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No.4524の一覧
[0] はぐれ雲から群雲へ(人柱力&尾獣・二部設定)[始皇帝](2012/03/15 18:03)
[1] はぐれ雲から群雲へ―1話[始皇帝](2009/07/10 03:26)
[2] はぐれ雲から群雲へ―2話[始皇帝](2010/03/17 00:46)
[3] はぐれ雲から群雲へ―3話[始皇帝](2012/02/03 23:55)
[4] はぐれ雲から群雲へ―4話[始皇帝](2009/07/10 03:26)
[5] はぐれ雲から群雲へ―5話[始皇帝](2009/11/18 23:43)
[6] はぐれ雲から群雲へ―6話[始皇帝](2011/01/16 15:51)
[7] はぐれ雲から群雲へ―7話[始皇帝](2011/01/16 15:59)
[8] はぐれ雲から群雲へ―8話[始皇帝](2009/11/10 01:47)
[9] はぐれ雲から群雲へ―9話[始皇帝](2010/03/17 00:47)
[10] はぐれ雲から群雲へ―10話[始皇帝](2009/12/04 02:41)
[11] はぐれ雲から群雲へ―11話[始皇帝](2011/01/16 23:15)
[12] はぐれ雲から群雲へ―12話[始皇帝](2010/01/29 22:07)
[13] はぐれ雲から群雲へ―13話[始皇帝](2010/03/14 15:33)
[14] 番外編その1(ナルト&九尾)[始皇帝](2010/03/26 00:58)
[15] 番外編その2(ナルト・九尾・我愛羅・守鶴)[始皇帝](2010/04/18 15:11)
[16] はぐれ雲から群雲へ―14話[始皇帝](2010/04/21 23:40)
[17] はぐれ雲から群雲へ―15話[始皇帝](2010/05/29 01:04)
[18] はぐれ雲から群雲へ―16話[始皇帝](2010/07/05 18:27)
[19] はぐれ雲から群雲へ―17話[始皇帝](2010/08/05 00:56)
[20] はぐれ雲から群雲へ―18話[始皇帝](2010/09/26 02:39)
[21] はぐれ雲から群雲へ―19話[始皇帝](2010/11/23 00:57)
[22] はぐれ雲から群雲へ―20話[始皇帝](2010/12/21 01:05)
[23] はぐれ雲から群雲へ―21話[始皇帝](2011/02/14 00:30)
[24] はぐれ雲から群雲へ―22話[始皇帝](2011/04/02 00:50)
[25] はぐれ雲から群雲へ―23話[始皇帝](2011/06/28 22:40)
[26] はぐれ雲から群雲へ―24話[始皇帝](2011/08/18 00:27)
[27] はぐれ雲から群雲へ―25話[始皇帝](2012/02/03 22:58)
[28] はぐれ雲から群雲へ―26話[始皇帝](2012/03/02 01:17)
[29] はぐれ雲から群雲へ―27話[始皇帝](2012/04/01 16:51)
[30] 巻末―設定資料集[始皇帝](2011/01/16 15:52)
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[4524] はぐれ雲から群雲へ―24話
Name: 始皇帝◆9da6cd08 ID:9419f60a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/18 00:27
―24話・大樹の落葉―

老紫達が用を済ませて戻った翌日の午前中に、灼熱砂漠に行ったナルト達が帰ってきた。
持って帰ってきた用件の物は全てユギトから雷影に渡されたので、
これで当初約束させた砂の里との協力、あるいは独自の暁対策がなされるだろう。
上手く行けば、今後彼女を借りることも可能になるかも知れない。
その事については恐らく今日中の返事は出せないだろうと事前に言われたので、出立は早くても明日以降になる見通しとなっていた。
「はーぁ・・・おれ達ってば、暇人だって思われてんのかな?
