Muv-Luv ALTERNATIVE ORIGINAL GENERATION第24話 邂逅「皆の者、国連軍の衛士達に後れを取る訳にはいかぬ。今こそ我ら斯衛の力を見せる時だ!」『『「ハッ!」』』紅蓮が檄を飛ばし、斯衛の兵士達はそれに呼応するように戦場を駆け抜ける。「お前達、俺達も閣下に続くぞ!陣形(フォーメーション)楔弐型(アローヘッド・ツー)で一気に目標を畳み掛ける!」『『「了解しました!」』』剛田も援軍に来た国連軍衛士達に負けまいと部下達に指示を出す。「それにしても驚かされたぜ。あの新型もそうだが、あの野郎・・・更に腕をあげてやがる」『剛田中尉、先程援軍に来られた白銀大尉とお知り合いなのですか?』「ああ、奴とは同期でな。いわゆる強敵と書いて『とも』と読む関係だ」『それは凄いですね。是非一度お会いしたいものです』「おう、後で絶対に紹介してやるから楽しみにしてろよ。だが、先ずはBETAの殲滅が優先だ。お前達もその実力を国連軍やタケルに見せつけてやれ!」『『「了解!」』』剛田は旧友との再会を心底喜んでいた。彼とはつい先日別れたばかりだと言うのに、まるで何年も会ってなかったかの様な気がしていたのだ。何故かは自分でも良く解らない。恐らくこれは戦場に漂う空気がそうさせているのだろう。絶体絶命と言う訳ではないが、戦場では神経をすり減らしながら戦っている者も多い。そんな状態の中で援軍として駆け付けてくれた友の存在が、彼を安堵させると共に更なる戦意高揚を促す事となる。『斯衛軍の人達、何だか張り切ってるわねぇ~』「無理もないだろう。この戦場には殿下や紅蓮大将が居る。言い方は悪いかもしれんが彼らにもプライドがあると言う事だろうな」『お国の為にって奴?それとも主の為にって奴かしら?』「その両方だろう。それだけ彼らの背負ってる物は大きいと言う事だ」『ん~、言い換えれば忠誠心ってものかしらね。御立派だとは思うけど私には無理ね。護るものの為に戦うって言う点では共感できるけど・・・』「今の台詞はお前の中だけに留めておけよ。必要無いいざこざに巻き込まれるのは御免だからな」『ハイハイ、私だってそれ位解ってるつもりよ?』「なら良い・・・それよりも今は目の前の敵に集中するとしよう。俺達も負けていられんからな」『そうね。さっさと終わらせて帰るとしましょっか』「アサルト1より各機、これより我々は斯衛軍の援護をメインに戦闘を行う。アラド、ゼオラ、ラトゥーニの三名は右翼に展開中の部隊を、ブリットとクスハは左翼の部隊を、俺とエクセレンは中央の部隊を援護すると同時に残りの要塞級を仕留める」『キョウスケさん、俺はどうすればいいんだ?』「お前はそのままのポジションで戦ってくれれば良い。敵はお前目掛けて攻撃を仕掛けようとしている。下手に動き回っては戦力の低下した所を突破される恐れがあるからな」『解った。要するにおとりになれって事だろ?』「言い方は悪いかもしれんがそう言う事だ。それからお前の機体が一番殲滅力が高い。余裕があれば要塞級の方も頼む」『任せといてくれよ。俺とカイザーの恐ろしさって奴をBETAにも教えてやるぜ』『コウタ、くれぐれも無茶な事はするなよ』『ったく、心配性な奴だなお前は』『ロアの言う通りよコウタ君。私達も居るんだからね』『了解了解』「よし、全機散開!!」『『「了解!」』』彼らは与えられた役割をこなすべく行動を開始する。キョウスケが彼等に援護を中心とした戦闘を行うよう指示した事には意味があった。彼らの機体は新潟からこの場所まで補給を行っていない。キョウスケやエクセレンの機体に関してはそれほど問題は無い。キョウスケのアルトアイゼンは、移動時に脚部の無限軌道を使用する事で極力推進剤の消耗を抑えている他、この機体には改修の際に合計四基の跳躍ユニットが装備されると同時にプロペラントタンクも増設されている為長時間の戦闘行動が可能になっている。エクセレンのヴァイスリッターに関しては、搭載されているテスラドライブが推進剤非依存推進が可能である事から、装備されている跳躍ユニットを用いての戦闘行動はほとんど行われていないのである。