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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_24話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/11 07:03
その日、アオ達が住む家は甘い匂いが充満していた。
チョコレートやココアに生クリーム、バターの匂いもあるだろうか、その元はキッチンからである。
そこには、大量のチョコレートやココアを中心にお店でも開くのかという程の状況が広がっていた。

「...ルリちゃん、ラピス。頑張ろうか」
「アオさんの案に賛成しましたけど、これを見るとどうしようって思いますね」
「アオ、1日で終わる?」
「終わる...かなぁ?」

アオとルリ、ラピスは2月13日のこの日有給を取っていた。
アオの発案でいつものお礼も兼ねてという事で2月14日に男性も女性も関係なくサセボドック全員+αへチョコを贈ろうという話になったのだ。
実際に作るのはガトーショコラで直径が10cm弱の小さい物を沢山作り一人一個贈る事にした。
ただ、サセボドックでの作業人数は280人近くいる。
失敗もあるだろうから切りよく300個作る事にしているのだが...
必要なチョコレート9kg、ココア6.75kg、卵黄900個(メレンゲに450個)、上白糖12.75kg(メレンゲに6.75kg)、無塩バター9kg、生クリーム2250cc、薄力粉3kgといった量である。
アオ達はちょっと後悔していた。

作り始めたのは朝7時、途中休憩も挟みつつ総て焼き終わり包装も済ませた際の時間は夜23時近くになっていた。
そこからもう一踏ん張りと気合いを入れ直し、片付けを終わらせた頃には日付が変わろうとしていた。
ルリとラピスは疲れ切っており、エプロンもそのままにリビングのソファーで肩を寄せ合って疲れ切った表情をしている。
アオと一緒に朝走っているとはいえ、肉体的にはまだ10歳前後である為に無理もない。
そんな二人をリビングに残し、アオはまだキッチンで作業していた。
そして、日付が変わり2月14日になったのを見計らって大きなお盆を持ってキッチンからリビングへ出てきた。

「はい。ルリちゃんとラピスへ私からのバレンタインチョコだよ」

そうして出てきたのはチョコレートフォンデュのセットだった。
中央でキャンドル立てに陶器製で丸みを帯びた可愛らしい形のフォンデュポットが乗っていた。
そのポットを囲むように沢山の果物が用意されており、全部一口サイズになっている。
アオはお盆をリビングのテーブルへ置くと、ルリとラピスの間に座る。
アオの右手にルリ左手にラピスが座っており、目の前の果物達に向けて獲物を狙うような視線を送っていた。

「チョコレートは見飽きてると思うけど口には入れてないからね。大丈夫だと思って作ってたの」
「疲れた時には甘い物と言いますからとても嬉しいです。果物が美味しそう...」
「アオ、食べていいの?」
「うん。みんなで食べよう」

ラピスが我慢出来ないと可愛らしく目で訴えかけるのでアオは楽しそうにいただきますをする。
チョコレートと果物の甘さが疲れた身体にはかなり美味しく感じられ、どんどんと食が進んでいった。
そんな中、アオがバナナにチョコレートをまぶして食べようとした時。

「あっ」

欲張って沢山つけすぎてチョコレートが垂れ落ちそうになった。
慌てて左手を添えて口に近付け食べたのだが...添えた手の人差し指と中指へチョコレートが垂れてしまった。

「アオさん。意地汚いですよ?」
「アオ、行儀悪い」
「あ、うん...」

二人に叱られてしまった。
だが、そのチョコレートを見ていたアオは生返事で返す。
そんな気の抜けた返事をするアオにルリはいぶかしげに視線を送ったのだが、アオの目がスッと細くなるのを見て身の危険を感じた。
逃げないと駄目だ!でも動くのはもっと駄目だ!とルリの直観が激しく鳴り響いている。
ルリの直観は正しすぎるくらいに正しく、既に手遅れである。
ラピスもそれは同様で思い切り硬直している。
そんな中アオは愉しそうにクスクスと嗤うといい事思い付いた♪と呟いた。
その瞬間ルリとラピスの脳裏では終わった...と何かが囁いていた。

