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No.285の一覧
[0] いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ[YENA](2005/03/24 12:54)
[1] Re:いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ プロローグ2[YENA](2005/03/24 20:24)
[2] Re[2]:いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ 本編第一話Aパート[YENA](2005/03/28 12:31)
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[285] Re[2]:いつか見た、漆黒の宇宙《そら》へ 本編第一話Aパート
Name: YENA 前を表示する
Date: 2005/03/28 12:31
「・・・あなたは、だれです?」

金色の視線がぶつかり合う。

「私はあなたの妹のようなものだ。ホシノルリ」
「・・・名前を聞かせてください。そして、ここはどこです」

金色の少女の、ガラスのように透明で、冷たく、鋭い微笑。
その場の空気がぴんと張り詰める。
ルリの後ろから不安げに頭を覗かせているラピスをちらりと見て、

「私に名は無い。私に名付けられたそれらはすべて他人が勝手に取り付けたものだ。
私の真の名はすでに奪われ、私自身も忘れ去った。
・・・彼はそのことは聞かなかった。無意識に必要のないことだと感じ取ったのだろうな。
呼称が必要ならば“L”とでも呼べばよい。かつて過ぎ去った、私の“栄光”の代名詞、その頭文字だ・・・」

ヒトあらざる冷たい気配。
ルリは無意識のうちに、ラピスの手を引いて後退った。

――聞かなければよかった。このままここから逃げ出して、どこかへ去ればよかった・・・!

心のうちで後悔しながら、自分よりわずかに年下の、少女を見つめる。
この子は一体なんなのだろう? 大切な人を追いかけて、こんなところにまで来てしまった。たどり着いたのは、見知らぬ場所。
ここは、一体どこなのだろう・・・


    ◆  ◆  ◆


「断れば死、承諾すれば重責、か・・・」
「お前はすでに死んでいるのだ。ここで話していることがすでに特殊な事態なのだよ。
大体、死者を蘇えらせるなど私の仕事からすればあってはならない事だ。全く、私も厄介なものを親友にしたものだ・・・」

アキトのつぶやきにLがぼやいた。
その言葉にアキトは眉をひそめる。

「仕事?」
「私は混沌の海そのもの。混沌の海は全ての存在の終着点であり、出発点だ。
一度“還って”きたモノは二度と蘇えらない。ここに来るのは死者のみ。
遺跡は生や死を超越した存在であればこそ、ここにいても自我を保っていられる。
私は死者を受け入れ、新たに生まれる魂を送り出す者でもある。ここはいわゆる“あの世”と言う場所でもあるからな。
お前はここに訪れたくせに死んでいないという奇妙な状況の者なのだ。
私の今の姿は幻だ。本当の意味でお前と対峙すれば、お前は混沌に近づきすぎて即死者の仲間入りだぞ?」
「は、ははっ・・・それなら俺はナデシコで死んだ者にでも会えるのか?」

アキトは軽く笑って、ガイのことを思い出した。
かつての仲間。ムネタケたちに殺された、最初の犠牲者。・・・所詮人間の敵は人間だ。

「それは不可能だ。成仏したものは現世のことを忘れるとか、宗教的な云々以前にお前はそういったものには会えない。
時を越える力を持つのは遺跡だけだ。私は違う。・・・ここはすでに“過去”なのだよ、逆行者。
故に私は未来で起こることは知らん。遺跡から聞いたことを聞きかじっているだけに過ぎないのだ。
・・・・・・そして私はすでに事を起こしている。そこにお前が加わりやすいよう、私はもうひとりの私を送り出した。
後はお前の決断のみだ、テンカワアキト」

Lはじろりとアキトを見上げる。

「・・・ずいぶんと押し付けがましいな」
「仕方あるまい。・・・言葉にすれば少々恥ずかしいが、私は人間が好きだ。
私の見てきた他のあらゆる種族とも違う、可能性の塊。脆く、そして強い。
それが滅ぶのは好まざる事なのだよ。私にとっては」
「滅ぶ? どういうことだ、火星の後継者を潰し、戦争を終わらせれば・・・!」

Lの言葉に引っかかったアキトは声を荒げる。
不快そうに顔をしかめるL。そして彼女は口を開く。

「・・・・・・古代火星人はなぜ滅びた? 造りかけの不完全な遺跡を残し、ひとり残らず死んだ。
人間は争うものだ。例に漏れず古代火星人もな。彼らは、遺跡を兵器として使おうとしていた。
基本を作り上げ、改良や調整を行う前に滅んだ。
敵対する同族が、最悪の兵器を作り上げたからな。恐怖によって人を殺す武器を持った戦艦・・・
私は後悔したよ。どうせ人間同士の争いだと高をくくって余所見をした。その間に人間は滅んだ。戦艦を作り上げた側も同じくな。
その戦艦は太陽系から遠いところで眠っているだろう。場所も知らん。お前達からすれば遠い未来にあれは目覚めるだろう。
あれは存在してはならないものだ。しかし私は直接人間とは関わってはならない。それは自ら作った法であり、絶対の掟だ」
「そこで目をつけたのが俺、と言う事か・・・」
「私からすれば渡りに船だった。遺跡から聞いて、お前は強いと感じたのだ。信用するかどうかは別問題だが、これ以後にチャンスはないだろう。だから私はお前と言う存在に賭けてみたくなったのだ。だから私はもうひとりの私を作り出した。お前の助けとなるよう、何より私自身ののけじめのために」
「・・・どうして」

