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No.30479の一覧
[0] 【第十四話投稿】Muvluv AL -Duties of Another World Heroes-[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[1] プロローグ[なっちょす](2012/07/16 02:08)
[2] 第一話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[3] 第二話[なっちょす](2012/07/16 02:10)
[4] 第三話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[5] 第四話[なっちょす](2012/07/16 02:21)
[6] 第五話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[7] 第六話[なっちょす](2012/07/16 02:13)
[8] 第七話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[9] 第八話[なっちょす](2012/07/16 02:16)
[10] 第九話[なっちょす](2012/07/16 02:15)
[11] 第十話[なっちょす](2012/07/16 02:20)
[12] 第十一話[なっちょす](2012/07/16 02:17)
[13] 第十二話[なっちょす](2012/07/16 02:18)
[14] 第十三話[なっちょす](2012/10/28 23:15)
[16] 第十四話[なっちょす](2014/09/10 01:21)
[17] キャラ設定[なっちょす](2012/10/28 23:18)
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[30479] 第十三話
Name: なっちょす◆19e4962c ID:54513dcc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/28 23:15
―国連軍・横浜基地・屋外廃墟演習場―

その猫は日課である餌探しをしていた

本来飼い猫であった彼女は、先のBETA侵攻により飼い主と離ればなれになり、彼女が住んでいた町・柊町に戻ってきていたのだ

運良く明星作戦の戦火の中を生き延びた彼女は、しばらくの間は兵士やBETAの死骸を食べることで命を食いつないだ
そして、近頃は稀にくる兵士から餌をもらうことで生き延びている

しかし、生物でいる以上は毎日栄養を摂らなければならない…
その為、兵士が来ない日はこうして一日中歩き回ってネズミ等の小動物や虫を探していたのだ

演習場を縄張りとしている彼女は、故に戦術機を見慣れていた

撃震・不知火・吹雪…
それぞれのエンジン音や駆動音・機影を全て把握し、近くを低空でフライパスしようが真隣に着地してこようが何されようが、既に慣れていた

慣れていた、そのはずだった…



彼女がある大通りを横切っていると、地面の小石がカタカタと揺れ始めた

「あぁ、またか」と思い、ふと顔を上げると一機の戦術機が目に入った

その風貌はかつて見た事のある機体に似ていた
しかし、大きく形が変わっていたソレは、猫の彼女には全くの別物に見えた

戦術機が彼女のいる方向を向き、そのツインアイの不気味な視線が彼女を見定める

…背筋に冷たいものを感じた

BETAを間近で見、そのBETAをせん滅する戦術機を間近で見、そしてそのBETAが人間や仲間を喰べるのを間近で見…
そんな地獄を実際に見て来た彼女は、恐怖などとうに忘れたと思っていた

しかし、現実はそうではなかった
現に忘れかけていたその恐怖が、ヒシヒシとその存在感を感じさせている

戦術機が近づく

彼女は一歩引き、そしてもう一歩、また一歩と足が続いてゆく

しかし、時速数百kmで接近してくる戦術機から逃れるわけでもなく、あっという間に目の前にまで接近されていた

けたたましい爆音とともに強烈な気流が押し寄せる
その風をもろに受けた彼女は、数m程飛ばされてしまった

…本能から、直ぐに所々痛む体を起こした

やがて自身に恐怖を抱かせた戦術機をもう一度一目見ようと、彼女はフライパスしていった方向を見る

既に点の様に小さくなっていた戦術機は、緩やかに上昇していた
ヴェイパーを引きながら太陽光を反射させるその白い機体は、彼女がかつて幼い飼い主に見せてもらった天使の絵にソックリだった

……


『どうタケル?
 飛鳶の乗り心地は』


管制室にいる宏一の声がタケルに問いかける


「最っ高だぜ!!」


タケルは、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供の様な声でソレに答える


「不知火じゃこんなにマイルドに動いてくれねぇよ」


『RCSのおかげだね。
 無理せずに各方面に瞬間推力を与えられるから、俊敏性とかが従来の物よりも高いんだ』


「それにこの加速…
 流石、苦労して入手したエンジンだけはあるな」


『エンジンは特に厳しかったからねぇ~
 最後の最後まで向こうは出し渋ってたし…』


「“代わりに推力は劣るが、イーグルのエンジンならいくらでも…”の一点張りだったしなぁ」


『まぁラプターのエンジンだからさ。
 機密的に渡したくなかったんでしょ』


「それを無理やり予備を含めて6組ももぎ取ったんだから、相当嫌われただろうなぁ…先生」


『だろうねぇ』


二人はつい先日まで行われていた取引を思い出す
そこで繰り広げられた夕呼の“獲物を追いこみ、弱らせ、最後に喰らいつく”という交渉法を思い出すと、二人はブルッと背筋を震わせた


