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No.43688の一覧
[0] 7ME[994](2020/11/20 07:18)
[1] 7th Mass Extinction[994](2020/11/20 07:25)
[2] 1.事の始まり[994](2020/11/20 07:37)
[3] 2.VS戦車[994](2020/12/03 03:40)
[4] 3.空跳ぶ戦車[994](2020/12/03 03:39)
[5] 4.[994](2020/12/04 03:36)
[6] 5.始まり[994](2021/02/05 17:24)
[7] 6.実践訓練へ[994](2021/02/12 13:37)
[8] 7.セントラルドグマ1[994](2021/02/22 15:39)
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[43688] 6.実践訓練へ
Name: 994◆1e4bbd63 ID:d804d9c0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2021/02/12 13:37
『やっぱり空はいい、すごく自由だ』

積名は進んでいる空のさらに上を見上げた。
柔らかな太陽、穏やかに流れる積乱雲、汚染された大地から守る積層外壁に投影された空は今日も順調だった。雨も降れば突風も吹くが、アイピーレは青空で風に揺られる木の葉が耳をくすぐっていた。

『ここなら2人だけだからね』
『ああ、本当に。本当に安心できる』

足元を見ると他の軍生はまだ半分昇ったところだった。そこで留軍生が拳から人差し指を伸ばし、親指を立てているのに気が付いた。

(留軍生は本当に熱心だよな)

右手を銃に見立て積名に狙いを定める影が3人、グリーナ、アロースミス・アイラ、プッペンシュピーラ・ミア。アイラは左手が足りないのか指を2本3本も使っていた。がミアはそれどころか両手の指全てが動いていた。積名はそれに応え、苦心して昇る軍生の間を縫い、教生の影に隠れて反転、そのどれも恐怖心が無いのかというほど急加速と急停止を繰り返していた。彼女達はそれを懸命に追ったが、直線移動以外は追い付けない。
それは一般人が見れば遊んでいるように見えるだろう、しかし知っている者が見れば敵に見立てて予測射撃の訓練、をする懸命な姿であり注意する教生はいなかった。

「次は武器について説明する。武器は大まかに分けて、近接、遠距離、自律武器がある。〈グリーナ、ちょっとこっちだ〉」

全員が揃うとようやく次に説明に移つした。滑るように空を進んだグリーナは数未の意図を察して、バスターランチャーを作り出す。

「〈銃口管理もきちんとできているようだな。さすが留軍生だ〉」

砲口を地面へ向け、砲身を脚の間にして構える姿に数未は満足げに頷いた。当然トリガーには指をかけていないのも確認済みだ。

「〈壁外では最初に習いますから、これくらいは当然です〉」

それは社交辞令のやりとりを見せられているようだった。ただそれでも、グリーナの口元には少し自慢げな部分と喜びが漏れていた。

「〈空に誤射して弾が実体だった場合、落下の勢いで鎖骨を抜いて心臓に到達する危険もあります。それに比べ地面に誤射した場合、弾頭が潰れて飛び散るだけ。たとえ引き金を引くというフェイルセーフが有ったとしても、ストレートダウンで構えるべきです〉」
「〈的確な説明をありがとう。聞いての通りだ、全員構えるときは下に構えろ。で、本題だが、ロードライトは熱線が弾だったな。見せてくれるか〉」

まるで教生のように訴えかけたグリーナに数未は右側を指す。その延長線上には的が現れ、その5重になった円はすぐに満点となって消し飛ばされた。

「言わずも知れた事だが、遠距離武器は相手の懐に飛び込まずとも攻撃できる。さらに光学弾は実体弾と違って、銃身内で弾が追い付くことが無いため連射に優れ、質量が無いため、そして風の煽り受けにくいため弾道があまり変化せず精密性に優れるといった利点がある。それでも影や環境による冷えによって、銃身そのものが曲がることは防げない。誤差の範疇であるし補正はしてくれるが、狙撃するならば頭の片隅にでも入れておけ。では実体弾を見ていこう。茜、こっちへ」

ありがとうと小さい言ってグリーナを返し、代わりに茜がたどたどしく近づいた。同じように的が現れ、背中から伸びたリフレクトキャノンを左手で抑える。

「撃つときに迷うな、可動部の遊びが誤差となって現れる。当てたい所を目で定め、ファンデーションを塗る様に優しくトリガーを引け。そうすれば当たる」

キャノン上部に設けられたトリガーを押すと薬室で砲弾が作られ、シールドの反発で発射、的の黒い縁を打ち抜いて壁のシールドにあたってエネルギーに還元される。

「今見たように実体弾は単純な破壊力、貫通力を持っている。しかし最大の利点は、弾速の遅さを利用した空中機雷として利用できるところだ」
(あれは嫌らしいんだよな。段々逃げ道が無くなっていく)
『シールド硬度を高くすればいいのに』

