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No.19794の一覧
[0] 天河くんの家庭の事情(逆行・TS・百合・ハーレム?)[裕ちゃん](2010/07/24 18:18)
[1] 天河くんの家庭の事情_00話[裕ちゃん](2010/07/23 17:46)
[2] 天河くんの家庭の事情_01話[裕ちゃん](2010/06/26 12:59)
[3] 天河くんの家庭の事情_02話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[4] 天河くんの家庭の事情_03話[裕ちゃん](2010/06/24 07:53)
[5] 天河くんの家庭の事情_04話[裕ちゃん](2010/06/24 07:54)
[6] 天河くんの家庭の事情_05話[裕ちゃん](2010/07/10 22:31)
[7] 天河くんの家庭の事情_06話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[8] 天河くんの家庭の事情_07話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[9] 天河くんの家庭の事情_08話[裕ちゃん](2010/06/24 07:55)
[10] 天河くんの家庭の事情_09話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[11] 天河くんの家庭の事情_10話[裕ちゃん](2010/06/24 07:56)
[12] 天河くんの家庭の事情_11話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[13] 天河くんの家庭の事情_12話[裕ちゃん](2010/06/24 07:57)
[14] 天河くんの家庭の事情_13話[裕ちゃん](2010/06/26 02:01)
[15] 天河くんの家庭の事情_14話[裕ちゃん](2010/06/26 11:24)
[16] 天河くんの家庭の事情_15話[裕ちゃん](2010/06/26 23:40)
[17] 天河くんの家庭の事情_16話[裕ちゃん](2010/06/27 16:35)
[18] 天河くんの家庭の事情_17話[裕ちゃん](2010/06/28 08:57)
[19] 天河くんの家庭の事情_18話[裕ちゃん](2010/06/29 14:42)
[20] 天河くんの家庭の事情_19話[裕ちゃん](2010/07/04 17:21)
[21] 天河くんの家庭の事情_20話[裕ちゃん](2010/07/04 17:14)
[22] 天河くんの家庭の事情_21話[裕ちゃん](2010/07/05 09:30)
[23] 天河くんの家庭の事情_22話[裕ちゃん](2010/07/08 08:50)
[24] 天河くんの家庭の事情_23話[裕ちゃん](2010/07/10 15:38)
[25] 天河くんの家庭の事情_24話[裕ちゃん](2010/07/11 07:03)
[26] 天河くんの家庭の事情_25話[裕ちゃん](2010/07/12 19:19)
[27] 天河くんの家庭の事情_26話[裕ちゃん](2010/07/13 18:42)
[29] 天河くんの家庭の事情_27話[裕ちゃん](2010/07/15 00:46)
[30] 天河くんの家庭の事情_28話[裕ちゃん](2010/07/15 14:17)
[31] 天河くんの家庭の事情_29話[裕ちゃん](2010/07/16 17:35)
[32] 天河くんの家庭の事情_30話[裕ちゃん](2010/07/16 22:08)
[33] 天河くんの家庭の事情_31話[裕ちゃん](2010/07/17 01:50)
[34] 天河くんの家庭の事情_32話[裕ちゃん](2010/07/21 01:43)
[35] 天河くんの家庭の事情_33話[裕ちゃん](2010/07/21 23:39)
[36] 天河くんの家庭の事情_34話[裕ちゃん](2010/07/22 04:13)
[37] 天河くんの家庭の事情_35話[裕ちゃん](2010/07/24 18:16)
[38] 天河くんの家庭の事情_小話_01話[裕ちゃん](2010/06/25 20:30)
[39] 天河くんの家庭の事情_小話_02話[裕ちゃん](2010/07/07 03:26)
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[19794] 天河くんの家庭の事情_03話
Name: 裕ちゃん◆1f57e0f7 ID:326b293b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/24 07:53
「あぁぁ!!」