((あれは殆ど脅迫だったもんなぁ))

宏一の手元のタイマーが鳴った


『タケル、全力飛行はそこまで。
 次は高機動飛行に移ってくれる?』


「OK、分かった。
 …さてと、RCSの本領を見せてもらいますか」


操縦桿を捻り、タケルは割り当てられた空域へと旋回していった



―十数分後―
――同基地・地下機密ハンガー――

白い飛鳶がガントリーに収まる
胸部の装甲が開き、そこからタケルの乗った管制ユニットが出て来た


「試験飛行、お疲れさん」


キャットウォークへと降りて来たタケルに、宏一が飲み物を投げる


「サンキュー
 いやぁ、こりゃホント良い機体だな」


タケルは飲み物をキャッチすると汗を拭いながらそれを飲んだ


「生産性が武御雷R型並みに度外視されてなきゃ、撃震の更新機として帝国軍にもアピールできたんだけどね~」


「ま、そんなもんさ。
 “良いものには裏がある”…だろ?」


「人の台詞を奪うなw
 …そういえば、さっき博士がウチらのこと呼んでたよ」


この言葉にタケルの動きが止まる
ゆっくりと飲み物を口から離すと、蒼白した顔で聞いた

「…大体何時頃の事?」


「一時間ほど前かな。
 あ、遅れるって旨は伝えてあるから心配いらないよ」


「そうか、良かった~
 先生、遅れるとコエーからなぁ」


ふぅ―と安堵するタケル


「ほら、それなら早く支度する!
 “タケルがノロノロしてました~”ってチクるぞ」


「そ、それだけは勘弁!!」


そう言うが早いか、タケルは走って更衣室へと向かっていった

……


「博士~来ましたよ~」


夕呼の部屋にタケルと宏一の二人が入る


「あら、なかなかに早かったわね。
 まだ後一時間くらいは来ないかと思ってたわ」


パソコンに向かいながら夕呼が言った


「それで俺らに用事ってのは…?」


「そうそう、その事なのだけど…
 社、お願い」


霞が二人に数枚の書類を渡し、夕呼がプロジェクターを起動させた


「…先生、これって」


タケルの不安そうな質問に、夕呼も真顔で答える


「そう、新種のBETAのシミュレーションデータよ。
 あんた達を呼んだのは、如月は実物との比較の為、白銀には実際にシミュレートしてもらう為よ」


「どうせ後でやるのだから、シミュレートは今は必要ないんじゃ…」


「勿論今じゃない。
 如月の確認と修正が済み次第、伊隅達とやってもらうわ」


早速か―と、タケルは軽く奥歯をかみしめる


「じゃあシミュレーターまで行って来ます。
 …どうせならタケルも一緒にやるか?」


「あぁ、そうさせてもらうぜ」


「…社を連れて行きなさい。
 随時その場で修正させるわ」


「了解」と述べ、三人はシミュレータールームへと向かった…

……


『…では、始めます』


霞が夕呼に渡されたデータでシミュレーターを起動させる
シミュレーター内の二人の角膜に投影されていた映像が、装備選択画面から一面真っ白な塩原へと変わった


「…ここは…雪原?」


異様なその風景に、タケルは顔をしかめながら呟く


「かつて海底だった塩原だよ。
 …懐かしいな」


宏一が神妙な表情で言う
その言葉の意味をタケルは問い詰めたかったが、シミュレーターの途中であることを思い出しその言葉を飲み込んだ


『移動震源を確認。
 距離3000、深度上昇中… 接敵まで180!』


「タケル、そろそろ来るよ!」


霞の報告にいち早く反応したのは宏一だった


「おいおいまだ早いだr…」

―ドォォォォォンッッッ―

「―!?」


タケルが台詞を言いきる直前、目の前に巨大な噴煙が衝撃と共に巻き上がった


「な、なんだありゃあ!?」


噴煙が収まり、そこに現れた母艦級…


「母艦級…
 中に入ってるのは一個師団、ないしはそれ以上って言われてた」


宏一の解説に背筋を震わせるタケル


「コイツが母艦級…」


“前の世界”で桜花作戦の後で見た戦闘記録を思い出したタケルも神妙な表情になる


「タマ…美琴…
