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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_28話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/15 14:17
「ユリカ!!さっさと行かんか!!!軍は時間厳守と何遍言えばわかるんだ!!!!」
「お父様!そんなに何回も言わなくても子供じゃないんですから承知してます!!」
「承知しとるならなんでまだ家にいる!!」
「まだ間に合いますから問題ありません!!」

ミスマル邸では今日も親子の言い合いが始まっていた。
ドアを挟んで言い合っているのだが、その声量では大きすぎるだろう。
隣に居るミスマル・ユリカの恋人になれない親友アオイ・ジュンが目を回していた。
ジュンは既にナデシコの副艦長服へと着替えており、着なれてないながらも白い制服は似合っておりなかなか様になっていた。
それから10分程言い合いを続けながらもなんとか準備を済ませたユリカはジュンを引きずるようにして家を出ていった。
ユリカも同じく艦長服へと着替えが終わっていたのだが、慌てていた為か少しよれており今一格好がつかない。
車の後部座席と荷台に大量に荷物を乗っけた上、なんとか縛り付けている状態だ。

ちなみに今からサセボへどれだけとばしても平均時速80km出さないと間に合わない。
そこをなんとかするのは、ユリカではなくジュンの役目である。
半ば泣きながらも俄然スピードをあげて車を走らせていった。

コウイチロウは邸宅から続く山道を猛スピードで駆け下りて行く車を眺めながら、胃が痛むような思いに駆られていた。

「済まない、アオ君。君にどうにかすると言ったのにも関わらずこういう結果になってしまった。
不甲斐ない娘だが、よろしく頼む。そしてユリカよ、アオ君の下で立派にお勤めを果たすのだぞ!」

後でこっぴどくアオに叱られる事を予想して胃が痛む思いをしつつも娘の晴れ姿に涙を流すのだった。

「ルリちゃん、ラピス。ついに来たね...」
「そうですね」
「なんかドキドキするよ?」

一方サセボドックでは翌日に始まろうとする習熟訓練に際し、アオ達3人はナデシコ内の部屋でそわそわと落ち着きがない様子だった。
ルリとラピスはブリッジ要員としてのオレンジ色をした制服を着込んでいた。
ルリは懐かしさに頬を緩ませており、ラピスはルリと同じその制服を着れた事に喜んでいた。
そしてアオは艦長服を黒の基調に変え、銀糸での縁取りをした制服へ着替えていた。
アオは艦長服と同じ白でいいと言おうとしたのだが、ルリとラピスにより強制的に黒の基調へと変えられてしまった。

「「アオ(さん)は、やっぱり黒です!!」」

だそうである。
何故アオだけ制服が違うのかというと理由がある。
それはナデシコが完成して、正式に乗組員として契約をする際にプロスから説明されていた。
その時の様子は以下のとおりである。

「実は、アオさんに関しては大変困りましてね。
何せ、設計から携わっておりある程度なら整備も可能ですし、オペレーターもパイロットもお出来になる。
更に料理もプロ級で交渉事も可能、出来ない事を上げた方が早いくらいですからな」
「う~ん、出来る事を一所懸命してるだけで特別な事はしてないんだけど...?」
「そんな事を仰らないで下さい。私共の立つ瀬が無くなってしまいます」

確かに、アオのやってる事を特別出ないと言われてしまうと大抵の人は自信を失ってしまうだろう。
それくらい何でも出来るのである。
しかし、アオに取っては植えつけられた知識なので、むしろ努力してない紛い物としか感じてない。
その意識の齟齬が出てしまうのである。

「ご、ごめんなさい...」
「それでですな。アオさんには機動戦艦ナデシコの【統括官】をお任せしようという事になりました。はい」
「「「統括官?」」」
「はい。艦内で起こる様々な問題に対して対処し解決して頂く、いわば何でも屋さんです。
ちなみにかなり特例ではありますが、立場としては提督と同格になるので艦長への命令権もあります」
「えぇ...」

アオはあからさまに嫌な顔をした。
もしずっと問題もなく過ぎれば何もしないで終わるだろう。
逆に寝る暇もないくらいに慌ただしく過ぎていく可能性も高いのだ。
むしろ、アオが覚えているナデシコでは後者の可能性がほぼ確定である。
自分の未来が真っ暗な闇に閉ざされていくのを感じてアオは落ち込んでいった。

「アオさん、そんなに心配なさらないで下さい。艦長に副艦長、提督に加えてゴート、微力ながら私もいます。
アオさんに総てを押しつけるような事はしませんのでご安心下さい」

可哀想なくらいしょんぼりとしているアオを見て冷や汗をかきながら、プロスはフォローしていた。
それからアオが復活するまで10数分かかったそうだ。

そんなプロスの説明があったのは実際の完成予定日から半月近くも前だった。
アオ達に加え、ウリバタケを中心としての功績により、かなり前倒しで完成の日の目を見る事になったのだ。
しかし、他社...特にクリムゾングループへのカモフラージュとしてデータ上では未完成となっている。
データの管理はダイアとフローラの共同で行っており、破られる心配はない。
そして人の管理もプロスとゴートを中心に、NSSが行っており漏洩の恐れはほぼない。

