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No.33107の一覧
[0] 【チラ裏から】 優しい英雄[ナナシ](2013/10/12 01:03)
[1] 導入[ナナシ](2012/05/12 14:02)
[2] 一話[ナナシ](2012/05/13 12:00)
[3] 二話[ナナシ](2012/09/03 14:45)
[4] 三話[ナナシ](2012/09/03 14:49)
[5] 四話[ナナシ](2012/08/16 19:00)
[6] 五話[ナナシ](2012/06/23 15:14)
[7] 六話[ナナシ](2012/09/03 17:23)
[8] 七話[ナナシ](2012/09/28 19:31)
[9] 八話[ナナシ](2012/09/28 19:31)
[10] 実験的幕間劇 黒兎の眠れない夜[ナナシ](2012/11/07 02:45)
[11] 九話[ナナシ](2012/10/23 02:10)
[12] 十話[ナナシ](2012/11/07 02:48)
[13] 十一話[ナナシ](2012/12/30 19:08)
[14] 十二話[ナナシ](2013/02/22 17:30)
[15] 十三話[ナナシ](2013/04/05 02:10)
[16] 十四話[ナナシ](2013/06/06 01:43)
[17] 十五話[ナナシ](2013/06/06 01:41)
[18] 十六話[ナナシ](2013/10/17 18:12)
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[33107] 十一話
Name: ナナシ◆5731e3d3 ID:3c22942b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/30 19:08
社 霞は白銀の眠る寝台に腰かけていた。時間は太陽も登らぬ早朝。
彼女の白肌の右手はそっと白銀の頬をなぞり、首筋へと落ちていく。むず痒そうな顔をする白銀に気付かれぬよう、ゆっくりと弱弱しく。
そして変化していく白銀の顔を社は眺める。
彼女にとって無防備で作った表情を浮かべない夫の顔を堪能するのは、誰にも言えない密やかな楽しみとなっていた。
だから彼女の日課は起床時間前に起きて白銀の部屋にそっと潜り込むことだった。幾らか時が経ちそれらを味わい終えると、手を身体から離し、じっと白銀を見つめる。

「武さん」

社 霞にとって白銀 武とは自身にとっての何か? と問われたら、若干の恥じらいを持ちながら夫であると答えるだろう。あるいは隣に並び立ちたい人か。
それでは白銀 武にとって社 霞とは一体どんな存在かと言われた場合、彼女は明確な回答は持ち合わせていなかった。
以前の世界では戸籍上では確かに『夫婦』ではあった。しかし籍を入れる前後で二人の関係に変化はない。押しかけ結婚に等しかったそれは、白銀にとってどのように受け止められているかは社には謎だった。
彼にとっての帰る場所に、精神的な支えとなろうとはしていたが、白銀から暗い影が取れることは終ぞなかった。ともすれば白銀にとっての自分の立ち位置は何なのかとは霞にとってずっと抱え込む悩みであった。
ついていく決心はした。しかしそれは彼の背中を追うだけで、彼にとっては何の助けにもなっていないのではないか?
霞は白銀が幸せになって欲しいと願っていた。いや彼一人だけではない。周りの、かつて白銀を囲んでいた人物達と『一緒』にだ。
彼女の望みからすると今の白銀の行動は霞にとって受け入れがたいものが多々ある。