しかし、他のメンバーの機体は純粋な戦術機である為、なるべく無駄弾や推進剤の消耗を抑えて戦闘を行っていたものの、流石にこれだけ長時間に亘って戦闘を行っていればエネルギーの残量なども含めて少々心許無くなってくる。一度後退して補給を行っても良いのだが、この場に展開しているのは帝国斯衛軍の部隊である。弾や推進剤などと言った補給物資はある程度のストックが有るだろうが、現状で彼らとの必要以上の接触は避けるべきだとキョウスケは考えていた。補給を要請すると言う事は、一時的にとは言え彼らの機体の情報を与えてしまう事になる。補給コンテナを設置させれば問題無いかもしれないが、設置にかかる時間やそれに対して無駄な労力を割くぐらいならこのまま戦闘を続行し、短時間でカタを付ける方が得策だと判断したためだった。そして自分達がなるべく前面に出ずに、後方から撃ち漏らしや前衛部隊の援護を行えば機体の損耗率は幾分か少なくなる。しかし、言い換えればこれは自分達が消耗しない分、斯衛軍に負担を強いる事になってしまう。本来ならばこの様な手段は取りたくないのだが、この場合は状況が状況だ。ここは帝都と目と鼻の先、つまりは斯衛軍並びに帝国軍のテリトリーと言っても過言では無い。その様な場所で必要以上に自分達が出しゃばってしまっては彼らの面目が潰れてしまう恐れもある。そう言った理由などを考えた結果、キョウスケは自分達の部隊はなるべく援護に徹するべきだと判断したのであった。「エクセレン、息は俺の方で合わせる。頼むぞ」『了解~!んじゃ、二人の愛の力で!』「・・・・・・」『・・・って、ちょっとぉ!合わせるんじゃないの?』アルトのクレイモアが火を噴き、その背後からヴァイスがハウリング・ランチャーで援護する。「・・・毎度の事だが何が愛の力かを説明して貰いたいもんだな」『だってぇ~二人の共同作業だし・・・』二機のPTがそれぞれ左腕の五連チェーンガンと三連ビームキャノンを乱射しながら要塞級に向けて距離を詰める。「勝手に言っていろ」『今度こそ本当にアルトちゃんの方を刺すわよ?』そう言いながらも二人は見事な連携で攻撃の手を緩めない。止めと言わんばかりにお互いがゼロ距離で最後の攻撃を叩きこむ・・・『援護しますキョウスケ大尉!』彼らの後方から接近する武の改型。「了解した」『ちょっと~タケル君、二人のラブラブ空間に割り込んで来るなんて強引過ぎやしない?』『す、すみません』「無視して構わんぞ・・・」『なっ!二人とも、後で覚えておきなさいよ・・・』キョウスケに言われたからという訳では無いが、武はそのまま兵装をクロスレンジモードに切り替えると要塞級に向けて突撃する。しかし要塞級も黙ってはいない。ダメージを受けているにも拘らず尾節にある触手をこちらに向けて発射すると、器用にそれを振りまわし改型に向けて反撃を行う。『うおぉぉぉぉっ!!』武はそれらをキャンセルと先行入力を用いて紙一重で回避すると、目標の手前で機体を急上昇させ上空から全体重を乗せて目標を一気に斬り付ける。『まだまだぁっ!!』着地と同時に兵装をミドルレンジモードに切り替え敵の真下からこれでもかと言わんばかりにライフルを連射、ある程度のダメージを与えた事を確認すると噴射滑走(ブーストダッシュ)でそのまま相手の足もとをすり抜ける。流石の要塞級もこれらの攻撃には耐えきれず、低い呻き声をあげながら沈黙していた。「流石だな」『いえ、大尉達の連携には敵いませんよ』「謙遜するな・・・このまま一気に他の奴らも仕留めるぞ」『了解っ!』『普通ホントに無視する?何だか本当に泣きたくなって来ちゃったわ・・・』「行くぞエクセレン、ボヤボヤするなよ」『エクセレン中尉・・・その、なんて言うか・・・』『良いのよタケル君、いつもの事だから・・・慰めようとしてくれる気持ちだけ受け取っておくわ』『は、はあ・・・』『兎に角行きましょ。援護は私に任せてくれていいから』『了解です・・・エクセレン中尉』『な~に?』『どさくさに紛れて後ろから撃ったりしないで下さいね?』『フフフ、大丈夫よ~。あ、でも流れ弾には気を付けてね?戦場じゃ何が起こるか分からないって言うでしょ?』『ちょ、狙う気満々じゃないですかっ!』『失礼ね、私がそんな女に見える?』『い、いえっ!