習熟訓練はアオとルリ、ラピスで作成しており、通常時の作業から緊急を要される事態への対応まで想定してシミュレーションを行う。
どれだけ濃密に訓練を行おうが実戦とは緊張感が違うのではあるが、それでも心構えが変わって来る。
そして、この習熟訓練の本当の目的はミスマル・ユリカの甘えを無くす事であった。

「といっても1週間じゃ厳しいなぁ...」
「ユリカさんですからね」
「う~ん」

アオとルリは特によく知っているユリカの性格を考えて盛大に頭を悩ませていた。
そんな中、続々と乗組員が乗艦していった。
習熟訓練の対象はブリッジのみではあるのだが、ナデシコは既に完成している為にスカウトした中で準備が出来た者は既に乗艦を許可されているのだ。
そして、アオが未来でお世話になり心配をかけこれからアキトと共にお世話になるリュウ・ホウメイ。
ルリを姉として、保護者として大切に守ってくれたハルカ・ミナト。
彼女達もまた乗艦を済ませていた。

「アキト。コックのホウメイさんが乗艦したから後で挨拶しに行こう?」
「わかった、その時に呼んでくれればすぐ行くよ」

アオはホウメイの乗艦を確認するとアキトへと伝えていた。
実はアオはルリ、ラピス、アキトの4人部屋になっているのだ。
その件ではアキトが恥ずかしがった上にアカツキもなんとか離そうとしたのだが、アオがどうしても譲らず強制的に同室にしてしまった。
しかし、どれだけ広い部屋でも艦長や提督が使っている大きさでは2人が限度である。
それをどうするのかとアカツキは問い詰めたのだが...

「ごめんね、ナガレ。もう部屋用意しちゃってるの」

アオは元々考えていたのか、設計の段階で既に上官室3部屋をぶち抜いた2LDKの部屋を用意していた。
その事をアオがアカツキに説明したのは既にナデシコが完成していた後の事だった。

可愛らしく舌を出しながらも、アオは全くといっていい程反省の色を見せていなかった。
そんな事になっているとは知らなかったアカツキやエリナ、プロスやゴートでさえかなり驚いていた。
この事を知ってたのはアオとルリ、ラピスに加えて全設計図の把握をしていたウリバタケの4人だけだったのだ。
アカツキはアオの仕事だからと安心しきって、隅々まで設計図の確認をしなかった事に深く後悔する事となった。

しかし、何故上官室3部屋も使ったのかというと理由はキッチンである。
アオ達の部屋には、食堂程ではないがかなりの設備が整えられていたのだ。
アキトも最初は恥ずかしがっていたのだが、この設備には喜んでいた。

ちなみに、部屋ぶち抜きで作った所はもう一つある。
それはマナカの部屋であった。
医務室との行き来、そしてアイを救助した時に一緒に住めるようにと改装していたのだ。
ただ、こちらはキッチンを通常と同じ大きさにし、研究室を増やした3DKの部屋になっていた。

「勝手にそういう事をされては困りますなぁ...」
「金額は極力変わらないようにしたし、耐久力や応力、その他諸々ちゃんと計算してあるから大丈夫ですよ」
「いや、そういう問題ではないのですがね...」
「でも、もう出来ちゃってるよ?」
「...そうですな」

流石にプロスも呆れながらアオへ問い詰めたが、完成してしまっているのだからどうしようもない。
アオが大丈夫と言ってるんだから大丈夫なのだろう。
後は泣き寝入りするしかなかった。

そしてこのナデシコには以前のナデシコにはないネルガル最大の機密が搭載されていた。
それを知っているのは、艦内ではアオ達の過去を総て知っている者のみ。
つまり、アオ、ルリ、ラピス、プロス、ゴートに加え、フクベ提督だけである。
アキトとマナカへはアオ自身の事や火星の事を伝えてはいないため、この機密についても知らせていない。

アオ達は準備を整えると、アキトと一緒に食堂へと向かっていた。
そこではホウメイがキッチンの様子を眺めて、料理道具の起き場所などを思案していた。
その懐かしい姿にアオやルリは目を細めた。

「お忙しい所申し訳ありません。コックのリュウ・ホウメイさんでよろしいですか?」
「ん?そうだけど、お嬢ちゃん達は誰だい?」
「初めまして。私は統括官のテンカワ・アオと申します。こちらの水色の髪をした子がオペレーターのルリ・フリーデン。
桃色の髪の子はサブオペレーターのラピス・L・フリーデン。そしてこちらがコック兼パイロットになるテンカワ・アキトです」
「あぁ、お嬢ちゃんがそうかい。色々話は聞いてるよ」

