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No.30479の一覧
[0] 【第十四話投稿】Muvluv AL -Duties of Another World Heroes-[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[1] プロローグ[なっちょす](2012/07/16 02:08)
[2] 第一話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[3] 第二話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[4] 第三話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[5] 第四話[なっちょす](2012/07/16 02:21)
[6] 第五話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[7] 第六話[なっちょす](2012/07/16 02:13)
[8] 第七話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[9] 第八話[なっちょす](2012/07/16 02:16)
[10] 第九話[なっちょす](2012/07/16 02:15)
[11] 第十話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[12] 第十一話[なっちょす](2012/07/16 02:17)
[13] 第十二話[なっちょす](2012/07/16 02:18)
[14] 第十三話[なっちょす](2012/10/28 23:15)
[16] 第十四話[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[17] キャラ設定[なっちょす](2012/10/28 23:18)
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[30479] 第十話
Name: なっちょす◆19e4962c ID:3f492d62 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/16 02:20

―国連軍・横浜基地・地下格納庫・機密ブロック―

機をガントリーに納めると、宏一は一つ大きなため息をついた


(いくら制限されてなかったとはいえ…やりすぎたかなぁ~)


全身の力を抜き背凭れに寄りかかり、もう一度大きなため息
そんな時「ポーン」という機械音が響き、更に人工音声がそれに続いた


『どうかしましたか、大尉殿?』


「いんや、別にどうも…
 ただ、ちょっとセコかったかなぁ~ってね」


『回答の意味がわかりません』


「幾ら模擬戦とはいえ、教えてない機能を使って勝ったのはどうだかねって事さ」


『模擬戦において重要なのは勝つことであり、私には何も問題が無いように思えます』


腕を操縦システムから抜き、頭の後ろで組む


「そうだけどさぁ~
 …だけどなぁ~だまし討ちってさ、それ、人としてどうよ?」


『油断していた相手が悪いと思います』


「…正論だね」


呆れつつ答えると、投影されるメインカメラの映像に降りてくるキャットウォークが映った

キャットウォークが停止したのを確認すると外へと出た
そして腕を伸ばし筋肉をほぐす

其処へ整備マニュアルを持った数人の整備士が近づき、宏一にいくつか質問をした後機体の整備に取り掛かっていった


整備士に貰った飲料を付属のストローで飲みつつ部屋に戻ろうとした宏一の眼に、腕を組みながら眉毛をヒクつかせているタケルの姿が映った


「なんだ?あの機能は…?」


「この前言った“教えていない機能”の一つ」


チュ~という音を立てながら、宏一はストローをくわえたまま答える


「ですよねー…
 って、ちがぁーう」


「なにがだよ」


「何でいきなりあそこで使うんだって事だよ!」


「油断していたタケルが悪いだけ(棒読み)」


「…まぁそうなんだけどな」


「それに禁止もされていない。
 …よって別に卑怯ではない(棒読み)」


「いやいや、十分セコイですから」


「それに負けた直接の原因ではない(棒読み)」


「んがっ」


「よって…
 「ストップ!!」
 …なんだよ」


「その棒読み止めてくれ」


「へいへい」


ガクッと項垂れているタケルに対し、宏一は肩をたたきながらつぶやいた


「まぁ、人生こんなこともあるさ」


「うるせーっ!!」





―同時刻―
―同基地・地下機密区画・第二モニタールーム―


「…操作ログまで見ちゃって~
 あなた、そんなに気になるの?」


「副指令、そうは仰いますが、我々衛士から見れば彼らの操縦能力は異常です。
 如月大尉の機体は操縦系が特殊ですからその恩恵がある…ともいえますが、白銀大尉に関しては少なくとも異常であるといえます」