 本当に良く頑張ったな…」


『…タケルさん』


そんなタケルの心境を知ってか、霞が心配そうな表情で見る
宏一も何も言わずに、ただじっと目を閉じていた


「スマン、もう大丈夫だ。
  …んでもって、宏一。
 アイツはどうやって倒すんだ?
 支援砲撃か?」


「無意味だね。
 アイツは向こうの世界で大和級の46センチ砲による集中砲火でも死ななかったからさ」


タケルが驚愕する


「大和級の46センチって、ちょ…おま」


―世界第二位の破壊力の艦載砲じゃねぇか!!

っと言いたかったが、言葉が続かない


「んなこと言われてもねぇ…
 実際にキズを負わせる程度しか意味が無かったんだから、しょうがないじゃん?」


「キズを負わせただけって…」


ハァァ―と重い溜息が宏一の耳に入った


「…でも、破壊できない訳でもないy
 「それを早く言え!!」
 ―でもかなり危険」


「…どういう意味でだ?」


「行きも帰りも時間勝負」


宏一の説明に、タケルは頭に?を浮かべる


「“前の世界”では、少佐の提案でアイツに“お土産”をプレゼントする事になったんだ。
 しかし、そのプレゼントを届けるにはBETA一個連隊という壁を突破し尚且つヤツが口を閉じる前に到着しなきゃならない。
 で、届けた後もプレゼントが開かれる前に壁を突破して急速離脱しなきゃならないって話」


「そのプレゼントって言うのは…何だ?」


「S-11」


「大層物騒なプレゼントだな…おい」


「そんなもんだろ~
 まぁ内側から破壊してしまえばOKって言う話だわな」


再度重い溜息が宏一の耳に入った


「楽な作業だよ。
 さ、行ってみよっか。
 丁度BETAも展開を終えたようだし」


宏一は手に装備した突撃砲で手招きする


「ヤツが口を閉じるまでは大体どのくらいだ?」


「………あ」


「おい?」


「…ごめん、カウントしたこと無かったわ」


「……お約束過ぎるぞ、それ」


「本当、ごめん!!」


戦術機ごと手を合わせて謝罪する宏一を見て、タケルは「こんなんでよく生き残れたな」と心底思った


「そういえば…
 社、光線級って基礎プログラムに入れた?」


『…いえ、入れてません』


「そっか~
 じゃ、入れちゃおっか」


タケルが固まる


『…わかりました。規模は?』


「通常のBETA連隊にいる数と同じくらいで。
 あまり密集させずに、重光線・光線級を適度にバラけさせて」


『はい。…できました』


「ありがとね~」


目の前で交わされる会話に漂白されかかっていたタケルが意識を取り戻す


「…よけいな事してくれたなぁ~
 このサディスティックマゾヒスト野郎」


「サディスティックマゾヒスト野郎って…おま…
 矛盾してるよ」


クククッという笑い声と共に宏一が答える


「わかっとるわ!!
 …ったく、ただでさえ最悪な条件に更に最悪な状況まで付け加えやがって」


「まぁまぁ、備えあれば憂い無しっていうじゃん。
 それにウチらが乗っているのは飛鳶だよ? …全く無理という状況ではないさ」


うっすらと笑みを浮かべる宏一に、タケルも「そうだったな」と笑みを浮かべた


「Ready set up!!」


宏一が叫ぶ


「…Ready!」

タケルが答えた


「「Go!!」」


二人の咆哮と共に、白と濃紺の飛鳶が目の前に広がるBETAに…そしてその背後の母艦級に向け吶喊していった

……

――side 水月――

昼食を終えた私達は、再度シミュレータールームに来ていた
午前に引き続き、XM3での隊全体の練度を引き上げる為だ

そして、シミュレータールームに来てみれば二機のシミュレーターが激しく動いている

まぁ、私たち以外でこのシミュレータールームには入れるのは限られているから誰が入っているのかはすぐにわかったけれど、問題はその後…

何故かは知らないけど、二人のシミュレーションがモニター出来ない

全く失礼しちゃうわね
二人だけで秘密の特訓てな訳?