「貴方は何を考えているのでしょうね」

先程の声よりも強く、けれども起こさぬ程の声量。それは霞の問いただしたい気持ちと、躊躇わせる心が競り合って出た中途半端なものであった。
昨夜自分が何を言っていたのかを思い出し、霞はここで苦笑する。
ある程度以上の親しみを持つ者への能力行使を止めた社にとって、白銀の考えを知るには問いかけるしかない。それを理解しながらしなかった。これでよくぞ説教をしたものかと霞は笑うしかない。
霞は決めなくてはいけないと感じていた。聞き出すことだけではなく、これからのことを全てだ。目指す方向は決めてある。
しかしその行動がもしその握った手を払いのけることに繋がったら。そう考えるだけでも霞には身の凍る思いが沸き立つ。
自分を犠牲にし、他者を切り捨ててでもそれだけは堪え難かった。例え最終的に白銀の隣に立つ者が霞ではなくとも、白銀との関係を切ること、彼に切られることは許せなかった。
だからこそ今彼女に必要とされていることは対話だ。握りしめた愛しい手を離さないために彼との距離を縮めることを求められている。
もし摺合せに失敗したならば、決裂に繋がる可能性もあった。
そして自分が提案しようとする案の実現性。その白銀がしようとしていることからすれば、笑ってしまう程それは低い。だが彼の案では確実に彼は皆とは共に歩めない。

だからこそ霞は白銀に言いたかった。『もう一度皆さんと共に歩みませんか』と。

利己的で自己中心的な主張であることは百も承知だ。
BETA大戦勝利を掲げながら、幾人もの衛士、兵士を摩耗させた自分達が何をほざくのだと周りは罵倒するだろう。
けれどもかつての207の皆さんは人類のために、白銀さんのために全てを捧げたのだ。
彼はその思いを受け止め悩み、今も十数年もがいているのだ。誰がその願いを否定できようか。
もしそれが責められるべきものならば、その罪は選択肢の無かった彼らではなく、自分の意志で手助けする自分こそが最も責められるべきであった。
理性と感情が彼女を止めている。それと並行して理性と感情が動くべきだとも告げている。
その葛藤が昨夜の行動に繋がる。励ますとともに、いつでも引き返せるはずと念じて仕掛けた仕掛け。それが芽吹くかどうかはこれからの霞の行動次第であった。
どうするか。悩む。だが答えは出ない。彼女を満足させるものは何一つとして出てこない。心のどこかで先延ばしを望んでいる自分がいた。

「う、む」

気付けば白銀に触れる手に力が込められている。慌てて掌を彼から遠ざけた。
再び規則的な呼吸に戻る白銀に安堵すると、そっと霞は立ち上がる。また起こしかけても叶わない。時刻は起床時刻までには余裕がある。少し周りを歩こうと思い立つ。
静かに足音を立てずに立ち去ろうとする。

しかし一歩踏み出した時。
久しく感じたことの無い感情の流入を感じ取った。

「えあぅ」

思わず言葉が口から漏れで、踏み込んだ足から伝わる地面の感覚がこの上なく頼りない。姿勢を保てず片膝をついてしまった。
気持ちが悪い。喉からせりあがる物こそないが、吐いてしまいたい気分。
頭の中身を直接殴りつけられてかのような不快さ。断続的にじくじくと霞の脳内を痛みが暴れまわる。
通常の人では考えられないほどの純粋な感情が自身に向けられている。
これほどの捉えきれない量は、霞は純夏の時にしか感じたことが無かった。
しかし何故感じ取れているのか? 彼女は能力は使ってもいない。もし無意識の行使でもここまで強力に暴走したことなどなかった。
伝わってくる感情は鮮明ではなく、けれどもそれは自分に向けられたものであるとは分かった。そしてそれは決して柔らかいものでもなく明らかな負の感情。

「誰、なんです……かっ!」 

呼吸さえも苦しくなる中で、霞は虚空を睨む。
相手の素性も距離も分からない。くぐもった声をだすも無論返答はない。そこで突然の誰とも分からぬ敵意に霞は反抗を試みる。
悪意を向けてくる人間を野放しにするには、今は状況が悪すぎていたし、何よりこの事態は相手が彼女の能力を把握している可能性が高い。
位置を突き止め必要なら何かしらの処置が必要だ。
奥歯を強く噛みしめた。痛みに抵抗しようと身体に力をいれる。気を強く持ち、思考を明瞭にする様に努めた。
そしてこの感情の持ち主が誰かと、能力を使おうと意識を集中させようとする。だが

いなくなった?

