、平行世界に関して興味を示す顔、子供を実験材料にした夕呼に対する反感、実験の結果が気になる等、様々に分かれる。ただ特に誰からも声が発せられなかったので、今は続きを話した方が良いと判断した武は話しを再開した。「その因果についてや実験でどんな事をしたかとかは、機密だったり私自身があまり理解していない事なので説明できません。 なので今は結果だけ言いますが、実験は無事成功しました。 そして私は複数の平行世界の自分の因果、分かり易く言うと記憶情報ですね、それを得る事になりました。 その中に新OS案や戦術機操縦の知識情報、又この世界ととても似た世界の未来の情報等も有ります。 つまり、今の私が褒められている能力は全て他世界の因果を得たお陰で、私自身の努力で得た物ではないのです」ここまで話してから、自身の言葉を振り返って武は苦笑する。嘘をついている事もそうだが、自身が如何に反則な存在であるか再認識した為に出た表情だった。夕呼と話し合った結果、他の人に説明するにはこの方法が1番分かり易く、又納得もし易いだろうという事になったのだが、直ぐに信じられず疑問を感じるだろう事は明白で、玄丞斎はその事に対して質問を投げかけてくる。「平行世界や未来の情報など、俄かには信じ難い話しですな。 白銀君、何か確証になるようなものは有るのかね?」この質問に対する解答も既に用意しておいたので、武は冷静な態度を崩さずに玄丞斎を見据えながら返答をした。「私自身がその確証と言えるのではないでしょうか。 自分で言うのも何ですが、この歳で分不相応な知識や能力を得ている事が証明になると思います。 経歴を調べて貰えれば直ぐに分かる事ですが、この実験を行う前の私は極普通の何処にでも居る学生です。 そんな私が実際にこの短期間でXM3を開発したとなれば、そこに何か特別な何かが有ると感じないでしょうか」武のこの説明を聞き、確かに突然降って湧いた様な武の能力を考えれば特別な何かが有ったと感じる上に、その為の要素が既にXM3や衛士能力として提示されていたので、皆はある程度納得したのか頷いていた。その様子を確認した武は更に言葉を続ける。「また、実は未来情報を元に歴史を既に改竄しています。 それは先日あった光州作戦にまつわる事です。 あの作戦で事件と呼べる出来事があった事は皆さんご存知でしょうか?」「事件と呼ばれる出来事と言えば、彩峰大佐が起こした独断行動の事ですね」武の確認とも取れる発言に、悠陽が眉を寄せながら答えを返した。それを受けて武は一度頭を縦に振ってから続きを話す。「はい。あの時、彩峰大佐は地元民の避難救援の為に独断で部隊を動かして、司令部の防衛網に穴を開けてしまいました。 ではその穴を代わりに埋めて司令部を守ったのは何処の部隊だったのかご存知でしょうか?」「国連太平洋方面第11軍白陵基地所属のA-01部隊。 香月博士の直轄部隊だね、白銀武君」光州作戦から時間が経っている事も有り、その情報を既に掴んでいた左近が武の質問に答える。武は解答者である左近に頷きを返してから続きを話し始めた。「その通りです。 私が得た未来情報では、防衛網の穴からBETAの侵攻を許してしまい司令部は壊滅。 それが原因で指揮系統が大混乱して、国連軍は大きな被害を被る事になります。 その責任追及の抗議が国連軍から日本政府に届き、部隊の責任者である彩峰大佐が死罪になりました。 私達はそれを回避する為に、作戦に参加していたその部隊に作戦開始直前に香月博士から指示を出して貰いました。 その結果、何とか降格処分で済んでみたいで良かったです」「なんと、まさかその様な事が……いや、実際に指示が出ていなかったらそうなっていたとしても不思議ではないですな……」彩峰大佐とは古くからの知人でもある是親が目を閉じながらそう呟き、顔を若干青くしていた。