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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_09話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/24 07:56
マナカと4人生活になってからもアオ、ルリ、ラピスは慌ただしく過ごしていた。
アオとルリ、ラピスの3人は早朝に起き、走り込みや柔軟など身体作りを始めた。
3人がトレーニングしている間にマナカが朝食を作る事になった。
朝食を食べ、後片付けを済ませたあとはそれぞれの仕事へと取りかかっていく。

アオはユーチャリスから研究所への資料移動や火星の状況確認。
そしてナデシコ関係の研究・開発の経過確認や指示。
更にアカツキへの報告や冷やかしと動きまわっていた。
ユーチャリスから移動する資料については大半がナノマシンになり、マナカが入る研究所へ持って行った。
火星の状況についてはほぼ変わらず、ジェネレーターとフィールド発生装置の量産化は1ヶ月程で目処がつくと伝えられた。
ナデシコ関係の研究・開発については元々の詳細なデータがあるのでそれに基づいて試作しチェックをするのが主になり、比較的早く物になる事がわかった。
アカツキへは菓子折り持って進捗状況を伝え、「仕事頑張って~」と発破をかけるだけかけて帰っていくというカンフル剤のような役目に納まっていた。

ルリとラピスも連合政府、軍、他企業の情報集めに加え、研究・開発の経過確認や指示も行っていた。
二人が集めている情報は自治政府樹立の下準備である。

マナカは今のうちに出来る事をするという事で研究所のナノマシンデータを貰い、一つ一つ確認していた。

そして、合間を見てはIFS強化体質者の研究所から保護した子供たちのお見舞いもしていた。
アオはかなり忙しくて面倒が見切れない為預ける事になっているのが心苦しかったのだが、その分エリナやマナカがよく顔を出していた。
見かけに寄らず子供好きなエリナや母親であるマナカの雰囲気に安心するのか少しずつ笑顔が出るようになっていた。
それでも一番懐かれているのはアオであり、妖精を引き寄せる体質は相変わらずだった。
何故か初対面でも懐かれてしまうらしい。

アカツキはアオからのデータを元にした社長派の研究所の調査に取り掛かっており、判明した所から順次潰していた。
社長派の非合法な研究所といってもIFS強化体質者の研究だけではない。
遺跡ナノマシンやボソンジャンプの研究もある。
それでも隠れた研究所が多い訳でもなく半月ほどで目処がつきそうだった。
保護した子供たちは一旦すべての研究所が潰されるまでは病院で預かり、その後孤児院で面倒を見る事になっていた。

そして一週間程経ったある日、一本の連絡が入った。

「もしもし、どなたですか?」
「その声はアオ君だね、丁度良かったよ。
君の弟君を見つけたよ、記憶通りサセボにいるそうだ」

アキトが見つかったという報告についに来たねと口にした。

「そっか、私が探してるって伝えてくれた?」
「あぁ、うちに身を寄せている事も含めて伝えてあるよ」
「ナガレ、ありがとね。明日マナカさんと行ってみるよ」
「感謝してくれるならボクと一緒にご飯に行ってくれると嬉しいんだけどなぁ」

アオの感謝を受けてアカツキは調子に乗ってデートに誘う。
しかし、アキト時代と負けず劣らずの鈍感なアオにその言葉内にある真意などは理解されるはずもなかった。

「今度ちゃんとルリちゃん達も誘ってみるからその時にお願いね。
それと、うちに来たらご飯ご馳走するよって言ってあるはずなんだけど?」
「いや、そうじゃないんだ、そうじゃないんだよ。
手料理も手料理で嬉しいんだけどね...」
「無理にとは言わないけど、みんなも喜ぶと思うよ?」

なんとかわかって貰おうとアカツキは言葉を重ねるが、アオは何か家では都合が悪いのかと考え嫌ならいいよと伝える。
それを受けてアカツキは電話口でうなだれた。
アカツキの経験上でもここまで鈍感な女性はいなかったのだからしょうがないだろう。
そうやって頭を悩ますアカツキを見ながらエリナは楽しそうにニヤニヤしていた。