突然現れ突然消えた。身体の疲れも忘れて霞は混乱する。遠ざかったわけでも、向ける感情を抑えたわけでもなく、文字通り消えた。
死んだのか? それも違うはず。ならば死ぬ時の感覚もこちらに伝わるはずだ。
霞の冷や汗をかいた背中に衣服が張り付いている。彼女の額にも数粒の汗が垂れていた。
そしていつまでもこのままではいけないことに気付く。
呼吸を整えながら思考を滑らかにするようにする。そして今度こそしっかりと立ち上がり、足早に白銀の部屋を飛び出す。目指すはおそらくこの基地で最も安全な場所である博士の執務室。
気が引けるが博士にこのことを報告し助けを仰がなくてはいけない。霞と武の存在を知る者が少ない以上、それを知る者は必然的に相手は相当厄介な人間になる。
放っておくわけにもできず、独力での解決なんて論外だ。
廊下を早足で駆けながら、白銀に声をかけなかったことを霞は今さらながら悔いた。それでも白銀なら大丈夫だと霞は思っていた。
そして執務室に向かう中で霞の心は何時の間にか鬱屈としたものになっていた。
なぜだが報告に行く自分の行動を、取り返しのつかないことをしに行くように感じていた。









乾いた音がグラウンドに木霊する。それに重量のあるものが地面を転がる物音も付随した。
転がっているのは彩峰であった。彼女の頬は腫れ、目元も内出血から普段の切れの良い眼つきが台無しになっていた。
身体中は土埃だらけで、息遣いは肩での呼吸を通り越し最早弱弱しい。その彼女の周りには同じ様な無残な格好の207の各々がいる。
もぞもぞと立ち上がろうとするも力が入らないようであり、上手く立ち上がれていない。満身創痍。今の彼女等の状態を表すとすれば、それが最も適した言葉であった。
それでも彼女達は諦めない。腹に力を籠め、自分の二本の足で立ち上がり、模造刃や刃の無いナイフを力一杯握りしめて『目標』へと全力で駆け出し向かう。
先頭は彩峰で、それに御剣と、少し後ろに榊が続く。しかし傷ついて体力の切れかけた彼女達の動きは平常時の半分にも過ぎない。そして珠瀬、鎧衣は未だ身を起こせていなかった。


「最初から変わらず馬鹿の一つ覚えの突貫。変化があると言えば貴様たちの手に武器があるということだけ。兵士でも衛士でもない貴様たちに戦術的行動は微塵すら期待していなかったが、何らかの工夫すらないとは嗤いを通り越して同情すらするぞ。
元来学生の本業は学習のはずなのだがな」

彼女達を向かい撃つ形で言葉を投げかけたのは、片手に模造刃を持った白銀であった。彼は横に一閃すると、刀の切っ先を地面へと突き刺す。
目立った怪我は皆無で、あるとすれば掠り傷程度。服の汚れも少なからずあるが、彼女達のものが移ったにすぎなかった。

「経験を生かすこともできずに時間を無為に過ごす。成すべきことを理解できずにひたすら物資を食いつぶす。もう一度言うがここは学生のための教育機関ではない」

淡々と、至極淡々と白銀は告げていく。 鈍っているとはいえ十分な速度を維持する彼女達を前にしても構えすらとらない。それに対し彩峰は咆哮ともとれる声を上げながら右手を振りぬき、白銀に殴りかかる。

「ああああぁ!」
「兵士は戦場へ。学生は学校へ。子供は家庭へだ。さて貴様達は学校と家庭どちらかな」

決して俊敏ではない、むしろ緩慢ともとれる速度で白銀は彩峰の右腕を掴み自分の方向へたぐり寄せる。そして速度ののった状態で来る彩峰の胴体部、鳩尾の部分に膝を持ってきた。結果、自らの速度で彩峰は急所に重い一撃を受けることになった。

