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No.35923の一覧
[0] 平行世界の彼女[明埜](2012/11/25 12:20)
[1] 平行世界の彼女 2[明埜](2012/11/24 23:04)
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[35923] 平行世界の彼女
Name: 明埜◆22c298f0 ID:0ed300c7 次を表示する
Date: 2012/11/25 12:20

液体が落下する音が反響する。

耳朶を震わさせる目の前の存在に、虚ろ気な眸を向けるばかりの一人の少女。その手には歳不相応な歪な包丁と何とか呼べる代物を握りこんでいた。
目の前の存在、基銀色に輝く鉄の部分に彫られた音符の模様の額当てをつける青年。黒い装束は闇夜にしかと紛れ込む。そう、この青年は闇に潜むもの――忍である。先ほど彫られていると表した音符の模様は、最近創られたという新興の里、音隠れのものだ。

そんな里の一忍者である青年は、一回りも下の少女に押し負けている。

時間を巻き戻すとしよう。
当初、青年は木の葉隠れの里から巻物を奪取する任務を振られていた。それは勿論まだあまり実績もなく、力も弱い青年の属する音隠れの里が地位を確立せんと躍起になったことによるもの。それに青年は反論する気など毛頭なく、またそれぐらいをこなせるだけの自信があったに過ぎない。
何故か。それは単純にここ数年の間に威厳を保つことしか出来ない木の葉の里への油断だった。ほんの5年ほど前に起きた、他里でも有名な尾獣である九尾の事件それしかない。そのときに大幅に戦力を削られたのは言うまでもなく。
見事に進入し奪取に成功した。
途中追っ手が現れたが、敵ではなかった。苦渋を飲ませたとしか言いようがない。つい口元を緩ませてしまった青年だが、それは明らかなる驕りでしかなかった。


「待てよ。」


甲高い、幼さのあまりある声。こんな夜更けに聞くなど、悪寒以外の何者でもない。
青年は一瞬ばかりか気を取られた。
その隙、と言えば良いのだろうか。右足を弓を引くかのように擦り下げた少女は間髪開けずに青年目掛けて疾走した。それに戸惑う青年だが、仮にも忍。仕込み武器であった忍者刀を構えた。
が、それは苦肉のものでしかなかったのはすぐに分からされた。

刀は、折れた。

まだ触れても居ない内に折れてしまったのだ。
少女はそれに驚きも喜びも優越も何も感じてないかのように、気にせずに攻撃を仕掛けてくる。防ぐ術を失ってしまった青年は言わずもがな、だ。
その小さな足は撓るままに青年の横腹を抉る。よくよく見れば少女の姿に違和感を感じるかもしれない。――通常の人間よりも長そうな腕。足。華奢なはずなのに確かな力を持つそれは、青年の思考をより混乱させた。
だが、攻撃は止まない。
抉ったときに緩んだスピードのまま、体を捻らせて側頭部へと掌打を食らわす。そのままの方向へと飛ばされた青年は身動きを取ることが出来なかった。耳を、やられたのだ。チャクラが含まれていたことに改めて気付かされた青年に余裕はなかった。
平衡感覚のないまま、戦えはしなかった。
しかし、攻撃の手は緩むことを知らず。空気を切る音が僅かも届かないが、視界はまだ足りえていたにも拘らず、二連撃で大きさの違うクナイを投降されたことに気付けない。それは少女の技量を賞賛すべきことだった。狂いなきそれはまだ幼い少女には無理なものなのだから。
そして少女は徐に、今の今までどこに隠してあったのか、というような冒頭でも記載した歪な包丁と何とか呼べる物を逆さに握った。
月の光も届かない暗い森の中でそれは気味悪さをより一層引き立て、恐怖を感じさせるのだろうが、青年にはそれを見れるだけの視界をもう持っては居ない。

そして冒頭に戻る。



「オニーサン、駄目だよねぇ。だーいじなぁ"それ"は返してもらわなきゃぁ・・・」


いつまでも虚ろ気な眸。しかし、先ほどまでとは違って口元には歪んだような笑いが携われていた。
ヒッ。小さく青年から漏らされた悲鳴に愉悦で滾った少女が喘ぐ。それに青年は圧倒され、気持ち悪くなり、果てには現実かすら分からなくなる。
少女は手に握られた凶器にゆったりとした動作で一度だけ視線を向けた。しかし、五感のうち二つも奪われたに等しい彼は、もはや気付くことすらできない隙。嘆き悲しむことも出来ないというのは、あまりにも哀れで滑稽だった。


「それじゃぁ、バイバイしよぉー。」


ネ?

青年の視界は、桃色で埋め尽くされた果てに赤を撒き散らして黒く塗りつぶされた。彼の目には、はっきりとしなかった視界でも何故か輝きを失わなかった翡翠色の眸を残したまま。









一人の老人以外誰も存在しないそこは、火影室だった。
紙の擦る音、判子を押しているのだろう音、墨に筆をつけ書く音――。デスクワーク一択のそれに、老人は慣れた手つきでこなしていくが一向に書類は減る兆候を見せはしない。止まない音は、閑散とした室内を震わすままだ。

しかし、どこからともなく降り立った黒い装束に干支を模した仮面を被る男に遮られた。


「――火影様。申し上げます。」


それに驚く素振りを見せぬ老人はやはりこの里の上に立つものらしかった。
先を促せ、というように一度瞬きをする。それに是、と答えるかのように頭を垂れ、恭しく声を張った。


「方位北北西、里から7km離れた場所で新興の音隠れの里のものだと思われる死体を発見。また傍には開かれたままで置かれる木の葉隠れのものであるはずの巻物を発見。直ちに調査に当たりましたものの、依然犯人は不明。その忍は惨くある殺され方から同士のもので間違いはないかと。」
「証拠を申せ。」
「その者の目には普通のクナイよりも小さめのものが両目に一個ずつ。真上の木には普通のものが二本突き刺さっていることから遠近法を利用したものだと推測されます。止めを刺したのは刃物であることを確認がとれました。口から延髄を狙ったものらしく、致命傷。耳からは血が流れていたことからも平衡感覚を失ったことを感じさせます。恐らく手馴れた者であるはずですので。」


老人は小さく唸った。
近辺には隠れ里がない。他里の忍が殺害された、となれば僥倖としか言いようがないのだが、何分この時勢ではほんの少しの不安でも里人は震え上がることだろう。もし殺人中毒者であるとなれば始末せねばならないが、この老人は甘かった。家族のように里の人々を包み込むような姿勢は褒められるものではあるが、疑うことをよしとは出来なかった。一部例外はあるにしても、それがこの老人の理想。
判断は下したくない。けれど、火影である自分は家族を守らなければならない。鬩ぎ合う葛藤の中で、しかし最終決定を下す。


「調査をさせろ。如何なる足跡も見落とすな。但し、今はそこまで割けれるような人材もない。―――一週間以内に始末が付かない場合は打ち切れ。」


それを聞き、是とだけ答えて室内には老人一人だけ残される形となる。
煙管をふかし、哀愁を漂わせる背中は泣いてるようにも見えた。そして、小さくぽつりと呟く。


「すまんのぉ・・・」


誰に当てた、謝罪なのか。知るのは老人ただ一人。


.


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