素っ頓狂な声をあげたのはアオだった。
自分達の遺体を乗せた脱出ポットを太陽へ向け射出したアオ、ルリ、ラピスの3人は火星圏へジャンプしていた。
ユーチャリスは最高度のステルス状態へ移行し潜航しつつ情報を集めている。
数年後でさえ最高度のステルス状態ではナデシコB及びCぐらいでないと見つからない程の精度を誇る。
この時代の戦艦では到底見つからない。
今後の事があるからだ。
いい加減いい時間になったという事でご飯にしようという話になり、居住区に行ったのはいいのだが、知っての通りアオはアキトの時分、味覚が壊れてた為に栄養剤のようなものしか食べていなかった。
アオの身体になり、それぞれの記憶や精神が混ざった事で自分に料理を作る資格がないといった考えも薄まり、お腹も空いたので何か作ろうと思ったのだが、冷蔵庫の中身は

「栄養剤に栄養ドリンクに、レーションばっかり」

惨憺たる有様だった。
その中身をみたルリは今までの生活がどれだけ荒んでいたか、そして数年ぶりに手料理が食べられるという嬉しさが木っ端微塵に砕かれたショックで落ち込んでいた。
それはラピスも同じで、初めて食べられる手料理への期待を裏切られかなり泣きそうになっていた。
そんな二人を見て今日はこれで我慢しようなどとアオが言える訳もなく。

「今から買ってくる!部屋で待ってて!」

という羽目になってしまった。
大急ぎで地球までジャンプすると、米、卵、鶏肉、トマト、ワインビネガー、塩、砂糖などなどごっそりと買い込み、両手に二袋ずつ持って帰還して来た。
荷物をコバッタに持って貰い、部屋に戻るとすぐに料理を作り始める。
ひとまずお腹が空いたであろうお嬢様方の為にトマトとモッツァレラチーズのサラダを前菜としてサッと作る。
その後はメイン、お米を研いで炊き始める。
炊飯器がないので鍋で炊く。
トマト、砂糖、塩、ワインビネガーなどを使ってケチャップを作る。
ケチャップが出来たら材料を切り、順番に炒め始めていく。
そんな様子をルリとラピスは期待が篭りすぎて穴が開きそうな視線で見守っていた。
目線は逸らしてないのにサラダを食べる手は止まらないが。
手際良く動く程にアオの方から流れてくる匂いの前に手の速度は増していき、サラダはなくなってしまった。
作り始めて50分程だろうか、ルリにとって思い出の一品が出てきた。

「お待たせ、ルリちゃん、ラピス。チキンライスだよ。オムレツもつけたからオムライスになっちゃうけど。」
「美味しそう」
「あ、ありがとうございます」

部屋は14畳程の長方形、床はフローリングになっていて、奥がシステムキッチンになっている。
1辺を余らせる形で正方形の毛足が長いラグを敷いてあり、空いているフローリングにはソファーがある。
ラグの上にロータイプのテーブル、それを囲むようにクッションが置いてある。
そのテーブルでアオを囲むようにルリ、アオ、ラピスと座っていた。
ラピスは匂いと見た目に今すぐ飛び付きそうな勢いだ。
ルリは思い入れのあるチキンライスを見て目が潤んでいる。
アオはその二人の様子を見て、満足そうに微笑むと食べよっと促す。
二人は居住まいを正して手を合わせた。
そしてアオもそれに続いた。

「「「いただきます」」」

ルリとラピスが同じタイミングでスプーンを口に運んでいく。
アオは気にしないようにしつつも、それを目で追ってしまう。
二人とも口に含んでゆっくり咀嚼し、飲み込む。

「「...美味しい(です)!」」

アオは心底安堵した、そして二人に向かって満面の笑みを浮かべると。

「ありがとう、嬉しいよ」

そう言ったアオの顔を見たルリとラピスは顔を真っ赤にして呆けていた。
その後ルリは食べ終わるまで美味しいですしか言わず、ラピスは初めての手料理に感動し一所懸命食べるがポロポロこぼしてしまったりむせてしまう為あれこれとアオが世話を焼いていたがおおむね和やかに進んだ。
みんな食べ終わると洗い物はルリがやろうとしたが、ラピスもやろうと言い出したために、やった事のないラピスへルリが教えながら二人でやる事になった。
手が空いたアオも口寂しくならないようにラスクを作ったりとなんだかんだで動いていた。
洗い物も終わり、3人でしばらく寛いでいたが、ご飯を食べて眠くなったのかラピスが船を漕ぎ始めた。