早く仲間集めなきゃいけねーんだから、こんな所でぐずぐずしたくないってばよ。」
カタカタと人差し指でテーブルの天板を行儀悪く鳴らして、ナルトがぼやく。
「お外にも行けないもんねー。男の子には退屈だ~。」
「女でも退屈ですー。っていうか、返事ぐらいさっさとよこせばいいのにさー。」
むじな姿の磊狢を抱えて、フウはベッドでごろごろしている。
とっくにここを出発する準備は出来ているから、狭い部屋の中でひたすら時間を潰す手はこんなものしかないらしい。
「あ、そうだ。」
「何だ?」
読んでいた文庫本を下ろしていきなり声を上げた鼠蛟の方に、狐炎が顔を向けた。
「昨日、神疾の妻に、手紙を預けてきた。」
「エロ本の件じゃろ?」
「あ、それは嘘。」
「?・・・どういう事だってばよ?」
2人の話の食い違いに、事情を全く知らないナルトは首をひねった。
一体向こうで何をしてきたんだと聞く前に、鼠蛟が説明を始める。
「手紙で神疾に、居場所を教えてくれと頼んだ。こっそりと。」
「鈴音達の耳に入れたくなかったのか。」
さすがに狐炎は察しが良く、方便の理由もすぐに理解した。鼠蛟がうなずく。
「そう。それに、本人が用心深くなってた。」
「かむとんが?何でー?」
「抜け忍連れじゃから、里に住んどる忍者には情報を漏らしたくないそうなんじゃ。
追っ手がうっとうしくてたまらんって、嫁に愚痴っとるらしいぞい。」
「ふーん。それで仲間も警戒してるんだ。面倒くさい奴。」
素直に教えてくれたっていいじゃんと言いそうな調子で、フウが口を尖らせた。
「そうじゃ。居場所を教えてくれって鳥が頼んだら、嫁さんがそう言って困ってしまっての。」
老紫が軽く肩をすくめる。
夫から口止めをされていた神疾の妻の口は堅く、鼠蛟が機転を利かせなければ手がかりを引き出せる可能性すらなかった。
「だから、まだこちらにつくか分からぬ2人の前で無理に聞き出さず、本の件に見せかけて言付けたのか。」
「いい返事が来るか、分からないが。」
神疾から見れば、お尋ね者揃いのナルト達も十分警戒対象だろう。
鼠蛟は、色よい返事が来るかは五分五分だと見ている。
「来ねばそれも仕方ない。こちらが自力で探さねばな。」
「面倒くさいってばよー。次はすぐ仲間になると思う?」
老紫、フウと続き、ここではユギトともう1人見つけるなど、割ととんとん拍子に事が進んでいるから、
次もすぐに見つかるものだとナルトは楽観視していた。
そこに来て、次は居場所さえ掴むのに手間取りそうとくれば、フウではないが面倒くさいとぼやきたくもなる。
狐炎のように、だめなら仕方ないとあっさり割り切れるほど切り替えは早くなれない。
「どうじゃろうなー。わしが知っとる人柱力には、ものすごい人嫌いがおったぞい。
ただでさえ抜け忍はこそこそ動いとるし、自力で探して捕まるかのー?」
「えー、でもじいちゃんなんて、町ん中でお腹壊してたじゃん。」
用心深い振る舞いどころか、白昼堂々街中で腹を抱えて苦しんでいたのはどこの誰だっただろうか。
「あー、年を取ると最近のことは覚えてなくてのー。」
「馬鹿じじい・・・。」
ナルトの指摘をごまかしてやり過ごした老紫に、鼠蛟が白い目を向けた。
「用心して動いているのは確かだろう。わしらとて同じだ。だが、探し出せぬ事はない。」
「でも、警戒してるんでしょ?」
「元は、大雑把だから・・・。」
「ねー。しかも今までご飯食べられなかった鬱憤大爆発で、大食い大会荒らししてたりして~。」
「ふっ・・・やりかねんな。あやつなら。」
「全っ然用心してないってばよそれ!
