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No.35125の一覧
[0] Muv-Luv dark night Fes (オリ主)[シギ](2012/11/26 21:03)
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[79] log.divination Log 7[シギ](2013/04/20 02:22)
[80] log.66[シギ](2014/03/16 16:51)
[81] log.67[シギ](2013/04/20 02:52)
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[83] Log.Extra log5[シギ](2013/04/20 04:03)
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[35125] log.63
Name: シギ◆145e19f4 ID:85ef0e5b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/15 20:49
1999年2月12日


 仙台の基地ではシミュレーションルームの稼働率が他の基地よりも高い状況になっていた。その原因は烏丸と五月女が行っていたシミュレーションである。難易度は下がるがbetaの耐久値と移動能力など3倍の仕様でデータを筐体に入れて携帯端末が無い状態でもした。すると、毎日のように長い列が出来て訓練場は閑散としていた。ちなみに、現段階でも烏丸と五月女の脱出までを完遂させた人はいない。この理由としては二人の鉄騎士に積んでいる携帯端末の性能が原因だった。現段階のメモリとCPUでは簡単に複雑な動きを烏丸や五月女以上にできないからである。ただ、反応路到着は一日一人ぐらいでるようになっていた。

 烏丸は実機訓練をしないで大丈夫かと思ったが上の人間は烏丸と五月女の映像を見た瞬間にシミュレーション重視の訓練に移行させた。

 また、この映像を見せられた巌谷はまた烏丸君かと思いながら驚きもせずに夏に行う作戦の為に烏丸に会いに着ていた。

 風神22中隊のハンガーで待っていると2機の鉄騎士がやってくる。1機は歌鶫、もう一機は烏丸の乗る名の無い鉄騎士である。

 烏丸は巌谷に気が付くとハンガーの手前で鉄騎士を止めて降りる。

「こんにちは、巌谷さん」

 イヴが挨拶する。

「こんにちは、イヴ君」

「今日は、エルザは一緒じゃないんだな」

「そうだ。烏丸君。実は君に早急に伝えたい事があるんだ」

「なんだ?」

「来ればわかる」

「わかった」

 烏丸は巌谷の案内で会議室に案内される。

 会議室には国連軍の制服を着た女の人がいて、烏丸に対して
「こんにちは、私は国連軍所属イリーナ・ピアティフ中尉です。お初目かかれて光栄です。烏丸軍曹」
と挨拶する。

「烏丸 奈之だ」

「烏丸君、ピアティフ中尉は君の北九州の防衛の実績を評価して夏に行う横浜ハイヴ攻略の為に君にアドバイスを求めにきたそうだ。」

 初めは国連軍が直接自分に何だろうと思った巌谷だが、夏に行う作戦で烏丸に直接会う方法を模索して巌谷にたどり着いてきた。

 話を聞けば今年の夏に行う明星作戦によるアドバイスを烏丸に聞きたいと言う。

 ピアティフは烏丸に作戦概要の資料を見せて説明を行う。

 資料を読んでいて烏丸はある質問を投げかけた。

「このハイヴとかに先行して突入するグループのヴォールグ・データのシミュレーションログが見たい」

 資料を読むなりすぐに尋ねてきた。

「申し訳ありません。それに関してはお見せできません。ですが、精鋭部隊が突入する予定です」

「権限から観覧不可ということか。その部隊の詳細も書いていないし、詳しい詳細も書いてない」

「はい、申し訳ないですが。その通りです」

「…わかった。ちなみに、国連軍ということは多国籍軍ということか。あんまり、詳しくないんだ」

「はい、そうです」

「故郷は何処なんだ」

「…一応…ポーランドです」

「そうか。なら、こっちのほうがいいな」

 烏丸はピアティフに合わせてポーランド語でこう言う。

「作戦の内容はわかった。ただ、できれば私も突入作戦に参加したい」

 すると、ピアティフは烏丸がほぼ完璧なポーランド語を話すので驚く。

「何処で覚えられたのですか」

 一応、ポーランド語で返す。

「戦うのに必要だからな。自然と覚えたんだ」

「…」

 巌谷は烏丸がポーランド語を話しているのは推論からわかるが何を言っているかさっぱりだった。英語に関して様々な交渉で必要になるが、さすがにポーランド語はわからない。

「とりあえず、話を進めよう。目的は横浜の空の者達の住居の破壊と本州奪還だな?」

 烏丸はポーランド語でピアティフと話し続ける。

「はい、そうです」

「なら、横浜の空の者達の住居の心臓を停止できれば拠点が停止状態になると思う。拠点が停止したら制圧したに等しい。だから、その後は空の者達を殲滅すれば本州は奪還できる」