「ラピス、眠い?」

アオが髪を撫でながら問いかけると、閉じかけた目でなんとか頷く。
そのままラピスを抱き上げると、ルリの方へ少し待っててと目線を送る。
それに微笑んで返すと、ルリはお茶の用意をしに流しへ向かっていった。

「お待たせ、手を放してくれなくて困っちゃった」
「いえ、大丈夫ですよ」

二人ともとてつもない美少女なのだが、会話の内容は夫婦のそれである。
ルリとテーブルを挟むようにして座り、今後の行動を話し始めた。

「お昼に決めたものの中でまだ有効な物は以下のものになりますね」

─時間が圧倒的に足りないので隕石情報と称し情報をユートピアコロニーの全メディア+行政へリークし地球やシェルターへの避難を促す
─大型隕石が直撃する可能性もあるのでシェルターへの避難は大深度+大型のモノに限定すること
─アオがいた研究所のデータ・資料をユーチャリスへ送る
─ユーチャリス搭載の無人兵器を街内に潜伏させておき襲撃の際にシェルターの護衛+木蓮の無人兵器をハッキングを敢行、ウィルスを流す
─火星内及び衛星の通信システムをハッキング、地球との通信を不可能にし、地球から火星の状況を把握出来ないようにする。

「そうだったね、ありがとう。じゃあちょっとオモイカネに頑張って貰っちゃおう」
『頑張る』
「お、頼りにしてるよ」
『頼りにされる!』
「『ふふふふふ』」

アオはそう言うとオモイカネへ指示を出していく。
オモイカネへの指示はリークする情報を捏造し、それが出来るとメディアと行政へ順次流していく事。
そしてステルス状態にして見つからないように各コロニー・研究所を周回、バッタを配置していく事である。

「バッタの配置数は入口の数とかあるだろうからオモイカネに任せるよ。
やる事多いけど大丈夫?」
『やれる!3人が起きるまでに終わらせる!』
「よし、任せた!」
『任された!』

ちなみに、火星で活動中のコロニーは4つである。
入植から50年程しか経っておらず、火星全体の人口は2000万人弱である。
火星への入植は実際には100年近く前から可能だったが、ある事件により遅れる事となった。

22世紀初頭、月のクーデター鎮圧によって火星へ逃れた避難民へ向けて地球は核を落としたのだ。
その時点ではある程度入植が可能な程には環境が整ってきてたのだが核の影響や避難者の存在を隠滅する為火星への入植は行われなかった。
そして22世も半ばになり、ようやく火星への本格的な入植が開始された。
最初の入植は実働テストを兼ねてユートピアコロニーが選出される。
研究・開発も兼ねていたために、入植に当たっては主に研究者と技術屋を中心とした人材が選出された。
それに加えクーデターを恐れた政府により監視という名目の護衛が付く事となる。

ある程度コロニーの環境が落ち着くようになると、一般人の入植も徐々に増え、建設されていた他のコロニーへも入植がはじまる。
そして入植開始から約10年が経つとオリンポス山にて火星の古代遺跡、相転移エンジンが見つかる。
更にそこから20年近く経ち、火星北極冠鉱山の開拓中に巨大な遺跡を発見する事となっていく。

火星の研究に関しては、発見された遺跡物がすべてネルガルの手によって発見されている為に他社が入り込む事が出来なかった。
その為に研究所はネルガルのものだけである。
火星にある遺跡、研究所、コロニーは以下になる。