「(鈍感というのがここまでもどかしいとはね...しかも全て本気で言っているから手に負えない。ここは外堀から埋めていくしかないか...)」
「お~い、ナガレ~?」
「あぁ、なんでもない、大丈夫。そうだね、今度ご飯をご馳走に伺うよ。連絡はどれくらい前にすればいいかい?」
「そうだね、最悪当日の朝でもなんとかなるけど、何かリクエストするなら前の日には連絡欲しいかな」

アカツキはふむ...と考えるとすぐに切りだした。

「そうかい、それなら急だけど明後日では駄目かい?」
「ほんとに急だね、わかったよ。リクエストはある?」
「洋食や肉ばかりだからね、和食で魚はいけるかい?」
「いいよ。駄目な魚とかある?」
「気にしないでくれていいよ。手土産にいいお酒があるから持って行こうかな」
「自分で飲むならど~ぞ~。私は未成年だし、ルリちゃんとラピスに飲ませたら叩きだすけどね」

お酒の台詞にアオはむっとなるが、そういうノリを楽しむようなやつだという事を知っていたので特に気にせず返した。
案の定冗談だったらしく代替案を出してくる。

「そうかい、なら食後に食べれる物でも何か持って行くよ」
「ん、わかった。20時頃に来て貰えればご馳走出来るように準備しておくね。
あ、何人で来る?」
「ふむ...すぐ確認するから少し待ってくれ」

そう言って保留にするとエリナの方へ向き直る。
エリナはアカツキの言葉で何を聞きたいのかおおよそわかっていたのか即答した。

「という事で、エリナ君明後日アオ君の家でご馳走にならないか?」
「どういう事なのかは知らないけどなんとかく分かるからいいわ。プロスとゴートも参加させるように言い含めておくから3名追加にしておいて」
「はいはい。アオ君お待たせ。ボクとエリナ君、プロス君、ゴート君の4人で行くよ」
「はいはい。了解しましたよ。それじゃ、明後日ね。エリナがナガレは最近頑張りすぎてて気味が悪いって言ってたし、倒れる前にちゃんと休まないと駄目だよ?」

途中で長考に入っていた事を心配したのか、アオが言葉を投げるがエリナにそんな事を言われていた事を知りアカツキは絶句する。

「あ...あぁ、わかったよ」
「うん、それじゃね~」

通話が切れた受話器を眺めつつアカツキはしばらくニヤニヤとしていた。
そんなアカツキを見てエリナが心底嫌そうに言い捨てた。

「気持悪いからその顔止めてくれませんか、会長?」

アオの方は電話を切るとすぐに研究所にいるマナカへ連絡を入れ、アキトが生きていた事とサセボにいる事を伝えた。
アキトも生きていたんだから、アイちゃんも生きてるはずですとも伝えると涙声で何度もありがとうございますと述べていた。
アオはマナカが落ち着くと、「明日サセボへ向かい顔を合わせに行くので一緒にどうか」と聞いた。
マナカはそれを二つ返事で了承した。

次の日、アオ達の住む部屋の玄関に旅支度を済ませたアオとマナカの姿があった。
ルリとラピスはこちらのアキトとは面識がないので今回はお留守番になった。
ラピスは寂しそうな表情で二人を見上げている。
ルリはそれを見てしょうがないなという顔をしながら頭を抱き寄せていた。

「それじゃ、夜には戻ってくるからお留守番よろしくね。
ルリちゃん、ラピスをお願いね」
「はい、お気をつけて。ほら、ラピスそんな顔しないの」
「...帰ってくる?」
「ラピスちゃん。いい子にしてたら絶対帰ってくるわよ」
「...ほんと?」
「約束する」
「...わかった」
「ラピスはいいこだね」