「ね、ルリちゃん?」

いつの間にかフォークを置いたアオの右手はルリの左手を包んでいた。
アオはとても優しく綺麗な目をルリへ向けている。
声色も優しすぎるくらいで、逆にあり得ない程の柔らかい雰囲気と口調に獲物を安心させる罠のように思えてくる。

「え...あの、アオさん?」
「バレンタイン...だよね?」
「え、あ、はい」
「チョコレートフォンデュ食べてるよね?」
「は、はい」
「じゃあ、このフォンデュも食べてね?」
「え、あの!?」
「ルリ、あ~ん...」
「あぅ...あ、あ~ん...」

何かのスイッチが入っているアオにルリが逆らえるはずもなく、チョコレートをお互いの手ずから食べさせあっていった。
その間アオの言われるがまま、されるがままになったルリは恥ずかしさとアオの雰囲気にやられてのぼせていく。
ルリがのぼせ上がるまでそれは続き、ルリが撃沈した後は顔を真っ赤にしてその様子を見ていたラピスへと矛先が向いていった。

「ラピス。放ったらかしにしてごめんね?次はラピスだから安心してね」
「あ...アオ」
「ラピスも一杯食べてね?」
「はぃ...」

顔を真っ赤にしてソファーへ沈んでいるルリとラピスはとても幸せそうな顔をしていたそうだ。

次の日、朝のトレーニングの際にアキトは違和感を感じた。

「えっと...何があったの?」
「うん。聞かないでくれるとお姉ちゃん嬉しいな」
「わ、わかった...」

いつも以上にアオとルリ、ラピスの距離感が近いのだ。
とても嬉しそうに腕を組んでるのだから近いも何もないのではあるが、流石に鈍感なアキトも気になった。
だが、どこか自嘲的に苦笑いをしながらアオが言うのでアキトもそれ以上は聞かない事にした。

そして、その日の朝のトレーニングが終わり別れ道へ差し掛かった時の事。

「アキト。バレンタインです。私とルリちゃんとラピスの3人からになるから食べてね」
「サイゾウさんの分も一緒にお渡ししますから両方食べないで下さいね?」
「アキト、ホワイトデー楽しみにしてる」
「あ、ありがとう。そうか今日ってそんな日だったんだね」

アキトは言われて初めて気が付いたようだ。
雪谷食堂の客は男が多いせいもあるのだろうが、そういう行事に無頓着なのだ。

「そうだったの。ホワイトデーは何かお菓子でも焼いてくれればいいからね?変に頑張って高価な物とか考えないように」
「あぁ、わかった。腕によりをかけるよ」

アキトは凄い嬉しそうに返すと、元気に走って帰っていった。
これから一ヶ月、アキトはお返しのお菓子の事で頭を悩ませる事になった。

サセボドックでは、最初アオ達で手分けして手渡しして行こうと考えていた。
しかし、アオに会えばチョコが貰えるという情報がドック内を駆け巡る事になり、さながら握手会の様にガトーショコラの手渡し会場が出来あがってしまった。
主催はやはりというか、ウリバタケである。ウリバタケはアオ達の事を聞くと、すぐにリストを作り上げ入館証で受け渡しのチェックをしていった。
貰った男達の中には初めて貰ったという者もいて、そういった者達は感激に涙さえ流していた。
そして女性達にも大好評で、作り方をアオ達から教わっている者もいた。

そうしてサセボドックの全員へ渡し終わると、アオ達は紙袋を抱えてネルガルへと跳んだ。

「ナガレにエリナ、やほ~」
「アカツキさん、エリナさん、お久しぶりです」
「アカツキ、エリナ、元気?」
「これは綺麗なお城様が3人お揃いで、眩しいくらいだね」
「アオにルリさn、ラピスさんもお久しぶりね。もうお茶の用意は出来てるわよ?」