─北極冠遺跡(鉱山を発掘中に発見される)
─ネルガル北極冠研究所
─ユートピアコロニー(火星北部にあるユートピア平原に建設されたコロニー)
─オリンポス山麓ネルガル研究所
─タルシスコロニー(火星赤道近くにあるオリンポス山とアスクレウス山に挟まれた丘陵地に建設されたコロニー)
─ヘラスコロニー(火星南部にある巨大な湖ヘラス海北岸に建設されたコロニー)
─マレアコロニー(同じくヘラス海南岸に建設されたコロニー)

ユートピアコロニーの人口が最大で600万人程、続いてタルシスが500万人、ヘラス・マレアはそれぞれ400万人程の規模である。
そしてシェルターといっても、いくつも独立した物がある訳ではない。
コロニーは地下にも建造物が蟻の巣のように巡っており、シェルター同士で行き来が出来るようになっている。
中にも食料プラントがあり、材料が続く限りはレトルト物ではあるが作成が可能で、コロニーの全人口が補給なしでも2-3年は生き残れるようになっている。

オモイカネはウィンドウを『さぎょ~ちゅ~♪』と変えふよふよ漂っていた。
それを二人して眺めてクスクスと笑っていたが、不意にアオが話しかけた。

「今日はネルガル社長派の非合法研究所への侵入もしちゃったね~」
「私もさらわれちゃいましたね」
「うん、そうなるとネルガルへ早めに行った方がいいね」
「明日ですか?」
「そうだね、用意する物があるし、こんな時間じゃ悪い。お昼過ぎにでも手土産持って行ってくるよ」
「わかりました、ですけど交渉の内容、材料を決めてませんよ?」
「材料は決めてあるんだけど、アカツキに何頼むかだよね。
戸籍と住む場所っていうのはとりあえず決まってるんだけどさ」

アオはルリを試すように質問した。
それを受けて、ルリは顎に指を当ててん~~っと考えるような仕草をすると答えた。

「火星からの避難者の保護とか」
「その心は?」
「生存者探索の為とすれば、相転移エンジンの開発、研究やナデシコ建造などに協力してくれますし、何よりジャンパーの保護になります」
「そかそか、いい考えだね。ナデシコはこっちで設計図弄っちゃ駄目かな?」
「確実に生還する為にはいい事だと思います。ですが、もしするならデータの流出への注意や戦力を隠すように航行しないと火星で危険です」
「そっか、そこは相談しつつやっていくという事でそれも進めちゃおう」
「後は、非合法のIFS強化体質実験の被害者の保護は外せないです」
「うん、ボソンジャンプの人体実験もね。今考え付くのはこれくらいかな?」
「そう、ですね。それで、交渉の材料はどうするんですか?」
「まず一つは社長派のデータ。
それと、テンカワアキトの記憶を映像として見せようと思う」

その言葉にルリは眉を顰める
アカツキ達にあの記憶を見せようと言うのだ。

「...アオさん。実は私アキトさんの研究内容を知ってるんです」

しばらくお互いに無言だったが、ルリが切り出した。
ルリは火星極冠でのクーデター鎮圧の際に行った火星圏のシステム掌握、その時に掌握した中にあるありとあらゆるデータの中からテンカワアキトに関する物を抜き出していたのだ。
会った時には意地を張って『知りたくありません』と答えはしたが、アキトの苦しみを少しでも肩代わり出来たら、受け止められるようになれたらと考えたのだ。
だが、それを確認した時後悔しそうになった。
始めてその映像を見た時は余りの苦しさ、辛さ、悲しさ、嘆きに押し潰されて30分と持たず気絶した。
だが、それでも一ヶ月近くかけて全ての情報、映像に目を通した。
その間も軍務を削ると待っていたとばかりに統合軍が文句を言い出すので仮面を被ってこなした。
何か食べないと倒れてしまうので、吐き気をこらえながら食べた。
アキトから言われていたのでジャンクフードや栄養剤に頼る事はしなかったが、しばらくは何を食べても血の味がした。
毎日毎日泣き通した。
それを思い出し、手を震わせながらもルリはアオへ聞いた。