「あのね~二人っきりの時ぐらいその堅っ苦しい言い方どうにかなんないの~?」


「しかしそれでは…
 「何か言った?」
 …わかったわよ、もう」


「まぁ如月のは…そうね、確かに操縦システムや機体の恩恵もあるだろうけど、それ無しでも結構凄いわよ?」


カタカタとコンソールを夕呼が叩くと、モニターの端にシミュレーターの映像が映る


「夕呼…これは?」


「如月が不知火に搭乗した時の映像」


流れる映像を喰い込んで見るまりもの姿を見て、夕呼はかすかに口元を緩めた


「ね? 私の言った通りでしょ?」


「まったく…こんな人材、良く見つけられたわね」


「まぁね。
 それが天才の成せる技ってことよ」





「―それで、この二人が常人ではない事は分ったのだけれども、一体何の為にこれを私に見せたのかしら?」


腕を組みつつ夕呼の方を見ながら己の疑問を問うまりも


「そうね。
 一番の理由はまりもと一緒に新兵育成をやってもらうからかしら」


「やってもらうって…夕呼、あなたねぇ…
 そう簡単には言うけれど…」


「それに彼らは実戦経験者よ、これでも何か御不満?」


「そういった意味じゃなく…
 「あぁ、別に座学に関しては彼らはあまり関与しないわ。 あくまでも戦術機訓練だけよ」
 …もう、人の話を聞かないで」


「あぁ、それと…」


「なに?」


「この後二人をオフィスに呼んであるのだけど、まりもも来る?」


質問に対しまりもはしばらく考え込んだ後、二つ言葉で返事を返した


「フフッ…なら決まりね」


コンソールを操作しモニターをOFFにしつつ、データを消す


「…これでよし。さ、行くわよ」


データの消去が完了したのを確認すると、夕呼とまりもはモニタールームを後にした

……


―地下機密区画・B19フロア・夕呼のオフィス―

霞に淹れてもらった合成コーヒーをタケルと宏一は啜っていた

昼食を済ませ、二人が部屋に着いたのはつい数分前
本来なら既に何かしらの会話がなされていたのだが、ただ、部屋には二人を読んだ張本人がいなかった
いたのは霞、只一人
その為二人は貰ったコーヒーを啜っていたのだ


「社はコーヒーを入れるの上手いねぇ~」


「…ありがとうございます」


「合成コーヒーとは思えないほどのうまさだもんな!!」


「…////」


話す会話も無いためか、必然と霞のコーヒーの絶賛会が始まる


~後日談~

当の本人達は気が付かなかったみたいだけど、この時霞ちゃんは隠れたいほど照れてたんだって!
タケルちゃんも如月君も鈍感過ぎ!

語り:鑑 純夏
~後日談・終~


「おっまたせ~♪」


ノリノリで入室する夕呼


「「先生/博士、遅いで…!」」 


振り返りながら文句を言おうとする二人…
だが、その文句の言葉を言いきる事は無かった


「…あら? どうしたの?」


ニヤリと笑う夕呼


「そうそう、二人には“まだ”紹介していなかったわね~
 彼女は神宮司 まりも軍曹。この基地の教官よ。」


紹介を受けたまりもが一歩前に出る
ビシッと綺麗な敬礼


「お初にお目にかかります!白銀大尉!如月大尉!
 自分は香月博士のご紹介に合った通り、当基地で新兵教育の担当教官をやらせていただいている神宮司まりも軍曹であります。
 以後よろしくお願いします!」


「「……」」


そんな素晴らしい敬礼に搬送しないタケルと宏一…
二人の脳内はそれぞれの思いでいっぱいであった為だ

タケルは前のループ時に二つの世界のまりもを殺すきっかけを作ってしまった事への罪悪感と追慕を…

宏一は前の世界においてソルトハイブ内で交わしたまりもとの約束が果たせなかった事を


「あ、あの…大尉?」


「っへぁ!?」 「っえ!?」


だが、それらの思考は何の因果か当の本人によって打ち切られる事となる

一方の当の本人は、何か不味い事を発言してしまったのではないかと不安に駆られていたりした


「し、失礼。
 既にご存知の通り、オレは白銀 武といいます。
 階級は…言わなくていっか」


(お久しぶりです…まりもちゃん。 今度は絶対…あんな事は起こさせませんから!!)


「同じくご存知の通り、自分は如月 宏一と言います。
 以後お見知りおきを」


(約束守れずにスミマセンでした、少佐。 けど、自分はこの世界でまたあなたに会えましたよ…)


「よろしくお願いします! 白銀大尉!如月大尉!」


(まだ子供じゃない!? この子たちがさっきの機動を…?)


「あらあら、堅いわね~」


三人が敬礼する中、つまらなさそうに言う夕呼


「そう言えばまりも~、この二人まだ十代半ばよぉ~?
 良い男見つかったわね~」


良かったじゃな~いとヘラヘラと言う夕呼


「ちょっとゆう…副指令!なんて事を…
 え?十代…半ば?」


一方のまりもは夕呼のおちょくりに反撃しようとしたが、それよりもタケル達の年齢に驚いた


「白銀、如月」



「オレは去年の12月に16になったばかりです」  「ウチも昨年の9月に16になりました」


「嘘…
 副指令!?これはいったい―」


「そういうことよ?
 彼らは“研究”の要員と言えばわかるかしら?」


「…はい」


肩を落とすまりも
そんな様子を見ていたタケルは口を開いた


「まり…神宮司軍曹、オレたちは別に強制的に働かされてるとかそういった事ではありません。
 オレたちの意思でここに志願したんです」


「―え?」


「博士と自分たちの利害が一致して、尚且つ目指す目的が一緒だった。
 だから志願したんです」


「そうでしたか…」


「「「…」」」


まりもは全身に強張らせていた筋肉から力を抜いた


「あ~しんみりしてるところ悪いけど、これが来年度207に配属される新兵のリストよ」


三人の間に流れていた空気を見事に壊す夕呼
流石である

リストはまりものほかにタケルと宏一にも渡された


「…あの先生?」


「なぁ~に~?」


「軍曹に渡すのは理解できるのですが、何で俺たちにもなんですか?」


「え?決まってるじゃない。
 あんたたちにも新兵教育やってもらうから」


「「な、なんですと!?」」


「…あら、言わなかったかしら?」


「「一っ言も!」」


(子供とは言っても、やっぱり弄ばれているのね…)