既に連絡を入れてあったので、アオ達が来る前に応接室に用意は済ませていたようだ。

「私達からのバレンタインだよ。エリナとプロスさん、ゴートさんにNSSの分もあるよ」
「そうかい、早速頂く事にするかな。エリナ君、プロス君とゴート君を呼んでくれ」
「えぇ、わかったわ」

そうしてアオ達は応接室へ向かった。
アオがガトーショコラを出し、人数分のお茶を淹れ終わる頃にプロスとゴートは到着していた。
アオ達は挨拶を交わすと、プロスにNSSの分が入った紙袋を手渡した。

「ありがとうございます。渡す時に調子に乗らないようにと言い含めて起きます」
「あはは...じゃあ、ホワイトデー楽しみにしてると伝えておいて下さい」
「そうですな。精々いい物を送るように仕向けますよ」
「よろしくお願いします」

プロスが言ったのはアオが怒った一件の事だろう。
アオは苦笑いを返すと、その代わりにと少し意地悪を言ってみた。
それはプロスの画策によりNSS内で誰が一番いい物を渡すかという争いになる。
その結果、最高額はNSSの給料数ヶ月分というモノが贈られる事になった。

「凄い美味しいわよ。それに見た目も可愛いわね」
「確かに美味しいねぇ。また次は大きいホールでも食べたいな」
「流石アオさんですな。とても美味しいです」
「うむ。売り物と言われても違和感が無い」

お茶会が始まり、ケーキを食べたアカツキ達は口々に賞賛する。
アオ達はそれを嬉しそうに聞いていた。

「ありがとう。ナガレ、覚えてたら今度はホールで作って持ってくるよ」
「本当かい?言ってみるものだねぇ」

その後しばらくの間、近況についてなどを話題に盛り上がっていった。
その途中、アオが『そういえば最近、サセボドックで変な視線を感じる』と呟いた。
その言葉にルリやラピスを含めて全員驚く。

「...どういう事だい?」

その言葉にアカツキとプロス、ゴートの目線が鋭くなる。
ルリやラピスは自分も知らなかったので、不安そうな視線をアオへ送っていた。
その様子を見たアオは慌てて弁解をした。

「あ、変と言っても危ない物じゃないから安心して」
「そうなのかい?なら、尚更どういう事なんだい?」

アカツキの言葉に全員が頷く。
そうしてアオは最近のサセボドックの様子を話しだした。

「えっとね。いつ頃からかな...そう、12月前からたまにサセボドックの人達が私を見て噂話してる事があったの。
その頃は本当にたまにだったし、私達はピースランドの関係者でもあるし珍しい容姿だからそれかなって思ってたんだよね」

アオの話を全員が真剣に聞いている。
アカツキやプロス、ゴートは何か不審な事があったらすぐに動く気でいる為、それこそ一言も漏らさないように真剣だ。

「妙だなって思ったのは年が明けて1月半ば辺りだったかな。その噂話をされるタイミングが次第に増えていったの。
それでも危険な感じはしなかったしみんな楽しそうに話してるから気にはしてなかったんだけど...」
「けど?」
「うん。この間ね、用事でサセボの街に出てる時、事務の人と偶然会って喫茶店で少し話をしたの。
その時にご飯の話題になったのはいいんだけど、その事務の人がどうも私の夕飯事情に詳しいみたいだったの」

そこまで話が進んだ時に、ルリとラピスの身体が強張った。
アカツキ達も得心がいったという表情になる。
そのみんなの表情を見て、アオは何かを確信したように目を細める。

「それでね、家に帰った時にダイアとフローラ呼んで知らない?って聞いてみたの。
二人とも一所懸命何かを隠してるみたいだったからその時は敢えて問い質さなかったんだよ。
ね、ルリちゃん、ラピス。それと、ダイアとフローラもね?」
「「『『は、はひ!』』」」
「...隠してる事ない?」
「「『『な!何もな!』』」」
「隠してる事...ない?」