「なるほど。ちなみに、空の者達とは?」

「えっと、betaの別の呼び名で私個人の呼び方だ」

「なるほど、理解しました」

「それと、可能なら横浜の空の者達の住居の心臓室にある心臓の停止を私にやらせてほしい」

 ピアティフはまさかと思いながらも、香月が思ったとおりに話が進んだ事に驚いた。

「突入部隊が入る前に私が先行する。停止後は急いで脱出。その後に突入部隊に制圧をしてほしい」

「わかりました。ですが、条件があります」

「なんだ?」

「横浜のハイヴを制圧後は国連の管理下に置く事です」

「…」

「もし、そちらが条件を飲んでいただければ、国連軍はあなたに必要な物資などの支援を惜しみなくします」

「管理下にする理由は?」

「申し訳ありません。機密事項です」

 烏丸はピアティフが多くは知らされてないと判断する。烏丸は国連が空の者達の心臓を研究に使いたいのだろと考えた。戦術機にも役立つ新素材の生産に心臓の一部が欲しい。それはこっそりと回収できるし、この取引の損得を考えるなら十分である。

「巌谷に説明してくれないか。私だとうまく話せないから」

 烏丸の願いにピアティフは日本語で丁寧に巌谷に説明する。

 説明を聞いた巌谷も複雑な顔を見せる。

「悪いが、席を外してもらいたいのだが。いいだろうか。烏丸君と相談したいのだ」

「かしこまりました」

 ピアティフはそう言うと連絡先を伝えて会議室から出る。

 烏丸と巌谷の二人になって巌谷は

「どうする、烏丸君」

「日本の安全確保の点を考えるな十分だ。けれど、国連は心臓の研究サンプルが欲しのかもしれない」

「確かに無理もない。実際、国連が主体の作戦だ。ただ、思惑を感じさせる取引だな」

「…確かに、書類の概要を見ると普通の作戦だけど何か裏がありそうで怖いな。本当の目的は何だろう。いや、もう言っている。お
そらく、空の者達の住居や心臓、様々な研究サンプルを入手するのが最大の目的だ」

「確かに、今後を考えればこの世界では空の者達に関して完全に知ったわけでない。多少私達は普通の人達よりも多く知っていますが、記憶の整合性が取れてない状況です」

 イヴは落ち着いた声で言う。

「前向きに考えればbetaに対しての決定打が見つかる可能性がある」

「巌谷さん、私もそう考えます」

「悪い方向だと、研究結果を独占。今後の政治利用か。問題ないな」
 烏丸もイヴと同じように落ち着いた声で言う。

「そうですね」

「どうしてだい?」
 巌谷は国連が反応路を手に入れて問題ない理由が腑に落ちなくて烏丸に尋ねる。。 

それに対して、烏丸はこう説明する。
「ある意味、国連軍が研究で得られた情報は私達が知っている内容だということさ。多少、前の世界とは違った理論で新しい物を生み出すかもしれない。けれど、独占できない。ある意味で私とイヴ、あんたも知っているんだ」

 巌谷はなるほどという顔をする。
「確かに君が前に言っていた心臓からの技術の入手ができない点を除けば我々の方が得る利益は大きいと見ることができる」

「そう考えられます。もし、条件を受け入れれば支援を行ってくれると言っていました。支援の内容にもよりますが、必要な物資を入手できるかもしれません。これをご覧ください」
 イヴはホログラムを映し出して横浜ハイヴの入り口まで輸送する為の飛行船を映し出す。
「これの製作には現段階では人材、資金、物資面で不可能が現状です。もし、この製作を可能になるなら、今後の作戦に非常に有効となります。ただし、これには大きな問題があります。現段階で安全性の保障ができません。また、爆撃としての使用は不可能に近い状態です。理由は爆撃に必要な爆弾を詰めないのが現状です。出来たとしても武装させたくても鉄騎士などを乗せる場合、大した武装が施せないのが実情です」

 一応、武装案が表示される。

「また、現段階ですと今から作らないと間に合いません。早急に製作する必要があります」

「なるほど。それなら、話は早いな」

 巌谷は烏丸のほうを見る。

「私はこの案に乗る。烏丸君はどうする」

「口の堅い人間と物資、資金などの要求をする。風神22中隊の整備班に良いパーツを一緒に作りたい。それと風神22中隊に新しい武器を支給できないだろうか」

「どいう事だ」

「これだ」

 映し出したのは肩に背負って撃つグレネードランチャーだった。

「面制圧面に関してミサイルがあるらしいが、大目種に落とされる可能性がある。でも、使い道はある。上空に飛ばして大目種がいないかの確認。あとは単純に面制圧に使う兵器だ。支援砲撃が得られない部隊に役立つと思う」

「なるほど、メインの武装として使えないが一時しのぎとして使えそうだ」

「この機会を利用して戦術機に武装関連開発の資金、資材を貰えるだけ貰う」

「ふむ、これに関しては私が受け持とう。国連軍から資金、物資援助を受けて私が作る。悪用されない為にね」

「ありがとう」

 そして、烏丸は巌谷にお願いしてピアティフに条件を受け入れることを承諾。即座に物資と人材、資金の要求を行った。多少、無茶な要求を行ったが、すぐに上の人と連絡を取りに行くがあっさりと承諾。契約が成立した。詳しい段取りは後日になったが、烏丸が要求した製作物はすぐに取り掛かってくれるそうだった。

