木星近辺の探索は当然のごとく無人衛星や機械が行っていた。
それでもなお、近年の木星近辺探査は遅々として進みをみせない。
それは、火星と木星間にある小惑星帯に阻まれるのもあるが、人為的な妨害によって起こっていた。木連が探索を行おうとする機器を、察知できる範囲。コロニーが感知される軌道を通過する際に撃墜していたからだ。
だが、ユーチャリスによって破壊された木連にそれらを妨害する手立てはなく、細々と観測目的に発車された無人探査機は、人のメッセージを受け取るという数奇な道をたどることと成った。
「木星圏からの救援信号。これを如何するかね。」
連合政府議会、国家間の枠組みが一様に一つとしてなった地球。
その地球を握る国家の代表者それぞれが、一同に解して議会は行われていた。
集まった面子は、往々にして年齢を重ね苦渋を舐め、娯楽を得てきたものたち。
100年前の怨霊、負の遺産。
これらが露呈した時点で、察知された規模の大きさからすれば、本来は些事として接収する、または封殺するという手段が彼らの結論であった。はずだ。
だが、各国の代表に指示を出す国家指導者たちがここに集ったのは理由がある。
「露呈したメディアが致命的であった。木星連合か、思いもよらぬ怨霊であり、思いもよらぬ出現であった。」
探査機はその通信を外宇宙探査機関へと伝達。それによって、機関全てと一部マニアに通信内容は知られることと成った。
「隠しようもないな。今回の事件は我々もしくは近しいものの退位でもって、収束を図る必要がある。そして、未知なる敵も問題になる。」
「未知なる敵となるはずだった彼らが、未知なる敵に滅亡させられる。上には上がいる。困ったものですな。」
それぞれが視線は隔されている。
ホログラムによって行われる擬似会議。
彼らは未知なる敵の情報をウインドウに表示させる。
無人探査機は、時として遭遇する可能性のある生体ポッドの位置をシグナルとして発信でき、通信機器を備えている。それも最新の。
これによって、得られたのは、謎の敵にまつわるあいまいな情報と、木連が所有したと言う技術だった。
「相転移エンジン、ディストーションフィールド。手にするには気の遠くなる技術が必要だよ。だが、それを持った彼らを屠った敵がいる。」
「敵か。断定するには早計に思えるがね。」
ウインドウが提示される。
線画で描かれたものだ。
生存者のうち、地球へと向かう大使の船は奇跡的に生存した。そして、周回してきた無人衛星を鹵獲して救難信号を送ったのだ。
大使たる男に描かれたイラスト。それは要領を得ないが、剣にも見えた。
ユーチャリス、名も知られぬ船がはじめて歴史に登場した一幕である。