「うぐぅっ」

腹の中身がひっくり返りそうな一撃で顔を歪める彩峰を白銀の右方へ蹴り倒す。右方からは榊が走り寄って来ているところだった。そして咄嗟に目の前に出てきた仲間にぶつかるまいと速度を緩める榊。白銀はそれを右拳で胴体を殴り飛ばす。そしてそれを御剣の前にと、同じ手法で三人を打ち倒した。

「だが少なくとも兵士ではない貴様達がここにいる道理などない。帰れ、貴様達の家に。がたがた震えている内に全てが終わってるだろうさ。別にそれが悪いと言うわけではない。なにせ貴様達は保護されるべき子供だ。ましてや徴兵免除を受けた貴様達だ。誰がそれを責める?」

見下ろしながら言う白銀の言葉はいっそ優しげでさえあった。しかしだからこそそれは207の彼女達を訓練生として見ていない証左でもある。
対して彼女等の反応がすぐさま示された。先程と同様にそれぞれがまた身体に鞭を打つ。筋肉が軋むのならばそれを叱咤し、意識が遠のくのであれば口の内側を噛みちぎってでも踏みとどまる。
端から眺めれば反骨心のある訓練生の微笑ましい、まさにあるべき姿と評するだろう。そびえ立つ壁を今は超えられずとも、いつかは超えてみせると意気込む若い衞士見習いの姿だ。
この光景に彼女達の明るい未来さえ垣間見る者さえいるかもしれない。だが彼女等当人からすれば全くもって違った。今の光景は絶望であり地獄であり自分達の絶対的な分岐点なのだ。次などない。

「まあ貴様達がそれを受け止められる知能が存在していないことなど、さすがの俺も把握している。そして10日にさえ満たない日数ではあるが引率した身として貴様達、
餓鬼共にある程度は愛着も出た。最後ぐらい気の済むまで付き合ってやろうと思えるぐらいには俺は寛大だ。だから安心して『悪足掻き』しろ」

そう次など彼女等には存在していなかった。








幾度顔が地に付いたのか、彩峰は地に附しながら考えこむ。視界は意識とは打って変わって鮮明であった。今も殴られ、そして蹴り飛ばされていく仲間が認識できていたし、彩峰が憎むあの男の足も見えていた。
立ち上がらなくては。立ち上がりあの上官に一撃を加えなければ。そうしなければ私達の未来が終わってしまう。彩峰は自分を叱り飛ばし身体を持ち上げる。
彼女達207部隊には今朝に突然通達されていた。上官である白銀は彼女達を一目見ると言ったのだ。

『さて無能な諸君。考えてみたがこれ以上貴様達に付き合うのは時間の浪費で意味が無い。学生のお遊びに付き合うのはやはり意味が無いようだ。全く、少しでも貴様達に期待した俺を笑い給え』

『しかし末期の老人の様に可能性の無い貴様達に期待させてしまった俺も悪い。よって試験をしよう。貴様達の無価値さを貴様達に刻み込めることで俺の行いの謝罪とする』

『試験は最初に貴様達がしたあの遊びだ。だが時間は一日。しかも俺に一撃加えれば合格だ。起点に立ち戻ることでこのくだらない関係を終わりにしようじゃないか』

あの最悪の出会いを思い出し、それを狂言であると笑う者はいなかった。白銀の後ろには神妙な顔つきの神宮司が控えており、彼女が立会人となることを彼女達に述べたのだ。
神宮司は厳しくも実直な教官として彼女達に知られており、その教官が携わるということは前回とは明らかに違うことを示していた。つまり本当に白銀は彼女達を除隊させようとしているのだ。
だから今自分の身体がどうなっていようが彩峰は動き続ける。次がないのだから身体の心配はしなかった。
その覚悟とは裏腹に身体に致命的な傷は無い。打撲や打ち身、地面を転がることによる掠り傷は数え切れないが骨折や多量の出血はしていなかった。
痛みはすれど身体は一応は動いた。問題があるとすれば疲労とこのぼんやりとした思考であった。
それは忌まわしいことに白銀という男の実力を何よりも表している。訓練兵とはいえ、5人に囲まれていても手加減をする余裕があるのだ。その実力は彩峰を軽く凌駕していた。
けれども彩峰は思う。