 ただ、この裏に烏丸と巌谷、イヴは香月が絡んでいた事を知らない。
 





 無事に交渉が成立した後、ピアティフは香月に報告をする。
 香月は自分の描いた通りの結果に満足した。

「報告書は製作しない事。なお、これは一切他言不要。最重要機密にしてちょうだい」

「わかりました」

 ピアティフはそう言うと部屋から出る。

 一方、まずい合成コーヒーを一口飲んで今後の案を考える。
まず、烏丸がハイヴを攻略できても攻略しなくても問題はない。香月の最大の目当てはレーザーを無力化できる装置である。ただ、烏丸が無事にハイヴの反応路を停止させて生還したら、彼女は英雄にでもなるだろうと思った。

 でも、条件の一つには烏丸の存在の隠蔽である。先行した部隊の所属、名前などの秘匿である。これに関しては理に適っているし、ありがたい。彼女が表に出れば出るほど彼女を欲するのは目に見えている。だから、この交渉自体はある意味で非公式に近い物である。これが出来るのは自分に大きな権限があるからだ。

「お手並み拝見ね」

 香月はパソコンに写る鉄騎士の戦闘映像を見ながら呟いた。






 1999年2月20日




 島崎はある悩みを抱えていた。それは五月女の事である。現段階、シミュレーターの訓練を見ていると風神22中隊にいるよりも烏丸の部下にした方が良いのではないと思っている。

 これに関して佐々木に相談すると佐々木は良い考えだと賛同してくれた。実際、五月女の実力は戦術機で操縦に関しては誰にも適わない。戦闘関連は近接では島崎や廿六木、和宮、遠距離なら平土、八角が強く佐々木は上手にまとめている。ただ、五月女に関しては遊撃が完全に主体で実際に部隊は五月女の速度に追いつく事ができない。

 そう考えると同じ鉄騎士に乗る烏丸と一緒に行動すれば安全になると思った。

 結果、島崎は決意した。

 五月女を烏丸の部下にする事を決意した。人事異動の申請を行う。すると、あっさりと申請が通る。

 結果、五月女の下に異動命令の書類が届いていた。

「…た、隊長」

 五月女の手が震えていた。

「見ての通りだ。頑張るんだぞ」

「は、はい」

 目には大粒の涙をためながら頷いた。

「泣くなって、ほら、あの憧れの烏丸少佐の下で働けるんだ。喜べって」

 和宮がぽんぽんと五月女の頭を撫でながら言う。さすがの廿六木も和宮には文句は言わない。

「島崎中隊長。この時期に異動の申請がよく通りましたね」

 佐々木はこの申請があっさり通ったのが不思議だった。

「それに関してだが、烏丸少佐に部下がいなかったので、補佐役を探していたそうだ」

「なるほど」

 佐々木はまさか巌谷中佐がと思った。まさかと思うが、点にすぎない兵士を少し異動させても大きな問題にはならない。でも、佐々木の考えは正解だった。

 早速、風神22中隊や整備班の人達で烏丸がいるハンガーに行く事にした。

 すると、ハンガーには巌谷と烏丸が会話していた。

「実は君に部下ができる事になった」

「…」

 烏丸は無表情で巌谷を見る。烏丸はそんな話は聞いてないぞと思いながらも巌谷の話を聞く。

「聞いてくれ、偶然にも君が知っている部隊が異動の申請をしていたので、私のほうからもお願いしたのだよ」

「誰なんだ」

「すぐにわかる。君がよく知っている人だよ」

 巌谷がそう言うと風神22中隊と風神22中隊の担当する整備班がハンガーにぞろぞろと入ってくる。

「…」

 何が起きたなんだと烏丸は思う。

「巌谷、何が起きたんだ。それに五月女、何で泣いているんだ」

「えっと、その」

 烏丸もイヴも現状を理解できずにいた。烏丸に関しては周囲を見回して本当に何が起きたんだと悩む。

「島崎大尉か。君が出した申請を偶然見たよ。いや、見事なタイミングだ」

 巌谷は島崎を褒める。

「いえ、真に恐縮であります」

 島崎は巌谷に敬礼をする。

「ははは、そんなに気にしないでくれ」

 佐々木はなるほどなと謎が氷解してすっきりする。

「ほら、泣いていても始まらないよ」

 七条が五月女の背中を優しく押す。

「うっ、ぐす、はい」

 五月女は烏丸の前に立って敬礼をする。

「本日を持って9000、五月女 瑞穂。烏丸 奈之軍曹の指揮下に入ります」

 烏丸は反応に困り果てる。でも、目の前の泣いている早乙女に対してどうすればいいのかもわからない。

「五月女さん、よろしくお願いします」

 そこにイヴが助け舟を出した。

「はい、よろしくお願いします」

 必死に涙を拭きながら言う。ある意味、許されない事であるが、この場にいる人間はそれを許した。

 でも、烏丸は五月女が泣いていることも問題だが、疑問に思うことがあり、
「風神22中隊、11人なるけど、大丈夫なのか」
と尋ねる。

 その返答に巌谷が
「大丈夫だ。偶然にも解体された部隊で配属先が決まらない人がいたんだ」
と言う。

「もしかして、今日、一緒にきた稲餅か」

「ご名答」

 丁度、稲餅はとなりハンガーから出てくる。

 それは何処かの映画のワンシーンのような出方だった。

「稲餅 穣中佐。本日9004 風神22中隊の指揮下に入ります」

「稲餅中佐に敬礼」

 一応、上官なので島崎は号令をかける。

「まぁまぁ、止してくれ。私はMIAとかで中佐になっただけだ。それから、言いそびれたが臨時中尉だ。だから、私に気を使わないでくれ。て、あ、申し訳ありません。島崎大尉」

