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No.31875の一覧
[0] 魔眼転生記―NINJA―伝[シオンβ](2012/03/07 21:50)
[1] 1.転生サラブレット[シオンβ](2012/03/09 01:35)
[4] 2.とある追憶と展望[シオンβ](2012/03/07 22:22)
[5] 3.覚醒する何か[シオンβ](2012/05/20 17:41)
[6] 4.雲隠れタクティクス[シオンβ](2012/05/20 17:35)
[7] 5.遭遇戦![シオンβ](2012/05/20 17:42)
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[31875] 5.遭遇戦!
Name: シオンβ◆8ace1640 ID:0c155718 前を表示する
Date: 2012/05/20 17:42
 そ こ に は 変 態 が 生 え て い た 。


 誤字にあらず。厳密に言えば雑木林の太めの木と同化しているのだ。
 上半身から徐々出てきてその全容が明らかになる。灰色の肌。貞子のように顔を隠す長髪。切れ長で、人間とは思えない──事実、違うのかもしれない──眼をした、蛇の人(?)が現れた。

「ワッ……?それは、何かのお呪い(まじない)なのかしら?」


「(やばい、やばいヤバいヤバイヤヴァイ……ッ!これはもしかしなくても奴だ。こんな所に何故?why!?幻覚か?否、NO,プライスレス!!これは、当然ながらに……)
 Yes!ハロー?そしてグッバイ!!」

 即座に瞬身の術で逃走、もといこれはもう闘争だ。
 動揺で自分でも何をほざいたのか判らない。
 もっとやりようは在ったはずだ。現にこんな訳解らん奴がいきなり逃げ出したら、あの変態のこと、当然…………



「いきなり逃げるなんて酷いじゃない。まぁそうやって逃げるのを追い回すのも嫌いじゃぁないケド」



 全力全壊で疾走してる横を、奴のシルエットが逆さまになって並んでくる。なんだこのホラーは。
 凍りつくという表現はこの時を置いて他には無い、心臓を鷲掴みにされた気分だ。……割と、この後に物理的に実行されそうな気がしてならない。
 ――久しく俯瞰を気取っておちゃらけを演じていた感情に、恐怖という氷水が冷たくが注す。


「フフフ、忍法・大蛇縛りの術」


 位置的には下から見上げられる形で、不自然なほど白い肌である怪人の口元が、口裂け某の如くニヤリと歪む。
 咄嗟に距離を稼ぐべく反対方向に跳ぶも、印は信じられない程のスピードで組み上げられて、奴の手元から首の太さ程の大蛇が飛び出す。
 大蛇はこちらに突っ込んできながら更に口から鱗を持つ大量の蛇が飛び出し、正面とサイドから逃げ場を無くすように覆い尽くす。


「くっ、!火遁・豪火球の術!!」


 進行方向の大木の面に着地、壁蹴り。急な静動に正面から来る以外の範囲攻撃が掠めるように脇を通り過ぎる。
 同時並行で結んだ二つの印で噛み付いて来る寸前の大蛇本体を焼き尽くして辛くもこれをいなす。後続に伸びてきた子蛇も両手クナイで回転切り一閃し、そこから即座に一点突破を目指す。
 牽制の初手から圧されているが、一つ間違えても詰み、これでも上出来だ。
 火遁の陽炎の先に目を向けると、距離をとった本人からは離れたのだが奴は特に動くでもなく佇んでいる。死んだ爬虫類のような目からのジトッとした視線が合った。

――恐怖は、加速する。

 本能からか、自分でも驚くべきほどの静けさで返って冷静になって思考する。
 瞬時に手裏剣を全方位にバラ巻き、次なる一手の為の布石。
 やり過ごした範囲攻撃が後ろから追尾してくるのを感じるがこの際無視。左手を後方にやり、右手のあらゆる仕込手裏剣を投擲。
 チャクラが殆は残っていないので長期戦は選べない。術者に向かうことで、背後から迫る弾幕を誘導するように術者に突っ込む!!


