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No.9229の一覧
[0] 最初から善人ぶる必要はないの[銘天](2009/06/03 19:29)
[1] 観測[銘天](2009/06/01 23:28)
[2] のんのん[銘天](2009/06/02 19:06)
[3] のんのは雑誌[銘天](2009/06/08 18:26)
[4] 捕獲網[銘天](2009/06/09 18:59)
[5] おーじんじ[銘天](2009/06/09 23:41)
[6] ばらばら[銘天](2009/06/11 23:13)
[7] らぴすとげんじょーさんぞーではない[銘天](2009/06/12 21:31)
[8] 披見体[銘天](2009/07/04 08:35)
[9] 自問していない自答[銘天](2009/08/31 22:36)
[10] みらいとかことじぶん[銘天](2009/09/06 09:52)
[11] 何がしたいかわからない[銘天](2009/09/08 09:46)
[12] やることをやるべきで、やったひと[銘天](2009/09/16 21:31)
[13] みわたしてみる[銘天](2009/09/23 18:06)
[14] 夢とか自由は広すぎて現実味がない[銘天](2009/09/24 19:11)
[15] 土壌改良[銘天](2009/09/30 21:33)
[16] 操り糸につながれた戦神[銘天](2009/12/27 08:10)
[17] 過去幻影(改訂[銘天](2010/04/20 00:11)
[18] マシンチャイルド[銘天](2010/04/20 08:24)
[19] 可能性の回避[銘天](2010/05/05 18:35)
[20] 過去未来過去未来未来過去かこかこ[銘天](2010/05/09 08:12)
[21] 未来は過去になって過去は未来へと進む[銘天](2012/10/28 20:22)
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[9229] 自問していない自答
Name: 銘天◆8a7bd4a0 ID:18ab25bc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/31 22:36
「何をしたいの?」
「料理がしたいんだ。」
テンカワアキトが少女と出会うのは、これが初めてではない。

エステバリスというロボットを操作する擬似シュミュレータのオペレータが彼女だった。もっとも、イネスが言う限り彼女がくみ上げた自分の行動をなぞらえて作られたAIが真似をしているとのことだった。
「それはどうして?」
「人のためになる。火星の料理は不味い。そうだろう。」
同意を求められたところで困ると、彼女は内心思っていた。


味覚というものが失われた人間の感覚にリンクして、ラピスは極端に味覚を刺激する食べ物でもってフィードバックを試みたことがある。イネスとエリナが原因にあたる。
それでもって、激辛や激甘を過度に摂取した彼女は、中庸の味をおいしいと感じられる感覚を養うことが出来なかった。
味覚を失った身であはあるが、このことにアキトは心を痛めた。
もっとも、痛めつけられた果ての心をもった彼は、ラピスと一緒に同じものを食べるということで共感を得ることにしていた。

回復の見込みがないと実証されると、ラピスは常人の味覚に合う食べ物を与えられたが、ここに悪癖があった。

「わからないわ。おいしいとか、不味いとか。ともかく感じられるのがいい。」
甘くても、辛くても、刺激があるほどに良いものだ。
それが、ラピスの考えだった。

「火星の料理も食べられないわけじゃないでしょ。それでも、料理人になりたい?」
「もちろんだ。」
ラピスを可哀想に見る視線は、アキトから発せられていた。
彼自身恵まれた環境に置かれた人生を送っていない。
それでも、他者を思いやる心が息づくほどに、さもしい生活を送っていたわけでもなかった。

環境に適応する。
例え怒られて、見下されたとしても向かうべき目標と、夢があった。その方向に一歩でも進んでいることを、自覚しているからこそ進めた。

「アキトにやって欲しいことがある。未来を見つけられない人。だから、あなたが話してみて、相談に乗ってあげて。」
彼からしてみれば、まずラピスの味覚をどうにかしてやりたいのが心情だ。
でも、依頼人であり雇用主の一人である彼女の依頼を断る理由はない。

「わかった。」




エステバリスのシュミュレータに乗り込む。
服装は、ラピスに依頼されたままの格好であり、普段のパイロットスーツではないのでシートの感覚が違う。
「しまった、これじゃのれない。」
『そのままでいい』
ラピスの映し出されたウインドウが表示される。童顔で声音も高いテンカワアキトにラピスは面白みを多少見つける。それは彼女の知る彼の声音や表情と比較して、決して見られない素であった彼の姿だ。

『パイロットスーツを着用して搭乗する基本原則を叩き込まれたのはいい。でも、今は気にしないで。相手のシュミュレータとつなぐ。』
「でもなんで、エステバリスなんかにのって、話すんだよ。戦うわけじゃない。」
理解できないといった表情の若者に、もっと年若い少女は言う。

『相手はパイロット。自閉症じゃないけど、閉じこもり気味。だから、気分転換。腕は確かよ。気をつけて。』
「気を付けてって」
ウインドウが消えて、シュミュレータが稼動する。
「おい。」
返すべき相手が消え、仕方なしにいつもどおりの行動をとる。

IFSコネクタと、管制コントロールと武装トリガを兼ねたグリップを握る。
空間は暗黒になって、上下もなく重力も存在しない空間に感覚はあった。

バーニアをふかす必要も無く、漂う。
小型重力発生装置ではなく、IFSを経由した感覚の擬似パルスがこの感覚を生み出している。
視界は広く、センサが感覚を拡張する。
感覚が一つの物体を捕らえる。果たして、そこに黒の異形がいた。

エステバリスよりも大きい。
黒い装甲に覆われた厳しい人型だ。脚そのものにバーニアがあり、推進翼バーニアも大きい。
ブラックサレナ、そうよばれた未来があった機体だった。


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