グラウンドを埋め尽くすスローンズの火力、爆発物、実体弾、粒子、圧縮空間、衝撃波に一斉に襲い掛かられる。豪雨の中、傘1つを差したところで役に立たないのと同く、被弾する場所を選ぶことさえままならなず、壁際まで撤退を余儀なくされる。積名にとってそれは対処できない、悪夢のような経験だった。

「ECOはどんな重装備に見えても秒速30万Kmを最低でも出す。つまり実体弾は止まっているのに等しい、それゆえ光学弾に混ぜて制圧射撃を継続し回避先を圧迫、最終的に相手を防御に専念させるということが可能だ」
「それじゃあ、銃口が多い方が強いじゃないですか」
「解決法を見つけるのも訓練の内だ! 留軍生を優先して、4人ずつ順番に、教生の下で射撃訓練に当たれ」

教生が番号を読み上げ、積名はザイドリッツ・ツェツィーリエの元へ集まる。

「Stabilisieren Sie zunachst das Sdhiβen,indem Sie lhren Oberkorper auf Becken legen 〈射撃は骨盤に上半身を乗せるようにして安定させてください〉」

13番目の清禰鋳真貴、14の蔵留真美は射撃武器を持たないため、銃身が短く銃床が長い銃を作って撃っていた。対して難波乖離は氷柱を作り、積名は機体長と同じ長さの銃を使って射撃訓練にあたっていた。

『温度を下げてくれ。実弾として練習したい』

加熱温度が急激に下がり、万有引力が粒子を結合させる。銃口から出る弾は蛍光弾の様に光って放物線を描いて、すでに撃ち抜かれた穴となった中央部分を通る。

「〈踏みつけても動かない地面の様に止まって、落ち着いて集中して引き金を引きなさい。引く瞬間は息を止めて〉」

使うはずも無い、銃口から円錐弾頭が突き出るほどの長い徹甲弾を作って撃ちだす。反動も大きいが、空間把握に加え長く重い重量も手伝って銃は微動せず的へ吐きつけた。その他方、絞って撃つができない真貴・真美は直前でずれてしまうため、中央から2つ3つ離れた部分をばらばらに撃ち抜いていた。

チャイムが鳴り、銃から剣へ訓練がうつる時間になった。

「よし、教生と実践訓練したい奴いるか? 当然射撃のみ、盾無しで機動力で勝負するわかりやすい訓練だ。早い者勝ちだぞ」

すぐに留軍生が手を上げ、4人の教生が埋まる。積名も手を上げかけ、数未に止められた。

「火緋はやらなくていい、訓練にならん。他にいないなら4対4だ。よし準備しろ」

積名が反論させる気も無いのか、不満顔で数未はそそくさと募集を打ち切り、その場の8人を残して観客席に移らされる。
そして軍生対教生の対決、西に軍生、東に教生が陣取った。
軍生はグリーナ・ソフィア、フィレーナ・マスティー、プッペンシュピーラ・ミア、アロースミス・アイラ。特徴的なXウイングを形作るロードライト、機械とは思えないしなやかさに大きな鋏を唯一持つバイオレットフィアー、5体の人形を操るプッペンテアーター、両手に銃をもった角が目立つエクスペリメント。それぞれ赤紫、紫、黄、黒。
教生は柴浦数未、月川令実、氷静厳、サイドリッツ・ツェツィーリエ。
特徴的な複合銃を右腕に固定する八八、根元に銃口を持った大型のランスを構える流鏑馬、氷の鎧に剣を持つ氷雪、そして両手に複合銃をもったケンプファー。

『通信の確認を』

リーダーを買って出たのは軍生がグリーナ、教生では数未。それぞれ全員の視覚と聴覚が繋がり翻訳に問題ないと配置を確認する。

『私とフィレーナが前衛、ミアは中衛、アイラが後衛。フィレーナは突撃し、私が取り囲もうとした相手を砲で振り払う。ミアはターミナルで射撃と防衛、アイラは弾幕を張って逃げ場を無くして欲しい。どう?」
『細かいことは今更言いません。合わせていきましょう』

作戦を伝えるとどちらも了承し、時間制限が表示される。観客席に大きく広告されるウィジャボードには綿密に位置取りする軍生に対し、お互い機動するのに困らない程度の間を確保して待つ教生が表示されている。
中央には先頭を務めるフィレーナ、ミア、アイラの3縦列。その先頭と襟を同じく北側に位置するグリーナ。対して北から令実、数未、厳の3横列の後方に位置するツェツィーリエ。

[0]

戦闘開始にグリーナの大砲が熱を放ち、教生の協力体制を崩す。反撃の兆候を見せたところへフィレーナが弾丸となって突っ込み、数未の出鼻をくじいた。
しかしそれはお互い様だった。
砲火を縫って令実もランスでグリーナに突っ込み、ミアがターミナル一機で割り込む。そしてアイラとツェツィーリエは十字砲火を合わせるべく、視界の端に表示された前衛の銃口延長線上に銃口を重ねて砲撃を開始する。