中尉の援護に期待させて頂きますっ!(顔は笑ってるけど、その背後から発せられてるオーラは何だよ・・・ヤベェ、中尉マジで怒ってる・・・)』「タケル、エクセレン、何をしている。グズグズするな」『り、了解っ!(大尉、俺達マジでヤバいかもしれません・・・)』『解ってるわよキョウスケ(さて、冗談はこれ位にしておきましょうか。ちょっと気分もスッキリした事だし)』彼女にからかわれている事に気付かない武は、内心ビクビクしながらもキョウスケ達の後に続く。そして、別の場所では・・・「何かスゲェなあの機体・・・」『ええ、あんな戦い方してる人が斯衛軍に居るなんて信じられないわね』アラドとゼオラはBETAを相手にしながらも目の前の漆黒に彩られた機体の動きに注目いた。戦術機の名は『武御雷』、帝国斯衛軍専用の機体である。その機体は動きもさることながら、戦い方や装備の運用方法も他の機体とは違っている。右腕に支援突撃砲を構え、左腕には短刀、そして左側の兵装担架システムにマウントされた突撃砲を前部に展開し、更に両肩には92式多目的自立誘導弾システムが装備されており、それらを用いながら特定のポジションを決めずにオールラウンドで戦っているのである。本来武御雷には自立誘導弾システムを装備する事は不可能である。これは機体の運用方法が近接戦闘に主眼が置かれている事が理由の一つなのだが、この機体は肩部のパーツを不知火の物と置き換える事で装備を可能にすると言う方法を取っている様だ。支援突撃砲やミサイルを発射しながら前衛の味方機を援護していたかと思うと、今度は突撃砲を乱射しながら弾幕を張りつつ接近し左手の短刀で近接戦闘も行う。一見すると無茶苦茶な動きに見えるのだが、その動きは洗練されていて一連の動作がまるで舞い散る桜の如く優雅なものに見える。この様な動きを見せられてしまっては見惚れてしまうのも無理は無いと言うものだ。『あの動き・・・』『どうしたのラト?』「あの機体の動きがどうかしたのかよ?」『ちょっと気になっただけ』「確かに動きだけ見てると気になるよな」『そう言う意味じゃないの。ただ似てるなと思って』『似てるって誰に?』『オウカ姉様に似てると思ったの。変だよね、オウカ姉様はもう居ないのに・・・』「・・・ラト」『元気出してラト、私達は姉様の遺志を継いで頑張るって決めたでしょ?』「そうだぜラト、いつまでもメソメソしてちゃ姉さんに笑われちまうぞ?」『ゴメン・・・もう大丈夫だから』「よしっ!俺達もあの機体の衛士に負けてらんねぇな。とっととBETA共をやっつけちまおうぜ」『そうね』『うん』「行くぜ!ゼオラ、ラト、援護は任せる!」『『了解!』』そう言うと彼らは次の目標に向け戦場を駆け抜ける。だが彼らは知らない・・・先程彼らの眼に映っていた衛士の正体を・・・そして、彼女が記憶の一部を失っていると言う事を・・・『どうかしたんですか凪沙さん?』「いえ、誰かに見られていたような気がして・・・」『先程近くに居た国連軍の機体では無いのか?』『凪沙さんの機動は特殊だしね。きっと驚いてたんだよ』『だろうな。私もタケルの機動を見せられた時は驚いたものだが、そなたの機動にはあの者とは違った意味で驚かされいるのだから当然であろう』『確かに冥夜の言う通りですね。そなたが上手く立ち回ってくれているおかげでこちらの被害は最小限に済んでおりますし』「私の動きなどまだまだですよ。接近戦では殿下や冥夜様に敵うと思ってませんし、戦況の先読みに至っては鑑様の方が優れています」『謙遜する必要はありませんよ凪沙少尉』『姉上の言う通りだ。そなたが居てくれるからこそ我々は安心して戦えていると言うものだ』『そうだよ凪沙さん。凪沙さんは私の事を褒めてくれるけど、私の方が優れているなんて思ってないもの』「その様に言って頂ける事、本当に光栄です。援護は私にお任せ下さい」『うむ、そなたの援護に期待させて貰うとしよう』『私も頑張らなきゃ・・・』『では参るとしましょう。私と冥夜が前衛を、凪沙少尉と鑑少尉の二人は後衛を頼みます』『『「ハッ!」』』先ず凪沙が両肩に装備されたミサイルランチャーを発射し、メインターゲットである要撃級の周囲に展開している戦車級を殲滅する。