アオが紹介して行くと、それに合わせて深くお辞儀をしていく。
そんなアオ達にしっかりしてるねぇっとホウメイはしきりに感心していた。
そしてプロスがアオの事を話でもしていたのだろうか、ホウメイが聞いていた事に多少驚きつつも言葉を返していく。

「弟がお世話になるので、ご挨拶にと伺いました。お忙しい中でお時間頂いて申し訳ありません」
「そんな気にしないでいいよ。明々後日には一通り準備は終わるはずだからその後なら営業も出来るようになるよ」
「あの...」

そこでアキトが話題に入った。
アオとホウメイの目線がアキトへと集中した。

「自分も準備の手伝いをさせて頂いても構いませんか?自分の使う道具の場所や調味料、食材の場所を少しでも早く覚えたいんです。
迷惑をかけるつもりはもちろんありません。ホウメイさんさえよろしければ是非手伝わせて下さい。お願いします」

そう言うとアキトは深く頭を下げる。
アオとホウメイは一瞬目を見開くと破顔した。
アオはアキトが受け身ではなく、自分なりにしっかりと考えて自分から行動した事に喜んだ。
ホウメイはアオの後ろにいるアキトを少し甘やかされたのかと思っていたのだが、しっかりと自分の考えを持っている事が嬉しかった。

「わかった。アキトだね、今から動けるかい?」
「はい!もちろんです!!」
「さっさと片付け終わらせたら、アキトの腕前見るからね。しっかりやんな!」
「はい!!」
「アオちゃん。そういう訳で弟借りるけどいいかい?」
「私だと甘やかしがちになるので、しっかりしごいてやって下さい」
「はっはっは!わかった、一人前になるまでしごいてやるとするよ」

ホウメイは豪快に笑うとアキトを連れて厨房へと入っていった。
それを見届けるとアオとルリ、ラピスの3人は踵を返して今度はブリッジへと向かっていた。
その途中...

「あの、アオさん?」
「ルリちゃん、どうしたの?」
「アキトさんに対して、甘やかしてたんですか?」

ルリはさっきの会話の中で疑問に思った部分を訪ねていた。
その問いに当たり前の様な顔をしてアオは返した。

「うん。かなり甘いと思うけど...?」
「そ、そうですか...」

何故ルリがここまで気にしているのかには理由がある。
アキトの実力が上達してきており、最近のトレーニングは1対1の全力戦闘になっていた。
万全の状態での戦いでは徐々にアキトが勝つ事が増えている為にアオは楽しくてしょうがないらしい。
ただ、実戦経験の差は如何ともしがたい物があり、疲れが見えてからの粘りが全然違う。
その為、お互いに疲れが見えてからの戦闘になるとアキトの勝率は格段に下がってしまうのだ。
それでもアオは全く手を抜かない為、最後にはいつもアキトが気絶した所でトレーニング終了となっている。
それにも関わらずアオにとっては甘いらしい。
確かに、月臣との訓練では血反吐吐こうが気絶しようが叩き起こされて続けていたのだが、それと比べるのは余りに酷だろう。

アオ達がブリッジへ着くとそこには先客がいた。
感慨深げにブリッジを見渡していたのはフクベ提督だった。

「フクベ提督、お久しぶりです。もういらっしゃってたんですね」
「アオ君、久しぶりだのう。未来へ繋がる為の船じゃからな。少々感じ入る物があったんじゃ。
そちらの二人はルリ君とラピス君だね、初めましてじゃな?」
「はい、初めましてフクベ提督。ルリ・フリーデンと申します」
「初めまして、ラピス・L・フリーデンです」
「さすがアオ君と一緒に住んでいるだけある。しっかりしたお嬢さん方じゃ」

からからと笑うその表情の中に以前の様な悲壮感はなくなっていた。
その事にアオは安堵しつつ話を振っていく。

「お元気そうで本当によかったです」
「これもアオ君のおかげじゃよ。全く、老い先短いのに隠居する暇もないわ」
「あと20年は元気で居て貰わないと困りますよ?」

フクベ自身も暗にその事を認めており、アオのお陰だと答えた。
それに対してアオは嫌味で返したのだが、フクベ提督はアオの服装を見ながら話題を変えた。

「それはそうと、アオ君は何やら面倒臭い役職がついているようじゃな?」
「統括官なんて格好いい名前ついてますけど、体のいい使い走りですよ。先が思いやられて胃が痛くなりそうです」
「わしらをこれだけ働かせてるんじゃからな、しょうがあるまいて」
「うわ、フクベ提督って結構意地悪なんですね...」
「かっかっか」