覗き見してるのを知ってたかのようにダイアとフローラも呼び出して4人に問い質す。
ルリ達は冷や汗を流しながらないと言おうとしたが、アオに言葉をかぶせられると押し黙ってしまった。
その様子をアカツキ達は苦笑しながら見ている。

「みんなが私に内緒にしたりなんて...しないよね?」
「「『『あの...えと...』』」」
「いつか言おうと思ってたんだよね、わかるよ。だから今教えてくれるんだよね?」
「「『『...はい』』」」

こうなったアオはとても怖い。
ルリ達はすべて話す事にした。

「最初はですね、私とラピスも知らなかったんですよ。私やラピスもアオさんの言う1月辺りにみんなの噂話が気になったんです。
その時に私とラピスは会話の内容を知ろうと思ってダイアやフローラへ頼んだんですが...」
『『断りました』』
「そう、この二人は断ったんです。それでラピスと一緒に問い質して無理やり聞きだしました」

アオは真剣に聞いている。
アカツキ達も噂話の原因となっているモノを知ってはいるが、それが出来る経緯が聞ける事が面白いのかこちらも真剣に聞いている。
そして、ルリの説明を受け継いだのはダイアとフローラだった。

『最初はルリのパパさんから、傍にいてやれないルリとラピスの普段の様子を見たいからって頼まれたんだ』
『そうです。それで、私とフローラで協力をして私達の記憶から映像を編集して送る事にしたんです』
『こちらに跳んで来て、アオがルリとラピスと私の中で生活し始めてからの映像が一番古いやつだよ』
『はい。それ以降、1週間分の記憶から抜粋して30分へ編集していったんです』
『私達も自分の記憶をまとめる作業が楽しくて、どんどん編集に凝っていったの』
『でもですね、私もフローラもあんな事になるとは思ってなかったんです』

ダイアとフローラはプレミアの頼みで普段の生活の映像を送り続けている事を白状した。
だが、アオやルリ、ラピスへ黙って送っていたのには驚いたが、プレミアの言う事もわかるので問い詰める事はしなかった。
しかし、アオにはプレミアへ渡した映像がはるか遠くの日本のサセボドックで噂話の原因になっているのか掴めていなかった。
そしてそれからの話はまたルリが続けて行く。

「それでですね、父上は思ったそうです。この可愛い娘達の姿をみんなに見せてやりたいと...」
「なっ!!!」

なんて親馬鹿なんだろうか、そこで初めてアオが声を上げた。
そのルリの発言にはアカツキ達も驚いたようだ。

「普通はそんな事出来ません。ただ、父上は今ではピースランドの国王ですから...」

そう言ってルリは頬を染めながら顔を伏せる。
自分の父親の親馬鹿加減を娘である自分が話すのは相当に恥ずかしいのだろう。

「父上は当時からあったピースランド国内へ放映されている専用チャンネルで週1回、流し始めたそうなんです。
私やラピス、それにアオさんも加わった普段の生活。これでも姫ですから、放映当初からかなり人気が出たそうです」
「うわぁ...」

アオは流石にひいていた。
アカツキ達も苦笑気味である。
しかし、プレミアの親馬鹿加減はその程度で納まらないのである。

「あの、アオさんはあまりプライベートでネットをしないから知らないと思いますが、動画投稿サイトって知ってますか?」
「うん、知らない」
「アオ、こういうサイト」

ラピスがそう言うと、いくつかある大手動画投稿サイトのウィンドウが開かれる。
その中でも世界中で見られている貴方が管だったりするサイトや日本で最大手であるにこっとしちゃうようなサイトを見てアオは唖然とする。

「え...これって...?」
「最初は無断でのアップロードだったそうです。
ですが、その報告を受けた父上は『それを使えば世界中の者へ娘達の愛い姿を見せる事が出来るのだな!』と答えたそうです。
そしてそちらのYou■ubeと契約したのが12月半ばだそうです。
その後私達が住む日本には毛色が違う人気のサイトがあると知ってそのニ□ニ□動画と契約、それが12月末の事だそうです」
「そうなんだ...」

