夜も深まった頃、一仕事終えた仮免召喚師・少年『チャーハン・タベルナ』が、サイジェント南スラムにある広間へ入場した。「タベルナ君! 逃げたんじゃ……」「あれ?」元騎士『レイド』は、少年を認識するや幽霊でも見たような顔になった。「ひどいなあ。僕ってばみなさんに楽させようと、2名ばかし潰したのに」「あ、ああ。どうも人数が足りないと思ったが……君が」レイドの足もとには、彼が撃退したオプテュス2名が転がっている。想定の半分しかいない敵は、レイドにとって取るに足らない相手だったらしい。「その通りですよ。鼻っ柱をへし折って、縛りあげて、引きずってきました」少年の手には、2本の縄が握られていた。その2本を辿っていくと、末端には気絶したオプテュス下っ端ビリィ・コーディがそれぞれ括りつけられている。猛烈な勢いで地面を引きずられたせいか、下っ端達の惨状は、無残である。「……うん、ご苦労さま。後は南の路地、ソード使いとバノッサだけか」「南?」広間の南に延びる路地を見ると、その入り口で半裸男『エドス』と、オプテュスのソード使いが戦っている。双方に差し迫った雰囲気は感じられない。そしてエドスらの向こう、路地のずっと奥に3つの人影が見えた。夜間で距離もあったので、仔細はわからない。「……(『フラット』とやらの戦闘員は4名、だからまあ人影の3分の2がフラットだろう。確か僕と同い年くらいの『ガゼル』と……誰だっけ)」「加勢に来てくれたのなら、頼みがある」「ん、あ、はい」「奥の仲間に手を貸してほしい。彼らの相手、敵のリーダー『バノッサ』を倒せば、全てが終わる」「エドスさんに助太刀してから全員で行く、ってのはどうです?」「バノッサは危険で油断ならない……彼らだけでは心配なんだ。一刻も早く、誰かが向かわなければ」鎧纏うレイドに比べ、少年は軽装で身軽である。いの一番に出発すべき状況で、少年は適任だった。それに誰かが、エドスの手助けに行くべきだし。「なんかよくわかりませんが、バノッサとやらを撃ちゃあいいんですね!」そう意気込んで少年が小型クロスボウ2丁を掲げる。すると、その内1丁のグリップがぽっきり折れて、それ以外の部分が零れ落ち、地面と衝突してばらばらになった。「……やっぱり組み立て式の安物はダメだな」「と、とにかく頼んだよ。私もすぐエドスと向かう」不安の混じったレイドの言葉を胸に、少年は駆け出した。少年がエドスとソード使いの横を抜け、薄暗い路地の中を駆ける。路地のアチコチに廃材やらゴミが転がっていたが、それらに足を取られるほど少年も間抜けではない。それに南の路地はずいぶんと広いので、少年はゆとりを持って移動できた。「ここなら西の路地と違って、思う存分剣を振るえるなあ」などと少年は思った。さて、そろそろ少年にも人影らの仔細が見えてきてた。まず目に飛び込んだのが人影の2つ、白髪の人影と、小さい人影だ。彼らは戦闘中のようで、闇に遮られて判然としないが、白髪の人影が優勢らしい。フラットに白髪はいないので、それがバノッサだと少年は確信した。そして彼らより離れた路地の端に、最後のヒトリがいた。彼は地面に座り込み、路地の壁にもたれかかっていた。焦燥を覚えた少年だが、それよりも不思議なことがあった。「……(彼の周りだけ、ぼんやりと明るいぞ? )」座り込んだ彼の周囲だけ、他の場所より明らかに明るいのだ。月光は絶えず、路地の上から平等に降り注いでいるのに。「まるでスポットライトを当てたかのようだ」と少年は思ったが、それは間違いだった。座り込んだ彼自身が、光源だったのだ。***時間は少々巻き戻る。「……このッ!」「最初の威勢はどォした、新参者」名も無き世界の高校生『ハヤト』が幾度と振るう長剣ベイグナートを、オプテュスのリーダー『バノッサ』は自身の得物で軽々と受け止め続ける。その得物は奇しくもハヤトの物と同じ、長剣ベイグナートだった。双方の差異と言えば、ハヤトはセオリー通り長剣を両手持ちで、対して、バノッサは2刀流。やがてハヤトの長剣とバノッサの右の剣、2本がかち合って鍔迫り合いが始まる。刀身が擦れ、甲高い音波が路地に反響する。全体重をかけて剣を押し込もうとするハヤトだったが、右腕の1本で対抗するバノッサはびくともしない。それどころか、力負けしていたのはハヤトの方だった。「てんで話にならねェ」バノッサは右腕でもって、せり合う剣を力任せに薙ぎ払った。弾かれた剣を離すまいと、右手で強く握りこむハヤト。そうすることで剣に引きずられ、彼はぐらりと体勢を崩した。がら空き・隙だらけになったハヤトめがけ、バノッサが左手の凶刃を振りかぶる。「……チッ」だが、それがハヤトを切り裂くことはなかった。バノッサは迅速に攻撃を中断、バックステップでその場を離れる。するとさっきまでバノッサがいた空間を、投げナイフが通過する。投擲者はガゼルだ。