ようやく納得したラピスにアオは微笑みつつ頭を撫でる。
ラピスは嬉しさと寂しさが混じったような表情でアオに「すぐ帰ってきてね?」と伝えた。

「うん、なるべく早く帰ってくるね。それじゃいってきます」
「アオさん借りちゃって御免なさいね。いってきます」
「「いってらっしゃい」」

そうしてアオとマナカはサセボへと旅立って行った。
その頃サセボにある雪谷食堂ではテンカワ・アキトがそわそわしていた。
仕込み中も気が入りきらない様子で店長であるサイゾウから何度か叱られていた。

「おい、アキト!嬉しいのはわかるがうっとうしい!やる気ねぇなら休んどけ!」
「す、すいません!」

叱られると落ち着くのだがしばらくするとまたそわそわとしだす。
(まぁ、まだ若いからしょうがないがな)
サイゾウはそう思っていた。
だが、だからといって甘やかすのは彼の性分ではないのである。
それから数時間後、雪谷食堂の前に2人の女性が立っていた。

「雪谷食堂...ここみたいですね」
「はい、間違いないですね。それじゃ、マナカさん入りますか」
「ちょっと緊張しますね」
「そうですね」

二人はクスクス笑うと暖簾をくぐった。
店の中はかなり繁盛しており、空いてる席は少なかった。
近辺で働いている者が来る為か、男性の客ばかりである。
扉が開く音がしても、店内のほぼ全員が新しい客程度にしか気に留めていなかったが、最近入ったばかりの男性従業員だけはその姿を見て硬直する。

「あい、らっしゃい!」
「あ、いらっしゃ...」
「やっほ、アキト~」
「アキトさん、お久しぶりです」

突然鈴の音を鳴らしたような声が響き店内の客は全員弾かれたように振り向いた。
全員の注目を浴びる二人の女性はそんな空気を物ともせずに席を探す。
客たちはそんな二人を呆けたようにただ眺めていた。

「マナカさん、何処座ります?」
「あ、あそこの奥空いてますよ」
「ほんとだ」

マイペースに席を選んでそこへ座ると、アオがアキトを呼ぶ。

「こら、アキト~。ボーっとしてないでお水とお手拭き頂戴」

そんな声が届いてもアキトはまだ復帰出来ていない。
調理中だった為か、すぐに復活していたサイゾウは業を煮やしたようにアキトへ怒鳴った。

「アキト!何呆けてやがる!さっさと動け!」
「あ、はい!」

店中に響き渡るような怒声にようやく復活するとすぐ水とお絞りを持って行った。

「二人とも、本当に生きて...」
「うん、二人とも足はあるよ。ただ、その話は後でね、仕事中でしょ?」
「えぇ、積もる話もありますが、アキトさんがまた叱られては困ってしまいます」

そう言われて厨房の方を伺うと、サイゾウは調理しながらもちゃんと仕事しているかチラチラと確認していた。

「わかった。それじゃ、注文は?」
「私はチャーシューメンとチャーハン大盛りで!」
「私は雪谷ラーメンにします」
「はいよ。サイゾウさん、チェーシュー大、チャーハン大、ラーメンを1丁」
「あいよ。アキト、お前はチャーハンやれ」
「はい!」

そんな後ろ姿をアオとマナカはニコニコと眺めている。
周りの客はアキト達の関係を測りかねているのかしきりに首を傾げていたが、綺麗な女性二人と仲が良さそうに話すアキトへ嫉妬の視線を向けていた。
しばらくすると料理が届き、二人は食べ始めた。
アオは懐かしい味に目を細め、マナカは思ってた以上の味に舌鼓を打っていた。
二人は食べ終わると、休憩時間にアキトと話をさせて貰えるようにサイゾウへ頼んだ。
サイゾウは二つ返事で了承すると、アキトへ話しが終わるまで休憩にするから時間を気にせず行って来いと背中を叩いた。
そうして3人は一旦お店を出ると近くにある喫茶店へ行く事にした。