 稲餅は慌てて言葉遣いを直して島崎に謝る。

「大丈夫です、稲餅中尉」

「あまり、気を使わないでください。むしろ、苦手なんで」

 稲餅らしい返事の仕方をする。

「ふむ、それでは早速訓練を行おう。現在、私達は最近導入されたハイヴの攻略シミュレーションを行っている」

「はい、中隊長」

「それで、この基地内で成功させた者は烏丸少佐と五月女少尉だけである。私達としては是非、誰よりも早く成功したいのだ」

「了解、中隊長。是非、クリアしましょう」

「よし、風神22中隊。シミュレーションルームに突撃だ」

 風神22中隊はやる気に満ちた声と共にシミュレータールームへと向っていった。

「…」
「…」

 その後、整備班は稲餅の戦術機の整備の為、風神22中隊のハンガーへ行く。そして、烏丸のハンガーに残った烏丸、イヴ、五月女、巌谷はというと…・。

「烏丸君。今後の事を考えると部隊名が必要だと思う。何かあるかね」

「101装甲騎兵部隊」

 部隊名などを決めていた。

「確か、烏丸君が前にいた部隊だね」

「そうだ」

「ふむ、書類手続きは私が行おう」

「たのむ」

 烏丸はそう言うと五月女の方を向く。

 泣き止んでいたが、どうしようかと烏丸は悩んでいた。

 でも、ある考えが浮かんだ。

「五月女、夏に行われる横浜の空の者達の住居に私は一人で行く。でも、お前も行くか」
「えっ」

 五月女はいきなりの事で驚く。

「…どうする。遅かれ早かれ、誰かがやるんだ。一緒に行くか行かないかだ。ただ、一応は極秘事項にした。だから、参加して成功しても自分の名前が表舞台には出ない。名誉も栄光も無い」

 五月女は少しだけ悩んだ。名誉や栄光はどうでも良い。ただ、自由に飛べる空ができるならと思った。青い空を自由に飛べなくなるのは嫌だ。もし、それを自分の手で行えるのならばと思ったら自然と五月女の決意は決まっていた。

「…私もいきます。烏丸少佐」

「諒解。それから、私は少佐じゃない。正直、烏丸でいい」

「…」

「えっと…」

「五月女さん。ここでは階級は関係ないとお考えください」

「えっと、はい。イヴさん」

 五月女はここから新しい生活が始まると思った。

 その先に何があるかわからない。でも、きっといい事がある明日になるような気がした。








 1998年3月2日

 風神22中隊に新しい武器が届く。肩に装着する武器でショルダーグレーネードという名前で正式名称はSGR-99(ショルダーグレネードランチャー99)という。ともかく、見たことない武装が配給されて整備班は嬉しそうだった。

 その一方で使った事のない武器を使うことに対して風神22中隊の中には不安に思う人は何人かいた。

 ただ、和宮とか鈴城は能天気だった。

「すげぇぇっぇえ、なんだ、あれ」
 和宮はハイテンションになっていた。

「何あれ、すごくね」
 鈴城は見ほれていた。

「落ち着け、変態」
 廿六木は和宮の頭を叩く。

「いて、何だよ」

「何で、新武器来るのよ。ある意味実験台よ実験台」

「確かに、普通ならそうかもしれない。でも、私達に新武器。まさかと思うけど、烏丸少佐が考えた武器かもしれない」
 佐々木は新武器を見ながら言う。

「じゃあ、これは烏丸少佐のプレゼントということ?」

「そうなると思う」

 佐々木は整備班の一人に話しかけて新しい武器の資料がないか尋ねる。

 すると、整備班が資料を渡してくれる。

 佐々木は必要な項目だけ呼んでいくと、廿六木に向ってこう言う。

「これ、烏丸少佐のプレゼントだわ」

「うそ、本当に」

「でも、廿六木さんや和宮くんには縁の無い物ね。私や常磐が使う武器ね」

「どういうこと?」

「あれは肩に背負う武器なの。だから、機動力が落ちるけど面制圧を想定して作られている。また、上空に打ち上げて光線級の危険を確認できるように作られた物らしいの。しかも、烏丸少佐自らテストしたらしいわ」

「…えっ」

「資料によると、間引き作戦に参加してテスト運用したみたいなの。ただ…」

「ただ…何よ」

「有効性の確認をしたのだけれど、孤立した部隊を助けて撃震を大破させたみたい」

「…」

 佐々木と廿六木は烏丸少佐らしいねと思った。なぜなら、シミュレーションでよく戦術機の限界まで使う。ほぼ、使い捨て前提である。だから、実戦でたら戦術機が使い物になって戻ってくるのかなと思ったら、見事に大破させていたからだった。