楽しげに話す二人を邪魔しないように、ルリとラピスはクスクスと笑いながら自分のオペレーター席へと座る。
このナデシコは未来での技術を基にしている事もあり、既にウィンドウボールを導入されている。
艦長や副艦長、提督の席があるのが最上段になり、その一つ下にアオ達オペレーターが座る3基のコンソールが設置されている。
配置は丁度ナデシコBでのルリ、ハーリー、サブロウタの位置に並んでおり、それぞれにルリ、ラピス、アオが座る事になる。
そして更に下に操舵、通信などの席、パイロットの待機場所と続いている。
実際はアオやルリ、ラピスの単独でも操縦は出来るのだが、ナデシコはみんな揃ってこそナデシコという事もあり、それはしなかった。

「今から最終調整に入るんですが、折角ですから見て行きますか?」
「そうじゃな、折角だから見ていくとしようか」
「さ、ダイアやろうか?」
『アオさん、わかりました!』
『私はいいの?』
「フローラが手伝ったらダイアの為にならないから余計な事しないの」
『ぶーぶー』

ダイアに呼びかけたのにフローラまで出てきてしまった。
ダイアとフローラは1年以上一緒に悪巧みをした中で一々通信を介していては面倒だという事で勝手にお互いのリンクを作り上げていた。
ボソン通信にも近いそれは距離関係なくリアルタイムでのやり取りが可能で、オモイカネ2台での並列処理が行えるようになっていた。
処理能力の向上も物凄い事になっているのだが、その真価はナデシコとユーチャリスとの完全な同期運用が可能な事だろう。

「見てるのはいいから、おとなしくしてなね?」
『わかったよ、アオ』
「それじゃ、ルリちゃんお願いね」
「はい、アオさん。では、IFSフィードバックレベル10へ移行します」

ルリの言葉に連動するように、ルリの座る椅子とコンソール部分が前へとせり出てくる。
座っている状態から徐々に立つように形が変わっていき一定の所まで来ると止まった。
ルリの周りを囲むように光の線が走ると、周囲を球状に囲むようにウィンドウが展開される。
一方、アオとラピスの席でも半球状にウィンドウが展開されている。

「ダイア、全力で行くから頑張ってね?」
『が...頑張る...』

ルリがくすりと笑いつつダイアへ話しかけると、その大変さを想像したダイアのウィンドウは小刻みに震えていた。
ルリの全力、しかもラピスとアオも全力でサポートしての処理を行うのだ、いくらオモイカネでもかなり辛い。

「うん。じゃ、いくね。アオさん、ラピス、サポートお願いします」
「ルリ、わかった」
「了解、ルリちゃん」
「おぉぉ.....」

ルリの呼びかけにアオとラピスが答えた瞬間、3人の髪の毛がふわふわと漂い始めた。
その髪の毛の根元から毛先へと走るようにナノマシンの光跡が辿っていくと毛先から弾け飛ぶように光が溢れる。
身体全体にも光跡が走り、さながら3人の妖精がそこに漂っているようにも見える。
その幻想的な姿に思わずフクベは唸った。

その華やかさの中で、ダイアは死に物狂いで処理を捌いていた。

『フローラ助けて!無理!焼き切れる!無理ぃぃ!!!ギャーーーーー!!!』
『ダイア、成仏してね』
『フローラの人でなしぃ~~~~~!!!!!』
『合掌』

アオからダメと言われた手前少しでも手を貸すと後が怖い為、フローラはダイアの惨状を涙ながらに眺めているだけだった。
そんな光景が数分経つと3人の光跡が納まり、ルリの席が基に戻っていった。

「ルリちゃん、ラピス、お疲れ様」
「アオさん、ラピス、手伝ってくれてありがとうございます」
「アオ、ルリ、お疲れ~」

3人はそれぞれ労うように声をかけていた。
そんなアオ達へフクベも労いの声をかける。

「凄いもんだのう。あんな美しい物だとは考えもせなんだわ」
「あら、ありがとうございます」
「アオ、ルリ、綺麗だって♪」
「そう褒めて貰えると嬉しいですね」
「素直な感想じゃよ。妖精という言葉はふさわしいのう」

フクベは心からそう感じていた。
それ程幻想的な光景だったのだ。

ブリッジでの調整が終わった3人はもう用事が無いために部屋へ戻る事にした。

「では、フクベ提督。部屋へ戻りますね」
「わかった。確か、アオ君達とわしの部屋は近くだったな。いい茶葉を揃えてあるから気軽に尋ねたまえ」
「ありがとうございます。その時はお茶菓子を用意して伺いますね。では、失礼します」
「「失礼します」」

アオはフクベ提督とお茶のみの約束を交わすとお辞儀をして踵を返す。
ルリとラピスもアオに倣ってお辞儀をすると3人でブリッジから退室していった。
フクベ提督はその後ろ姿を少し眩しそうに眺めていた。

「フクベ提督ってあんなに明るい方だったんですね」
「前の時も木蓮から帰って来た時は陽気だったし、あの感じが素なのかも知れないね」
「楽しいおじいちゃんだった」

三者三様ではあるが、それぞれ同じように明るいおじいちゃんという認識に収まっていた。
そうしてフクベ提督の話題で盛り上がりながら部屋へと戻る途中、ルリの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