「えっと、二人ともどうやって...?それと...アイちゃんは?」
「アキト、そんなに焦らないの。ちゃんと話すから安心して?」

道中でどうしても気になってしまい問いかけるが、そう言われてしまうと黙るしかなかった。
喫茶店へはすぐに到着した。
個人経営らしくマスターとその奥さんと見られる女性が働いていて、落ち着いた雰囲気をしている。
一つ一つのテーブルがゆったりと余裕をもてるようにスペースを空けてありソファーも深く座れるようになっていた。
3人は奥の席へ向かうと、奥側へアオ、その横へマナカ、手前にアキトが座った。
すぐにホールにいた女性が注文を取りに来たので全員アイスコーヒーを頼む。
3人分届き、一息つくとアオが口を開いた。

「さて、一つずつ答えるね。
まず最初に、どうして私達が助かったか。それはアキト、貴方のおかげよ」
「俺のおかげ!?」

思ってもみなかった言葉に思わず声を上げる。

「そ、信じられないかもしれないけどアキトのおかげなの。
その要因の一つはアキトがしていたネックレスよ。
ねぇアキト、首から下げてたネックレスはいつ無くしたの?」
「ネックレス?えっと...火星で訳が分からなくなって...気がついたら地球で、その時にはなくなっていた」
「そのネックレスって誰から貰ったか覚えてる?」
「両親にお守りだっていって貰った」
「うん、それと、両親共に科学者だったのは覚えてる?」
「あぁ、覚えてるけど...姉さん、それに何の関係があるんだ?」

今一つ煮え切れない質問ばかりでアキトは少し苛ついた。
しかし、そんなアキトを気にもしないでアオは続けた。

「全部関係があるの。
私達の親が研究していた内容の中にボソンジャンプっていうものがあるの。
そのボソンジャンプっていうのはいわゆるワープとかテレポートに近い現象なのよ。
ある場所から一瞬である場所へ距離とか関係なくぴょ~んと飛んでこれるの。
詳しい原理はこの際うっちゃって、問題はそれが起こる為に必要な物があって」
「それが、あのネックレス?」
「そ、そういう事。理解が早くてお姉ちゃん嬉しいわ♪」

アオは本当に嬉しそうにニコニコと笑うと褒めた。
だが、余りの事にアキトは素直に信じられない。

「でもそんな、それじゃ漫画じゃないか」
「アキト。現に私達3人は今地球にいるわ。それが証拠よ?
今理解しろなんて言ってないのよ。とりあえずそういう物だって受け入れればいいの」
「でも、なんでボクにそんな事が?」

何故自分なんかに?そういう疑問がアキトの頭に浮かんだ。
自分を今までただの人間だと思っていたのにいきなり特別扱いされたような気がしていた。

「それは貴方だけが特別な訳じゃないのよ。たまたま貴方がジャンプ出来るようになるアイテムを持っていただけなの」
「どういう事?」

そんなアキトの内情をわかっているのか、安心させるようにアキトだけではないと言い聞かす。
それを受けて幾分安心したアキトはその理由を尋ねた。

「えっとね、火星で生活した事がある人には出来るみたいなのよね、何故火星だけなのかまではわからないわ」
「じゃあ地球の人がやろうとしたら?」
「自分でやろうとしてもそもそも出来ないし、近くにいても巻き込まれもしないわ。
乗り物に乗って、それごとジャンプするなら出来るだろうけど、愉快な結果にはならないと思う」
「そっか...というか、姉さんは何でそんなに詳しいんだ?」

話しの最初の方では突拍子もない事ばかりでただ驚いていたアキトだったが、ここに来てようやく落ち着いてきた。
そこでようやく自分の姉が何故こんなに詳しいのか疑問に思った。
息子である自分でさえ知らない親の研究について知っていて、しかもかなり詳しいのだからもっともだろう。
それに対してアオは「火星で私が言った事覚えてない?」と返す。