「その上で、もう一度聞きます。あれをアオさんはまた見るんですか?」

ルリが心配しているのはアオの事だった。
自分の記憶を補助脳を経由して映像化する。
それは自信の記憶の追体験と何ら変わりがない。
ならば、あの地獄をもう一度体験するのと変わらないのである。
顔を蒼白にして震えるルリをしばらく見つめていたアオは、ふと表情を緩めると立ち上がり、ルリの後ろに回っていった。
そのまま後ろから身体全体で抱き締めるように座るとルリの脇の下から腕をいれてそのまま抱き抱える。
後ろに回られたルリは身体を強張らせていたが、抱き抱えられると次第に力が抜けていった。

「ルリちゃん、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ、今の私はテンカワアオだから、未来のアキトでもあるしアキトのお姉ちゃんでもあるんだから、強いんだよ」
「そんなのは詭弁です。強がりです。」
「例えそうだったとしてもそんな私を支えて、帰りを待っていてくれる。終いには追いかけて連れ戻してくれるルリちゃんやラピスもいる。だから大丈夫」
「そんな事を言うのはずるいです。そんな事言われたら支えるしかないじゃないですか、待つしかないじゃないですか」
「うん、だから支えて欲しいな、他の誰でもないルリちゃんに。私の大切な、大好きなルリちゃんが待っていてくれたら必ず帰ってくる」
「...アオさん...アキトさんは馬鹿です。優しすぎます。女たらしです。ロリコンです」
「それでいいです。ルリちゃんとラピスが好きになってくれるなら馬鹿でも優柔不断でも女たらしでもロリコンでもいいです」
「...ばか」

涙を流すルリをゆっくりと抱き締めていたが、落ち着いてきた頃になるとおもむろに身体を離し、軽く胡坐をかくとルリを呼ぶ。
アオはテーブルから足を抜き後ろを向こうとしたルリの背中と膝の下に腕を入れ胡坐の上に抱きあげると、正面から抱き締めた。

「なっ!なぁっ!」

155cmのアオと122cmのルリである、ルリが胡坐の上に座ると顔の高さが丁度いい。
こういう免疫はないのかアオと真正面から向き合って真っ赤になってしまった。
ルリは落ち着かずに目線が眼と唇を行ったり来たりする。
あまり焦らすのも可哀想になってきたアオは右手を頬に持って行くと柔らかく解すように涙の跡を拭っていく。
それも落ち着くともう一度目線を合わせると優しく微笑み、顎を上げるように右手を持って行く。
顎に手をやられた瞬間身体が強張るが落ち着かせるように息を吐かせるとそのままゆっくりと近づいていった。

「...ん.....」

唇が離れルリがゆっくりと目を開けると、アオの目と合う。
どうだった?と優しく聞いていた。

「...一杯欲しいです」

そう答えるとアオの目は嬉しそうに、楽しそうに微笑んだ。

「ため息つく感じで口開いて.....息は鼻で吸えばいいからね...」

そう言うと先ほどよりも長い間二人の唇は重なっていた。
その後しばらく二人だけの時間が過ぎていった。

「ね、ルリちゃん。私とルリちゃんが一緒にいる間はずっと『おはよう』『いってらっしゃい』『いってきます』『ただいま』『お帰りなさい』『お休み』のチューをするからね」
「嬉しいけど、ダメです!ナデシコ乗艦の時に噂になったらどうするんですか!」
「噂になれば狙う人もいなくなるからいいの~♪」
「な、何言ってるんですか!」

こんな感じである。
しばらくして落ち着くと背中に回していた手を離しルリの肩へ置いた。
そのままルリの目を見据えるとアオが切り出した。

「ルリちゃん、ちょっとだけ真面目な話」
「なんでしょう?」
「明日、ネルガルと交渉が終わった後は火星のシェルターへ行こうと思う」
「それは予想してましたから大丈夫です」
「そこで、アキトがジャンプするまで一緒にいようと思う」
「...」