っていうかエロ本とか大食いとか、また変態尾獣のにおいしかしないし!」
「ど変態ペットがもう居るじゃん。なーに、今更言ってるんだか。」
「いい加減普通の仲間が欲しいって、そう思うのはだめ?」
確かに磊狢が居る段階で諦めるべき問題かもしれないが、
ナルトは9体中1体位は真っ当な性格の尾獣が居て欲しいという願望を捨てられずにいた。
少なくとも、今までの6体がだめだったからこれからもだめだという諦めより、
まだ見ぬ3体に希望を見出そうというのがナルトの諦めないど根性だ。
「それは無理じゃ。昔っから言うじゃろ?えーと、人に憂鬱の憂と書いて・・・。」
「それじゃ『優しい』だよ、おじいちゃーん。それを言うなら、人に夢で儚いだってー。」
老紫がしたり顔で言い始めた傍から、磊狢の訂正が入った。これにがくっと脱力した鼠蛟が、頭を抱える。
「もう嫌だ。滅びろ、すかぽんたん。」
「阿呆が移るな。」
「・・・はあ。」
「何じゃ何じゃ、ちょっと間違えたくらいでうるさいぞい!」
飛んできた相方の罵倒と冷たい狐炎のけなし文句に腹を立てて、開き直った老紫が泡を飛ばす勢いでまくし立てる。
いい年をして見苦しいそれを横に、ナルトが神妙な顔でこう呟いた。
「っていうか、憂鬱って、優しいの右側だったんだ・・・知らなかったってばよ。」
「見りゃわかるでしょ。アンタ馬鹿?」
「うっ、うるさいってば・・・うう。」
容赦ないフウの一言が頭に突き刺さる。彼女の言い草は素直すぎて痛い。
ついでに、6人中でダントツの世間知らずに漢字の知識で負けた事実にも少々ショックを受けた。
「馬鹿の二乗めが・・・。」
「鬱の字書けなーいなら、まだましだったのにねー。」
「そ、そんな事より!とにかくおれは今、大食い属性付きのエロ狸2号が来る恐怖に怯えてるってばよ・・・。」
連続で襲ってきた罵倒とからかいを強引に振り切って、ナルトは無理矢理話を元に戻した。
今までの定石通り行くと、どうせ今度の妖魔もまともなのは無駄に女心を掴む整った顔だけだ。
中身は、あく抜き前のごぼうより酷い癖の強い性格に決まっている。今以上に酷い阿鼻叫喚の旅は御免こうむりたい。
「案ずるな。神疾が見境ないのは食物だけだ。女の節操はある。」
「かー君と似たものだけどね♪」
「それってまさか、凶暴って事?」
「合ってる。」
鼠蛟の返事を聞いた瞬間、ナルトは絶望した。
「フウ・・・おれ、死ぬかも。」
「アタシに言われても困る。」
すがるような視線を向けられたフウは、はあっと大きなため息を付いた。

翌朝8時。
今日も丸一日足止めになったらどうしようかなどと話していた頃に、ユギトと鈴音がナルト達の居る客間を訪れた。
「長くお待たせしまして、申し訳ありませんでした。
雷影様の命により、このたびあなた方に同行することになりました。」
旅支度を整えた格好のユギトが、軽く会釈した。
「やったー!」
「おお、改めてよろしく頼むぞい!」
先日のこちらの要望が通ったのが分かって、ナルトと老紫が色めき立った。
拳を突き上げて喜ぶナルトの横に、スーッと鈴音が近づく。
「もちろん、あたしも一緒だよ。うふふ、よろしく頼むよ、ぼ・う・や。」
「わ~~っ!」
耳元で甘いと息を吹きかけられて、見る見るうちにナルトの顔は真っ赤になった。
うぶな反応が可愛いものだから、鈴音はころころと笑っている。
「からかうな。」
「ふふん、ほんのご挨拶さ。」
「・・・こっちの馬鹿猫が、余計な苦労をお掛けすると思いますが、今後よろしくお願いします。」
相方の悪ふざけに明らかに機嫌を損ねながらも、努めて冷静を保って改めてユギトは挨拶した。
「ところで、次の予定は決まっておいでかえ?」
「もちろん。」
鈴音に聞かれて、狐炎が答える。
昨日は一日動けなかったから、その間に予定は十分検討する時間が取れた。
「大所帯になっちゃったから、隠れ家探しするよー♪」
