A3-1「夕暮れなる日常的な知恵なる説得」
ふう~、はぁ~、ふぅ~、……………………さて、もういいだろう。
現時刻、17時25分ぐらい……俺は一人で結局テレビゲームをしていた。
やっていたゲームソフトはマタムファンタジーいわゆる普通のRPGゲームだ。
内容は主人公マタムと呼ばれる最強の一族の子孫が勇者になり、この世界を巣食う魔物たちを狩りつくして、最後には何かよくわからない歪な存在の大魔王をたおしたと思ったら、裏ボスがいて、それが実は全ての黒幕のマタムの父親だったなんて……そんなの予想がつくか!!と最後まで既にクリアしているのだが何回もやり直していると、毎回つまづきそうな罠(トラップ)とか仕掛けとか、嘘をつくNPCとかの存在が俺を苦しませる。なんとも作った奴の性格が捻くれてそうなゲームだと俺は思った。
とまあそんなことはもうどうでもいい。今はこいつのことが問題だ――
そうこいつ真歌だ。俺のベッドですやすやと寝息をたてていて、ぐっすり寝ているこの天使みたいな美しい小奇麗な可愛い顔をしている少女だ。
髪色は口で表すと赤と蒼と碧と、黄色と桃、黒と白、銀と金と、灰と、群青色と、エメラルドルビーと、トパーズと、ダイヤモンド、サンレッドにムーンシルバー、が全体に散りばめられていてそれ全体を黄土色と白銀のような透き通る無色透明に近い真っ白な染料を薄く塗りたくったような……そんな口で表すのも難しいほど不可思議で多様な目がチカチカしそうなどぎつい髪色をしていた。
恰好は普通の銀色と金色が交互に散りばめられているワンピースに、黒白の短パンを身に着けていた。
そんな真歌だが、今とても安らかに寝ている。とても幸せそうだ。俺は彼女を起こそうと思い、片をポンポンと叩く。すると……起きない。もう一度優しく叩く。それでも起きない。ならばと思い、今度は脇の下を触る。というかくすぐる。すると……やっと起きた。
「竹男……、女の子の脇の下をくすぐる、のは、セクハラ、かも、しれない、でもそれは、ただの、そうか、でも確かに……、違うのだ、それは邪な、存在の、有るまじき、神の、悪戯かもか、そうなのか、上手く言えない、ようするに、なんか負けた気分……」
と真歌心底……落ち込んでいるような、それともぶつぶつと愚痴を垂れているのか、わからないが、もちろん怒っていた。
俺はお前がなかなか起きないから、仕方なくそうしたと言うと、「じゃあ、許す、そうです。まあでも、今度から、耳元で、竹男が、情熱を揮えた、歌詞を囁くなら。起きると思う」と無表情だが眼がにっこりと笑っているように見えた。
そして俺は真歌にそろそろもう帰ったほうがいいと思い、帰らそうとした。
だが、真歌は拒否の返答をする。
「いや」
一言だけ言う。そして俺は理由を聞くと。
「無情なる。ことを顛末に全てを無に帰す。迎賓の世話人、我が否定しても、追い詰める。我は巣に戻ることを今日は否定する。 なので帰りたくない……」
といやいやしてここに今日は泊ると言う真歌。
流石にそれは色々と問題があるだろと俺は冷静に考えて真歌に駄目だろと諭す。
しかしそれでも真歌はやだやだしてベッドのシーツを握るようにして離さない。そして私はもう帰るのは嫌だみたいなことを言う。
俺は困ったなと思うが……さあどうやって帰らそうか。
俺は帰らすための理由を考えるがなかなか考えが浮かばん。
強制的に俺がこの娘をひっぺ剥がしても強引に連れて玄関に放り出して放置してもいいが、それだと真歌がかわいそうだと思うので実行しない。
そうすると何か、餌で釣るかするか彼女を帰らすために動機づけが必要だな。
俺はカップ麺をまたあげようかなと思ったが、それだと今月の生活費が危ないと感じたのでそれもなしだ。
だとすると最後の手段だ。
俺は真歌にこんなことを言ってみた。
「真歌さん……実はいい話があります……言うけどいいかな?」
「なに?」
「まあ黙って聞け。俺ならお前を家に帰さず、家に帰す方法を知っているとしたら?」
「??」
彼女はクエスチョンマークを現実に出現させてるかのごとく疑問な顔になる。そして俺はさらに話す。
「つまりだ、今日は家に普通に帰る。そして家に自分を模した人形とかふとんを縛って、自分の身代わりにしたのをふとんの中に忍ばせておけばいいのだ。なあ? 簡単だろ?」
俺はむちゃくちゃなことを言ったと思う。半分は冗談だが、彼女を家に帰らすために適当なことを言ったのかもしれない。
しかし真歌は「そんな手が……」と言い。素直に帰り支度を始める。
そして帰って行った。「じゃね、竹男」とだけ言い、帰宅する真歌。
俺はまさか本気にしてないだろうなと思ったが、まあいいや帰ったからそれでいいか。
A3-2「夜の混沌の闇に起きる大事件」
そして俺はお腹が空いたので、時間ももう夜の18時を回ってしまったので晩飯のカップ麺に僅かなトッピングとして葱をさらさらと少し入れて食す。
そして少しだけゲームをして、たらもう夜の8時だった。
ちょっと買い出しでも行くかと思い、近くのスーパー『アカデルアン』に行く。
そこで俺はお菓子と、飲料水を買いだめする。お菓子は、甘い系もあり、スナック菓子系もある中、飲料水は主にエネルギー系飲料と、炭酸系統に、俺の愛用の飲料水『シロマアスミ』を買う。これは薄めて飲むタイプの増粘タイプの飲料水だ。主に水で薄める。
それはいいとして。とりあえずこれだけ買うとするか。