「あら、逃げるかと思ったけどなかなか勇気あるじゃない。だけどそれは下策ねぇ」


 奴は鱗蛇の範囲攻撃を器用に制御し逸らして消しながら、大口を開けて口内から蛇型の長舌を繰り出す。舌は嘘臭いほどの強力で、後ろ手に隠し構えていたチャクラ刀ごと俺を捕らえる。
 そしてその場に向かって舌を縮めながら奴が顔を近付けてくる。だが、それは奴の下策だ。


「魔幻・茨鋼線の舞」


 現状、体術・忍術共に伝説の三忍とまで言われたコイツ──大蛇丸には当然ながら足下にも及ばない。
 この攻防も奴はかなり遊んでいた節があり、その気になれば瞬殺できたのだろう。
 そんな今の俺が、万に一つ勝てる可能性は……


「幻術、ですって……?」


 相手が油断しているところに切り札の魔眼をぶち込んでやるしかない。今まで仮面を被っていたため大蛇丸は気付かなかった(?)が、写輪眼を使えばタイムラグ無しに発動できる。

 残存チャクラが僅かな中で、苦肉の策の触媒を使った節約術。
 これもまた模索中の術で、手裏剣にワイヤーを付けて縦横無尽に張り巡らせてそこに範囲を限定し、その中にいる人物に至近で直接写輪眼で目線を合わせる事で相手を拘束する術だ。

 今はまだ距離がネックで、前準備はともかくゼロ距離という条件が厳しいものの、普通の幻術と違って鋼糸ワイヤーを介して干渉するので、絡ませることで物理的・精神的に相手を強力に拘束するという、なかなかの効用だ。
 幻術耐性があってもこちらの効果が影響するので対象を選ばない。


「さて……こうしてお互い縛り会っている状況なんで、落ち着いて話し合いましょう。まず、アナタは誰なんですか?」


 とにかく、何か打開策を見つけなければならない。奴の正体など判っているが、ここはしらを切り通さないと話はややこしくなる。


「縛り合っている、ね……ふふ、いいでしょう。ワタシを知らないと言うのなら何故ワタシから逃げたのかしら?」

「質問に質問で返すとは礼儀がなっていないですね。見るからにヤバい匂いがしたから、と答えておきましょう」


 まず、こちらの正体はバレていないのはアドバンテージだろう。これが崩れるのは最悪の事態で、逆に言えばそこさえ抑えてられればまだチャンスはある。
 なので、下手にでるようなことは絶対にしない。


「アラ、それは心外ね。私は話を聞きたかっただけなのに。まぁいいわ、私は大蛇丸。アナタは見たところどこかの里の暗部と言った所みたいだけど?そっちは名乗ってくれないのかしら?」


 来た。取り敢えずこちらの流れに引きずり込むしかない。


「……火鼠。里の所属は、今は木の葉です。」


 更に撒き餌を仕掛ける。これに乗るかどうかが分け目だが……


「成る程。根の符合とその仮面、ダンゾウの子飼いかしら?でも今は、ということは……?」

「……一問一答が筋でしょう。ビンゴブックとも明らかに違うその姿……貴方は何故ここに?」

「フフ、なかなか言うじゃない。そうね、“草”の定期的な確認って所かしら。“変装”はそれに応じて。それで、さっきの質問はいいわ。変わりに貴方の秘密を聞こうかしら」


 流れを変えられたか。ここは流すところだが……敢えて挑戦してみるか?