もし実際にそうなった場合、自分がその死罪を本人に言い渡していたはずだと考えた為だろう。「白銀、つまりそなた達は歴史を改竄して彩峰大佐を救ってくれたのですね? 彼の者は私の恩師でもあります。 その様な事態にならずに済んだ事、感謝してもしきれません」悠陽も自分にとって大恩ある人物を助けてくれた事に頭を下げながら感謝を伝えてくる。そんな悠陽からの感謝を武は微笑む事で返しつつ、自身の思惑も教える事にした。「殿下、頭をお上げ下さい。 実は平行世界の記憶の中では彩峰大佐の娘さんと私は仲間でした。 この事件後に彼女は心に大きな傷を負ったのを知ったので、何とか回避して上げたかったのです」実際には他にも理由としてクーデター阻止などがあるのだが、今それを話しても混乱を招くだけだと判断して語らない事にした。「以上の事である程度平行世界の記憶情報を私が得ている事を信じて貰えたのではないかと思います。 それを踏まえた上で話を次に進めますが、宜しいですか?」そして話しは今後日本を襲う脅威についてのものへと移していこうと話を切り替えようと武が進めようとした所で、そこまで冷静に状況を見守っていた志虞摩が口を挟んできた。「待て、白銀。 確かにお主は年齢にそぐわぬ衛士としての実力や知識を持っておるのは事実だ。 しかし、歴史を改竄したという今の話は確かに事前に情報を得ていたかの様に感じはしたが、 それが後付で考えられた物では無いとどうして言い切れる。 他にも何か未来情報として示せる事でもなければ『偶然』としか判断できぬぞ」志虞摩の発言で納得し掛けていた皆の表情がハッとした物に変わり、先程とは違い戸惑いと疑いの目が武に向けられる。『未来情報』という曖昧なものに説得力の有る情報を示せと言われても難しく、問われた武も少々困惑の表情を浮かべながら何か良い情報が有ったかなと考え込む。そして良い案が思い付いたのか懐からメモ帳を取り出し何かを書いてから折り畳み、それを悠陽の方へ差し出して見る様に促す。「殿下、未来情報としてこのメモに書いた機密情報について触れたいのですが、この場で話しても大丈夫でしょうか?」「──っ!? 白銀、この件については知らぬ者もおりますのでこちらでお話を伺います」悠陽は機密が書かれていると聞いて、折り畳まれたメモを自分だけが見える様に開いて文字を読んだのだが、そのメモに書かれた数個の単語から連想される内容に驚愕した。そこに書かれた単語は『将軍』『武御雷』『認識』『2名』の4つ。悠陽がこの単語から読み取ったのは、今まさに開発段階である政威大将軍専用の紫の武御雷、その専用機であるはずの搭乗者認識システムに悠陽だけではなく冥夜も登録する手筈の事を指しているのだろう。悠陽と冥夜は実の双子だが、古くより煌武院家には双子は世を分ける忌児だとする為来りにより、数日で冥夜は御剣家へと引き離される事になっていた。なので、この件は秘中の秘で有る為、現段階で知り得るのは極々少数の者だけであり、調べて出てくるような情報ではない。そんな情報を武が持っている事に悠陽は驚きを示し、確認の為に皆とは離れた位置で話を聞く事にしたのだ。詳細を聞いて本当に知っているのだと分かると今度はなぜか得心が行った表情を浮かべる悠陽。その表情を見て武は不思議に思っていると、悠陽が皆の方へ向き直りながら口を開いた。「内容は伏せますが、今確認した内容は確かに未来情報として説得力の有る物であったと政威大将軍の名を持って保証します。 そして白銀の人となりからこちらを騙す様な人物で無い事は皆も理解していましょう。 故に、この者が語る事は信ずるに値する話であり、その内容を真剣に論議すべきであると皆に命じます。 