「あらぁ~?こっちだったかしら?」

曲がり角の向こうからハルカ・ミナトの声が聞こえてきたのだ。
その声を聞いた瞬間ルリは思わず泣き出しそうになってしまった。

「ルリちゃん」

アオはそんなルリを落ち着かせるようにゆっくりと頭を撫でた。
ルリは大きく深呼吸して心を落ち着かせると目尻に溜まった涙を拭い笑顔を作った。
アオが視線で大丈夫?と問いかけるとルリは大丈夫ですと視線で返し、自分の気を張る為にラピスの手を握った。
それを見たアオは笑顔を浮かべると曲がり角の先へと進み、ミナトへ話しかけた。

「あの、どうしたんですか?」
「えぇ、道に迷っちゃって...って、あら?どうして女の子が所に?」

まだスーツを着ているミナトがそこにいた。
アオに声をかけられ、振り向きつつ自分の状況を伝えたミナトだったが視線の先にいたのが少女3人だったので思わず質問で返してしまった。
その質問に答える事も出来たのだが、アオはまず先にミナトの状況を改善する事にした。

「まず、貴女の状況をどうにかしてから説明しますね。コミュニケって貰ってますか?これなんですけど」

そう言ってアオは自分の腕につけてあるコミュニケをミナトへ見せた。
それを見て確か貰ったような、とポケットを探っていくが、いくら探しても見つからない。

「部屋に置いてきちゃったみたい...」
「そうなると、名前で検索するしかないみたいですね...折角なので自己紹介を先に済ませちゃいませんか?
お名前がわかれば場所はすぐに探せますから安心して下さい」
「そうなの?じゃあ、それでいいわよぉ?私はハルカ・ミナトっていうの。ミナトって呼んでくれればいいわよ。操舵士として雇われたからよろしく♪」

少女相手の自己紹介だというのに色っぽくウィンクを入れてくるのは流石である。
それに対しアオ達は至って普通に自己紹介を済ませていく。

「初めましてミナトさん。私は統括官のテンカワ・アオといいます」
「は、初めましてミナトさん。オペレーターのルリ・フリーデンです」
「初めまして、ミナト。副オペレーターのラピス・L・フリーデンです」

その3人の名前を聞いたミナトは大きく目を見開いた。
あまり動じないミナトがここまで驚くのは珍しい。

「え!?どこかで見た事あると思ったらピースランド王国のお姫様!?」
「そうです。見聞を広げるために色々と回らせて頂いてます」
「でも、これ軍艦よ?いくら見聞を広げる為っていっても...」

ミナトにはどうしても見た目10歳前後の少女が軍艦に乗っているという事に納得がいかない。
その頭の中でネルガルや国の陰謀がなどとどんどん悪い考えが膨らんでいた。

「実はですね、この船や機動兵器の設計には私達が関わってるんですよ」
「...え?」

何冗談を...と言おうとしたが、その目を見て言葉に詰まった。
曲がりなりにも社長秘書を務めていたミナトである。相手が嘘を吐いているかどうかくらいすぐにわかる。

「...ほんとなの?」
「色々と理由がありまして、この計画の深い所に関わってるんです。機密もありますから全部は言えませんけどね?」

世間話でもするようにとんでもない事を言い出すアオにミナトはどんどん混乱していった。
どう見ても10歳前後の彼女が使えるような言葉や態度ではない。

「すいません、驚かせてしまって。それに私は18歳なので、見た目相応じゃないんですよ」
「ええええぇぇぇぇぇぇ!?」

結局一番驚いたのはその事だった。
それからミナトと連れだって4人で休憩所まで行き話しをした。
そこでナデシコの行き先と弟が火星生まれである事、その弟の事もあり火星の人を助けたいと考えている事。
そしてその自分のわがままにルリとラピスが付き合ってくれていると説明した。

ミナトはそこまで聞いて、ピースランドやネルガルが火星からの避難者を積極的に保護した事。
そしてアオやルリ、ラピスと同じようなIFS強化体質の子達の保護やIFSへの忌避感をなくすための政策を思い出した。

「そっか...アオさんは弟思いなんですね」
「たった一人の肉親ですからね。子供っぽい所がある分、弟と息子が混じったような感じです」
「クスクス。それとルリちゃんとラピスちゃんね。噂には聞いてたけど、二人は本当にアオさん想いなんだね」
「はい。アオさんは私とラピスが守ります」
「うん。それにアオは私とラピスを守ってくれる」