「この幻術、私でも知らないのよ。さっきの戦闘の動きからしてなかなかイイ線いってたからてっきり戦闘特化なのかと思ったのだけど。もしかしたらまたまだ他の手を残してるのかしら?
 見たところ未だかなり若そうだし、この私を此処まで封じ込める術を使う秘密があるんでしょう?」


 そう言って幻術による腕の束縛を動かす奴――大蛇丸。術を解きでもしない限り、動かせばその分苦痛を伴うはずなのだが、そんなものは意にも介した様子はない。……早々に切り上げた方が良さそうだ。


「……よく言われますが、自分はかなり小柄なものでして。専門は後方支援です」

「そう。じゃあ最後の質問にしましょう。率直に聞くわ。あなたのソノ眼……写輪眼ね?」

「……一問一……っ!!」


 凄まじい殺気が重くのしかかる。
 やはり気付かれていたか、洗脳をした場面を正確にではないが見られていたのだろう。先の幻術でも当然使ったが、白眼の併用が前提の極小の眼穴という隠匿策ですら意味をなさなかったのかもしれない。
 確信とまではいかないが、されど見逃すことは無い程の執着といったところか。

 ……これ以上焦らすのは必要無さそうだ。


「……貴方は、今の木の葉をどう思いますか?」

「…………平和ボケして反吐が出そうよ。そう言うアナタはどうなの」


 待っていた言葉。今回はかなり際どい綱渡りとなったが、後で引っ掻き回されるよりはある意味良かったと言えるのかもしれない。
 ……一世一代の大見せ物といこうか。


「自分は木の葉を……過去の遺物を何もかも、潰したい」


 ――恐怖は、狂気へと変わる。






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 あの後、火鼠と名乗ったお面の少年はワタシからまんまと逃げ切った。
 端からまともに相対する気はなかったようで、話し合いを始めた時には既に何らかの仕掛けを弄くってたんでしょう。

 まぁワタシも拘束を解こうと思えば解けたんだけど、そうしたら彼も全力で抵抗してたでしょうし、そうなればこうして興味深い話も聞けなかったのだから、いいとしましょうか。

 まだまだ荒削りで、その気になれば捕まえて吐かせることも出来たかもしれないけど、全てソレじゃあ詰まらない。
 それにアノ眼。ワタシが一番欲する器となりうる存在。だけれども彼はどちらにせよもっと泳がせた方がイイ。
 そのゾクゾクする憎悪は、まだまだ彼を強くする。

 あのいい感じの眼はワタシと同類でこちら側に来るべきモノ、必ず何かをやってくれそうだわ。

 これは良い収穫だったわ。カブトにも彼の事を調べさせる必要があるわね。

 フフ、フフフフフ……次に会うときが楽しみね。木の葉潰しも彼を絡めれば更に楽しめそうだわ。
 実験中のアレもプレゼントしておいたし、暫くは退屈しなさそうね…………




──────────────────────────────────────────────────────────


 木の葉に這々の体で逃げ帰った俺は、最後の力を振り絞って家に辿り着いたが、玄関先で遂に力尽きた。






 ……というのは大蛇丸に遭った手前、不要人過ぎる為、ちゃんと偽装して里のある場所に潜伏する。
 体中ボロボロの俺には睡眠が足りないのだが、カブトなんかに正体がバレたら一も二もない。

 服に仕掛けられた呪縛符も解除。なんかの口寄せだったみたいだがこの眼の前には無力であるのに。
 書き直せば逆口寄せなんかも出来そうだ。今はやらないが。

 その後兵糧丸で何とか保ちながら色々後始末を終え、家に着いた時はもう朝だった。

 出来れば3日間くらい思いっきり爆睡したいが、少しでも目立つようなリスクは避けたい。この世界に慣れてきたとは言え、まだまだどんな手で足元を掬われるか判らないのだから。

 ……と言うかまだ大丈夫だよな?
 かなり潔癖症になって隠蔽に重きをおいているのだが、これでも既に掌の中で踊らされているとかだったらもう生きていく自信が無くなる。


 とか何とか色々と思いに耽っているともう良い時間に。いつもなら適当に訓練でもするのだが、今日だけは勘弁させてもらおう。
 着いたら速攻寝るか。というか一番乗りして終わりまで目を覚まさない。これ決定。



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