「いい加減、目立つし。」
ユギトと鈴音が加われば、4組8人である。連れ立って行動するとかなり悪目立ちをしてしまう。
そうでなくても、今までのようなふらふらと移動する生活をしていると、拠点の1つも欲しくなるのだ。
「確かに、この大所帯じゃねえ。ところでその隠れ家は、どこで探すのか決めているかえ?」
「少なくとも、この国は外す。」
「もうちょっと遠い所~。」
「何故ですか?この国は大国ですし、情報も多く集まります。悪い立地ではないと思いますが。」
ユギトが不思議そうに聞き返した。
彼女の言う通り、この国は拠点候補から真っ先に外されるほど辺鄙な僻地ではない。
「わしは嫌じゃ、山ばっかりで年寄り泣かせじゃぞい。」
「土の国出身の癖に、何言ってんだか。」
即座にフウがつっこみ、横でナルトもしきりに首を縦に振った。
「僕、蛇ちゃん達の四六時中密着監視プレイって好みじゃなくて~・・・。」
「アンタは黙ってなさい変態ペット!!」
磊狢が気色悪い発言をした瞬間、フウの鉄拳制裁が後頭部に決まった。
「あーん♪」
「言い方が嫌だってばよ・・・。」
叩かれても懲りるどころか嬉しそうな態度には、ナルトも目いっぱい引きつってドン引きした。
それを無いかのように無視して狐炎が話を続ける。
「雷の国は、他の五大国や小国と離れすぎている。
もう少し多くの国と近い立地の方が、情報を仕入れるにも何にしても便が良い。」
確かに、大国で情報が集まるという点では雷の国は悪くない。
だが土の国や風の国といった、離れている大国が2つある点は無視出来ない。小国を含めれば、遠い国はもっと増える。
「なるほど・・・では、どちらで構えますか?」
「まずは、湯の国辺りで検討するつもりだ。」
「湯の国ってどこだっけ?」
「白霜地峡を越えて、ここー。霜の国のお隣だよ。」
地図を磊狢が指差した。雷の国と火の国の間には、2つの国と地峡が1つある。
片方は地峡にすっぽり収まる霜の国。もう片方は、火の国の北東と国境を接する湯の国だ。
どちらも小国である。
「ふーん。でも、ここも火の国の隣だってばよ。いいの?」
「火の国は地理上、国境を接する国が非常に多い。完全に避けようとする方が困難だ。
だが隣国の中で、湯の国は忍者が戦士を廃業したに等しい国。注意を払うべき対象が少ないのは魅力的だ。」
「え?戦士を廃業って、どういう事?」
フウとナルトが目を丸くして、狐炎に聞き返す。すると、ユギトが説明を始める。
「湯隠れの里は、大名の命で戦闘が主体の任務の受付を停止させられたのです。
あの国は火の国との同盟があって、国防に不安が少ないんです。」
「ま、本当の所を言うと、あそこに忍界大戦が終わった頃にいい温泉が湧いての。
今までの忍者の里のままじゃと観光客を入れられんから、商売のために鞍替えさせたっちゅーわけじゃ。」
「あー、なるほど。あんまりお客さん呼べないもんな。」
昔に比べれば開放的になったと言われる最近の忍者の里でも、出入りは普通の町に比べると手続きが面倒だ。
忍者は当然だが、住民や外の人間の出入りは必ず身分証と許可証の提示を求められる。
どんな里でも当たり前の対応なのだが、この体制は観光客の誘致には不都合だ。
「忍者じゃ儲かんないから、温泉宿始めたって事か。あれ、じゃあ忍者は居ないの?」
「居ないわけじゃないよ。ただ、戦える人間はうんと減ったそうさ。
それでも自分の里を守れる位の訓練は受けさせてるし、諜報用の間者も城で召抱えてるそうだよ。」
「変わってるな~。それでも何とかなるってのは、何だか不思議だってばよ。」
「ねー。」
ナルトとフウは今当然になっている忍者のシステムしか知らないので、
狐につままれたような顔をして情報通の大人達の話を聞いている。
「そもそも、忍者が今の制度になったのは、最近だし。」
「そうじゃな。一国一里制度になって、国と里が契約を結ぶようになったのはここ数十年の事じゃ。