1999年3月21日 千葉県成田 飛行機工場


 私とイヴ、五月女で千葉県成田にある飛行機工場に来ていた。

 何でも特例的に口の堅い人材と工場の一角を貸してくれる事になった。飛行機の設計図を書き出して、私はコアの部分を作る。大きさ的には鉄騎士を3機積めるように設計している。今までとは違う概念の物に戸惑っていたが、すぐに興味を示して作ってくれた。飛行船の形だが、ガスを一切使用しない船を空に浮かす物だからだ。しかも、海に着陸も想定した者だ。飛行機というより、飛行船のほうがしっくりするのはこの為である。一応、翼やプロペラはつけるが。

「…」

 火花を散らしながら溶接作業。ゴーグルで目を保護しながら、ある装置を作る。

 その作業に新素材も使用する。そういえば、そろそろ新素材の名前を考えるべきだと思いながらも考えていなかった。

 外郭が完成しても中を完成しないと意味がない。私は細かい指示は現場の人に任して何を作るかの指示程度だけである。

 一応、技術研究をさせてくれという要求が来た。特に隠すつもりもない。また、安定性の高い物を作れるなら作って欲しいので、風神22中隊の燕や企業の人間が来ていた。

 ただ、燕の存在は大きかった。燕は単瀬に整備班の指揮を任して烏丸を手伝いに来てくれた。

「よし、終わり。そっちはどうだ?」

「ああ、こっちの溶接も終わったよ」

 燕は完全にサポートとして働いている。

「よし、これとこれを組み合わせて実験だ」

「了解、溶接を手伝うよ」

「頼む」

 私と燕は二つのパーツの溶接を開始する。

 作業としては特別な肯定は少ない。電子機器などに関して何とか間に合っている。表示部分が古臭いが中身は十分だ。

 溶接が完了すればテストを行う。パソコンを5台と装置を繋げてテストを行う。

 私が
「テストをする」
と言うと燕は一目散に逃げ出す。他の人も顔色を変えて逃げ出す。私は周囲に人がいない事を確認するとボタンを押す。
すると装置からきゅぃいいいんというノイズ音が鳴る。

 パソコンのモニターを見ると安定した数値を…取っていない。

「!」

 私は即座にボタンを押してストップボタンを押すが暴走して止まらない。

 咄嗟にジェネレーターの接続ケーブルを折畳み式の斧で叩き斬る。

 ばんという音と火花が飛び散ってショートして体がびりびりして吹き飛ぶ。

 ぎゅぃぎぎいぎぎという音がした。

「…」

 もう駄目かなと思った。その瞬間に装置が暴走して装置を中心に級退場に広がる感じに透明感のある何かがわっと広がる。

 それに押されてパソコンが吹き飛ぶ。また、私も一緒に吹き飛んだ。

「…」

 硬い地面に体を打ち付けて痛い。体を起こすと装置の暴走は止まっていた。

 体を起こすと周囲には誰もいない。もはや、暴走が日常的なので逃げる事がデフォルトになっている。

 装置を見ると亀裂が入って作り直さないといけない部分があった。ある程度のパーツは完成形にしているが、全てを組み合わせると思うように完成しない。

 上半身だけ起こして携帯端末を操作してホログラムを表示させて暴走の原因を探る。

 燕は私に歩み寄り
「また、だめか」
と言いながらホログラムを見て原因を探る。

 またかと周囲は思うかもしれないが、何回も同じ事を繰り返しているから仕方がない。技術研究者や企業の人は壁で隠れて安全か、もう大丈夫なのかという顔をして見ていた。

 無理もない。設計図があっても技術面では前の世界と比べると遅れている点もある。戦争関連の発達はすごいが、それ以外は弱い。故にこの装置を作るにも技術が確立されないので作れない。

 ただ、装置が完成しても利用価値の点では要人の輸送程度だろう。武装関連は殆ど期待できない。

 何せ、装置の性質の問題と大きさと飛行船の大きさの比率割合の関係で今のところは武装をつけても着陸地点の確保が限界だ。

 さらに生産コストはある意味で度外視している。貴重な資材を駄目にしている。それでも、私に資金を出して、さらに私を少佐の階級を再びあげるという事は期待されているのだろう。

 ただ、一つだけ大きな問題が存在した。動力源だった。

 現在の動力源だと燃料とジェネレーターの二つを組み合わせてだ。さらに装置起動となると不安な部分が残っている。

「…」

 問題の解決策はあるのだが、これをすると量産面では1年に3機作れたらいいのではないかと思う。

 つまり、EFを繋いで動力源とするわけである。EFのエネルギー効率は現段階では私の鉄騎士、五月女の歌鶫と比べて格段に性能がいい。今からEFと同じジェネレーターを作るにも飛行船に乗せる物を1から作ると4ヶ月かかる。

 結果的に無理だ。ただ、beta素材でも貴重な素材を使わずに作る方法があるのと、大型になるが定員4人の飛行機ができるだろう。ただし、武装品を載せる余裕のない物にはなるが。

 ともあれ、これ以上の製作は無理だと判断、装置の作成を止める。

 栄養剤を補給、水分補給をすると五月女を呼んで工場に運んだ自分達の鉄騎士に乗る。

 鉄騎士は動かさないが訓練である。振動などは無いが携帯端末を利用すればシミュレーションは行える。

 私も五月女も作戦までに成功確立を上げる事が重要だった。失敗すれば死ぬ事もある。最低でも失敗しても生き残れるようにしなければいけない。

 今日は高度500メートルからの降下後の戦闘訓練を行う。二人だとすぐに倒されるので大量の両機を連れて行く。いわば、前世界に私が体験したミッションをやるわけである。サイズはこの世界のサイズに合わせて乱戦を経験してもらう。