では白銀、話を進めましょう」政威大将軍としての判断と勅命を受け、皆の表情から一応戸惑いや疑いの表情が消え、信じるべき話として武の話を真剣に聞く体勢を整えた。その様子を見て武は隣に立つ悠陽に小さく感謝の言葉を掛けてから席に戻り、先程進めようとした今後についての話しを始める。「光州作戦が終わり大陸から日本への防波堤が1つ無くなりました。 この事からも近い将来BETAが日本に上陸して来る事は確実です。 それは未来情報でもそうですし、それを知らなくても可能性が高い事に変わりはありません」「確かにそうですね。 日本に最も近い大陸側の国連軍司令部が落ちたとなれば、BETAの脅威は目前に迫っていると判断すべきでしょう。 白銀、未来情報ではどうなったのですか?」武はBETAの日本侵攻を示唆し、悠陽もその事実を認めている発言を返す。そして武が知り得ている未来情報について尋ねてきた。「約半年後の夏、重慶(チョンチン)ハイヴから東進して来たBETAが九州地方から上陸して来ます。 そこからわずか1週間で九州・中国・四国に侵攻を許してしまいます」「ふざけるでない! たった1週間でそこまで侵攻を許すほど帝国軍は腑抜けてはおらんぞっ」武は正直に今後起こりえる事を伝えたのだが、それを聞いた醍三郎は拳をテーブルに叩き付けながら武に対して憤慨する。自身が総大将を勤める帝国軍の戦力がそこまで不甲斐ない結果を生み出したとは信じたくなかったのだろう。「それは承知していますが、運には見放されていました。 その時丁度大型の台風も上陸しており、その所為で何もかも後手後手になった結果そこまで被害が拡大したみたいです。 そこで出た被害は犠牲者3600万人で、日本人口の30%がたったの1週間で亡くなりました」しかし武が説明した様に実際には大きな天災に見舞われ、いくら精強な軍であろうとも仕方ないと言えば仕方ない状況だった。その話に悔しそうな顔をしているのは醍三郎だけではなく、斯衛軍を率いている志虞摩も同様。そして、他の者達もその犠牲となった人数の多さに呆然としていた。そんな皆の姿を見回した後、武は更に話を続ける。「その後、近畿・東海地方には避難命令が出されて2500万人が大移動を開始しました。 それを守る為に、帝国・斯衛両軍だけでなく国連・米国軍の協力により京都要塞を中心に1ヶ月に及ぶ防衛線を張り続けます。 しかし結局京都は陥落し、その後も撤退戦を繰り返す事になり、関西・中部地方はBETAに侵略されました。 今得られる情報で分かっているのはここまでです」本当はまだ続きを知っているのだが、これ以上はクーデター情報と同様、下手に教えない方が良いと夕呼から口止めされていた。国内に2つのハイヴ建設やそれに伴う米軍撤退など、混乱と疑心暗鬼に陥る可能性が高いと判断したのだろう。「首都まで喰われてしまったというのか……最早確証が有るか無いかなど関係ないわ! 直ぐに防衛線の再編・見直しを行い、何が起ころうとも対処できる様にしなければならんっ」「醍三郎、落ち着け。 今焦って行動しても良い結果にはならぬ。 それに未来情報を信ずるならば、幸いまだ時間はあるようだ。 今はしっかりと対策を練る事から始めようぞ」まだ見ぬ未来の屈辱に歯噛みしながら憤る醍三郎に志虞摩を冷静になる様に促していた。しかし、周りの皆も表情を暗くしたまま俯いていた為、武はそれを払拭させようと口を開く。「未来情報を何処まで信じるかで変わってきますが、BETAが進行して来るまでまだ時間が有るのは確かのはずです。 それに、未来情報ではこの時点ではまだXM3は完成してませんでした。 この世界では今からXM3を広めていけばBETA上陸までに戦力向上を果たせるはずです。 