「火星で言ったでしょ?私がいたのは研究所よ。しかも両親の研究データを盗んだやつの。
研究所のシステム掌握してたからデータは全部頭の中入ってるのよね」
「へぇ~~~...」

凄い便利だなと素直な感想をアキトは漏らした。

「それで、今の話は大丈夫?」
「あ、うん。そういうもんだって事なんだよね?」
「そ、アキトがいい子でお姉ちゃんは鼻が高いです。いい子いい子しちゃいます」
「ちょ!やめ!!」

そう言うとアオはほんとにアキトの頭を撫でいい子いい子と言っていた。
アキトは恥ずかしがって顔を真っ赤にして逃れようとしている。
マナカはそれを見ながらクスクスと笑っている。

「それで次にアイちゃんの事だけど、一旦小休止入れましょうか」

そういうとアオは「ん~~~っ!」と背伸びをした。
そしてしばらくまったりと談笑をする。

「二人は今ネルガルにいるんだっけ?」
「そだよ~。私と同じ境遇の子二人とマナカさんとの4人暮らし~」
「へぇ、そうなんだ」
「ものっ凄い可愛いのよ。でもね、ルリちゃんもラピスも私のものだからね。
それに私もあの子達のだからあげないからね!」
「取らないよ!」

お手付き許しません!とばかりにアキトを可愛く睨むアオだが、言葉の内容がかなり危ないのはわざとなのだろうか。。
3人の事を応援してるマナカはそんなアオの発言など全く気にせず、むしろ煽っていく。

「アキトさんは節操なしな気がしますから、アオさんは気をつけて下さいね」
「私としてはマナカさんが首根っこ捕まえてくれると安心出来るんですけどね~」

それを受けてアオはマナカを炊きつけるような言葉を返した。
炊きつけられたマナカの目に危ない光が宿る。

「あら、そんな事言っていいんですか?本気になりますよ?」
「がんがんいっちゃって下さい。優柔不断で朴念仁なアキトに大人のオンナをたっぷりと教えてあげて下さい♪」
「えぇ、お姉様の了承も出た事ですし、アキトさんに手取り足とりお教えする事にします」
「二人ともこっちの意見は完全無視かよ!」

女性同士のこんな会話に慣れてないアキトは顔を真っ赤にして怒鳴る。
それを見ながらアオとマナカは可愛いと更にからかう。
それを受けて、ついにアキトはふてくされたようにそっぽを向いた。
そんなアキトを愛おしい者を見るように二人は眺めていた。
しばらくそっぽを向いていたアキトは神妙な表情に変わると、二人へ向き直った。

「姉さん、マナカさん」
「アキト。どうしたの?」
「アキトさん?」
「あの時、気がついたら地球にいて本当に何が起こったかわからなくて...
これは夢なんじゃないかって思ったこともあった。
一人みんなを置いて逃げ出したような...
みんなと一緒に死ねずに置いて行かれたような...
そんな気持ちになって、こんな何も知らない所に一人でいて心細くて...
でも、姉さんとマナカさんを...助けられたんだって実感したら凄く嬉しくって...」

そこまで続けると、アキトの目から堪え切れずに涙が溢れる。
それを見て二人は立ち上がるとアキトを優しく抱擁した。

「そう、私とマナカさんは貴方のおかげで助かったんだよ。
だから、何も気に病まなくていいの。頑張ったね、アキト。
それと、助けてくれてありがとうね」
「アキトさん、本当にありがとうございます。
アキトさんのお陰で私もアオさんも命を永らえてこうしてアキトさんに出会えています。
だから胸を張って下さい」

そのまましばらくの間、アキトは溜まっていた何かを出し切るように泣き続けた。
二人はアキトが落ち着くまで、そのまま好きにさせていた。
しばらくするとアキトは顔を上げ、頬を染めながら服を濡らしてすいませんと謝った。