それまでは、むしろ今の湯隠れのように城に直接抱えられる忍者も多かったそうじゃぞ。」
隠れ里が出来るまでは、一族単位で小さな集落を作って暮らしたり、
自ら売り込んで大名や武家のお抱えになったり、そういった形態が忍者の主流を占めていた。
湯隠れの里は、いわば回帰したような形が近い。
「へー。忍者の世界も色々あったんだなあ。」
「その辺りも、一度は聞かされて育ったはずなのだがな。」
「そのネタでいじるのはやめろってばよ!とにかく、湯隠れはあんまり仕事してないから安全って事?」
覚えようとしたら頭が痛くなりそうな話だったが、要点はその通りなので、狐炎がうなずいた。
「国境さえ越えてしまえば、他よりは気楽と言うだけだ。もっとも、それが大きいのだがな。」
忍者は少なく、目立った政情不安もない。湯の国は好条件だ。
「いい加減こんな生活も飽きたし、早くアジトゲット出来るように頑張んなきゃな。」
「都合よくあればいいけど。」
「そこは前向きに行くんだってば!」
今から見つからない心配をしてもしょうがない。
水を差してきたフウに発破をかけてから、ナルトは簡単に荷物の最終点検を始めた。


ユギトと鈴音を迎えた一行が雲隠れの里を後にしてから、2,3時間ばかり経った頃の事。
火の国の首都にある大名の居城には、大名とその家臣達、綱手以下木の葉の要職に付いた忍者が集っていた。
現在ここでは、今までの行状を元に火影の進退を決める会議が行われている。
「ダンゾウ。五代目の資質について、お前の意見はどうだ?」
壇上から家老に指名され、ダンゾウが口を開く。
「いかに貴重なうちはの生き残りといえど、他里に与した抜け忍に追い忍も出さず、そして人柱力の逃亡。
綱紀を正すべきとの声にも耳を傾けず、人柱力の捜索隊を出したのも相談役の諫言でようやくという有様。
数々の失政を犯した五代目火影を支持する者も少なく、もはや火影たる資格はありません。」
「・・・っ!」
資料を手にきっぱりと断じる彼に、綱手は一言も言い返せずに唇を噛む。
支持率の低下も含め客観的な事実だ。様々な要因が重なり、現在は綱手から心が離れてしまった忍者や住民は多い。
「そもそも三年前の中忍試験時での襲撃では警備を怠り、殿や外国の賓客の安全さえも脅かした大失態。
さらに三代目が首謀者の手にかかり死亡。我が国の対外的信頼を多大に傷つけた。」
大名のそばで、家老が今まで起きた木の葉の不祥事の概略を読み上げる。
豪華な装束に身を包み、冠を戴いた恰幅の良い大名は、それを神妙に聞いていた。
「里の復興も進んだとはいえ全盛期とは今だ遠く・・・国境警備に割かれた侍の比率も下がらぬまま。
その上でなおもこのお家騒動では、さすがに見過ごせません。殿、いかがでありましょう?」
家老に伺いを立てられた大名は、扇子を口元に当てながらしばし考え込んだ。
不穏な勢力が目立った動きを見せる現在、自国の軍備の一端を担う木の葉の里の不協和音は思わしくない。
少なくとも、支持を失った長が自分で体制を整えなおすのを待つ余裕はなかった。
その間に分裂を扇動する者が現れ、外敵どころではない騒ぎになるかもしれない。
そんな事になれば、火の国にとってはまさに内憂外患だ。大名は決断した。
「うむ。確かにここ数年のふがいない働き・・・。
我が国としては、もはや現政権では回復の見込みがないと判断せざるを得ない。
お前達には体制を刷新し、二度とこのような有様を示さないという誠意を見せてもらわねばな。」
「殿、それはつまり・・・!」
「そうだ。五代目火影よ、ただ今を持って火影の任を解く!」
高らかに響く宣言。その場に居た誰もが息を呑み、にわかにざわつく。
任を解かれ一介の忍に戻された綱手は、傍目にも打ちのめされているように見えた。
「そんな・・・この時期に、新たな火影を選出するとおっしゃるのですか?!