アキトにはわからなかった。どうして彼女はここまで自分の心の内を語るのだろう。
会ったばかりの自分に。どうして。なぜ。

「・・・・・・かつて、私は自分の限界以上に足掻く人間を見た。
彼女は強く、そして脆かった。脆さゆえに自分の満足する結果を追い求め、強さゆえにそれを貫いた。
もう一度、見てみたいのだ。そんな人間を。
私はお前を信用していない。お前は私を信用していない。ならば歩み寄る事が大切だろう?
私はお前に期待しているのだ。かつて私すらも身震いさせた、彼女のような強さを。
自身のあらゆる要素をひっくるめて、何があっても進み続けていられるような彼女のような強さを」

ガラスのようなのに、とても真摯な瞳だった。
信用していないくせに、期待していると言うのは変な言い草だ。しかし、アキトはこれで納得した。
彼女は自分の立場ゆえに、他人に頼る事しか出来ない。それが歯がゆいのだ。
だからせめて、自分の思いを託して、成し遂げられる者を探している。ただそれだけ。
そして、成し遂げられない者はお呼びではない。

(俺は弱い)

たやすく復讐心に染まり、どす黒い感情に支配される。
何もかも壊して、全てを終わらせてしまいたい衝動にも駆られる。
今ここでも、これで終わってもいいのだという自分もいる。
暴れて、壊して、殺して、滅ぼして―――そんな自分に期待していると言うのだ。
たとえ自分がここで申し出を断ったとしても、彼女は「そうか」とただ一言だけ言って、すべてを終わりにするだろう。
ただひとつ、彼女に拭い去れぬ後悔を残して。
そして悠久の時、それを抱えていくのだ。それは、とても・・・悲しいことだ。

「・・・引き受けよう。期待に沿えんかも知れんが、努力する」
「色よい返事だ」

彼女は、ガラスのように透明で、冷たく、鋭く―――そして脆く、笑った。


    ◆  ◆  ◆


飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。
虹色の道を駆け抜けて、金色の門をくぐる。

「・・・ん・・・」

長く短い道のり。
頭の中が次第に鮮明になって、今、見慣れない天井を見上げている事に気がついた。

「・・・成功、した・・・?」

飛び起きて辺りを見回す。
淡い水色の部屋。子供部屋。
何もかもが大きく見える。ベッドも、戸棚も、椅子も、テーブルも。
自分が好みそうな小物がところどころに置かれて、部屋の雰囲気もそんな感じだ。
そんなに大きくない部屋だったが、落ち着ける。
・・・見たことも無いのに、なぜ?
スリッパを履いて、クローゼットを開ける。
子供服が綺麗にかけられて、手が届きやすい場所にある。
そしてクローゼットの扉の裏につけられた、姿見の鏡。

「あ・・・!」

小さい。背が。
幼い。顔つきが。

「これは・・・まさか・・・過去?」

あわてて部屋を飛び出した。
ボソンジャンプの性質上、過去に飛ぶのはありうることだ。けれど、魂だけのボソンジャンプというのはいまいちよくわからなかった。
それに、過去だと言うのなら、ここはどこだ。
記憶に無い部屋。記憶にない場所。記憶にない服。

どんっ!

「「きゃ!?」」

私ともうひとつの声が重なった。
互いに廊下でぶつかって、同じようにしりもちをつく。

「ルリ!?」
「ラピス!」

先に名を呼んだのは向こうだった。
幼い姿。しかし、見間違えのない桃色の髪。

「廊下は走るな。いつも言っているだろう」

後ろから声がかかる。

「ようこそ逆行者。未来からの招かれざる客よ。歓迎する」

立ち上がって、振り返る。
色味の薄い金色の髪、マシンチャイルド特有の瞳。
そしてガラスのように冷たく鋭い気配。
これが私達と彼女の出会いだった。


    ◆  ◆  ◆


「・・・ここか」

別れ際にLに渡されたメモ。それには場所が記されていた。

『亜空間航行および精神物理学研究所・輝きの家』

敷地内で建物が左と右に分かれている。
左は名前の通り研究所のような場所。そして、右は大きな屋敷だった。
不釣合いな二つの建物が、渡り廊下によってつながっている。
・・・左側がいかにも怪しげだったので、俺は0.1秒で右に入ることを選択した。

チャイムを鳴らす。
ドアの向こうから誰かがかけてくる音が聞こえて、程なくして扉が開いた。

「あ」
「短い別れだったな、テンカワアキト」

そこにいたのは、Lだった。


    ◆  ◆  ◆


あとがきらしきぶんしょう?

本編第一話Aパート。ようやく本編突入・・・あう。
なにげにアキトがLにほれかけてますが、いいのかアキト。あんた妻帯者だろう。
・・・・・・まあユリカたちが追っかけてきてるのを知らなかったと言うことで早速浮気・・・(オイ
このシリーズの行き先はどうなるのやら。生ぬるい目で見守ってください・・・


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