あの事件から二日。
昨日は『忍者登録書』という、自分のプロフィールや目標、得意な術など簡単な自己紹介を書き留める証明書のようなものを作成するため
自分の今の姿を撮影した。
ナルトくんが随分と可笑しな隈取りを顔に書いて撮影していたので、サスケくんと二人で大笑いしてしまった。
もちろん撮り直しを言い渡されていたが。
その後どこかに行ってしまったナルトくんを置いて二人でまた演習場で修行をした。
サスケくんが言うには、どうやら私は鳳仙花の術の扱いに長けているらしい。自分ではあまり実感が湧かないが…。
そういうわけで昨日はひたすら鳳仙花のコントロール練習をしていた。おかげでチャクラを大量に使ったため、夕飯がとても美味しかったです。
サスケくんも昨日は豪火球の練習。日に日にサイズが巨大化しているような気がする。
二人とも火遁を好んで使うのは何故なのかと彼に問いかけてみたところ、うちはの一族はもともと火遁に長けているらしい。
豪火球を撃てるようになって初めて一人前のうちはの忍だと認められるらしい。つまり私はまだ半人前というわけだ。
そんなこんなで今日。
今は下忍の説明会の為、アカデミー卒業者全員で集まりです。
「各自好きな席に座ってくれ。全員集まり次第、グループを発表する」
イルカ先生のその言葉を受けて、中央左側の席に着席するとサスケくんもその横へと座る。
皆試験に合格した者たちが集まるだけあって、それぞれ様々なところに額当てをしている。
普通に額に巻いている人、膝に巻いている人。肩にかけている人もいれば、首にぶら下げているだけの人も。
十人十色、個性が出ていて眺めているのも少し面白い。
少しそうやって周りをキョロキョロと見回していると、何人かの男子生徒達がこちらへ向かって手を振っている。
後ろを向くが誰もいないことを見て、どうやら私へと手を振っているようだ。
そちらへ向かって私も笑顔で手を振り返すと何故かその内の何人かは顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
こちらをチラチラと見ながらひそひそ何かを話している。
…なんだろう。私、何か恥ずかしがられるような事したかな…?
ううん…と唸ると、隣のサスケくんがコホン、と小さく咳払いをした。
「どうしたんですか?サスケくん」
「…………お前はもう少し自分の容姿を自覚した方がいいな」
「容姿?何か変でしょうか」
「その逆だ………いや、何でも無い。それよりもグループ分けはどうなるんだろうな」
「サスケくんはクラス一番ですから一番成績の悪い子と組むことになりそうですね。何人グループなのかわかりませんが…」
「…チッ。三人一組でナルトとサクヤが一緒なのが一番理想的なんだがな」
「バランスを考えるとその確率はかなり低いでしょうね……」
そのままガヤガヤと騒がしい教室内で少し彼と喋っていると、ナルトくんの姿が見えた。
彼へ向かって手を振ると嬉しそうに笑って手を振り返しこちらへとやってくる。
そしてサスケくんの横へと座り込んだ。
「おはようだってばよ!二人とも」
「…オウ」
「おはようございます、ナルトくん」
にこり、と彼に優しく微笑むと彼も先ほどの男子と同様に少し頰が赤らむ。
何なんだろうか、皆して…。少しムッとしていると、他の男の子がこちらへと近寄ってきた。
「アレ?ナルト!何でお前がここにいんだよ!今日は合格者だけの説明会だぜ」
「お前さ!この額当てが目に入んねーのかよ」
「ナルトくんもしっかり合格したんですよ」
「ふーん…まあいいや。それよりさサクヤ!今日の夜どっか飯行かねー?」
「…うーん、ごめんなさい。夕飯はもう作っちゃってあるので」
「そういうことだ。さっさと失せやがれ」
「…チッ。邪魔くせえ奴だぜ」
吐き捨てるようにそう言うと少年はさっさと戻ってしまった。
席に戻った少年は周りの生徒とこちらを睨みつけている。
「…もう。サスケくん、あの言い方はないですよ」
「あんな奴どうでもいい。目障りなだけだ」
ぷいとそっぽを向いてしまうサスケくん。
何故だか機嫌が悪い。いつもこうだ、私が誰かに誘われると…。
何が気に食わないんだろうか。
「…サクヤちゃん、サスケ!オレも今日夕飯食いに行っていいか?オレってば、家に帰ってもどうせ一人だからよ」
顔に影を落としながら少し寂し気な表情を浮かべてそう言う彼。
家に帰っても誰もいないのは想像もつかないほどの孤独だろう。
私はいつもサスケくんと一緒に暮らしているから分からないが、もし彼が家にいないのを考えると。
ご飯を作っても自分で食べておしまい。いただきますもごちそうさまも一人。咳をしても一人。
うぅ………悲しい。
はぁ、と小さく溜息を漏らすとサスケくんは険しい顔を解いて私に視線を向ける。
それに頭を縦に振って応えると、彼の顔にも少し笑顔が宿る。
「フン。別にオレは構わねェよ……夕飯作ってるのはサクヤだしな。決めるのはオレじゃねえ」
「私も大丈夫ですよ。人数は多いほうがご飯も美味しく食べられますし」
「やったってばよ!!」
「言っとくが、ラーメンじゃねェからな?」
「人をラーメンだけで生きてるみたいな言い方するなってばよ………あんまり間違ってねぇけど」
そうこう三人で話していると、教卓側の扉がガラガラと大きな音を発てる。