「お姉ちゃ~んって感じで可愛かったから大丈夫。また泣きそうになったら私を呼んでね?」
「アオさん、姉が慰めるのは小学生までですよ。アキトさんは大人ですからその役目は恋人がするべきです」

しかし、そんな言葉もからかいの種になってしまい、またアキトはしどろもどろになってしまった。

「さてさて、後はアイちゃんの事なんだけど」
「うん」
「率直に言うと、火星に居ます!」
「火星?地球じゃないの?」
「そこにはまたさっきのボソンジャンプが出てくるの。
ボソンジャンプで飛ぶ先を決定するには何かをイメージする事が必要なの」
「イメージ?」
「そ、イメージ。私はマナカさんとくっ付いて飛んできたから例外。
マナカさんは地球生まれなので、地球へ飛んできた」

しかし、アキトも地球へは来た事がない。
そんな自分が何故ここにいるのだろうと考える。

「でも、俺は地球へ来た事なんかないけど?」
「うん、だけど地球がどういう所か知ってるでしょ?
それと何か気になる事が地球にあったんじゃない?
例えば昔好きだった子が地球に引っ越してるとか、そういうの」
「う~~~ん...」
(両親の死の真相を知っていそうな幼馴染はいるけど好きだった子っていたかな?)

とほぼ当たっている事を考えていたアキトだった。
しかし、それ以上浮かんでこないのかアキトは好きな子?好きな子?としきりに頭を捻っている。
そこから言葉を繋いだのはマナカだった。

「あの子は、アイは8歳でしたから地球がどういう所かなんて詳しく知りません。
私も忙しく、ユートピアコロニーから出た事もありませんでした。
ですから、今いるとすればユートピアコロニーのどこかだと思うんです」
「そんな!それじゃあ!」
「ですが、全部のシェルターがどうなったかなんてわかりません。
ですが、こうして私もアキトさんもアオさんも生きています。
ですからあの子も必ず生きています!生きてるはずです!」
「すいませんでした」
「いえ、気になさらないで下さい」

母親としての必死の訴えにアキトは口に出そうとした言葉を恥じた。
マナカはすぐに自分の心情を察して謝ったアキトに対して不快には全くせずすぐに許した。

「それで、アキトさん。私とアオさんはアキトさんにお願いに伺ったんです」
「お願いですか?」
「アキトさん。一緒に火星に行って頂けませんか?」
「火星に!?どうやって!?」

まさか火星へ行けるとは思っていなかったアキトは思わず声を上げる。
そこからはアオが言葉を繋いだ。

「私が説明するね。私とマナカさんが今ネルガルにいるのは火星に行く為なの。
あるプロジェクトがあって、その目的は火星へ行って生存者の発見と救助をする事。
ただ、火星生まれというだけで参加出来る訳でも船に乗れる訳でもないの」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「アキト、IFS持ってるわよね。
行って帰ってくる間だけでもいいからパイロットやってくれないかな?
それで、私達を守って欲しいんだ」
「な!!」

『なんでパイロットなんかを!コックがやりたいのに!』とアキトが口に出す前にアオは言葉を続ける。

「アキトがコックをやりたいのは知ってるし、それを諦めろって事ではないの。
でも、IFSを持ってるアキトならそれが出来るの。
私達を救ってくれたアキトが守ってくれるなら私達は安心して船に乗っていられる」
「オレが、守る?」
「そう、訓練もあるから凄い大変になると思う。
ただ、雪谷食堂で働きながらでもなんとかなるしなんとかしてみせるわ。
だから、アキトにお願いしたいの」
「オレの...出来る事...」
「うん、戦うコックさんだね」
「...わかったよ、姉さんとマナカさんの乗る船はオレが守る」