二人揃って肩を落とす
その姿を見ていたまりもは、後頭部に大きな汗マークを作りつつ苦笑しながら二人に同情していた


「…まぁいいですけどね」


タケルは受け取ったリストを見る

A4サイズの用紙に纏められたそのリストは表紙と目次を含めて計7枚
一人分の顔写真と各種データがA4用紙1枚に所狭しと書かれていた

パラリパラリと捲ってゆくと、見知った顔と名前を見付けた


―風間 祷子―


(そう言えば風間少尉は俺たちの一期先輩だったっけ…)


ふと思い出すと、タケルは―今回もよろしくお願いします―と心の中で告げた

一方の宏一は神妙な表情だった
それにタケルが気が付き、小声でしゃべりかける


「(どうした?)」


「(ん? いや、特に何でもないよ…)」


「(…そうか)」


微笑んで答えるが、タケルには大丈夫そうには見えなかった




「では、失礼します!!」


「はいは~い」


まりもが再度見事な敬礼を決め、退室する


「さてと…
 如月、さっきの模擬せ…
 「博士、一点質問が」
 何?」


真剣な眼差しで聞く宏一に夕呼も真顔になる


「ウチがここに来た際、博士は並行世界には自分と同じ存在がいると仰っていましたよね?」


「えぇ、そうよ?」


「その存在は時間的にも並行して存在するのでしょうか?」


「…どういうこと?」


「これです」


宏一は先程受け取ったリストのあるページを開く
其処には一人の少女の顔写真が張られていた


「彼女は今川 葵。
 元の世界でのウチの同級生です」


「それが?」


「ウチが生まれたのは元の世界で西暦1994年…
 つまり、2000年当時はまだ6~7歳です」


「つまり、まだ小学生ぐらいのはずの友人が何故17歳なのか… そういうこと?」


「そうです」


夕呼は顎に手を当てたまましばらく唸り、顔を上げる


「即席の仮説だけど…それでも構わないかしら?」


「構いません」


「ならいいわ。
 …並行世界は自身の行動の選択によって分岐するってのは知ってる?」


「えぇ」


「それをさらに細かくすれば時間も関係してくるわ。
 例えば…」


夕呼は徐にホワイトボードに人間の様な図形を最初に描き、其処から別々の方向に線を引きその先端にそれぞれA,Bと書いた


「ある人物が“A”と“B”という行動の選択に迫られるとすると、この時点で少なくとも2つの並行世界が存在する事となるわ。
 更にそこに時間を混ぜると…」


A,Bそれぞれの水平方向に更に線を伸ばし、それぞれに“一秒前に~”と“一秒後に~”と書きこむ
それらを人間の様な図形と線で結んだ


「それぞれ“一秒前にAをする”“一秒後にAをする”“一秒前にBをする”“一秒後にBをする”といった分岐が発生する。
 だから計6つの並行世界ができるということ …厳密にいえばもっと細かく分けられるけど、そんなもんはキリが無いわ」


「でもそれがいったいどういう関係が…?」


タケルが首をかしげた


「白銀、アンタの数代前の先祖から全員生まれるのが一秒でも早くなれば、アンタが生まれるのも世代分の人数だけ早くなるって事よ」


「なるほど…そうか!」


「…つまり彼女はその条件が幾重にも重なった結果、自分の世界よりも一年早く生まれたという事ですか?」


「そういうことになるわ」


「わかりました。ありがとうございます」


宏一が軽く頭を下げる


「まぁそのくらいは別に良いんだけどね。 でも気に入らないのはこれよ…
 如月、この機能は何なの?」


夕呼がいつの間にか起動していたモニターを示す
モニターには飛鳶が突然何もない空間から浮かび上がってくる映像が流れていた


「あ~、これですか~
 これはECS“不可視モード”…いわば光学迷彩の一種ってとこですかね」


「「光学迷彩~!?」」


「えぇ、光学迷彩…ですけど」


夕呼とタケルの声の大きさに上半身をのけ反らせる宏一


「けどアレって確か実用性が全くないんじゃ…」


「そうなんだけど、これ、実は前の世界やウチの世界の技術じゃないんだ…」


「な、なんだと」


「…飛鳶のAI―確かアルっていったかしら―の世界の技術ね」


「そうなんですよ」


夕呼は冷静に分析する


「でも何でそんな技術が前の世界で実現できたの?」


「実は、アルは前の世界で搭載されていた機体ごと発見されまして…
 ウチの弐型の損傷が激しく予備パーツも殆ど無かったので、ならいっそのこと修理がてらニコイチしようってことになって、結果その機体に搭載されていたECSを戦術機用に改修して丸ごと移植したんです」