今はまだ里の復興途上で、しかも人柱力の捜索にも目処が立っていないのですよ!」
動揺を隠しきれず、取り乱しながら言い募る。それを横でダンゾウが鼻で笑った。
「見苦しいですぞ、『五代目』。
これ以上、木の葉の名を汚す醜態を見せるのはやめにしていただきたいものですな。」
「クッ・・・!」
彼の嫌味に言い返せず、代わりに奥歯がぎりっと音を立てた。
家老以下大名の家臣団が、冷めた目でその様子を見ている。
「落ち着け。次代の選定の場には、もちろんお前も呼ぶ。
お前が自らの意志を継ぐものをと望むなら、その者を推薦すればよいだけのこと。
殿の決定はもう覆せん。長として里を思うと申すなら、未来を考えて動くことだ。」
もはや綱手に何の期待もしていない家老が冷たく突き放す。
下から上がってくる現状報告で判断する国としては、現在の木の葉にそう当たっても仕方がない。
言われたことは全て事実だ。木の葉崩しで失墜した国からの信頼を回復させるほどの功績を、不幸にも綱手は残せなかった。
「・・・分かりました。
里に戻り、皆と次期火影候補の選出、次代への引継ぎに力を注ぎます。」
かつての砂の里のような大幅な削減こそ免れたものの、ここ数年、国に予算を請求しても厳しい目で見られている。
金額に余裕を持たせたくても、本当にギリギリの額しか認められない。
金に見合うだけの価値を疑われている何よりの証明だ。
綱手がこのまま続けていても、印象の改善は見込めない。里の没落を防ぐためにも、彼女が引退するしかないだろう。
「さらに、意見番2人の任も併せて解く。
火影の執政を間違いのないものにするというその役、果たせているとは思えん。」
「・・・。」
コハルとホムラも責任が重いという事なのだろう。三代目と五代目に仕えた彼らの政治責任は、火影同様とみなされた。
しかし火影の解任が言い渡された時点で覚悟は出来ていたらしく、2人共押し黙るだけで目立った反応はない。
「そしてもう1つ、大切な通達をしておく。」
「と、言いますと?」
あまりいい予感はしなかったが、綱手は家老の言葉の続きを促した。
「次代選出の協議前後になるが、今後は火影邸に我が国より文官及び第三武士団の将軍を派遣する。
派遣する具体的な人員の名簿は後ほど渡す。期間が短いので、早急に受け入れ準備をしておくように。」
「それは・・・!!」
「何と・・・。」
木の葉の一団がざわめく。
―これは、実質的な里の国有化じゃないか・・・!―
綱手の拳が震える。ちらりとその様子を一瞥したダンゾウも、これには渋い顔をしていた。
後ろでは、あからさまに鼻白んでいる者もいる。
「無論、お前達に拒否権は無い。これは殿を始め、火の国政府としての意志である。
何故、かつての契約を覆す決定が下されたか、お前たちは分かっているはずだ。」
「・・・もちろん承知しております。」
資金援助と居住権等の保証をする国と、その見返りに武力を提供する忍者の里は、本来対等に近いとされている。
もちろん金を握っている上に、自前でも侍による武士団を組織している国の方が実質の力は上だ。
しかし里は特別な自治権を認められているため、他の地方自治体と違い国からある程度独立した政治を行える。
他国の住人や町村の依頼を受けられるのはそのためだ。
だが今後は、国から直接運営を監視される事となる。その意向がより一層強く反映されるだろう。
―木の葉もこれで、霧と同じ道をたどったか・・・。―
かつて大規模なクーデターを起こし、大名の命をも脅かした事で政情不安を起こした霧の里。
彼の里は国の怒りを買い、以降国が箸の上げ下ろしにまで口を出すと嘆かれるほど厳しい監視体制を敷かれている。
特に方針の自由は無きに等しく、とても国と里は対等などと言える状況ではないともっぱらの噂だ。
そこに木の葉の里の未来が見えて、綱手は情けなくて仕方がなかった。
「会議は以上だ。下がれ。」
そっけない家老の一言をもって、会議は終了した。
木の葉にとっては国からの最後通告を受け取った、苦い話し合いだった。

付き人のシズネを伴って城の貴賓室に戻った綱手は、椅子に座るなり大げさに息を付いた。
「やれやれ、これで私もまた、一介の忍者に逆戻りだね。」