唖然としすぎてどう反応すればいいのかわからず、アオはただその二つのサイトが映るウィンドウを見つめていた。
特に凄いのがニ□ニ□動画の方で、映像途中で色々文字が流れていっている。
『アオは俺の姉』だの『アオルリは正義』だの『アオラピは絶対』だの『公式が病気すぎるwwwww』だの色々と流れている。

「ねぇ、ルリちゃん、ラピス。アオルリとかアオラピって何?」

応接室の空気が凍った。
本当の事をここで言ってしまうとどんな反応をするかわからない。
ルリはそんな中なんとか声を絞り出す。

「アオさんと私、アオさんとラピスがとても仲がいいので羨ましがって書いてるんですよ」
「へぇ...」
「それでですね、これで逆にいい事もあるんです」
「ん、いい事?」
「はい。これだけ配信されてるのが認知されてると私達を襲おうとするような人はまず出ません」
「確かに...そうだけど.....」

私生活を覗かれているのと同じ事なのだからアオがいい顔をしないのは当然である。
それは何よりもルリやラピスの無防備な姿を衆目に晒したくないというアオの想いだった。
しかし、そんなアオの想いとは裏腹に、ルリとラピスはアオと自分達の関係を周知の事実にさせる為に敢えて流していたりする。

「それに、ダイアとフローラが編集したのは送る前に私達でチェックしてますから絶対変なのは流しません」
「ルリちゃんがそこまで言うなら大丈夫なんだろうけど...ちょっとね.....」
「後ですね、実際に今人気があるのはもう一つの方なんです」
「え、もう一つ!?」

普段の生活を見られる事も嫌だと思ってるのにその上もう一つと言われてアオは思わず声を荒げた。
その反応を予想していたアオは間髪いれずに一つのウィンドウを開く。

「この映像を見れば内容はわかると思います」

ルリがそういって流し出したのはアオとルリ、ラピスの3人が料理を作っている姿だった。
アオ達の手元を中心にして軽い解説を交えつつ料理が進んでいく。

「あれ、これって...」
「はい。私達が毎晩作る料理の手順を編集して料理番組にしてるんです。
お菓子を作る時の様子も撮っていて、この番組が凄い人気あるんです」
「人気?」

自分達の作る料理手順を番組にしてそれが人気があると言われ、元々コック志望だった頃のアオの想いが反応した。
思わずルリに聞き返すその目には戸惑いと期待が伺える。

「はい。放映元のピースランドはともかくとして投稿サイトでもかなりのPVがありますよ。
それに目をつけて料理本を出さないかという打診も入ってるらしいです」
「本なんて柄じゃないから嫌だけど、料理で人気があるのは正直嬉しいな...
そうなると、ルリちゃんが勉強の為に解説しながら料理してって言ってたのは?」
「実際に勉強の為でもありましたが、一石二鳥と思ってたのは本当です...」

実はある時期からアオに料理を作る際何に気をつければいいか、コツは何かなど解説しながら作って欲しいとルリは頼んでいたのだ。
ルリの勉強になるならと話しながらしていたのだが、そういう用途もあったとわかり少しショックを受けた。

「ここまで広まってたらもうどうしようもないんだろうけど。
そういうのは最初から言って欲しかったな。特にダイアとフローラ?」
『『ごめんなさい』』
「ルリちゃんとラピスもね。事後承諾は嫌いです」
「「はい、ごめんなさい」」

24時間常に撮ってると宣伝してるようなものなので、襲撃を受けにくいという話ももっともだ。
そして料理を撮った映像が人気という事が結構大きかったのも事実である。

(ルリちゃんとラピスのしたいようにさせよう)