また、九州地方にも早目に避難勧告を行えばそこまで被害は拡大しないでしょう」「白銀の言う通りですね。 重慶ハイヴや鉄原(チョルウォン)ハイヴ方面への間引き作戦を継続させれば時間を稼ぐ事もできましょう。 その間に出来る限りの準備を進める事になりますね。 白銀、他に何か提案等はありますか?」武が希望を見出せる内容を語ると皆の顔が上がり、その目に強い意志を取り戻した様だった。それを見た悠陽も気持ちを奮い立たせて今後の方針を語り、武にまだ事前策がないかを促す。そう問われた武は、少し思案してから自分が考え付いた策を皆に話した。「戦力増強とはちょっと違う話しになりますが、1つだけ提案を。 先程も話した通り私は衛士としての能力を記憶情報を得た事で有しています。 ですが、正式に衛士訓練学校を卒業した訳ではないので階級は臨時です。 できれば今後の為にも正式に卒業して任官したいと考えているのですが、 正規兵になる為の訓練校への入学は現在16歳からなのでまだ入学できず、予備学校行きになります。 そこで、16歳未満でも志願兵として正規兵訓練学校に応募可能にして欲しいのです。 これはBETA本土上陸が現実味を増した事による戦時特例法として何とかならないでしょうか?」武の提案を受けて出席者達は皆『少年兵雇用』には渋い表情を示していたが、ただ1人悠陽だけが興味深げにしており、自分の考えを述べだした。「確かに白銀の衛士としての能力やそれにまつわる知識は何時までも臨時階級にしておくには惜しいと感じます。 また、白銀の様に強い意思と志を持つ者達が他にもおるやもしれません。 その様な者達も志願兵という形であれば、願い通り正規兵衛士訓練学校への入学も可能となりましょう。 勿論通常通りの適正試験などの能力判断試験を行い、無謀な合格者を出さなくする事が絶対条件ですね。 榊、どうでしょう?」武の案を悠陽は肯定的な反応を示し、政府代表の首相である是親に意見を求めた。是親は腕を組み少し考える素振りを見せたが、直ぐにそれを解いて自分の意見を述べる。「近い将来BETAがこの日本に上陸してくるとなれば、確かに戦力の増強は急務だと考えます。 それが志願兵とは言え、少年兵雇用と言う形になるのは少々腑に落ちませんが……。 各軍の戦力状況はどうなっておりますか?」是親が私見を述べた後に大将2人の方へ顔を向け、醍三郎と志虞摩に自軍の状況を尋ねた。「若僧どもの力なぞ必要とはせぬっ、と言いたい所ではあるが、BETA侵攻が近々本当に起きるのならば少々厳しいのは事実。 帝国軍は大陸への派兵による損害で、陸海軍共に衛士だけでなく他の部門の人員も確かに減少傾向にある。 志願兵として血気盛んで愛国心の有る若者が入隊して来るのは大歓迎だ」「斯衛軍は将軍家や五摂家、並びにその縁者を守護するのが任務。 それ故に戦力の低下は殆ど無く、予備軍の人員も規定数確保しております。 今すぐ人員を補充する程ではありませんが、優秀な人材はいつでも欲しておりますぞ」是親は2人の大将の話を聞き、次に国連事務次官である玄丞斎の方へ顔を向けた。「珠瀬事務次官殿、在日国連軍の現況はどうなっているか把握しておりますか?」「そうですな……在日国連軍も大陸派兵に多く出兵させていた事もあり、戦力は衰えてきているようです。 今すぐどうこうなる程ではないですが、BETA上陸の事を考えると補充は必要ではないかと」各軍の現況を聞いた是親は日本政府代表として意見をまとめ、悠陽の方へ顔を向け直して先程の質問に対する答えを返した。「帝国軍や国連軍には人員補充は急いだ方が良さそうですね。 その為にはBETA上陸の危機がある事を国民に知らせ、志願兵を募集する事も必要かもしれません。 