しめて……2000ぐらいか。意外と高いな、まあ結構買ったからな。そして俺は家路に着こうと、家までここから10分ぐらいの距離なので巨大なビル錬が横手に見えるのを無視して、街灯が光る住宅街をひっそりと歩く。
そして今度は大きな巨大な公園があったのでそこを通ると、あいつがいた。
こんな夜に一人で歌っていた。
希望の光を見つけて 明日の陰を染める 無情なる禁忌のレスポンス
あなたなことを良くお許しになる 外見だけの救世主
見てもいいよでも手を出さないで それがこの世の愛の鉄拳なる雀斑なる異端者
飛んで跳んで彼を超えて 世界を惑わしてね
誓いの愛の口づけを狙い澄ましてあなたに放つ
ああでもそれは如何様なる恋なのかもしれない
消えちゃわないように みんなは手に魂を宿す
苦にも化にも さがらなくても 夢たちは異常なるものなのさ
まあいいよ それでも 私は あなたを待つ
だから だから それでも それでも 禁断の 魔法は 使わないで欲しいのだから
さあいまこそ覚醒の時来る邪神のしらべ――――――――――――――――――――
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……………………
いいじゃないか。
「よう、真歌なんでおまえがここにいるんだ?」
俺は単純に疑問になったので、聞いてみた。すると真歌は。
「抜け出してきた。もちろん身代わりの我が、魂を分け与えた、複製なる感情を植え付けた、人なる形をした。まるでそれは、ああ、我と―同じ生き物のような! でもそれはただの人形に過ぎないのだ……」
とまたしてもわけわからんことを言う真歌。
どうやら俺の作戦を実行に移して家からこっそり抜け出してきたのは本当らしい。
そしてここでこっそり誰にも聞かせるわけではなく。
歌を歌っていたようだ。
俺は歌のほうはあまり聞かないので彼女の歌が良いのか悪いのかわからなかったが、ただ心に響いた。それだけはわかった。
なので俺は真歌の歌を褒めることにした。
「おまえの歌かなり良かったぞ。100点満点中なら……そうだな85点だな」
と微妙なそれでも一応褒めているので最高の点は上げない。
すると……真歌は俺の顔を少しだけ気にするような素振りを見せて、口から空気を吹き出す。そして俺の眼のまえまで歩きに来て、俺の胸をぐうで殴る。
「でっおい、いきなり何すんだ!?」
「85点とか酷い竹男、せめて95点と言って、欲しい」
と不服そうに俺を睨む。
でもなあ……と俺は真歌の手を胸から離し、彼女の手を下までもっていき、反省したように俺は言う。
「じゃあ92点かな訂正すると」
と俺はまっすぐに点を変更する。すると真歌はまだそれでも不服なのか、もう一度チャンスをくれと言う。
俺はいいぞ何度でも聞いてやると言う。
そして真歌の観客が俺だけのワンマンステージが始まろうとしていたときに何かが俺と真歌のほうに放たれた。
ギュウオーーーーーン!!! その勢いよく放たれた何かは俺の足に当たりそうになったが、それがなんとかそれた。
そして次の攻撃が来る。俺は咄嗟に真歌をかばうように突き飛ばした。
「グアッーーー!!」 俺の右足の膝より下の部分の足首より少し上の部分を何かがかすった。それは槍のような弓のような棒のような剣のようなものにも見えた。
そして俺の中で最重要防衛体制信号が脳を駆け巡る。
そして直ぐに真歌を抱えて近くの木が沢山生えている森のような、樹海部分の公園の自然のたくさんあるアトラクション広場に身を潜める。
真歌が震えている。俺の眼を見て、こう語りだす。
「竹男。何故刺客が、今いるの?? こんなこと初めてでもないのだが、いつも助けが直ぐに入り、いつもそいつをやっつけてくれる。連れ人いるかも。でもいない今はどうしよう竹男!?」
「落ち着け、真歌。ここは相手の正体をまず確認しないと始まらない。ここは距離を取り、敵の居場所を自分の中で把握するんだ。 頭をフルに使え、死ぬ気で敵を欺け、騙せ、そして相手の虚をつけ。そして敵を打ち砕くんだ。その手で」
俺はいつも以上に頭の中が高速スピンするように針を振り切って、オーバーヒートする手前だった。こんなこと初めてなのだから。だが、そこで冷静にならないと何が起きるかわからない。
敵の場所は今どこなんだ……
俺は敵の居場所を見つけようとしたが、わからない。
そうだ当たり前だ、俺はほんの少しだけ喧嘩が強いほうなだけの普通の高校生だ。
こんな状況で適切な判断が出来るのか? いや出来るかじゃないしないと駄目なんだ。
なお携帯は置いてきたので、警察とかに連絡出来ない。俺には殆ど必要ないと思っていたから。
俺は後悔はしなかった。でも失敗したと思った。もし携帯を持っていたら、こんな状況でもなんとかなるかもしれなかったからなのに。
とにかく今はこいつを無傷で逃がすことに専念しろ竹男!! 敵を倒すのではなく、上手く後をつけられないように逃げるんだ。回避するんだ障害を。
俺は頭の中の常識とか、定理とかは必要なもの以外は引き出しにしまい、ただ、この状況を打破することだけを考えた。
そして俺はある賭けに出ることにした。そのどうしようもない成功確率はたぶん30パーセントもないだろうと思われる。無謀な賭けに。
俺達は木たちを背にして、一目散に二人でクロスするようにジグザグに公園の端を目指して走り出した。