「綱手様・・・。」
「慰めは無用だよ。私は国の言う通り、成果を出せなかった火影さ。
ふふ・・・参ったねえ。昔自分で言い捨てた言葉が、そっくり返ってきちまうなんて。」
放浪していた頃、綱手は火影なんてクソだと放言した事がある。
あれは、今は里に居ない金髪の少年の前だっただろうか。
「私もやっぱり、じじいの弟子だね。
じじいのぬるいやり方が気に入らなかったはずなのに、気付いたら同じ事をしてるなんてさ。
しかもだめなところを直さずに踏襲したら、そりゃあだめなはずだよ。」
「そんなに自虐的な事を言わないで下さい。
里のためにあなたがどれだけ仕事をしてきたか、私は知っています!」
らしくない発言に聞いている方がいたたまれなくなって、シズネは強い声で否定した。
長年の付き合いの彼女からの慰めに、覇気のない笑みで綱手は応じる。
「ありがとうよ。でも、そんなのは里にとっては慰めにもならないよ。
里の誇りを貶めた史上最悪の女火影。帰ったら皆、どれだけ怒るか、それともがっかりするか・・・。ふう。」
強がっていても、主人の内心の落ち込みようはシズネには手に取るように分かる。
かける言葉が見当たらず、彼女は心臓が締め付けられる思いだ。
それでもこの暗い空気を少しでも前向きな方に向けようと、ある話題を振る事にした。
「ところで、次代には誰を推薦するか考えていますか?」
「カカシにしようかと、この間までは思ってたんだけどねえ。」
綱手は眉間に眉を寄せ、机にひじをついて姿勢を崩した。
「カカシさんに?」
「あいつは若いが、四代目の例もあるし若すぎるって程じゃない。
それに、この二代は年寄りと中年でしくじってるんだ。
若返りを図るってのは、国にとってもそこまで悪くない選択じゃなかったかと思う。
しかも親父は、私達三忍以上とも言われた白い牙のサクモ。お前も知っての通り、叙勲された前大戦の英雄の1人だ。」
第三次忍界大戦の最中に亡くなっているカカシの父は、勲章を授かるほど非常に優秀な忍者だった。
その死の前後に任務での行動の是非を問われて里内で冷遇された時期があるものの、今では名誉は回復されている。
「確かに、親子二代で里に貢献した功績はとても大きいですね。ですが・・・。」
「そうだ、カカシは自分の指導した班から2人も抜け忍を出した。
綱紀粛正を図らないと内外の信頼を取り戻せない今、あいつは推薦出来ない。
それどころか、次に替わったら今の立場さえ安泰じゃないよ。」
「今でさえ自来也様共々、謹慎処分中ですしね。」
指導下の班から抜け忍を2人も出した例は、木の葉の歴史の中でも珍しい部類に入る。
おまけに、初めて持った新米下忍の班でと限れば、不名誉な史上初だ。
こんな体たらくでは、火影推薦どころか今後下忍指導の担当に付けるかどうかさえ怪しい。
「というわけで、ダンゾウにお鉢が回ってくるのはほぼ確実だな。」
他に、本命と呼ぶにふさわしい候補者は里に居なかった。
器量は十分でも、名門の大きな一族の長やその補佐に付いているものでは、里のバランス上推薦出来ない。
そういったしがらみのない忍者で、かつ今すぐにでもそれなりの采配を振るえるとなると、選択肢は大幅に狭くなる。
「やっぱり、お嫌ですか?」
その問いに、綱手は首を横に振った。
「嫌も応もないよ。国の要求に応えられる奴はあいつ位だ。
私がどんなに真面目に悩んで候補を立てたって、向こうはさらさら呑む気ないんだからね。」
もちろん五代目の矜持にかけて、しっかりと時代の候補を選ぶ気はある。
だが、国の思惑は嫌と言うほど分かってしまう。故に、気心の知れたシズネの前ではこんな言葉も漏れてしまった。

そして、その言葉通りに事は進む事になる。
間もなく里が数人の火影候補を選んだ後、その中から国が六代目火影に指名したのはダンゾウだった。


後書き
前半と後半のテンションの落差が激しい回です。
今回で以前から続いていた木の葉の件は一段落しました。
綱手は原作と違って倒れていないので、
ダンゾウはちゃんと火影岩を作ってもらえる正式就任をしています。


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