それは、木星の向こう側からやってきた……。
第一次火星会戦
後にそう呼ばれるこの戦いに、俺は参加していた。
「こちら<オメガ7>。ミサイルが切れた。補給に戻る」
「了解。途中で喰われるなよブービー」
隊長……いいかげんブービーはやめてください……。
西暦2195年
火星 ユートピアコロニー上空 第二機動艦隊 航空母艦「ヒリュウⅡ」
親父の手紙を読んだ後、俺は考えた。
必死になって考えた。
無い知恵絞って考えた。
義務教育を終わりかけてるただのガキに何ができるか…。
1.復讐
無理。相手は企業、一個人で出来る訳がない。
2.研究を公表する
良い案だとは思う………15歳のガキの話を学会とか報道が信じればね。
3.研究を売る
何処に?クリムゾン?明日香?ていうか信じてくれる?
……親父は俺に何をさせたかったんだ?
俺なんかに渡すより知り合いの学者に渡した方が良かったんじゃないか……。
そして色々考えた挙げ句、出した結論は連合宇宙軍に入ることだった。
まずネルガルに知られるのはまずい。
だからネルガルから離れる必要があるのだが、ネルガルは様々な分野に進出してるため何処に行ってもネルガル印が付いて回る。
八方塞がり、かと思えるがちょっと違う。
なぜならネルガルは多くの分野に進出してる分、一つ一つの分野で1番取れてないんだよね。
ほとんど2番手、3番手。広く浅くがモットーなのか?とにかくネルガルは大企業だが欠陥のある大企業なのだ。
そして連合宇宙軍になるとさらに話は変わる。
全体的には「機動兵器」が明日香インダクトリー、「バリア」がクリムゾングループ、「艦艇」がネルガル重工って感じで、三つの企業が均衡してた。
ところがネルガルが火星開発に乗り出すと流れが変わってくる。
始めは好意的な地球政府だったが、火星の利権のほとんどをネルガルが独占する事になった上に、ここ数年で火星の独立気運が高まった。
その為、政府のネルガルを見る目が変わり、軍内部での発言力も低下したんだ。
当時の俺は風の噂でこの事を知った。だから連合宇宙軍に入隊した。
俺の夢はコックだけど“軍隊のコック”てのもいいかなと思ったしな。ところが…
「おやっさん!急いでくれ!!」
俺は今パイロットをやってる。
理由は簡単だ。
『IFS付けてたから』
ユリカ……。
恨むぞ………。
マジで…………。
「終わったぞ軍曹。生きて帰ってこいよ」
「元よりそのつもりだ!」
親父の手紙を読んで分かった事がある。それは、
「テンカワ・アキト!デルフィニウム出るぞ!!」
俺が不幸の星の下に生まれたことだ。
火星 ユートピアコロニー上空
「遅えぞアキト!」
「<オメガ6>文句言わないの。<オメガ7>腹一杯にしてきた?」
相変わらずこの二人はいいコンビだな。
「肯定だ<オメガ2>」
「<オメガ1>から<オメガ7>。丁度我々も残弾が無くなったところだ。ここを一人で抑えられるか?」
「問題ない」
……なんて言ってみる。
「よし。<オメガ1>から各機へ。補給に戻るぞ」
「アキト。死ぬんじゃねえぞ」
「生きて帰ったら。なんか御馳走作ってね」
「お、おい!ホントに全員戻るのか!?」
「弾切れなんだからしょうがねえだろ」
「あんたもオメガチームの一員なんだから、何とかしなさい!」
マジで皆戻りやがった!!
さすがというかなんというか……。
現在俺はヒリュウⅡの『オメガチーム』に所属している。
『オメガチーム』って言うのは、一応「ヒリュウⅡ」のエース部隊だ。
そんな部隊に俺が居るのっておかしいと思うのだが、隊長曰く「お前には才能がある」らしい。
毎日毎日機動兵器のシュミレーションばかりだからめちゃくちゃ疲れる。
だけどヒリュウⅡに配属されて良かったことがある。
それは『提督』に会えたことだ。
『提督』は週に一度、趣味の手料理を御馳走してくれる。
ただの手料理じゃない。この人の作る料理はプロ並みなんだ。
初めて口にした日、俺は失礼を承知で弟子入りしたよ。
「おっと!」
『虫』の体当たりを回避すると補給したミサイルを放つ。
これで通算13機撃墜。
……さりげなくエースじゃん、俺。
「まぁ、これだけいるからな……」
『虫』はまだまだいる。
いきなり火星に攻撃仕掛けてきた昆虫型機動兵器、通称『虫』。
ユートピアコロニー上空で奇襲を仕掛けてきやがった。
第二機動艦隊は錬度が高いから問題なかったけどね。
「第一艦隊も集結してるし、何とかなるかな?」
そんな俺の甘い考えを一筋の閃光が吹き飛ばす。
その閃光の方角に振り向くと…
俺の瞳に写ったのは…
爆散するヒリュウⅡだった…
「………えっ?」
何が起きた……。
「<オメガ7>から<オメガ1>へ。隊長、何が起きたんです?」
…………。
「<オメガ7>から<オメガ2>。マオ、何が起きた?」
…………。
「<オメガ6>。クルツ聞こえてるだろ。冗談はやめろ」
どんなに待っても、無線から聞こえるのは雑音だけだった。
「………………チクショウ………チクショウ!………チクショウ!!チクショウ!!チクショウ!!チクショォォォ!!!」
俺は叫んだ。
力の限り。
声が枯れるまで。
力の限り。
ミサイルも撃ちまくった。
無くなるのにも気づかずに。
「!!」
衝撃が走る。
どうやら体当たりをくらってしまったらしい。
「クソッ!」
おかげで冷静さは戻った。
しかし…
「がッ!!落ちるッ!!!」
あとがき(いいわけ)
春休みってすばらしい
ちょっと補足
>『提督』
スパロボに出てくる人を意識してみた。
>ネルガル重工
アキトが中学生のときは、アカツキの親父が会長だった。
そのため様々な分野に進出してる。
アカツキが跡を継ぐとその方針は大きく変わることになる。