あからさまに嫌そうな顔をしていた。

「何をいってやがりますか、この大馬鹿者はって感じだね」
「よくわかりましたね」
「ふふ~ん、さっきので私とルリちゃんは通じ合いましたから~♪」

そう言いつつまた抱き締める。

「はいはい、どうせ言っても聞かないから構いませんよ~」
「流石ルリちゃん!」
「条件がありますけどね」
「なぁに~♪」
「.....絶対に帰ってきて下さいね」

寂しそうな、泣きだしそうな声でそう呟いた。

「うん、テンカワアオは絶対にルリちゃんとラピスの所へ戻ってきます」
「...はい」

それからアオとルリはお風呂へ向かっていった。

そんな二人が出ていった部屋のアオとルリが座っていた正面の壁に親指の大きさ程のウィンドウが漂っていた。
そのウィンドウはふと手のひらサイズまで大きくなると『録画終了』と表示へ変わり、消えた。

二人がお風呂から出て、寝る準備を整えるとラピスが寝ている部屋へ向かった。
アオは紺色、ルリは淡いクリーム色をしたコットン製のツーピースパジャマだ。
もちろんお揃い。
ちなみにラピスはルリが着たパジャマと同じものである。
子供用なのにラピスには大きくてだぼっと着られている感がある。

「うわぁ...」

寝室に入った瞬間ルリが発した言葉である。
食事を食べた部屋と変わらない間取りではあるが、正方形にして余った部分がウォークインクローゼット化している。
クローゼットの対辺である入口から見て右手にダブルサイズのベッドが鎮座しており、正面の壁にはぬいぐるみが一杯である。

「...エリナさんですか?」
「...わかっちゃった?」
「...先ほどの部屋や洋服もですよね?」
「...そこも気付いちゃった?」
「...社費ですか?」
「...ノーコメントで」
「どれだけ可愛いもの好きなんですかあの人は...」
「ちなみに、ルリちゃんも狙われてた。跳ぶ直前まで」
「ソウナンデスカ」
「ソウダッタンデス」
「...寝ましょうか」
「うん、寝ましょう」

二人でベッドに向かい、掛け布団を一旦剥ぐとアオがラピスを抱っこし、その間にルリが奥へ行く。
ルリの隣にラピスを寝かせると、アオも入る。
アオは掛け布団をかける前にラピスを起こさないようにルリに被さると、口づけをする。
唇だけでお休みなさいというと、ルリも同じように返した。
布団を被った後もしばらく見つめあっていたが、いつの間にか二人も幸せそうな寝息を立てていた。

次の日、ルリはこれ以上ないくらい幸せそうな顔をして眠っていた。
そんなルリにしがみつくようにラピスも寝息をたてている。こちらも負けず劣らず幸せそうだ。
そんなルリに何かが触れたような気がした。
離れていくのが惜しくて、だから目が覚めた。

「...ん」

目を覚ますと天井が見える。
気のせい...?

「目、覚めた?」

声をかけられたので横を見るとアオさんがいた。
ただぼぉ~っと眺めているとちょっと困ったような顔をしてる、綺麗。
横を見るとラピスも似たようなものだった。
あ、抱き起こして貰ってる。
ベッドからおろして貰ってる。
羨ましいから私もと腕を伸ばした。

「しょうがないなぁ」

また困った顔してる。心外です。
抱きあげて貰っておろして貰った。嬉しい。
嬉しいのでそのまま私の匂いを擦りつけようと思う。

「ちょ、ルリちゃん?ラピスまで...」

見たらラピスも真似していた。負けたくない。
しばらくするとアオさんぷるぷるしだした。
どうしたんだろう?

「いい加減にしなさい、二人とも!」

そう言うと担がれた。
私は右腕、ラピスは左腕だ。
アオさん力持ちです。
というより何か恥ずかしい...
担がれ...
え!担がれて運ばれてる!?