続け様に彼女が撃ち漏らした敵を支援突撃砲で仕留める純夏。ターゲット周辺の敵が掃討された事を確認した悠陽と冥夜は、噴射滑走を行いながら敵との距離を詰める。「行きますよ冥夜っ!」『了解です姉上っ!』『「はぁぁぁぁっ!!」』前衛である悠陽と冥夜が長刀を構え、眼前の要撃級に向けて突貫する。要撃級の前肢はダイヤモンド以上の硬度とともにカルボナードを凌駕する靭性を併せ持つ事で有名だ。彼女達は相手が攻撃を行う為にその両腕を振り上げようとした瞬間、もっとも無防備である隙を付き比較的軟らかい腕の付け根を狙って長刀を振り下ろす。見事にカウンターが決まり、互いの一太刀で両断される要撃級の両腕。相手の両腕を切り落とした事を確認する事も無く、彼女達は噴射跳躍(ブーストジャンプ)を用いて急上昇。すかさず凪沙と純夏が相手の弱点部分目掛け支援突撃砲を連射する。両腕が存在していたならば防御されていたかもしれないが、要撃級は成す術無く放たれた銃弾をその身で受け止める事となる。要撃級は攻撃に抗いながらも前進を止めない。それに気づいた悠陽と冥夜が上空から突撃砲を乱射した事が止めとなり、要撃級は辺りに肉片をまき散らしながら絶命していた。「このまま一気に仕留めます。皆の者、宜しいですね?」『『「ハッ!」』』勢いに乗った彼女達はそのまま次のターゲットに向けて行動を開始していた。それから数時間後・・・『司令所より各機、戦闘区域内のBETA群の殲滅を確認。くりかえす、戦闘区域内のBETA群の殲滅を確認。これより警戒態勢に移行する。くりかえす・・・』「どうやら片付いたようだな」『流石に補給なしじゃ無理だったわね』『ええ、自分達がもう少し上手く立ち回れていれば行けたかもしれないですけどね』「流石に無理だろう。弾薬が底をついたとしても長刀などで何とかなるかもしれんが、推進剤だけはどうにもならんからな」『そうね。補給を手配してくれたタケル君に感謝しないといけないわね』「ああ、どうやら奴が直々に殿下に頼んでくれたらしいからな」『で、殿下に!?殿下って確かこの国で一番偉い人でしたよね?そんな人に直に頼み事ができるなんて、タケルさんってスゲェ人なんだなぁ』『タケル君と殿下って知り合いなのかしら?』『どうしたんですか急に?』『だって普通に考えたらおかしいじゃない。いくら国連軍大尉とは言え、一兵士である事には変わりないわ。斯衛軍の偉い人ならまだしも、違う軍の兵士に頼まれたからって最優先で補給を用意させるなんていくらなんでも無理があるでしょ?』「確かにエクセレンの言う通りだが、それは俺達がどうこう言う事じゃない。ここは素直に感謝すべきところだ」『そうですね。お二人の関係を詮索しても仕方ない事ですものね』『んー・・・なかなか面白そうなネタを仕入れられると思ったんだけどなぁ~』「そんな物を仕入れてどうするつもりだ?」『そんな野暮なこと聞かないでよ。使い道は色々あるでしょ?』「まったくお前と言う奴は・・・『キョウスケ大尉』・・・何だラトゥーニ?」『ラミア中尉から通信が入ってます』「了解した。こちらに通信を回してくれ、各機は警戒態勢のまま待機だ」『『「了解」』』『御疲れ様でございますです大尉』「そちらもご苦労だった。状況はどうだ?」『こちらはこれからヴァルキリーズと合流する所です。それからアルフィミィの事なのですが・・・』「どうした、何かあったのか?」『いえ、ペルゼインに搭乗したままヴァルキリーズと合流しては問題があると思いまして、一度キョウスケ大尉に指示を仰ぐべきだと考えたのでございます』「アクセルは何と言っている?」『アクセル中尉は私の改型に乗せて行けば問題無いだろうと仰ってるのですが、流石にそう言う訳にもいかないと思いまして』「そうか・・・ならばこちらから迎えに行こう。斯衛軍には味方と合流する為に後退するとでも言っておく」『了解しました。合流地点はどうしましょう?』「そちらで決めてくれ。詳細が決まり次第、此方に連絡をくれれば良い」『了解。では一度失礼します』彼女はそう言うと一旦通信を終了させる。キョウスケは先程のやり取りを部隊メンバーに説明し、斯衛軍に連絡しようとしたところで今度は武から呼び出されていた。