教室に入ってきたのは…イルカ先生だ。
「全員!席に着けーー!!」
「今日から君達はめでたく一人前の忍者になったわけだが…しかしまだまだ新米の下忍。本当に大変なのはこれからだ!」
先ほどの喧騒はどこへやら。すっかり静かになった広い教室内へイルカ先生の爽やかな高い声が響き渡る。
先生も言った通り、私たちは忍者になったばかり。
忍者とは下忍・中忍・特別上忍・上忍、そして火影とクラス分けされていて、それぞれのクラスによって受けることが出来る任務の難易度が違う。
勿論、火影様は任務ではなく里をまとめる仕事になるけど…。
下忍から中忍にランクアップするためには、中忍試験という厳しい試験を突破しなければならないらしい。
中忍から先もまた同じ。
本当に大変なのはこれからというのは、疑いようもない真実だろう。イルカ先生も同じくそうやってのし上がってきたのだから、経験者は語る…というものだろう。
「これからの君達には里から任務が与えられるわけだが、今後は三人一組の班を作り…各班ごとに一人ずつ上忍の先生が付き、その先生のもと任務をこなしていくことになる」
三人一組か…。
自分たちで班を結成してもいいのか、それとも先生があちらであらかじめ班を決めているのか。
成績の良いチームと悪いチームで偏ってしまうといろいろと問題が起こるだろうから、おそらく後者だろうか。
…出来ればいつもの三人一緒が良いな。でも、誰と一緒になっても関係ない。頑張ろう。
「班は力のバランスが均等になるようにこっちで決めた。1班から順番に発表していくぞ」
えー!!という生徒達のブーイングが静寂を切り裂いて生まれる。
やっぱりそうか。予想していたので、特に文句はない。
チラリと横を見るが、サスケくんは興味なさそうに腕を後ろに組んでいるしナルトくんに至っては机に落書きをしている。
やめなよー…という視線を込めて彼を見るが夢中になっているのか特に反応は無い。
何を書いているのか少し気になる……。
まあ、いいか…それよりも、班員は誰になるんだろうか。
一班、二班、三班………と順番に発表していく先生。
やったー、とか。ええええ!とか。
いろいろな反応が起こる。まあ当然だろう。
誰にでも好き嫌いはあるのだから。それがこれから一緒に行動する班員ならなおさらだろう。
私は別に嫌いな人がいるわけではないが…出来れば、私の事を記憶が無いからと特別扱いするような人は嫌だなあ……と。
少し上の空でぼーっとしながら、そんな事を考えていた。
「次!7班……うちはサクヤ」
うとうとして朦朧としていた意識が名前を呼ばれた事により覚醒する。
どうにも椅子に座ると眠くなってしまってダメだ…。
私の他は誰になるんだろうか。
「うずまきナルト!それに…うちはサスケ!」
驚いた。
バランスを明らかに考慮していないようなその編成を聞いて、教室内が再びざわつく。
右を見ると彼らも驚愕に目を丸くさせていたが、少ししてその顔に笑みが浮かんできた。
やったな、というサスケくんの小さな声を聞き私も段々と嬉しくなってくる。
「ストーーーップ!!先生!7班のバランスだけおかしくねえか!?」
「そうだそうだ!せめてサクヤちゃんはうちの班に入れるべきだろ!」
「いやこっちの班だろ!!」
「何言ってるのよ!サスケくんを私たちの班に入れればそれで解決じゃないの!」
「うるせえぞ女子ども!」
「何よやる気なの!?」
「ああ!?」
「静かーーーーーーーーーーーに!!!!!!!」
喧騒をも掻き消すような先生の大声によって騒がしい生徒たちがピタリと黙り込んだ。
まあ、彼らの言い分もわからなくもない。成績トップのサスケくんとそこそこ優秀な私、それに最近は少し順位が上がってきていたナルトくんでは他の班と比べて明らかに不公平だろう。
どういうことなのだろうか。気になってイルカ先生の顔を伺うと彼と一瞬目が合ったような気がした。
「お前達の言い分もわからんでもない!確かに第七班だけ少し不公平だと思う者もいるだろう。しかし、この三人は三代目火影様からの指定でな……
文句があるなら三代目に言ってくれ」
えー…とか、なんだよそれ…だの、言えるわけないじゃない…といった、いまいち納得の出来ていない声が挙がるが…それ以上食ってかかる生徒は居ないようだった。
火影さまからからの指定…?
一体どういうことなのだろう。後で火影さまに聞いてみよう。
「爺っちゃんに感謝だってばよ!」
「ま、そうだな。どういう事なのかは知らないが…オレも後で礼を言っておくか。くれぐれも足手まといにだけはなるなよ、ドベ」
「だーかーらしつこいっつの、サスケ!オレはもうドベじゃねーってばよ」
「オレの中ではドベはドベだ」
「ドベドベうるせぇってばよ……今に見てろよ、すぐに強くなってお前なんかぶっ倒してやっからよ」
「ヘッ。オレが天寿を全うしないうちに頼むぜ。いつになるかわかったもんじゃねえからな」
「んとーにムカつく奴だってばよ……」
「あはははは…でも、どういう事なんでしょうかね。まあ、三人揃ったんですし良しとしましょうか」
班が決まって安心したからなのか、続いて八班…九班……というイルカ先生の声を子守唄に、再びゆっくりと襲ってきた眠気へと身を委ねる。
どうやらチームは問題無さそうです……おやすみなさい………。
あとがき
サクラちゃん?
ん?知らないです。