「あ、アオさん!待って!自分でいけます!」
「...寝ぼけたフリをするような子にはこれで十分です」
「フリじゃありません本当です!」
「最初はみんなそう言うんだよね~」
「それ、使い所間違えてます~~~!」

.....結局私運ばれちゃいました。

その後アオは着替えてきたルリとラピスをあわせて朝ご飯を食べる。
今日は3人ともワンピースを着ている。
アオとルリはその上に長袖のカーディガンを着て柔らかい雰囲気。
ラピスはそのままで可愛らしい雰囲気を出している。
ご飯も食べ終わり後片付けが終わった後はまったりした雰囲気の中今後の相談。

「オモイカネ、昨日の夜頼んだ件はどうなった?」
『はい、問題なく進みました。現状を表示します』

─情報の作成、リーク共に完了。既に避難が始まっています
─全航宙会社が全てのシャトル、輸送船を使用し避難させる事を発表。地球への避難総数は6万人超となる予定
─軍からの避難船供出は今の所確認取れてません。
─各コロニー・研究所へのバッタ配備完了。シェルターの入り口一つに1機配備でしたが、出ているのは238機になり戦闘用のバッタはほぼ全部出ています。
─ウィルス・ハッキングに関してはルリとラピスの手が必要です
─アオがいた研究所は変化なし、誰も侵入していません

「オモイカネ、ありがとう。助かるよ」
『どういたしまして、ところで一つよろしいですか?』
「ん、どうした?」
『先日からルリとラピスがアオと呼んでるので私もアオと呼べばいいんですか?』
「.....言ってなかったっけ?」
『はい、わざとかと思ってました(涙)』
「ごめんなさい」
『ぐすぐす(涙)』

いじけてるオモイカネを見てアオが冷や汗を流す。
しばらく見ていたが、この際だから見なかった事にしてしまおうと決めるとオモイカネを余所に説明を始めた。

「せ、説明するとですね、この身体はテンカワアキトのお姉さんの身体なのです。
ラピスに似た状況だったので名前もなかったんだよね。そこでルリとラピスから名前を頂いた訳です」
『その説明となると、中身はアキトという事ですよね?』
「そこが難しくてね、私はアキトでもあって姉でもあるって所かな」
『...はぁ』
「そういうものだと思って置けばいいよん」
『えぇ、性格が大分変わってるのでちょっと心配してました』
「自分でもちょっと変わったかもとは思うけど、そんなに違う?」
「「『はい、ちょっとどころじゃないです』」」
「そ、そっか...」

アオを見つめる2人+オモイカネは異口同音に答えた。
その後しばらく雑談していたが、アオの号令によりそれぞれが動き出した。
アオはジャンプで研究所へ行きデータ・資材の転送。
ルリ、ラピスはオモイカネと協力してウィルス作成とバッタのOSへハッキングシステムを組み込んでいった。

「これは...どうしようかな」

そんな中アオは途方に暮れていた。
ナノマシンが保管されている冷凍資材保管庫がコンテナ程の大きさがある資材置き場にずらっと並んでいる。

「オモイカネ」
『お呼びですか?』

ユーチャリスを出る時に渡されたコミュニケからウィンドウが開く。

「空いてる資材置き場ってある?コンテナくらい大きいとこ」
『ちょっと待って下さい。はい、ありますよ』
「了解、コバッタは動かせるよね?」
『えぇ、大丈夫です』
「格納庫にこの資材保管庫全部をジャンプで運ぶから、コバッタに持って行って貰って」
『.....全部?』
「全部」
『頑張ります...』

アオはウィンドウを閉じると袖をまくって気合いを入れた。

「やりますか~!」

1時間程経つと、ユーチャリスのブリッジでアオがくったりしていた。
一度に保管庫2台の20往復、計40台を運びきった。
耐久テストやらされてる気分になってきたとはアオの談。
運んだ後はユーチャリスから爆弾を持ち込み設置し、外へ出ると遠隔操作で爆破。
データを隠滅した。
アオが運んでいる間にルリとラピスもプログラム作成を終了、ネットワーク経由でのバッタOSのアップデートも完了させていた。
そのルリとラピスが両脇から団扇でぱたぱた仰いでいる。
アオがありがとぉ~と呟くと、ルリは「はいはい」と、ラピスは満面の笑みでこたえた。