まぁそんな事があったから一時的に注目していたわけなのだけど、私たちもすぐにシミュレーターの準備を始めた


「…にしても激しく動くわねぇ
 一体どんな操作したらあんなに動くのよ?」


乗り込む前に白銀達の休みなく激しく動き回るシミュレーターを見る

今更ながら、強化した理由が何となくわかったわ


「…本当激しく動くわ。
 酔わないのかねぇ…」

 
隣で同じくシミュレーターに乗り込もうとしていた碓氷大尉も、顔を半分ひきつらせながら言う
周りを見回してみれば…全員顔をひきつらせていた

伊隅大尉も苦笑いしていたのは意外だったけど



開けた土地でのBETA掃討は普通ならなかなかに困難な任務
けど、XM3を搭載した私達には、少し物足りない任務となってしまった

現に5000に及ぶBETAを一時間もかからずして片付けちゃったところだし


「…なんか呆気ないものになっちゃったわねぇ」


私達の実力が上がったのもあるだろうけど、それにしても楽になったものよね


『おや…?
 速瀬少尉はこんなものでは絶頂を迎えられないということですか?』


「む~な~か~
 『…と鳴海が言っていました』
 孝之!!
 『俺かよ!!』」


全く孝之はこれだから…
って、アレ、なんか違う気がする
…ま、いっか


『五分の休憩だ。
 休憩が済み次第、ハイヴ突入シミュレーションを行う』


伊隅大尉からの通信が入り、私はシミュレーターから出る

出てみると白銀と如月がベンチでグッタリとしていた
…珍しいわね


「アンタ達がシミュレーター程度でグロッキーになるなんて、珍しいわね」


「…あれはやった人にしかわからない辛さですよ…速瀬少尉」


白銀が横になった状態で言う


「ウチの前任基地で最も過酷だった任務を少々修正したものをやってみたんですけどね…
 二人だけっていうのはキツいです。
 まぁクリアしましたけど」


白銀の隣で壁に背を預けていた如月が言った

…へぇ~、如月の前任地ねぇ

そんな中、隔壁が開いて中から二本の飲み物を持ったウサギっ娘が出てきた

…ホントにウサギっ娘なんだってば!
耳だってあるし!
それにしてもこの娘、どっかで見たことある顔ねぇ…


「霞ちゃ~ん、久しぶり~!!」


碓氷大尉がウサギっ娘に飛び付いた

あ、そうだそうだ!社霞とか言ったわね
副司令の隣にいっつもくっついてたのを思い出したわ


「で、霞ちゃんは何してたの~?」


飲み物を死んでいる二人に渡し、碓氷大尉がいつの間にか抱え込んでいた社に聞いた

…本当、大尉は可愛いもの好きよね ~


「…タケルさんと宏一さんの手伝いをしていました」


「手伝い…?」


「はい。
 今回のシミュレーターの内容調整などを…」


あらま
中々やるわね、このウサギっ娘


「それで出来たの~?」


「はい…出来ました」


あ、少し笑っ…たのかしら?
それはそうと、シミュレーターは完成したのね!
なら、やるっきゃないでしょ!!


「如月!
 私達もやっていい!?」


「別にいいですよ~
 そのk…
 「伊隅大尉! やりましょう!!」
 「…あぁ別にいいが」
 「よっしゃぁ!」
 …話聞いて~」


よし、大尉の許可も得た!
如月が何か言ってた気がするけど…まぁ気にしないわ!!

早速私はシミュレーターに滑り込む
装備選択メニューでいつもの装備を選択してシミュレーターの起動を待った

やがて伊隅大尉や碓氷大尉、ほかのメンバーが待機状態になってることを示すマーカーがつく


『宏一の前任地かぁ~
 いったい何処なんだろうな?』


「知らないわよ、そんな事。
 ま、シミュレーターに反映されていることを期待しなさい」


孝之のボヤキに突っ込んでみる


『孝之君の知識量じゃあわからなかったりして』


『アハハハッ
 孝之お前、一本とられたなぁ』


遥…アンタ中々毒舌よね


『…全く、貴様等には緊張というものがないのか?』


『良いんじゃないですか、隊長?
 逆にガチガチに緊張されてても困りますからねぇ』


流石碓氷大尉!
よくわかってらっしゃる


『はい、皆さん準備は良いですか~?』


「とっくに済んでるわよ~」


早く早く~!
って、餌をねだる犬じゃないんだから…自重しなさい、私!