「ECSを丸ごとって…じゃあ、あのECSがそうなのか!?」


「うん」


「へぇ~~!
 てっきりお前の元の世界か前の世界の技術だと思ってた」


目をまん丸にして驚くタケル


「喋るAIといい光学迷彩といい… その世界の軍事技術は相当進んでいるようね」


「えぇ、しかし単純な技術力ではこっちの世界の方が上手ですよ?」


「じゃあ何でこっちの世界で確立できないのよ」


「え~と、確かブラックテクノロジーの産物だからだそうです」


「ブラックテクノロジー?」


「簡単にいえば、存在しないはずの技術…オーバーテクノロジーみたいなものかな?」


「そのテクノロジーによって出来たってわけね」


「そうです。
 他にパラジウムリアクターとか常温核融合炉等もあったそうですよ?」


「はぁ…其処まで行くと夢の様な技術ね…
 いったいどうやって習得したのかしら…?」


「さぁ?」


┐(´Д`┌ ←宏一はこんな感じで答えた

まぁいいわ―と言いつつ、夕呼は椅子に座る


「これ以外に何か隠してる事は無いのね? 
 言っておくけど次は容赦しないわよ」


口をやや尖がらし目を光らせて聞く夕呼に、宏一はその気迫に軽く震えていた


「まぁ、有るっちゃあるんですが…」


「何よ?早く言いなさい」


貧乏ゆすりを始める夕呼
宏一のまどろっこしさが相当頭にきているらしい…


「通称“ラムダ・ドライバ”…
 これもアルの元の機体に乗っていた奴をそのまま載せた奴なんですが…
 力場を発生・制御できる“らしい”です。」


「「“らしい”?」」


「えぇ、“らしい”なんです」


「何でよ?」


「…一度も起動に成功した事が無いんです」


「ハァ~? 何その欠陥機能?」


夕呼は口を大きく開きながら唖然とする


「そうなんですよねぇ…
 けど撤去するのも勿体無い気がして出来ないんですよ」


「け、けどよ、それが起動できるようになればスゲェ事なんじゃないか?
 だって力場を発生・制御だぜ?
 つまり無敵ってことじゃねぇか!?」


やや興奮気味のタケル
これがあればML機関なんていらねぇぜ~!!等と一人ではしゃぎ出す


「…アレは放っておいて、故障とかで起動出来ないじゃなくて?」


「一応アルに検査させましたが、問題はありませんでした」


「起動方法は?」


「不明だそうです」


「つっかえないわねぇ~」


「まぁあっちの世界でも相当の駄々っ子だったらしいんで、こればかりは気長に考えるしかなさそうです」


「…そうね。
 起動出来たら必ず連絡しなさい」


「勿論です」


「あぁそれと…」


「?」


「今度読んだ時に飛鳶の“ちゃんとした”設計図も持ってきてね」


「わ、忘れてました…;
 ECSやラムダ・ドライバのもですか?」


「当り前よ」


了解―と返事を返すと霞からもらったコーヒーを宏一は一気に飲み干し、ハイテンションなタケルと共に退室する




「なぁなぁ、宏一?
 そのラムダ・ドライバってのはこっちでも量産できんのか?」


「わからん。
 けど博士ならできると思う。
 …いや、あの人ならやりかねん」


「…それもそうだな。
 けどよ、これさえあればML機関も必要ねぇ訳だから“アイツ”を作る必要も無いってことだろ?
 それに力場発生機能でBETA相手に無双し放題!
 良い事尽くしだぜ!!」


「(アイツとは00ユニットの事かな…?)
 …お前、人の話聞いてた?
 ラムダ・ドライバはまだ起動に成功してないんだってば」


「…へ?」


タケルが浮かれたポーズのまま凍り付き、「ギギギ」と音を立てながら宏一の方を向く


「ソレ、ドウイウコトデスカ?」


「言葉どおりの意味でございます」


ヒュバッ―と風切り音を鳴らし執事の様に腹の前で腕を折りながらお辞儀する宏一

そんな宏一の言葉に、ガクッとorzのポーズの様に腰を落とすタケル
数秒その体制を維持した後立ち上がり、宏一の肩をガシっと掴む


「なんで!?」


「し、知らんがな…
 まぁがんばってみるけどさ」


「頼むよ? 絶対に頼むよ?」


「わかった、わかったって。
 わかったからそんな形相で顔を近づけるな…」


その後しばらくの間、宏一は飛鳶に乗る度にタケルから起動の有無を確認されることになるが、それはまた別のお話…



二人は夕呼の部屋を出ると、真っ直ぐにヴァルキリーズのメンバーが待機しているモニタールームへと向かった
無論午後のシミュレーター訓練の為である

モニタールームに着くと宏一は質問攻めにあう
理由は先程と同じ“ECS不可視モード”についてだった
これを“前の配属先での試験的装備”とやや苦しまぎれに説明すると、一応納得をみせる


(なんだか孝之と慎二の気迫が強かったような気がするなぁ…)