 飛行船から強制的に放り出された後に光線を避けて、有利な場所に着陸が出来るかが大きなポイントとなる。

 ただ、五月女の場合は空を自由に飛べる鉄騎士という利点があるので着陸に関しては私よりも有利ともいえる。

 互いに違う飛行船から始まって、まずは合流である。

 敵の多いところを進むべきか、進まないべきかの判断が重要である。また、戦車部隊や鉄騎士、戦術機部隊と状況を見て連携を取る必要もある。

 闇雲に突き進めば孤立して倒されるだけである。決して鉄騎士は強くない。地形、支援などを駆使して最大限の力が発揮できる。

 非現実の戦いであっても、その世界では何千と言う死が生まれている。私は生きようと力尽きた鉄騎士から入手したサブマシンガンを拾って応戦する。イヴの落ち着いた声が耳に響く度に安らぎすらを感じる。

 ミッションが無事に終われば私は生きていると感じる。死んでいない。

「…」

 普通の人なら人は生まれてくる事、死ぬ事を感じられる。でも、私の体は普通の人のように死を感じられない。それは時で死なない事を意味しているからだ。でも、私は一度だけ経験している。イヴとの戦いで私は死んでいる。

 少しだけイヴの気持ちがわかる気がする。必死に生きて死んで魂を燃やして生きていく人が美しく見えるのが。

 でも、燃え尽きない魂があるのなら私は何時までも燃えていても悪くないと思った。










 1999年3月26日

 アナザーサイド


 難航する飛行船の製作。まず、この飛行船のコアと言える物が完成していんかった。例え、外装が出来ても製作工程を考えるなら中身が伴う必要がある。その製作は難航していた。何がいけないと烏丸と燕は原因を探る。

 その一方で何度も爆発して失敗する烏丸に救世主とも呼ばれる物が届く。

 エルザが作った試作CPUである。現在製作している工場の機械を使ったまま改良方法を考えて作った物だった。

 フィッチ、デコード、実行の流れて行われるCPU。エルザは現在のPCでの性能の低さに苦労していた。与えられたノートパソコンだと処理速度が遅いのが原因だった。結果的にエルザは仮想世界で覚えた技術を利用して自作でパソコンを作る事にした。それでも、パソコンのCPUやメモリの性能不足で処理が間に合わない。なるべく、改良を加えて軽くして、改良を繰り返す。それでも、新しい機能を付け加えるとデータ量は増える。結果、エルザは巌谷に巌谷に相談。巌谷が何をしたいか聞いたら、自分の望むCPUとメモリが欲しいと言う。Aria2の性能の向上アップにも役立つと思って巌谷は烏丸に相談すると、CPUの製作工場で特注製作してもらう案が出される。

 結果、エルザは現段階の技術力で最高の性能のCPUとメモリの設計を行った。その後、工場に設計図を提出。資金面は最近、国連との取引で行ったお金を少しだけ渡せば作ってくれる。工場を一日止めてもらい作れるだけ作らせる。その後、そのCPUとメモリを烏丸に巌谷は送った。きっと、役に立つだろうと考えたからだ。その後、巌谷に一本の電話が来る。このCPUとメモリを自社の製品と売り出せないかという提案である。しかも、破格の値段である。

 それもそのはずである。CPUのクロック数が2倍。メモリも現状の物から2倍の物を作り上げられるのだ。しかも、新しい設備を製作する事なく現在ある設備で製作できるのだ。

 この対応に巌谷は烏丸と相談。結果、新しい会社を設立する事にした。それは烏丸が今後、独自に開発する為の会社だった。Betaとの戦争終結後は兵器開発を止める事を目標に掲げた会社である。人材面も資金も何でも手に入る状況で烏丸はやりたいようにやる。

 そして、エルザは自分で作ったパソコンのパーツを嬉しそうに交換していた。パソコンの処理速度など上がったので、複雑なプログラムを組めると喜んでいた。作っている内容を聞くと携帯電話のロジックの製作だと言う。でも、これは役立つかもしれない。避難所の通信手段が限られる中、持ち運びに特化した携帯電話が完成すれば役立つだろう。ただ、これを作って使用する際に様々な問題が生じるだろう。ただ、それらの問題を解決するのが自分の役目だなと巌谷は感じた。その一方で新しい機器やシステム。それらは画期的で革命を起こす物ばかりである。携帯で電子メールができるシステムも組み込めると言うが、携帯の電子メールは烏丸が見せた映画などに出ているから知っているが、夢のような機能である。小さくて手に収まるサイズの道具がと思うと驚きだ。

 ただ、良い面ばかり見えるが、映画などは負の側面もあった。ある意味、烏丸は意図していない事ではあるが、技術復旧の為に必要なマナーや倫理などの問題解決に役立っていた。
 