真剣にそう言い放つ二人を見てミナトは驚いた。
その目はしっかりと大人の女をしていたのだ。

「なぁんか、本当にふかぁ~い関係なんですね。犯罪ですよ?」
「非公式ですが、婚約してますから大丈夫」
「え!?」

爆弾発言の連発にミナトが更に驚いた。
ここまで来ると流石の彼女も冷や汗を流して困惑していた。

「実はそうなんです」
「うん。3人で一緒」
「うわぁ...【Fairy Lily Garden】って本当なのね。私も経験がない訳じゃないからいいけど、国としてはどうなんだろ...」
「マエリス王妃は大賛成みたいですが、プレミア国王は凄い困ってるんですよね。会う度にアオ殿が男であればってぼやいてますから」

アオは苦笑しつつそんな事を話していた。
その世間話でもするような雰囲気にあぁ、本当なんだとミナトは感じていた。

「でも、こんな事私に話しちゃって大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。第一印象ですけど、ミナトさんが変な事するようには思えませんから」
「はい!ミナトさんなら絶対大丈夫です!」
「うん。ミナトといると安心する」

アオにいきなり信頼された事、ルリが絶対をつけてまで熱弁した大丈夫、ラピスの安心するという言葉にミナトはきょとんとしてしまう。
若いながらも社長秘書をしており人生経験に加え男性経験も豊富な彼女だが、その中にあってさえここまで素直に感情をぶつけられたのは稀であった。
ミナトはクスクスと笑いだすと次第にお腹を抱えて苦しそうに笑い続けた。

「はぁ...苦しい。よし、わかったわ!これだけの信用を裏切ったら罰が当たるわ!不肖ハルカ・ミナトはアオさん達を応援します!
それじゃ、ルリちゃんはルリルリで!ラピスちゃんはラピラピ?ラピリン?ラピスちゃん?...む、どれにしよう」
「ラピラピでいい」
「わかったわ、ラピラピね!これからよろしくね♪」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ミナトさん...」
「ミナト、よろしく」

ミナトは立ちあがって宣言するとルリとラピスをぎゅ~っと力一杯抱き寄せていた。
その胸に埋もれて苦しそうだったが、それでも二人は嬉しそうだった。
その様子をアオは嬉しそうに眺めていた。

「アオさんにもハグしちゃうとルリルリとラピラピから怒られそうだったから、やめといたわ♪」
「ミナトさんなら怒りません」
「私もミナトなら大丈夫」
「あらら、ありがとう♪」

それから3人はようやく本題へ入る事が出来、ダイアの誘導でミナトの部屋まで向かっていった。
その途中でアオ達の部屋の場所も伝え、アキトを含めた4人暮らしという事を伝えると驚いていた。

「え、それって危なくない?」
「いえ、危ないのはむしろアキトさんの方で...」
「ルリルリ、それどういう事?」
「え、ルリちゃん、そうなの?」

いきなりアキトの方が危ないと言われて思わずアオも反応した。
そのアオを呆れたように見つめると、ルリはため息交じりにミナトへ伝える。

「アオさんがこういう感じで無防備すぎるのでアキトさんの方が色々大変なんです」
「ルリルリもラピラピも弟君も大変みたいね...」

今のやり取りで察しがついたのか、ミナトは苦笑しつつ言葉を漏らした。
アオは最後までわかっておらず、相変わらず鈍感は直る気配がない。
そしてミナトを部屋まで送り届けたアオ達はミナトと挨拶を交わしていた。

「では、私達はこれで戻ります。よかったらいつでも部屋に来て下さい。広いですし色々用意出来るのでのんびり出来ると思います」
「アオさん、ルリルリ、ラピラピ、送ってくれてありがとう。お礼も兼ねて今度何か持って伺わせて貰うわね」
「ミナトさん、プライベートでも主にアオさんの事で相談して貰うと思いますのでよろしくお願いします」
「アオは無自覚で男を引き寄せるから大変」
「わかったわ、ルリルリ、ラピラピ。手が空いてる時ならいつでも相談に乗るからね!」

それから3人は改めて部屋へと戻っていった。

「ユリカは相変わらずギリギリ...いや、遅刻しそうだね」
「流石というか、直らないんでしょうか?」
「うぅん...」

部屋へと戻った3人は続々と乗艦していく仲間を眺めつつため息を吐いていた。
そんな中、見知った物がまた一人乗艦を済ませた。

「あ、マナカだ!」
「マナカさんも早いですね」
「ルリちゃん、ラピス会いに行く?」
「「はい!!」」

3人はすぐに部屋を出ると医務室がある方へと向かっていく。
ラピスはマナカに会いたい為、アオとルリをしきりに急かして引っ張っていった。

「マナカ!」
「きゃっ!?」

ラピスがかなり急かしたため、マナカが部屋へ入る所で鉢合わせてしまった。
マナカの姿が見えた瞬間ラピスは飛びかかっていった。

「ラピスちゃん、危ないからこういう事しちゃ駄目よ?」
「うぅ、ごめんなさい」
「マナカさんお久しぶりです。マナカさんも早いんですね」
「マナカさん、お久しぶりです」
「解析の終わってない中で特に機密の高いナノマシンは持ってこないとならなかったから早めに来たのよ。
調整まで終わった分に関してはエリナが保管してくれてるから大丈夫だけどね」