先程殿下が申された条件を満たした者のみという前提で、至急議会で話し合い可決の方向に進めたいと思います」是親からの答えを聞いた悠陽は目を閉じ思案した後、皆を一度見渡してから是親に対して口を開いた。「分かりました。 無事可決した場合、私が国民に対して公布致しましょう。 そして、その場で政威大将軍として復権する事も述べようと思います。 五摂家に対しては私がその旨を伝えて協力を仰ぎます。 議会への通達の方はお願いしますね、榊」「承知致しました。 その件につきましても議会で通達しておきます。 反対する議員もいるでしょうが、そちらの方は何とか説得してみせましょう」悠陽からの願いを受けて是親は頭を下げると共に、復権に対して意気込みを見せる悠陽を助ける為に尽力する事を誓う。そんな様子を見ていた武は、難しいと思われていた政威大将軍の復権についても話がまとまったようだと判断し、心の中で安堵の溜息を吐いていた。するとこの時を待っていたと言わんばかりに醍三郎が席を立ちながら武に対戦を申し込んできた。「これで会談はお終いですな。 では白銀よっ、ワシと一戦交えて貰おう。 お主の話を信じるならば幸いまだ慌てなくても良いと分かったからな。 新OSの性能やお主自身の実力も肌で感じておきたい故、付き合って貰うぞ!」「いや、そんな事突然言われましても……」突然の醍三郎からの提案に武はたじろいでいた。相手は帝国軍の総大将も務めている伝説とも言われている衛士だ。そんな人を相手に模擬戦とはいえ戦う事に躊躇していた。しかし、悠陽の発言によって断れない状況に追い込まれてしまう。「そうですね。 正式に配備する事になるのは変わらないでしょうが、映像で見ただけよりも実際に相対してみた方が評価し易いでしょう。 紅蓮大将、その評価試験の為として白銀との対戦を許可します。 存分にそなたの目で新OSの評価を行いなさい」「ははっ、全力を持って任に当たる事をここに誓います。 白銀よ、と言う訳だ。 久し振りに本気になれそうな相手なのだ、楽しませてもらうぞ」任務として受けた事で醍三郎は悠陽に頭を下げながら受託した。そして武の方へ向き直り、恐ろしい程のやる気を見せながらその顔を興奮させたものに変えている。そんな醍三郎に見られている武の事を志虞摩が哀れみの目で自分を見ており、それに気付いた武はこの後きっと地獄を見るのだろうなぁと、1人黄昏るのだった。『第12話:閑話』「タケルちゃん、会談お疲れ様」「ああ、こんなに長くなるなんて予想外だったよ……」「…お疲れ様です、武さん」「ああ、ありがとな。霞(ナデナデ)」「……」「あー、霞ちゃんだけずるいぃ。私にも~」「はいはい、分かったよ。(ナデナデ)」「んふー、ありがと~」「思ったよりも順調に事が進んだみたいね。もう少し苦労するかと思ったから良かったわね」「夕呼先生のお陰ですかね。まあこの後まだ苦労する事になりそうですけど……」「相手があの生ける伝説の紅蓮大将ってのは確かに可哀想ね。まあXM3とあんたの力があれば何とかなるんじゃない?」「そうなって貰わないと新OSの意味がないですけど、やっぱり相手が相手だけにちょっと気後れしますね」「そんな弱気じゃ勝てるものも勝てなくなるわよ。……よし、じゃあもし勝てたらご褒美上げるわ。それを目標に頑張りなさい」「ご褒美って何ですか? 内容が分からないと頑張るにも頑張れないんですけど」「そんなの秘密に決まってるでしょ。でも悪いものじゃないから期待してないさい」「あ、それじゃあ私からも勝てたらご褒美上げるよ、タケルちゃんっ」「…私も上げます。だから頑張って下さい」「皆ありがとうな。よしっ。じゃあ一丁頑張ってみるか!」次回、『第13話』XM3評価試験、へ続く。