『…皆さん準備はOKみたいですね。では、作戦の概要を伝えます。
 作戦の種類は拠点防衛です。
 部隊は既に戦術機二個大隊が展開し、後方には自走式ロケット砲、自走砲、戦車及び対空戦車で編成された機甲部隊が一個師団待機、増援も待機しています―』


…へぇ~、随分と贅沢じゃない?


『―防衛対象は機甲部隊の後方100Km、地雷原等の防衛陣はありません。』


ちょっち近いわね…
だからこそ、この部隊規模なのだろうけど


『なお、可能な限り友軍の損害を出さないようにお願いします。
 …そうですね~各種60パーセント以上は生還させてほしいところです』


『60パーセント以上ですか…
 後方の機甲部隊はともかく、戦術機部隊が問題ですね~』


静香さんの言うとおり、戦術機部隊の60パーセント以上生還は難しい所ね
…でも、やってみせるわよ!


『…あ、最後にアドバイスを一つ。
 必ず部隊の最小単位は守って下さい。
 アドバイスは以上です、では、Good Luck!!』


如月が中々良い笑顔でサムズアップ
…なんかあやしいわね

そんな事を思っていると、視界に一面の白い平野が映った
正面には海面が見える…って事は海岸線かしら?
でもこの白い平野って一体…?


『…雪原? …いや、違うな。
 じゃあなんだ…?』


早速平が分析を始めた
まぁ…確かに雪原じゃないわね
外気温が高過ぎだわ


『CPより各部隊…
 BETA浮上まで、後120』


CPの画面にあのウサギっ娘が出た
成程、今回のCPはウサギってことね
了解~

そんな無駄な事を考えていると、目の前の海面からあの醜い物体がワンサカ出て来た


『オールヴァルキリーズ! 行くぞ!』


伊隅大尉の合図で全機が一斉に飛びかかってゆく…

あの二人がへたばる任務…
面白そうじゃない!!

巻き上がる感情に思わず舌舐めずりをしてしまった



早速上陸してきたBETAに向かって、後方の機甲部隊が砲撃を始める
幾多のロケットが中型種を地面ごと宙に巻き上げ、数多の砲弾が突撃種の甲殻を砕いてゆく


『…シミュレーターとはいえ、スゲーな、おい』


『私たちの任務に、いつもこれだけの後方支援部隊がいれば楽なのですけどねぇ』


静香さんの言うとおりよね

まだ着任してあまり時間はたってないけど、これまでに遂行した任務では必ずと言っていいほど支援が不足していた
だから、こんなに後方支援が受けられる如月の部隊が凄く気になそれはもう…嫉妬心を覚えるくらい?


『…支援砲撃終了、次弾装填完了まで10分です』


あれだけいたBETAが一瞬にして肉片になっていた

…でもそれも一瞬
またすぐに海中からワンサカと出てきた


『かかれぇ!!』


エンジンを吹かし、先頭の突撃級に切迫する

レクティルを接近してくる奴の脚に合わせ、トリガー
向こうの速度とこっちの速度の相対速度が相まって、撃った弾は見事に脚部を破壊した

崩れ落ち、後続の味方を巻き込む突撃級
そこにすかさず戦車砲の雨が降り注ぐ


「まったく、良いとこ取りばかりするわね!」


シミュレーターだから愚痴れるけど、実戦だとこれほど頼もしい支援は…無い
トドメ刺そうとして逆にヤラれるなんて…私には耐えられないわね!