(考えは悪くないが、甘い。実弾が飛んでくるには間がある)
【〈Opfern(犠牲にする!)〉】

鋏が開くのを警戒した数未は北へ回り込み、グリーナが狙いを定め、フィレーナは咄嗟体の上下を入れ替えて真上へ重なる。フィレーナの眼光はすでに上へ向けられた銃口を目にして瞳が小さくなり、ヘルメットへ光弾が撃ちこまれる。
さっそく1人。
というわけにはいかなかった。熱線と光弾が交差し跳弾、僅かに弾が逸れてフィレーナが西へ方向転換する。

(中々やるじゃないか)
【Thank you】
【You are welcome】

感心した数未は間合いを取り直し、フィレーナも冷や汗で東へ後退する。

(レベルが高い)

西へ通り過ぎた令実は斉射砲を撃ちながら端末武器の操作技術の高さに手をこまねいていた。今ようやく完全に静止したグリーナの身代わりになった1つを撃破したところだった。安心できはしない、ミアは自分を守っていた1つを近づけて令実を背後から射撃した。

(これでシンクロ率が高かったら……)

特にミアは1人だけを相手しているわけではなかった。アイラの両脇を固め、フィレーナへ剣を両手に突っ込む厳にすかさず射撃を集中、勢いを削ぎ割って入る。全体を把握しながら、4つに指示を出さなければならない。それに手間取っている自分。

(〈しかしまだ経験が足りない。考えも甘い〉)

弾幕、その言葉まさしく当てはまる勢いでツェツィーリエが5門斉射砲を撃ちまくっていた。それだけなら驚くことでなかった、スローンズの階級でもよく見る光景だった。
驚くべきは移動や回避方だった。

「ひどい光景だ」

ツェツィーリエは地面を走っていた。

「理には適ってるよ。足元からの攻撃を警戒しなくていいし」

ECOの機動を常識を逸した移動にぽつりと言葉を漏らした。だが実際のところケルディムの言う通り、左右と上下と前後面、6面の警戒範囲が有るのに対し、5面に抑え込めていた。

(この後衛は潰しておかなければ)

数未より前を走っている彼女に後衛とはなにか、となるがフィレーナは射線を集めようと突っ込んだ。
鋏を突き出した時、ツェツィーリエはもういなかった。彼女は宙返りで跳び越え、背中のランチャーから爆弾が連結した網を発射、フィレーナに着せた。

(!)

フィレーナは驚いて振りほどこうとしたが、粘着剤も手伝って爆発。1人目が葬られた。


(さすが教生! なんて強いの)

数未と相まみえていたグリーナは助けようにも気を散らしている場合では無かった。集中を外せば間違いなく胴体に当てられる、そんな緊張感があった。それに彼女にはうれしかった、胸は高鳴っていた。そして彼女は南東の数未と西の令実の位置関係を確認して指示を出す。

【〈ミア……〉 (これで私は……)】

ミアは素早く人形を令実に取り付かせ、グリーナは真後ろに向けて引き金を引いて令実を葬った。それは決死の覚悟の上での事、目の前には光学弾が迫っていた。間違いなく当たる位置。

【勝手に諦めない!】

左手の砲からダーツを撃ちだしたアイラが鼓舞する。南に位置した人形が彼女を守って姿を消す。

【まだ5対3、数はこっちが有利!】

北からグリーナ、数未、ツェツィリーエ、人形、厳、がほぼ一列に横並びになり、かろうじて正面から向き合うミアとアイラのおかげで見分けがつくほど前線が集中していた。

「これほどとは」

厳は両腕の剣を振るっていたものの、大上段に上げた右腕を抑え込まれ、薙ごうとした左腕を肘で止められ、息もかかりそうな至近距離で顎を撃たれた。

【やった!】

ミアが喜んで気が抜けた瞬間、グリーナの砲撃を避けながら数未が南西へ撃って人形を落とす。

(数の上では群生が有利、ただまあ、あれで先輩は全力とは思えないんだよな。動きが悪いし)

前線はいよいよ一塊になった。ただそれに積名は用意されていたという違和感を覚えた。塾の講師が丁寧に答案を教えるのと同じ、準備された問題の様だった。

【〈グリーナ、挟み撃ちを〉】
(落とす順番が違う、私だよ)

アイラがグリーナと示し合わせ、ミアが人形の銃口をツェツィーリエに向ける。看破したツェツィーリエは砲撃を集中、斉射を止め順々に撃って時間差を作った。アイラが北東へ撃ち、ミアが庇って吹き飛ばされて人形が消え、延長線上の彼女が続く。

(ここ!)

グリーナは数未を誘導するついでにツェツィーリエを狙う、そして。

(当たった)

南西から迫る砲弾に背を向けて進む数未を見て確信した。高い高い壁を攻略した満足感にシビれ、グリーナの思わず目元が緩む。
そして笑顔になる直前、礼をした数未を砲弾が通り抜けグリーナの顔に直撃した。
軍生は敗北した。
健闘した結果の敗北に、留軍生の顔は晴れ渡っていた。


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