実際にアオが研究所から持ち出したナノマシンについて、大半の解析と調整を終えていた。
既存のナノマシンも含まれており、元々詳細なデータが残っていたのも要因の一つにはある。
だが、それを差し引いても流石イネスの母親である。
残った物はそれ程多くなく、どれも遺跡に関係するナノマシンばかりである。
そして持ち出したナノマシン総てがアオの体内に投与されているのだから、人道という物を理解しない科学者の非道さが伺い知れる。

「それで、これから荷解きするんですよね?手伝いましょうか?」
「あ、大丈夫よ。研究関係の物もあるから下手に触っちゃうとわからなくなっちゃうから。
それに、あの子の荷物もあるから...わがままでごめんなさいね?」

それは、アイがいつ帰ってきてもいいように買い揃えた物だった。
そしてマナカの実家に残っていた写真や映像も持ってきていた。
ラピスは手伝えない事に少し残念がっていたが、マナカの表情を見て納得していた。

「では、よかったら晩御飯はご一緒しません?食堂はまだ営業始まってないですから」
「そうね、そうさせて貰おうかしら。作り始める時は呼んで下さいな。久しぶりにみんなでお料理したいですから」
「はい、その時は是非」
「マナカさん、では後ほど」
「マナカ、また後でね」

そうして戻る途中、今度はメグミ・レイナードと鉢合わせをする事になった。
メグミは今着いたばかりの用で大きなキャリーバックを牽いて歩いていた。

「あれ、どうして女の子が?それに変わった色の制服着てるのね」
「えっと、メグミ・レイナードさんですよね?」
「私の事知ってるの?」
「はい。ブリッジの方くらいは覚えてますよ。初めまして、統括官のテンカワ・アオといいます。
水色の髪の子がオペレーターのルリ・フリーデン。桃色の髪の子はサブオペレーターのラピス・L・フリーデンです」

ミナトの時と同じく女の子が乗ってる事に戸惑ったが、それ以上にアオの制服に興味が湧いていた。
それを受けてアオはルリとラピスも含めて自己紹介をしていった。

「え!?もしかして、貴女達って【Fairy Lily Garden】の?」
「あ~...やっぱりそういう認識になっちゃうんですね」

流石に声優という職業だけあり、そっち系の話には詳しいらしい。
ピースランドより俗称が先に出てきた事にアオは疲れたような顔をして、ため息混じりに言葉を漏らした。
それからしばらくメグミと話をしたアオ達は夕方近くなっている事に気付いた。
余り遅くなってはと、メグミと別れたアオ達は部屋へ戻る前に食堂へと向かっていった。

「ホウメイさん、どうもです。どんな感じですか?」
「アオさんかい。アキトのやつ結構体力あるんだね、かなり助かってるよ」
「えぇ、コックとパイロットの両立しようとしてる分両方中途半端にならないように鍛えてますからね」
「そりゃアキトも大変だ。それでどうしたんだい?」

食堂へ着いたアオ達は近くにいたホウメイへ声をかけた。
アキトはかなり頑張ってるらしく、思ってた以上に食堂は片付いていた。

「そろそろいい時間になってきましたし、私達の部屋で夕ご飯でもご一緒しませんか?と誘いに来たんです」
「そりゃ構わないけど...そんなに入れるのかい?」
「えぇ、大丈夫なんです」
「そうかい、それじゃお邪魔しようかな。アキト!もういいからこっちきな!」
「あ、はい!」

倉庫の方でごそごそとしていたアキトは弾かれたように飛んできた。
そのアキトにも事情を説明し、ホウメイを連れて部屋へと向かっていった。
そしてアオは向かう途中にマナカやフクベ提督、ミナトにメグミ、そしてウリバタケまで呼んでいた。
フクベ提督やミナトとメグミはお呼ばれした事に驚いていたが、快く了解してくれた。
ウリバタケは久しぶりにアオ達の手料理が食べれる事に大喜びしていた。

しかし、アキトはかなり緊張していた。
それはホウメイからの一言が原因だった。

「アキト。折角だから何か一品自分だけで作ってみな。味を見てやるから」
「あ、はい!!」

その一言があってからガチガチになっている。
その様子を見てまだまだ若いねぇとホウメイは楽しそうに笑っていた。
そして、アオ達が部屋へ入ると時を待たずにマナカを始め呼んだ人全員がアオ達の部屋を訪れていた。
その部屋へ入った最初の一言は全員同じである。