「―以上です。 何か質問はありますか?」


美冴が手を上げる


「その訓練には如月大尉も出るのですか?」


「…だってさ、宏一。 どうする?」


「…」


「…宏一?」


「え?あぁ、うん。 一応出るよ」


「…だそうです」


「了解」


「そうか…なら、その際のポジションをどうするかだな」


う~ん―と唸るみちる


「あ、お前ポジション決まって無いんだっけ?」


「まぁね。中隊に配属されたこともあったけど、定員オーバーだったから基本的に遊撃」


「なら、今回はタケルと一緒に強襲前衛でもいいか?」

「「OKです」」


「良し。
 なら…」


みちるがヴァルキリーズメンバー各々のポジションを決めてゆく
元々決まっていたが、今回はタケルや宏一といったメンバーが追加されたこともあったためである

そもそも午後の訓練と言うのはXM3装備後に普段行っていた基本・応用動作ではなく、ヴォールクデータを用いてでのハイブ侵攻訓練であった
提案者はみちる
現時点でどの程度上達したかを実感するためである

ポジションは暫定的に
突撃前衛:孝之・水月
強襲前衛:タケル・宏一
強襲掃討:沙恵・慎二
迎撃後衛:みちる・遥
制圧支援:静香・美冴
となった


「―では、1400にシミュレータールームに集合とする! 以上、解散!!」


みちるの掛け声でその場は解散となる


「強襲掃討だってよ~慎二ぃ?」


「う~ん、俺お前と一緒の突撃前衛だったからなぁ~
 …正直不安だわ」


「大丈夫よ!
 BETAがいたらぶっ放す。それだけなんだから♪」


不安がる慎二の背中を沙恵が叩きながら励ます


「そういや、遊撃ってどんな内容だったんだ?」


「ん? ホントに字の通りだよ。
 危なそうな所に行って援護、そんでまた危なそうなとこ行って…の繰り返し」


「た、大変だなぁ」


「大変なのは最初の内だけさ」


「へぇ~」


ヴァルキリーズ男四人組はそんな他愛無い会話をしつつ、シミュレータールームへと向かった



―ヴォールクデータハイブ・上層部―


「…ヴァルキリー5(孝之)よりオールヴァルキリーズ。
 振動検知、距離約5000、数約5000」


水月と共に先行していた孝之から連絡が入る


「ヴァルキリー1(みちる)、了解。ヴァルキリー5、良いぞ、戻ってこい。
 『了解』
 全員聞いたな!?お客さんだ!」


「早速かよ…
 旅団規模って、潜り始めてまだ5分と経ってないぞ?」


「文句言うな。
 5分も出てこなかっただけマシさ」


「ヴァルキリー4(美冴)よりヴァルキリー1。
 92(式)はどうします?」


「まだ使うな。初戦で使うのはキツイ」


「了解」 「ヴァルキリー5・7(水月)、合流します。」


「良し。
 全機、楔壱型(アローヘッドワン)!」


「了解」×9


10機の蒼い不知火が一つの陣形をくみ上げてゆく
その陣形は
      沙恵
   宏一
孝之・水月・みちる・涼宮・宗像・美冴
   タケル
      慎二

といった隊形だった


「行くぞ!! 切り込めぇぇぇ」


「「「「「「「「「応!!」」」」」」」」」


BETAの先陣である突撃級の波を飛び越えると、その後ろにいた要撃級や戦車級に向かって18の火線が延びてゆく

放たれた36mmHVAPは次々に突き刺さり、その内部に秘めていた劣化ウランの弾芯を要撃級や戦車級の体内に吐き出す
吐き出された弾芯は貫通し或は体内を自らの持つ衝撃波で体内をズタズタに引き裂いた


「警告! ヴァルキリー2。
 左舷、要塞級。距離100!!」


「ヴァルキリー10(宏一)、知ってるわ!
 …けど、ありがと」


碓氷機が片方の突撃砲を要塞級に向け、発砲
撃ち出された二発の120mmがその顔のような部分を捉え、爆発
体勢を崩した要塞級が周囲の中・小型種を巻き込みながら転倒、沈黙する


「ウラウラウラァ~ッ!!」


「ノリノリだなぁ、慎二ぃ!?」


「結構強襲掃討も楽しいぞ!?」


「弾切れに注意しなさいよ~」


「んなことわかって…
 「どうした?」
 右が弾切れした。
 「ほら、言わんこっちゃ無い」
 …」


UNブルーの不知火は一度も隊形を崩すことなく、僅か数分で自身たちの500倍もの数の敵を只の肉片に変えた


「こ、これがXM3の能力…」


「いいや、“俺たちの実力”さ」


通常のOSの場合、旅団規模の相手に一個中隊に満たない戦術機が立ち向かうのは自殺行為であった
中隊でさえ良くて半数、悪くて全機が敵の胃袋の内容物の一片になってしまうからだ

しかし彼女等は違った

たった10機で旅団規模を…それも無傷で“殲滅”してみせたのだ


「…何ぼさっとしている!気を抜くな! まだ上層だぞ!?」


一種の夢を見ているかのような状態に陥っていた(タケルや宏一を除く)メンバーの耳にみちるの叱咤がつんざく


「りょ、了解」


(全く…
 しかし、いくらシミュレーターとはいえこれ程とは思わなかった。これがもう少し早く開発され…)