「如何したタケル?」『忙しい所すみません大尉。実は殿下が直に会ってお礼が言いたいらしいんです。それで大尉と俺に司令所に来て欲しいって事なんですけど』「なるほどな・・・解った。殿下の申し出を断る訳にもいかんだろう。エクセレン、隊の指揮はお前が取ってくれ。俺はタケルと共に殿下の所に行ってくる」『解ったわ。ねえ、コウタ君はどうするのよ?』「コウタには申し訳ないが俺と一緒にこちらに残って貰おうと思う。そのまま横浜基地に連れて帰ろうにも問題があるしな」『キョウスケさん、すまねえ・・・実はショウコが斯衛軍の救護所に居るんだ。先にそっちに行かせてくれないか?』「どう言う事だ?」『実はショウコも一緒に飛ばされてきてたんだけど、戦闘中に受けたダメージが原因で気を失っちまって斯衛の人達に助けて貰ったんだよ。状態も確認したいし、何より一人きりにさせておきたくねえんだ』「解った。ならお前は後で合流してくれれば良い」『助かるぜ。悪い皆、先に行かせて貰うぜ』『ああ、また後で会おうぜコウタ』『おう、俺もお前達に色々と聞きたいしな。それじゃあ行ってくる』そう言ってその場を後にするコウタ。「では俺達も行くとしよう。タケル、案内を頼む」『了解です』「それじゃ私達も行きましょうか?」『エクセレン中尉、ちょっと良いッスか?』「な~に、アラド君」『何かさっきから機体の調子が悪いんですよ。戦闘でダメージは受けて無い筈なんですけど、何か挙動が変っていうか』「う~ん・・・合流地点まで持ちそうにない?」『正直微妙ッスね。戦術機の事はあんまり詳しくないから何とも言えないんですけど・・・』「仕方無いわね。斯衛軍の人に頼んで整備班を回して貰えるよう手配して見るわ」『スンマセン』エクセレンは近くに居た斯衛軍の機体に対してこちらの不具合について説明し協力を求める。相手は快く受け入れてくれ、直ぐに輸送車両と人員が手配される事となった。「それじゃアラド君は後でキョウスケ達と一緒に戻ってきてくれる?」『了解ッス』「直に斯衛の人が来てくれる筈だから、そこからは向こうの指示に従って頂戴。一応私の方からもキョウスケに連絡しておくわ」『解りました』「じゃ、私達も出発するとしましょう」『『「了解」』』合流地点に向けて出発する彼女達を見送ったアラドは、コックピット内で先程の戦闘データをチェックしながら先程の黒い武御雷の事を考えていた。今思い返して見ても、あの機体の動きは本当にオウカに似ている・・・「そんな訳ねえよな・・・姉さんはもう居ないんだ」一人呟きながらデータチェックを終わらせると、今度は機体のチェックを開始する。「ん~・・・駄目だ、PTでも微妙な所なのに勝手が違う戦術機じゃ全然解んねえや。戦術機に関しては訓練校でもまだ何も習ってないしなぁ」『お待たせしました』「っと、斯衛軍の人か・・・申し訳ないッス、そっちも忙しいのに無理言ってしまって」『いえ、そんな事は気にしないで下さい。こちらが誘導しますのでトレーラーに機体を固定して下さい』「了解」整備兵の誘導に従い、機体をトレーラーへと動かすアラド。機体の固定が完了するとトレーラーはゆっくりと発進し、司令所近くに設けられている簡易型整備スペースへと搬送される。簡易型とは言うが、実際の所は輸送用のトレーラーに機体を固定したまま簡単なチェックが行われるだけであり、本格的な整備はここでは行う事が出来ない。機体を診て貰っている間、特にする事も無いアラドは時間をつぶす為に斯衛軍の機体を見て回る事にした。「へぇ~、これが斯衛軍の零式戦術機か~。あれ?これってさっきの機体じゃねえかよ。やっぱ間近で見ると何かスゲェな・・・やっぱ装甲材とかも違うのかな?」こう言った物に興味をそそられると言うのはやはり彼も男の子と言う事だろう。やがて見ているだけでは飽き足らず、装甲の表面を触ってみたり軽く叩いてみたりしている。「ん~、こんなんじゃ何も解んねえよな。かと言って勝手にコックピットに入る訳にもいかねえし」「そんな所で何をしているのです!!」腕を組みながらそのような事を考えていた矢先、急に背後から呼び止められた事に気付いた彼は慌てて後ろを振り返る。