 CPUとメモリが届くと烏丸はパソコンを即座に改造。使用するパソコンの数は減らないが性能が向上した事で電子機器の管理機能が向上。これによって光が見えた。

 僅かであるが深い青色の膜が形成。その後、爆発はしないが弾けて拡散する。

 完成が見えた瞬間でもあった。

 即座に駄目な部分を確認。特に、烏丸は電子回路面での点検を行う。燕は外郭のケースなどの部分の製作を中心に行った。

 即座に改良した物でテスト行う。

 透明な膜ができた。光を当てるが中まで投下して拡散したとは言えない。

 結果、烏丸と翼は更なる改良を加え続けた。

 その一方で烏丸はハイヴ攻略の為に新たな兵器の製作も始めるのだった。








 1999年4月3日

 春だった。桜が見る事ができる季節だ。
 私がこの世界に来て一年は過ぎた。
 世界が空の者達に食べつくされそうになっても人が守った大地には桜が綺麗に咲いている。
 もし、空の物達の戦いが終わった後に戦いのない世界ができたら、綺麗な桜を子供達が安心して見られる世界にできるだろうか。

「…」

 でも、それよりも私はするべき事がある。

 それは今作っている飛行船に積む装置の起動ボタンである。

 このボタンを押して無事に起動すれば飛行船の骨格を作り、動力などを組み込む段階に入る。

 私はパソコンのエンターキーを押す。するときゅぃいいいんというノイズ音がなる。

 そして、きゅうううううという音を立て綺麗な海を連想させる青い膜ができあがる。

 私は強いライトの光を当てて膜を通り抜ける。すると中は暗く光を透過していない。

 結果は成功だった。

 この中には光が入らない。だから、理論上では光線の光を分散させる効果があるはずだ。

 水と炭素を組み合わせて特殊な科学変化を起こして作り上げた粒子の膜を作る装置は正常に稼動していた。人畜無害な粒子の膜は水のような感触で通り抜けた時には水に塗れたような状態になっている。

 私は膜の内側から外側に出ると燕が
「完成したのか」
と尋ねてくる。

「完成した」
 私がそう言うと燕以外の人間が集り出した。

「ついに完成したのか」

「おお、これが」

 いろいろ言っているが興味がない。

 一方、私は地面に敷いたダンボールに横になる。

「寝る」

 私はそう言って眠る。

 かれこれ、毎日製作と訓練で疲れたのだ。正直いうとオレンジアイスクリームが食べたくて仕方が無い。でも、私はそれよりも眠る事を優先した。







 アナザーサイド


 烏丸の作った装置に技術者が集って興味津々に見ている。燕も非情に興味があるが御偉い人らしくスーツを着ている人を見ると好きになれなかった。

 でも、中にはいい奴もいるんだ。もしかしたら礼儀としてスーツを着なくてはいけない日が来るなら仕方が無いと諦めた。

 実際、背広の上を脱いで膜に触れていろいろと確かめている人もいる。

「おーい、壊すなよ。気持ちはわかるけどな」

 一応、注意をしておくが無理だろうと燕は思った。何せあの光線級の光線を無力化できる夢のような装置だ。烏丸が何
処で思いついたか気になるが、本人は光の娯楽品の道具の応用と言うから驚きだ。実際、完成予想図に使用用途の映像と
して見た時には本当に面白い人間で飽きない人だと燕は思った。






 五月女は銃の点検を終えると歌鶫に乗って一人で訓練を行う。烏丸が練習にお勧めしたメタルアーマー2はとてもに訓練として面白いが、ミッションでありながらストーリーのある訓練は斬新に思えた。メタルアーマーの1はクリアできたが、2になると難易度は上がったと言えた。1とは違う敵が出てきて苦戦する。さらに戦術機のような動きをする敵が出てくる事もあれば、空を飛んでbetaのように物量で押してくる敵などやっていて為になる事が多い。

 烏丸は暇だと思うから前の世界のゲームの一つメタルアーマーを紹介した。五月女にとってゲームという感覚よりもシミュレーターの訓練に近かった。

 時には武装を変えたりしてミッションに再チャレンジしたりする。一応、鉄騎士本体のパーツ類もこの世界で作った物を反映しつつ、メタルアーマー独自のパーツも用意してある。

 ある意味、五月女にとってはカタログである。もし、完成したらいいなと思うパーツが沢山ある。でも、このメタルアーマーは難しいと五月女は思った。さっきから、同じミッションをやっては撃破されている。

 五月女は2時間ぐらい熱中して疲れたので歌鶫から降りる。

 合成オレンジジュースをちびちびと飲んで少しだけ休むと五月女は全力疾走に近い速さでランニングを始める。

 少しでも体力が落ちないようにする為だった。最近、強化装備ではGの負担が強くなっているからだ。強化装備を脱ぐと青あざが出来ている事が日常茶飯事になっていた。少しでもGに耐えるには体力を付けたり努力しなければいけない。でも、空を自由に飛べると思えば辛い事もできるような気がした。
 



 



 今日の夜、香月の下に一つの連絡が来る。例の装置が完成した。一応、あの装置関連は自分や鎧衣を利用して手回しした人間だ。技術漏洩の心配はない。少なくともあの装置はパワーバランスの崩す可能性のある装置である。でも、一つだけ疑問が残る。これだけの装置を沢山作れば空爆でbetaを殲滅しない意図が掴めない。それとも、それ以上の物を狙っているとも考えられる。