一方の叱咤したみちるもある種の興奮を覚え、この場にいる衛士ならだれもが想像するであろうことを想像する


(―いや、よそう)


しかしその想像を故意に打ち消した
彼女等に過去を悔いることは許されないのだ


―中層部―

上層部ではほぼ無敵状態であった彼女等も、中層に達する頃には流石に消耗していた
当初10機あった機影は7機となり、弾薬も3割程消費していたのだ

ハイブ内に赤黒い血飛沫が舞い、肩に07と描いた不知火の目の前の要撃級は長刀の錆となった
しかし、振り切る直前に長刀の刃が欠け落ち、急激に増大した摩擦が頑丈なスーパーカーボン製の刀身に大きなひびを生やす


「ヴァルキリー7よりオールヴァルキリーズ。
 誰か、長刀か36mmをくれない? 120mmでも良いわ」


「ヴァルキリー10よりヴァルキリー7。
 36mmは一本だけなら融通可能。
 …いる?」


「ありがたく頂戴させてもらうわ♪」


ひびの入った長刀を兵装担架に戻した速瀬機は、如月機から差し出された36mmの弾倉を受け取るとそれを直接突撃砲に装填する

本来左手に有るはずの追加装甲は、リアクティヴアーマーによって撃破した要撃級の“最後のイタチっ屁”によって破棄を余儀なくされ、破棄
更に運の悪い事に、この最後の一撃の衝撃によって左のナイフシースが歪み、展開不能になってしまった