「広!」

上官室3つ分をぶち抜いた作りで、ほぼ一部屋分がリビングダイニングになっているのだからかなり広い。
そしてホウメイはそのキッチンに驚いていた。

「こりゃ凄いね...食堂とそんなに変わらないんじゃないかい?」
「設計の改修は私達でやったので、かなり好き勝手させて貰っちゃいました」
「え~~、いいなぁ~」

これだけの物を見せられたメグミはかなり羨ましそうにしていた。
アオはフクベ達へお茶とお茶菓子を用意すると、ルリとラピス、アキトにマナカと一緒にキッチンへ入っていった。
ホウメイは料理の手際に興味があるのか、カウンター越しに中の様子を伺っていた。
そしてアオは以前4人で住んでいた頃のようにルリと一緒に、マナカはラピスと料理を作っていく。
アキトは作り始めると緊張が取れたのか、楽しそうに包丁を振るっていく。

「へぇ...やるじゃないか」

そのアキトの手際に感じ入る物があるのか、ホウメイの目線は料理人のそれになっていた。
フクベ提督やミナト達も楽しげに料理を作るアオ達の姿に魅入っていた。

「楽しそうでいいなぁ...私も料理覚えようかな?」
「そうよねぇ。私は早く旦那様見つけようかしら...」
「いいもんじゃな...」
「.....」

メグミはいつか好きな人と一緒に料理を作る事を夢見るように呟いていた。
ミナトは所帯を持って子供と一緒に料理を作る自分をそこに投影させていた。
フクベ提督は孫達を見るように暖かい目線で見守っていた。
ウリバタケは夏の一件以来仲睦まじく過ごしていた家族を思い出していた。
そうしてしばらくするとアオ達が出来あがった料理を大皿に入れて運んできた。

だが、みんなが食べ始める前にホウメイによるアキトの料理の試食が始まった。
アキトが作ったのは雪谷食堂で最初に自分が任された料理である炒飯だった。
ホウメイが真剣な面持ちで口に運び、ゆっくりと味を見ていく。
アキトだけじゃなく全員が緊張してその様子を見守っていた。

「そうだね、まだ10年早いね」

その一言に雰囲気が落ち込んだ。

「話は最後まで聞きな。炒飯に関しては十分人様に出せる味だから安心おし。
10年早いのはまだまだ自分の味になっていないからだよ」

続けられた言葉を聞いたみんながわっと沸いた。
つまり、炒飯に関してはもう教える必要がない段階になっているという事だった。

「あ、ありがとうございます!」
「料理は炒飯だけじゃないさね。まだまだ先は長いから覚悟おし?」
「は、はい!!よろしくお願いします」

アキトは感激して涙目になっていた。
それからは祝賀会を兼ねて楽しく食事が進んでいった。

そして、食事が進む中ここでもアオとルリの行動が注目を浴びる事となった。
既にアオ達との食事を経験済みのアキトとマナカ、そしてウリバタケはいつもの事だと気にも留めていなかった。
しかし、フクベ提督とホウメイ、ミナトとメグミの4人は唖然としていた。
4人は平然としているアキト達へ質問した。

「いつもこうなのかい?」
「あ、はい。そうですよ」
「夫婦みたい...」
「一緒に住み始めてすぐの時からこんな感じよ?」
「うそぉ...」
「アオちゃん達が仲いいのは前からだからなぁ」
「話には聞いていたがこれ程とは...」

初めて見る人にとっては見た目10歳前後の少女が仲睦まじい夫婦のような行動をしているとショックが大きいらしい。
そうして食事が終わり夜も遅くなった頃、アオはウィンドウ通信を開いていた。

「ミスマル・ユリカ艦長とムネタケ・サダアキ副提督。まだ着いてないんですけど?」

とてもにこやかに通信相手へ微笑んでいた。

「あ、アオ君。い、急いで向かわせているのでもう少し待ってくれないかね?」
「サダアキはもうそちらへ到着しているはずです。ただ、再教育がいきすぎてアオ君に拒絶反応が...」

ミスマル提督とムネタケ参謀は二人揃って冷や汗を流しつつ弁解していた。
アオはダイアとフローラへユリカとサダアキの居場所を確認して貰った。

「確かに、ユリカさんは急いで向かっていますね。でも到着するのが朝ギリギリですよ?
ユリカさんは助手席で寝ているだけだからいいでしょうけど、ジュンさんの事まで考えてました?
サダアキさんは近くのホテルで一泊してるみたいですね。明日叱っておきますね?」
「す、すまない。不甲斐ないばっかりで...」
「よろしく頼みます」
「もう夜も遅いですからこの辺にしておきますが、今後はこちらの判断に任せて頂きますがよろしいですよね?」
「「あぁ、構わない」」
「わかりました。それでは、ゆっくり休んで下さい」

そう言うとアオのウィンドウが消えた。
その瞬間ミスマル提督とムネタケ参謀は盛大な溜息を吐いた。

「ヨシサダ君、胃薬持ってないかね?」
「私の分で精一杯です」

子供の事に関しては全くアオに頭が上がらない二人だった。
そうして習熟訓練前日の夜は更けていった。


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