 でも、入ってくる情報だと空爆をするだけの武装が詰めないという問題点と装置と光線級の光線に対して必要なエネルギーの維持に理由があるらしい。さらに防御できても安全性の保証が無いと言う報告が入った。

「…」

 あの烏丸は何処までも命を危険に晒すのが好きな人間なのだろうか。それとも、そんな都合のいい物なんてないからなのだろうか。さらに、第1回のテスト飛行で烏丸が操縦して装置のテストを行うらしい。

 つまり、場合によっては光線級に死ぬという無謀な挑戦をする事を意味していた。
「まったく、無茶苦茶ね」

 それでも、彼女らしいと香月は思った。







 

 1998年7月1日

 ついに飛行船が完成した。ジェネレーター部分に関しては私とイヴで設計した図面と技術提供をして作らせている。今はEFを積み込んで代替として、今作れるジェネレーターを幾つか積んでいる状態である。

 現段階だと基本は燃料駆動なので飛行時間3時間。さらに防御の為にレーザーシールドのエネルギーに変換すれば1時間が限界である。

 私は自分のいざという時の為に鉄騎士を積んで五月女にイヴを預ける。

 飛行機関連の操縦は一応、何度かしているが正直言うと自信がない。

 それでもやるしかない。飛行船 希望鳥(きぼうちょう)と名がついた飛行船の操縦席に座って起動を行う。

 管制塔からの離陸許可を得ると私は機体をゆっくりと上げる。

 さてと素人の操縦で大丈夫か知らないが、高度を上げていく。

 一応、一目型の射程に入っているから撃ってくれると思うが言い知れぬ不安がある。

 それでも私は高度を上げ続けた。






 アナザーサイド

 誰もが固唾を呑んで希望鳥を見ていた。

 五月女も燕も人類が光線級に対して決定的な対策は生まれていない。もし、これが成功すれば人類は大きな進歩が生ま
れたといっていい。

 しかも、烏丸は自ら危険な役をやりたいと立候補した。本来は希望鳥を操縦するパイロットも頑張れと思って見ていた。しかし、あの未知の理論で作られた航空機を操縦できると思うと胸が高鳴る。

 そして、一筋の光が走った。

 誰もが何が起きたか理解した。

 誰もが大丈夫かと思った。

 歓声が上がった。希望鳥は健在していた。

 ただ、膜を張った状態だと電波すら通さないので、通信ができない。また、通信機能を付け加える時間がなかったので通信機を積んでい。また、失敗した事を考えてという部分もあった。だから、烏丸は成功した知らせを聞く事ができない。

 何度か、光線の攻撃を受けてエネルギーが減ったのを見て結果は成功だとわかって高度を下げる。

 安全な高度まで下げるとシールドを解除して無事に飛行船を着陸させた。

 誰もが歓声を上げて烏丸を出迎えようとした。

 希望鳥から烏丸が降りてこない。見守っていた人達が不安がっていたが、管制塔からの通信で烏丸が寝ている事を伝えた瞬間。烏丸の事を知っていた人達はああ何時もの事かと思った。五月女に関しては毛布の準備を始めていた。

 その日は戦いはまだ先であったが、天然素材を使った料理が大盤振る舞いされた。

 ただ、烏丸は参加しない。参加せずに鉄騎士で待機していた。

 五月女は烏丸を誘うが烏丸は
「一人で行ってきてくれ」
と言う。

「…」

 五月女は烏丸と楽しみたい事を伝えるが、烏丸自信は宴が苦手なので行けない。

 なので、烏丸は五月女にイヴを預ける。

「…」

 五月女は何故だろうと思いながらも、イヴに
「行きましょう。今は一人になりたいのだと思います」
と言われたので五月女はイヴと一緒に宴に出る。

 今では貴重な天然物が並ぶ中、五月女は満足できない。心の片隅の疑問が晴れないからだ。

 確かにもうすぐ大きな作戦がある。だから、ご飯が入らないのだろうか。それ以前に五月女は烏丸がご飯を食べた事を見たことない。

 時々、栄養剤を飲んでいる所を見たことがある程度だ。

「イヴさん、烏丸さんはご飯をちゃんと食べているのでしょうか」

 五月女はイヴに尋ねる。

 その答えにイヴは複雑な思いがあったが、今後の事を考えて
「いいえ、普段は栄養剤だけです」
と答えた。

「そんな、それで大丈夫なんですか」

「大丈夫です。これには理由があります。ですが、五月女さん。今は話せません。今後の作戦に支障がでる可能性があります」

「…」

 確かにこの楽しい状況に暗い話をする時ではない。それに作戦に支障がでるのなら、作戦の後に聞けばいいと思った。

「わかりました。今は楽しみます」

「はい、それが良いと思われます」

 この先に何があるかわからない。

 ただ、五月女は作戦前に言い知れぬ恐怖が心の中で揺らめいていた。






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第5部終わり





メモ
後半は思ったより短かったけど、かなりいろいろ複雑に悩んだ。
とりあえず、次回明星作戦編。
豆腐メンタルはbetaの猛攻に耐えられるのだろうかorz



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