「ヴァルキリー9(タケル)よりオールヴァルキリーズ。
 振動検知、距離4500、数約2000」


「ヴァルキリー1、了解。
 全機、オールウェポンズフリー! たかが2000だ、蹴散らすぞ!!
 綾瀬、露払いだ、喰い散らかせ!!」


「Ok,leader!
 Target in range…All look on!
 Valkyrie3(静香)、Fox1、Fox1!!」


綾瀬機の両肩に装備されていた92式多目的自律誘導弾システム(MAMS)から計32本の白煙が立ち昇り、突進してくるBETAにその進路を向ける


――衝撃――


絶妙な角度でのミサイルの直撃と密室効果によって、突進してくる数は2000→1400と大幅に数を減らす


「ヴァルキリー2/6(慎二)、Fox2、Fox2!!」


そこに8門の120mmフレシェット弾による散布角いっぱいの砲撃が加わったことで、その個体数が一気に削られた


「「「ヴァルキリー7/9/10、吶喊!!」」」


三機の不知火が残ったBETAに向けて水平跳躍


「邪魔だぁぁぁ!!」


如月機が左手の長刀で要撃級を二体纏めて横薙ぎにしつつ、右手の突撃砲で戦車級に36mmをばら撒き


「遅ぇんだよ!」


白銀機が連続で三体の要撃級を刺身に


「トロいっ!」


速瀬機が要撃級の一撃をいとも簡単に回避
逆に回避ついでにその白っぽい胴体を横に両断する


三機が連携しBETAを駆逐してゆく中、ガキッという不愉快な音を立てて速瀬機の長刀が折れた


「…ッ!ここで!?」


その事に気を取られ、戦車級が飛びかかりに対応するのが遅れてしまう


「しまっ…
 「頭部機銃!」
 …!!」


頭部が飛び付こうとする戦車級をジッと捉え、二門の20mmが火を噴いた

20mmの弾幕をモロに食らった戦車級が肉片となって速瀬機に降り注ぎ、UNブルーの機体を赤黒く染め上げる


「宏一、ありがと
 「お構いなく」」


礼を述べつつ、もう一方の長刀を装備する水月


「お残し、いっただきぃ♪」


碓氷機が先行した三機に群がろうとする戦車級に36mmの雨を降らせる


「詰めが甘いわよ~、御三方」


「サーセン」


「…(謝られてるはずなのに何故かムカつく)」


碓氷機に続いて平機、みちる機、綾瀬機の順で合流し残党を掃討し始める


「…これで最後!」


慎二が最後の戦車級を肉片に変える


「全機、損害・残弾を知らせ!」


「ヴァルキリー2、損害軽微、されど120mm4発36mm2本」

「ヴァルキリー3、損害なし、残弾120mm5発36mm1本」

「ヴァルキリー6、左舷跳躍ユニットにクラスDの損傷、残弾36mm3本」

「ヴァルキリー7、クラスCの損傷、残弾36mm僅少」

「ヴァルキリー9、損傷軽微、残弾120mm1本36mm2本」

「ヴァルキリー10、損傷軽微、残弾120mm2本36mm2本」


「ヴァルキリー1、了解。
 此方は損傷軽微、36mmが5本だ。
 ヴァルキリー3・7、36mmが一本ずつだが融通は利くぞ?」




「ありがとうございます、大尉」 「助かります」


「「ヴァルキリー9/10、先行する」」


「ヴァルキリー1、了解」


白銀機と如月機が他の不知火を残し先行し、その間に伊隅機が綾瀬機と速瀬機に36mmを渡す

その後、先行した二人を追う様に残りの不知火が隊形を組み水平跳躍した




「ヴァルキリー10よりオールヴァルキリーズ。
 振動検知、距離2300、数10000」


「一万…だと?」


みちるが唸るような声で言う

中層部中盤と、現在位置している地点は反応炉との中間地点

―だが、其処は自分たちが…むしろ、ほとんどの衛士たちが到達した事の無い地点でもあり、そのような地点で発生する事象など予測不可能であった

みちるは今までの経験と知識をフル動員させて対応策を脳内シミュレートする
この間僅か数秒―しかし、戦場ではこの数秒でさえ貴重なものである


「ヴァルキリー9・10は直ちに戻れ。
 全機、円壱型(サークルワン)、S-11を使う。」


「了解」×6


綾瀬機と速瀬機が指定されたポイントにS-11を設置し始める
だが作業に入った途端、他の機のカメラに接近してくるBETAが映った


「…ッツ!!
 全機、綾瀬と速瀬に奴らを近づけさせるなぁ!」


「「「「了解!!」」」」


青く不気味に輝く横抗内に複数のマズルフラッシュが瞬いた



―下層部―

二機の不知火が水平跳躍していた
それぞれの不知火の肩部装甲には09、10と描かれている
しかし、その白く書かれたよく目立つ機番でさえ見分けるのに苦労するほどに、彼らの機体は赤黒く汚れていた


「そろそろ推進剤残量が心細くなるなぁ…
 ここからは戦闘以外は主脚メインで行く?」


「…そうだな。
 さっきの戦闘で大分喰っちまったし」


着地した両機がガシュンガシュンと音を立てながら走り出す


「どうせなら戦闘もなるべく最低限で行かないか?」


「なんでまた」


「弾薬も心細いし、かと言って長刀もそれほど長く持たないしな」


「なるほ…
 じゃあ敵さんは基本無視って方向で」


「OK」


突然の轟音が横抗内に鳴り響く
二人の前方100m程先の“側壁”が崩れ、中から数百の戦車級と十数の要撃級が飛び出す


「っと!ビックリしたぁ。
 偽装横抗とか…またかよ」


「まぁそんだけ反応炉が近いってことでしょ。
 ほんじゃお先!」


如月機が突如ジャンプ
要撃級を踏み台につつ先に進む


「お! それいいな!!」


続いて白銀機も同様に要撃級を踏み台にして進む


「…越えたのは良いが、追っかけてくるぞ?」


「たかが50~60kmだろ? 
 いくら主脚移動だからって追いつかれる事はないさ」


それでいいのかよ―と苦笑しながらタケルがぼやいた




「…流石にこれは…無理?」


「…だな」


彼らの目の前に広がるのは二万弱のBETAからなる広大な“絨毯”…
この光景に二人は唾を飲む


「S-11、使う?」


「反応炉が破壊できなくなるぞ…多分」


「「う~ん」」


気楽に会話しているが、内心は凄く焦っていた
何せその絨毯は時速60km程で自分たちに向かってきているのである

マンダムのポーズで悩んでいた宏一が頭上に豆電球を灯し、閃く


「なるべく中型種を踏み台にして、無理そうなら跳躍しよう!」


「…」


「なんだよ」


「フツーだな」


「言うなよ」


ジト目で反応するタケルに対し、肩を落として答える

不知火に搭載されているFE108-FHI-220に火が入り、18mの巨人を再び宙に舞わせる
再び翼を得た巨人はその巨体からは考えられないように軽々と舞い、中型種を踏み台にまた宙を舞う