なんだかんだとルリとラピスのわがままなら聞いてあげようと思うアオは甘いのだろう。
最後にはそう考えていた。

「ルリちゃんの言ってる事もわかるし、もうどうしようもないならせめて存分に活用して襲撃者を牽制して貰うしかないかな」
「アオ君。よく思うんだが、君って本当に器が大きいよね」

アカツキが思わず言葉を投げかけた。
普通なら今すぐ全部消してと叫びだしてもしょうがない程の事だからだ。
それを苛つく程度で済ませて最後にはしたいようにさせるなんて普通の器ではありえないだろう。

「ん~、昔はその場の感情だけで動いてことごとく失敗したからね。そのせいだと思うよ。
それにルリちゃんとラピスの事は信頼してるからね。もしそれで何かあっても私がなんとかするって決めてるし」
「それを器が大きいって言うんだよ、アオ君」

アカツキは心底感心したように褒めた。
ルリとラピスを秘書に据えて、ネルガルの社長でも任せたらかなりうまくやるんじゃないかとも思っていた。
まあ、3人はそれを承諾しないだろうけどねとも思いアカツキは軽く自嘲した。
そしてアカツキは社長という言葉にある事を思い出してアオへと話を降る。

「そういえば、ピースランドで保護した女の子と一緒に何か企んでるそうじゃないか」

アオが言っているのはピースランド王立のコンピュータ・ソフトウェア会社の事だろう。
2月に入ってから正式に企業として立ち上げたそれは、アオ達が経営をしているという事もありかなり話題になっていた。
そして話題を後押ししているのがその性能である。汎用性の高さに加え軽量で安定性が抜群なのだ。
基盤となるカーネルに必要なソフトウェアをダウンロード、購入し追加していくLinuxに似たOSではある。
公式のソフトウェアの使いやすさや軽量さ、安定性が高い上に、非公式のエミュレーターによりどのOSのソフトウェアも動かせたのである。
そのエミュレーターも会社の関係者が作成したというのは公然の秘密であり、エミュレートしているとは感じさせない程軽量で安定していた。
そんなアオ達IFS強化体質者の能力フル活用というかなり反則なソフトウェア会社である。

「うん。実習ついでに会社立ち上げてみたの。エステのOSなんかも出来てるよ?」
「アオ君達に本気でかかられたら太陽系でどこも勝てないよ。早めに契約結んでおく方が得策かもしれないね」
「会社の名前は【minerals】に決まったからよろしくね」
「鉱物かい?」
「うん。ルリちゃんとラピスに倣って、保護した子達みんなに鉱物から名前を付けたんだ」
「それで【minerals】か」
「わかりやすくしてみました」

アオはそう言ってエッヘンと胸を張る。
流石にアオも実習ついでのこの会社が世界有数のソフトウェア会社に成長するまでは予想はしていなかった。

そうしてアカツキ達と談笑を続けたアオ達は最後にマナカのいるマンションへと向かった。
マナカはバレンタインのガトーショコラにとても喜んでいた。

「みんなありがと。本当に美味しいよ」
「よかった。喜んでもらえて」
「頑張りましたからね」
「えへへ」

マナカへもそのまま近況などを話しながらお茶を楽しんだ。
だが、辺りが暗くなる前にマナカが一つの提案を出した。

「折角だし、泊っていかない?」
「私、泊りたい!」

その提案に真っ先に乗ったのがラピスだった。
アオもルリも久しぶりだしという事でラピスの意見を尊重し3人で泊る事にした。
アキトへ夜のトレーニングなしね!と連絡を入れると、久しぶりに4人で夕食を作りお風呂へ入る。
そんな4人の時間を一番楽しんだのはラピスだった。

「ラピスは来る度に大はしゃぎするんだから。疲れちゃうよ?」
「ここもお家だから疲れない」
「そういうものかな?」
「うん。そういうものなの」

そうして終始ご満悦なラピスにアオ達も感化され、楽しげにバレンタインの夜を過ごしたのだった。


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