『慎二!』


『あいよっ!』


気がつけば、孝之と平のコンビが要撃級の団体と遊んでいた
私も混ざろうかと思ったけど、ここは自重
その代わりに碓氷大尉のところに向かう


『お? 速瀬かぁ~
 ちょうどいいや、手伝って!』


「そのつもりです!」


そう言い放ちつつ、大尉の背後に迫っていた要撃級をハチの巣にする


『サンキュー』


合流後、互いの死角をカバーしつつ群がる戦車級やら要撃級を撃破してゆく
私の動きに大尉が合わせ、逆に大尉の動きに私が合わせたり…

昔はこんなんじゃ無かったなぁ~
いっつも単独で先行、暴れまくって皆が来るころには次の場所へ…
宗像に弄られるのも納得よね


『は~やせ、考え事かい?』


「え、あ、いえ! …何でも無いです」


おっとっと、ヤバいヤバい


『そっか。
 でも戦闘中に…ましてやこんな接近戦中に考え事とは、先輩感心しないなぁ~』


「スミマセン、大尉」


『分かれば良~し』


…ホント、大尉はいい人よね
憧れるわ

考え事しながらでも、私の手は止まらない
近寄ってきた要撃級に120mmをお見舞いし、傍の戦車級を切り裂く

白銀みたいに飛びまわって戦うスタイルも一応はできるけど、まだまだ…ね
それよりも敵をいなしながら屠るスタイルの方が今のところは性にあってるわ


『…良し、片付いたな。
 CP、敵の増援は感知できるか?』


『CPより各機ヴァルキリーワン、今のところ感知できません。
 …後方5km地点に補給コンテナがあるので、補給後待機してください』


『ヴァルキリーワン、了解。
 各員、聞こえたな!? 補給に戻るぞ』


『了解!!』×6

「了~解!」


思ったより呆気ないものね
弾薬も二割程度しか消耗していないし、推進剤だってたんまりと残っている
…まぁXM3の恩恵もあるのかしらね

それにしても、本当に呆気なさすぎる
こんなので、あの人間兵器(笑)の二人がへたばるのかしら?

私はそんな疑問を抱えつつ、機体に推進剤を補給し始めた




『…どういう事だ!?』


伊隅大尉の怒声が響く


『…どうやら敷設されていたソナー網に穴があったようです。
 出現まで300、予測出現場所は…機甲部隊の目の前です!』


眉を鋭く尖らせ報告する社

…状況が一変したのは補給が終わった直後
突如敷設された地中ソナーに巨大な反応が出た…それもソナー網のど真ん中

…つまり私達の目と鼻の先でという事

更に運の悪い事に、敵は私達の目の前では無く私達の後方、機甲部隊の目の前に出てくるという事だった

ただ一つだけ運が良かったといえば、敵が出てくるまで僅かに時間があるという事かしら?

ともかく私達は急いで予測地点に急行した
既に機甲部隊も後退し始めてる


『次のジャンプで予定地点だ!』


予定地点まであと500m程…
一回で済むわね

フゥ―と一息ついた途端、機体が激しく揺れた


「なになになにっ!?」


表示される『異常振動感知』の文字


『全機、そのまま動くなぁ!
 今確認す…』


伊隅大尉の声が不意に止まり、同時に振動が収まった


『な、何よあれ!!』


碓氷大尉の見る方向に、私を含む全員が向いた



「……何よ…何なのよ…何なのよこいつは!?」



私の視界に映るのは画面いっぱいの巨大なBETA…
円筒形で、直径は…目測で200m程度

…何なのよ、何なのよ!!
新種?ここで!? こんなところで?

私の頭は混乱でいっぱいだった
冷静に考えればこれはシミュレーターだってことがすぐにわかるけど、その時の私にはそんな事を考える暇は無かった


『ック…!
 全機、予定地点よりさらに1km後退するぞ! ボサっとするな!!』


大尉の怒声が私を正気に戻した

そうだ、今は一刻も早くこの場を離れなくては!

スロットルを踏み込み、全速力でその場を離脱する
ふと振り返ると、そのBETAの口が開き中から大量のBETAが排出されていた

―第十三話END―


次回予告

突如現れた未確認のBETA…
私達は怒涛の勢いで排出されるBETAになす術も無く、只後退していく
予想外の支援…そして、もう一つの振動反応…

私達は此処で本当の地獄を体験する

次回
【新種】
人類には、最早希望は無いという事なのだろうか…? (Cv.碓氷 沙恵)


後書き
皆さんお久しぶりです、なっちょすです
え~今回は非常に悩みました!
当初では違う内容だったのですが、何せ続かない…
という事で急遽十四話で書く予定だった内容を持ってきました
その為戦闘パートが分断されるという結果に…orz

け、けどさ!こっちの方が面白みがあっていいですよね!?(自画自賛)
「え、この後どうなっちゃうの~?」的な

…ハイ、スミマセン
自分の文章力の無さを呪うばかりです

さて、次回ですが、下手すると12月になりそうです
この後
学園祭→試験
とイベントが盛り沢山でして…
というか試験の間隔短すぎです
ひど過ぎです!児童虐待です!!これだからにx…(意味不明&強制終了


…ゴホン
では、何か誤字脱字や意味が不明、ないしは設定と違うで~という所などがありましたら、遠慮なく感想掲示板までお願いします!
ではまた!!


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