「こ、これは意外と難しいな」


要撃級の“頭”を踏みつぶしながら宏一が言う


「出力を絞ればそうでもないぞ…っと!」


白銀機がのろのろと歩く突撃級の甲羅を踏みしめる


「アドバイス、サンキ……ッグゥ!?」


要撃級を踏み台にしようとしていた如月機がその方向ベクトルを下から真横に切り替えて吹っ飛んだ


「なッ…宏一!?」


突然の出来事にタケルは前方を向いた
彼の角膜に深海生物を巨大化させた様な、不気味な生物が三体映る


「こんなときに要塞級かよ!」


普段であれば二人にとって要塞級は強敵でも何でもなかった
しかし、推進剤・弾薬共に消耗し、尚且つこの様な狭い場所においては“最悪の状況”であった

先頭の要塞級の頭部が爆発する


「…行け!タケル!!
 ウチが援護する!」


「ック…了解!」


両足を明後日の方向に向かせ、側壁にもたれかかった状態の如月機から残弾少ない120mmが奮発される…
結果、あっという間に二体の要塞級が巨大な肉塊と化した


「これで看板。
 あとは…」


120mmを撃ち尽くした宏一は視線を前方に戻す
周囲には自身に群がろうとする戦車級や要撃級…


「残念だけど、簡単には喰えないんだな~っ!!」


呑気なことを言いつつ、両手の36mmと頭部の20mmを乱射し始めた
しかし、弾がいつまでも続くわけがなく、弾切れになった隙に一気にBETAに取り付かれてしまう


「…ほんじゃ、ポチとな」


完全に覆い被されたことを確認すると、宏一は自決スイッチを押した



二体の要塞級をやり過ごしたタケルは最後の一体に切迫していた


「コイツさえ抜ければ!」


跳躍ユニットをフルスロットル
前方から触手が迫る


「なんとぉぉぉ!!」


直前まで引きつけた後バレルロールで回避
触手の脇を抜ける


「これで…!」


《警告 推進剤残量0》


「…っへ?」


推進力を失った不知火は一気に高度を落し始めた
急激に接近する地面が視界いっぱいに広がるが、タケルはなんとか着地に成功させる
しかし、着地の際の衝撃によって脚部関節をイカレさせてしまった

《警告脚部関節損傷》

《警告バランサー故障》

《警告照準システムに深刻なダメージ》
《警告……》

次々に警告が表示され、視界が真っ赤になる


「動かない…か」


操縦桿をガチャガチャと動かすが反応は無し
タケルは手詰まりを悟った


「あともうちょっとだったんだけどなぁ~」


頭の後ろに手を組む
衝撃が体を揺さぶり、映っていたハイブ内の映像が消えた



真っ暗な視界にピアティフが映り、演習終了を知らせる
同時にタケルの側面の戸が開き、タケルはシミュレーターから出た


「残念だったなぁ~」



宏一が残念そうに飲み物を渡してくる


「あぁ、まさかあそこで要塞級が出てくるなんて考えてなかったもんなぁ」


タケルはそれを受け取ると、喉を鳴らしながら飲んだ


「ま、良い勉強にはなったな」


「全くです」


蓋を閉めると二人は他のメンバーが待つ待機室に向かった





「ちょっと!!
 アレ、どういうことよ!?」


「ど、どういう事と言われましても…」 「あ、あれって…どの場面?」


待機室に着いた二人にいち早く水月が喰らいつく
余りに唐突なことだったため、二人は一瞬たじろった


「残りがアンタ達だけになった直後の戦闘よ!!」


「「あぁ~、あれの事~」」


ポンと手を叩く二人


「あれの事~…じゃないわよ!
 何なのよあの機動!?」


「別になにも特別な事してませんよ?
 ごく普通の、壁けりを応用した機動ですよ」


「…普通そんなこと思いつく?
 バイブ内で壁けりなんて…」


「逆に思いつきません?
 壁に囲まれてるんだし…」


「「……」」


(柔軟な思考か…私もその思考が欲しいものだ。 …ん?)


タケルと水月が意見を述べ合っている所を眺めていたみちるは、ふと視線をずらす
ずらした先では何やら沙恵が宏一をいじくっていた

「…それ、古いですよ?」


宏一の頬を沙恵の人差し指が押している


「いいじゃない? ただやってみたかっただけよ。
 …うわ~肌柔らか~い」


プ二プ二と更に突つく沙恵


「で、何ですか?」


宏一は少し困った表情をしながら聞いた


「うぅん、別に何も。
 ただ、戸惑ってる顔可愛いなぁ~って思ってね」


「可愛い…ですか」


宏一が大きくため息をついた


「なによ~何か不満?
 可愛いモノを可愛いって言っちゃダメなの~?」


「いや、男なのに可愛いって言われるのはちょっと…ねぇ」


「や~ん、それ可愛すぎる~」


視線をずらし少々頬を赤くして答えた宏一に萌える沙恵
クネクネと体をよじる姿は、さながら黄色い話をしている女子学生であった

はぁ―と頭に手を当てながら、みちるはため息をついた
その原因として、隊全体が緩んだ空気に包まれていたからだ

普段ならば、訓練後すぐさま反省会を兼ねたミーティングを行う
だがいま彼女の眼下に広がるのはそれとは真逆の状況であった

しょうが無いと内心理解しつつも、声を上げた


「貴様ら! いつまでノホホンとしているつもりだ!!
 ミーティングを始めるぞ!!」


「り、了解!!」×9



タケルと宏一を残して隊が全滅した要因である「中層以下での大規模旅団との遭遇戦」への対処をメインに行われたミーティングには、普段の様などんよりとした空気は無かった

活発に意見が飛び交い、その都度検討がなされる

結果、新たなるハイブ内での独自戦闘規定として

・小規模の敵に対しては必要最低限の攻撃だけで対処

・中規模以上の相手でも、なるべく積極的な戦闘は避ける

・中~大型種は行動を止める事を優先し、無理して撃破しなくてもいい

・要撃級、突撃級は踏み台

が決まった
反応炉への早急な到達を目的に作られたものだったが、このヴァルキリーズ独自の規定が後に世界共通のものになるとは誰も想像しなかった


第十話END
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どうも、なっちょすです
今回はトーク半分戦闘半分です

午前実機訓練、午後シミュレーターってキツイかなぁ~?
まぁ、タケルちゃんとオリキャラなら大丈夫でしょ
なんせチート級だしww」

では、何かありましたら感想掲示板まで~


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