ホウメイ師匠曰く……
ナデシコの乗員の腕は超一流らしい……
性格に問題があるのを除いては……
西暦2196年 12月
ナデシコ アキトの部屋
パイロット兼オブザーバー兼コック。
それが俺に与えられた役職だ。
まあ仕事の半分は自分の好きなことができるし待遇面ではなんら問題はない。あるとすれば部隊の指揮を任されたことかな。
「一体どんな奴らが雇われたんだ」
俺はプロスさんから貰ったナデシコの乗員名簿を開くと、まずはパイロットの経歴を見た。
『ヤマダ・ジロウ』
『スバル・リョーコ』
『アマノ・ヒカル』
『マキ・イズミ』
4人とも軍出身。
ネルガルがエステバリス開発のためにテストパイロットとして引き抜いている。
技量が高く、エステバリスの搭乗経験が長いことも考慮されナデシコに乗ることになった。
しかし、兵学校卒業後すぐにネルガルに行っているため、実戦経験はあるが簡単な作戦にしか参加してない。
「俺が何とかするしかないか……」
次に艦長と副長。
『ミスマル・ユリカ』
『アオイ・ジュン』
艦長のユリカは連合大学の戦略シミュレーションで無敗。
副長のアオイ・ジュンもユリカ以外の人間には負け無し。
確かに腕はいいみたいだけど……。
「実戦とシミュレーションは違うからな」
シミュレーションでは人は死なない。でも、実戦では人は死ぬ。
シミュレーションしか知らない人間は目の前で人が死んで初めて分かるんだ。火星での俺みたいにな。
「後の乗員がな……」
殆どが民間人。
もちろん戦闘経験なんぞ皆無。
「………」
この資料を読めば読むほど不安になってくる。
「何なんだよ!通信士の前職が声優って!?」
操舵手は元社長秘書、整備班長は違法改造屋……。
この名簿を見たら誰でも不安になるだろう。軍に所属していれば尚更だ。
「……となると実質俺しかいないのか」
実戦経験と実力を兼ね備えており、さらに負け戦を経験していて師匠が知ってる人物。
師匠の交友関係は詳しく知らないが、少なくともヒリュウⅡの部隊に限って生き残ってるのは俺しかいない。
推薦された時は頭に来たが、仕方がないか……割り切ろう。
「とりあえず乗員のことは置いといて……」
これからのことを考えよう。
俺は今、一番関わりたくなかったネルガルに関わっている。
雇った時点で俺の経歴は調べられているだろう。
そうなると俺の両親の事も分かるだろうし、俺があの日崩壊したユートピアコロニーにいた事も分かるはず。
二つの事項からボソンジャンプという結論が出るのは時間の問題だ。
もしその事を聞かれたらどうする?
正直に話すのは却下だな。モルモットにされるか暗殺されるかのどちらかだ。
「黙ってるのが一番か……」
命令が出ている以上、ナデシコを降りる事はできない。
「今はうまくやるしかないな」
あとがき(いいわけ)
上の続き……。
まさかメキシコが勝つとは思わんかったよ……。
ちょっとお聞きしたい
『スバル・リョーコ』
『アマノ・ヒカル』
『マキ・イズミ』
この3人。ナデシコに乗る前、何をしていたか知ってます?
ヤマダが軍人なのはエリナの台詞から分かるんだけど、この3人は分からない。
勝手に元軍人にしちゃったけど、大丈夫かな……。