「よし、ルリちゃんとラピスから元気も貰ったし映像作りますか」

アオはぐっと手を握り締めながら立ち上がった。
それに対してルリは淡々と答える。

「どれくらいかかりそうですか?」
「んっと、オモイカネ?」
『データとして吸い出し終わるまでに2時間少々かかると思います』
「わかりました、その間に私とラピスでお昼作ってますね」
「あら、ルリちゃん出来たんだ?」
「えぇ、アオさんを驚かせる為に生きてる事を知ってからミナトさんに倣ってました」
「じゃあ、期待してるね」
「はい、それとアオさん」

ルリはアオをまっすぐに見据える。
何かを耐えるようなそんな瞳だった。

「約束は守るよ。大丈夫」

アオはそう答えた。
ルリとラピスが出ていきブリッジに一人になると、アオはオペレーターの席へと座った。

『本当にいいのですか?』
「大丈夫、ごめんねいつも大変な事頼んで」
『いえ、気にしないで下さい』
「さぁ、始めよう」

アオはIFSコンソールへ手を置き目を瞑った。
次第に走馬灯のように自分が覚えてない記憶までどんどん溢れだしていく。
極冠遺跡の研究所で産まれた事。
生まれてすぐに遺跡を見せて貰っていた事、物ごころつくまで研究所で育った事。
どれだけ両親に思われていたか。
両親がどれだけ研究が未来に繋がるか期待していたか。
小さい頃のユリカとの思い出。
ユリカだけじゃない色んな女の子と遊んだ思い出。
小学校上がってすぐに起こったテロ。
孤児院での寂しいけど温かい生活。
落ち込んでいた俺を気遣ってくれたシスターや学校の女の子達。
中学校では料理部で色んな料理を教えあっていた。
中学を出て、孤児院も出ると決めた時のお別れ会。
高校には入らずコックになるためにキッチン辰へ頼み込んだ事。
そこで教えられた料理人としてのいろは。
そして、火星会戦、アイちゃん。
ナデシコの日々。
ナデシコ長屋での生活。
ルリちゃん、ユリカとの家族ごっこ。
結婚.....テロ。

「ぐあぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」

弾かれたように騒ぎ出す。
目も見開いているがその眼に映しているのは【火星の後継者】の研究員達。
そして、北辰・ヤマサキヨシオ。
切り開かれていく頭部、腕、脚、胸、腹部、背中、そして弄られていく。
痛みはない、切られているという錯覚だ。
だが...
味覚を無くしたと気付いたその瞬間だけは忘れられなかった。
どこか気の抜けたような、一度耳にしたら忘れられないような悲痛な叫び声が口から洩れていた。
そして更に目の前で遺跡と融合していくユリカ。
腕と足の先からゆっくりと彫刻のように覆われていく。
それをただ、見ていた。
消えてしまった。
自分の夢が無くなってしまった。
奪い取られてしまった。
その悲しみ、苦しみ、辛さ、憎さ全てを味わわせてやる!!!!
ただ憎しみのみで生き残った。
月臣、プロス、ゴート達NSSに助け出された。
月臣との訓練、エステバリステンカワsplでの戦闘。
幾多の敗北、そしてブラックサレナへと成長していく愛機。
ラピスとの出会い。

ラピスとの出会いを見ている時には少し落ち着いてきた。
余りに泣き叫びすぎて顔中涙と涎でぐちゃぐちゃになってしまった。
その後、ユーチャリスとラピスを併せた戦闘。
アマテラスでのルリ、ユリカ、リョーコとの再会。
クーデター勃発、そして鎮圧。
その後【火星の後継者】の残党狩り。
シャロン・ウィードリンの一件も陰でしっかり見ていた。
次に残党狩りの終結、復讐の終わり。
そして...

「ルリちゃんの暗殺計画...」


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