火星に行ける事は凄い魅力的だった。
しかし、自分の夢を諦める事や曲げる事を許せるほど年を重ねている訳ではなかった。
だが、大変ではあるが両立は出来る、何より自分の大切な人を守るという事に元が熱血なアキトは惹かれていた。
そしてアキトは了承した。
その言葉を聞いた二人は安心したように息をついた。

「急に色々とごめんね、アキト。
でも決めてくれて凄い嬉しいよ、ありがとう」
「私からもありがとうございます。
アキトさんも行って下さるなら、アイもきっと喜びます」
「そんな褒めないで下さい。
姉さんもアイちゃんもマナカさんもしっかりとした形で救えなかった、守れなかったんだ。
次こそはしっかり守ってみせるよ」

火星では中途半端だった。しかも一番小さな女の子は火星に残したままである。
次こそはしっかり守って見せる。救ってみせると自分に言い聞かせていた。

「うん、頑張れ、アキト。
それでね、実は契約書を預かってきちゃってるんだ。
ちゃちゃっとサインしちゃって欲しいな」
「なんでそんなに用意がいいんだ?」
「だって次いつ来るかわからないじゃない?
早めに契約した方がお給料も早く出るの♪」

そう言うと手早く契約書について説明していく。
アキトは若干乗せられたような事を感じながらも真剣に内容を聞き、サインした。

「うん、おっけーだね。
それで、実際船に乗るまで何もしない訳にはいかないのはわかるよね?」
「それくらいはわかるけど、何すればいい?」
「ただ、エステバリスもちゃんとしたのが出来てなくてテストパイロットとしての登場もまだ出来ないのよね。
そこでアキトには私達がサセボに来るまで体力作りをして貰います。
という事で、はいこれメニュー」

そう言うとあらかじめ用意しておいたトレーニングメニューを出してくる。
かなり細かい説明まで載ってる上にぱっと見でもハードな内容だとわかる物だった。

「なっ!なんでこんなの用意してあるんだよ、姉さん!
くそ、最初からそのつもりだったな!」
「んっふっふ~。内緒です。もう契約書にサイン貰ったから撤回させない。
それに、さっき言った事自体は本気よ?
それともアキトは自分の言葉がその場限りの嘘だって言うつもり?」
「ぐっ...そんな事はない...けど、姉さん汚ねぇ...」

自分が乗せられた事に気付いたが、さっきの気持は嘘ではない。
やり切れなさを感じながらも元来真面目なアキトは頷くしかなかった。
せめても自分を手玉に取る姉を罵るくらいは許されるだろう。

「こっちに来たらパイロットとしてもビシバシ鍛えてあげるからね。
楽しみに待っててね~♪」
「はっ!?姉さん、操縦出来るのか!?」
「え!!アオさん乗れるんですか?」

しかし、それもアオの一言で崩れる。
マナカも知らなかった事にアキトと二人で驚愕する。

「お姉ちゃんに不可能はないのですよ~」
「うわっ騙された気分だ...」
「私もそこまで出来るとは知りませんでした...」
「騙したとか言わないの。決めたのはアキト自身よ?
お願いはしたけど、誰も強制はしてないでしょ?」

それからアオはアキトに散々「ずるい!汚い!」と言われるが、楽しそうに笑いながらのらりくらりと交わすだけだった。
マナカもエステバリスに乗れるという事実には驚いたが、アキトが気負いしないように冗談めかすアオの優しさにクスクスと笑みを零していた。
それでも最後は持ち前の真面目さからコックもパイロットも頑張るという形に落ち着いた。
そして話しも尽きた頃合いを見て、3人は喫茶店から出た。

「それじゃ、私達は戻るね。店長さんへ美味しかったですって伝えておいて」
「アキトさん、お元気で」
「はい、姉さんもマナカさんも気をつけて」
「今度はルリちゃんとラピスも連れて4人で来るからね」
「そっか、楽しみにしてる」

そうしてアオとマナカはアキトと別れサセボを発った。


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