俺が拾われてから二週間といったところか。最初の二日は思い出したくはない。歩けないせいで世話を他人に任せる始末。軽く死にたくなった。いや一度死んでいるけれども
まあ、それも三日目にはなんとか歩けるようになった(無理矢理)おかげでトイレは自分で行い、食事は用意された離乳食を自分で食べている。その様子を危うげに見ている夫婦、波風ミナトとクシナは今日はいないようだ。
「あぁ(王手だ)」
「うぬ…少しばかりまってくれないか?」
「あだ(断る)」
代わりにいるのは三代目火影なる猿飛ヒルゼンというご老体だ。今は二人で将棋をしている。傍目から見ると異様な光景だろうな。老人と赤子が縁側で将棋をしているのは。人格が形成されているのは波風夫妻に目の前のご老体には知られている。五十音表を見つけて指を指すことで意思表示を示した。その時に俺が七夜志貴だと伝えた
「なんというか、お主の打つ手は尽く異様でな。相手をするのはちと骨が折れるんじゃよ」
「だぁ(そんな事は知らん)」
「…はぁ、儂の負けじゃよ」
「だぶ(そうか)あぶぅあ(所で、波風夫妻は何処へ?)」
「…何を言っておるかわからんのぅ。少し待っておれ」
「あぁ(あぁ)」
三代目火影が席を立ってあるものを取りに行ったので俺は駒を片付ける。その際にふと考える。俺自身を駒と称するのならどうなるか…まあ歩が無難だろう。相手陣地で縦横無尽に動くほうが性にあっている
「ほれ、何を言いたいのじゃ」
丁度駒を箱に入れた所で三代目火影が五十音表を持ってきて俺の前に広げた。
「な、み、か、ぜ、ふ、さ、い、は、ど、こ、へか。ふむ、あやつらは出産のためにある所に向かった所だ。帰ってくるのは深夜を過ぎるだろうからお主が弟と会うのは明日になるだろう」
通りでクシナの方が苦しそうだったわけだ。しかし弟か。俺としてはある程度育ててくれれば後は自分で生きていくつもりなのだが、それをさせてくれる夫婦ではないのはまだ短い付き合いの俺でもわかる。
さて、どうすべきか…まあ、なるようになるか
「なになに?は、ら、が、す、い、たか。わかった。今用意するから待っておるのじゃ。それと、お主は赤子の身なのじゃからあまり無茶はせぬようにな」
「あぶ(わかっている)」
取り敢えずは明日になってからだな
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目を覚ます
異様な空気を感じる
騒がしい
なんだ?この嫌悪感は
そう感じたと同時に部屋の襖が開かれた。いきなり誰だ?騒々しい
っと、忍びのようだな。木の葉の額当ての力量は大したことのない男、その男があわてたような顔で俺に近づき抱え上げた
ーいきなり掴むな。驚くだろう
そのまま男は家から飛び出して走りだす。里の光景を見て俺は絶句した。
大きな狐が暴れているのだ。尾は九本、その身体はとてつもない。そいつを忍び達が攻撃していた。その光景はまさしく蹂躙。強大な敵を前に人は為す術もないのか。
ーそれよりも
驚いたのはこの身体だ。何故反応しない?あのような化け物に反応しないのは一体全体どういうことだ?
俺は狐に襲われている里の光景を眺めてただ疑問に思っていた
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それから、九尾の襲来を木の葉は乗り切った。波風夫妻と大勢の犠牲を伴って…