この男が有能であるはずがないと。

無能な者が上に立てば下の者を殺す。それは彩峰という女を動かす一番の行動原理となっていた。それは彼女の精神に刻みつけられているものであった。
無学な上官が無謀な作戦を立て前線の部下を殺し、実力もない蛮勇な上官が隣に付きそう部下を殺し、臆病で逃げる上官が捨て駒にする部下を殺すのだ。
だからこそ上に立つものは有能であるべきだ。勤勉で実力があり果敢な者こそが上に立つべきである。それは彩峰の中で絶対であった。
悲惨な結果を招く上官はいち早く取り除かれなければいけなかったし、結果を特に求められる軍事方面では特にそうだと受け止めていた。
そうでなければ彼女は納得ができなかった。したくなかったとも言い換えても良いかもしれない。
彼女の父親が貶められたのは無能であったからだとしか彼女には思えなかった。命令を無視し、仲間を半壊に追い込んだ無能であったからこそ彩峰中将は貶められたのだと。
諸外国からは味方殺しと罵られ、身内の帝国軍からは敵前逃亡と吐き捨てられ、最後は絞首刑になった彼女の父親は無能だったからこそ悪であったのだと。
例え強面であっても優しげに笑顔を彼女に浮かべた父であろうが、無骨で大きな手で彩峰を撫でた父であろうが、無能であるならば唾棄すべき上官なのだ。彼女の良い父でも無能だったのだ。
上半身を起き上がらせようとする。さっきまでよりも鋭い痛みが走った。

「あぐぅっ」

彩峰は白銀を有能だとは認めない。
中将という地位に上り詰め、朝鮮の大地で敗北するまでは成果を示した父が無能で、目の前でただ腕っ節と技能を見せただけの男を有能であるとは断じて認められなかった。
だからこそ自分の未来を切り開くためという目的と同時にあの男に一発入れないことには、彩峰は気がすまなかった。自分は衞士であり、白銀の判断は間違いであると知らしめて、白銀の節穴を、無能さを示さなければならなかった。
彼女が辺りを見渡せば同じ様に仲間が転がっていた。彼女達が起き上がれるかは定かではなかったが、構わないと思った。例え一人でもあの男の無能を暴くと。

「ああああぁ!」

ふらつく身体に活を入れ白銀に突撃する。右手で顔面を狙い、それが駄目ならばいつでも掴みかかって捻じ伏せてやらんとする。突進する中で白銀が何事かを言ったが耳には入らなかった。
一撃を、あいつに一撃を食らわすのだ。彼女の頭の中はそれで満たされていた。しかし一撃は届かない。

「うぐぅっ」

馬鹿にしたような緩い動きで容易く彼女の攻撃は流され、お返しとばかりに鳩尾に一撃を食らわされて地面に転がされる。
戦闘行動をとるには死に体とも言える身体に入った強烈な衝撃であった。ただでさえぼやけた意識が、完全に失われるところであった。もはや痛みすら感じないほどまで追い込まれている。
しかしぼやけていようと彼女の思考は回っていた。どうするかと考える。ナイフが折れたのならば殴り、腕の骨が折れたのならば噛み付けば良いとまで思える気概はあったが、それでもあの上官は倒せないだろう。
現状を考察すれば彼女ではどうすることもできないと導き出せるだろう。それでも彩峰はやらなければならなかった。自分の価値と、男の無能さを表さなければならない。
だが答えは出なかった。ならばと彼女はもう一度立ち上がろうとする。一回で駄目ならば百回。それでも駄目ならばできるまで。そう思い立つ。


そして駆け出そうとする中、不思議に後ろにいた御剣の声が届いた。


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