「国連軍の兵士がこの様な所で一体何をしていたのです?答えなさいっ!」「す、すみません!この機体に興味があって見ていただけなんです・・・別に悪さをしようと思ってた訳じゃないんです!」「こ、子供・・・?こんな小さい子が衛士をやっているなんて・・・」「勝手に機体に近づいた事は謝りますけど、馬鹿にしないで貰えませんか・・・っ!!」「ご、ごめんなさい。少し驚いてしまったもので・・・どうしたのですか?」自分自身はバカにしたつもりは無かったのだが、どうやら相手を怒らせてしまったらしい。そう思った彼女はすぐ謝罪しようとした直後、少年の表情が何かに驚いている事に気付く・・・「ねえ・・さん・・・?」「えっ?」「やっぱり姉さんだ!俺だよアラドだよ!」「ちょ、ちょっと待って・・・私が貴方のお姉さんだと言うの?」「何言ってんだよオウカ姉さん!俺の事忘れちまったのかよ!?」「確かに私の名前は桜花だけど、私は貴方の事は知らないわ。人違いじゃないのかしら?」「人違いなんかじゃない。俺が姉さんを見間違えるはず無いだろ!?こんな時に冗談言ってる場合かよ!」「冗談なんか言ってないわ」「そ、そんな・・・ウソだろ姉さん」「・・・」彼女の目の前に居る少年は真剣な表情で自分が弟だと言っている。しかし彼女には自分に弟が居たなどという記憶は存在していなかったのである。この時まで彼女は気付いていなかった。自分の失われた記憶の大切さを・・・そして、その記憶が自身にとってとても大切な日々を、とても大切な人達と過ごした時間だと言う事を・・・目の前の少年はその場に泣き崩れていた。彼女は少年に対して声をかける事も出来ないままその場に立ち尽くしていた・・・気付けば空はどんよりとした雲に覆われている。まるでその場の空気を表現するかのように・・・あとがき第24話です。とりあえずは新潟編終了と言った所でしょうか。少々駆け足で進め過ぎた気がしない気も無いですが、あまり長引かせてもどうかと思いこの様にさせて頂きました。今回の戦闘シーンでキョウスケとエクセレンがランページっぽい攻撃を行っていますが、アルトとヴァイス版のランページもどきです。これには理由がありまして、完全復活していない機体ではこれが限界だと考え、リーゼとラインヴァイスバージョンとは違う表現とさせて頂くと共に若干アレンジを加えさせて頂いてます。オマケとしてタケルちゃんに援護攻撃に加わって貰ったのですが如何でしたでしょう?オウカ姉様の搭乗する武御雷は黒なんですが、そのままだとなんだか味気ないと思った事から劇中で語られている様なカスタマイズが行われていると言う設定です。右腕の支援突撃砲をO.O.ライフル、左腕の短刀をマグナム・ビーク、両肩のミサイルランチャーをスプリットミサイルH、脇から出てる突撃砲をマシンキャノンに見立てております。前々から言っていた通り、オウカ姉様はこちらの世界に来た時の衝撃で部分的な記憶を喪失しております。これはタケルちゃんとは違った症状で、因果空間とかは関係なく純粋な記憶喪失です。部分的な記憶と言うのは主にアラド達スクールの面々と共に過ごした間の記憶の大半となっており、以前アクセルと会った時に彼の事を覚えていたのはDC所属時代の記憶が失われていなかったからという事になってます。都合のいい解釈かもしれませんが、物語の進行上の処置と言う事でご理解下さい。さて、改型の新型兵装の名称が決まりましたのでご報告させて頂きます。『試製01式可変型複合兵装・Sraipnar-V.C.W.S(Variable Composite Weapon System)』と名付けさせて頂きました。感想掲示板に寄せられた名称を基に色々と試行錯誤を重ねた上でこの様な名称とさせて頂く事にします。様々な案を書き込んでくれた皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます。名称決定に伴い、23話に書かせて頂いた設定も若干修正させて頂いております。次回からは総戦技演習に向けてのお話と、この世界のタケルちゃんの詳細について書いて行こうと考えていますのでお楽しみに。それでは感想の方お待ちしております。