「相変わらず、身の丈と同じちんけな戦法だなァ、おい」バノッサの挑発に眉をひそめるガゼルは、かまわずハヤトの隣へ移動する。そしてガゼルは激しい剣幕でハヤトを叱る。「真っ正直に、正面から挑むなアホ! 攻める時は背後か側面から、高低差がある場所では高い所から。戦いのキホンだろうが!」「ご、ごめん」「貸しだかんな。……だがまあ、これであの野郎のやばさは分かっただろ」「ああ」倒すつもりで剣を振るっていたハヤトに対し、バノッサの方は完全に遊んでいた。手数の多さが長所の2刀流なのに、大して攻撃してこないのがその証拠だ。おそらく、バノッサは「オプテュス――というかバノッサ自身に歯向かう愚かしさ」とやらを見せつけたいのだろう。慢心と言えばその通りだが、余裕は強者に与えられた特権だ。そのくせハヤト達を逃がさない位置取りをきっちりしているので、なお恐ろしい。そんなバノッサだが、次第にわずかなイラつきを見せ始めていた。「くそ、手下どもはチンタラ何してんだ」彼の予定では今頃、レイド・エドスを撃破した手下4名とソード使いと共に、ハヤト達を袋叩きにしているはずだったのだろう。しかしレイド達が頑張っているせいか、バノッサの手下は一向に現れない。「ザコどもの相手も飽きちまったなァ」「誰がザコだ!」言葉で噛み付くガゼルは無視された。バノッサはため息を吐くと、両肩や首をグリグリ回したり、1~2回小ジャンプしたりした。そうして準備運動を終えると、彼は獲物を見つけた猛獣のような、獰猛な顔を見せる。「嬲り殺すのを楽しみにしてたのによォ。しょうがねェ」バノッサの瞳がハヤトを射抜く。その赤い瞳は、荒れ狂う炎に似ていた。内に秘める憤怒と殺意を燃料に、目に付くモノ全てを焼き尽くそうとしている……そんな感じだ。そんな目を向けられたものだから、ハヤトは反射的に、長剣のグリップを握りこんだ。「……(来るなら来い!)」実戦で鍛えただろうバノッサの剣技は、速くて重い。しかし我流であろう彼の剣術には、相応の荒っぱさがあった。ハヤト達に付け入るスキがあるとすれば、ソコしかない。バノッサの攻撃をハヤトが死に物狂いで耐え、ハヤトより戦闘経験豊富なガゼルが然るべきタイミングで一撃! アイコンタクトするまでもなく、作戦は決まっていた。「さァ、簡単に死んでくれるなよ?」ハヤトはバノッサの姿・一挙手一投足を注視する。バノッサがどんな斬撃をしかけようと、即座に対応できるように。ハヤトにはバスケでならした反射神経と敏捷、そして不思議パワーによるブーストがある。おまけにお互いは10歩程度離れている。これなら格上が相手でも、ゆとりを持って対処できるはずだ。「ククッ」バノッサが上体を丸めながら、片足を力強く1歩前へ出す。顔はまっすぐハヤトを睨みつけ、長剣を握った両手はダランと垂らされている。その姿は腕を除き、いわゆるスタンディングスタートの態勢に似ている。が、ハヤトには獣の臨戦態勢のように見えた。そのままバノッサは全身のバネにチカラを込めて、それが最高潮に達した時……全てを解き放った。「え」呆けた呟きも詮無きこと。ダンッ! と地面を踏み抜く音が1つすると、ハヤトの目の前にバノッサがいた。十歩あった距離はすでに無く、バノッサの攻撃範囲がハヤトを侵食するまで、あと半歩の猶予しかない。「……(な、んで)」現実を受け止め切れなかった、ハヤトの思考が悲鳴を上げる。「1歩で、こんなに距離を詰められるはずがない!」……実際『ハヤトにそう錯覚させる勢いでバノッサが駆け抜けた』というのが真実なので、否定はあながち間違いでもない。だがバノッサの歩みが1歩だろうが10歩だろうが、どうでもよかった。問題は、バノッサの恐るべき膂力。そして『数瞬後にハヤトを斬撃が襲う』という未来。すぐ隣に佇むガゼルでも、この未来には介入できない。ハヤト、絶体絶命の危機である。バノッサは両腕を胸元でクロスさせ、必殺の構えで突っ込んでくる。もはやハヤトにはそれを回避できず、防御に費やす時間はない。「ウオラアァァァッ!」咆哮と共に繰り出される、薙ぎ払いの同時攻撃。しなる両腕のバネと、突進の勢いを余すことなく乗せた2つの鋼が、ハヤトの胴を抉り飛ばさんと迫る。「……(くそ!)」刃が届くまでの刹那、ハヤトは腕を動かしていた。持っている長剣の位置をわずかにずらし、凶刃が描くだろう斜め十字の交差点に、剣身を置くように。そして3本の長剣がかち合う。「両手がもぎ取れる」……そう感じるほどの衝撃がハヤトの剣を押し込み、彼の腕を得物越しに痛めつける。が、それでもハヤトは両手をさらに強く握りしめた。ここで剣を手離せば、弾き跳んだ剣がハヤトの体に突き刺さる。しかし、バノッサの腕一本に勝てないハヤトである。スピード・パワーを兼ね備えた斬撃2つは到底止められない。だから、ハヤトは後ろへ跳んだ。「わあぁぁァッ!?」結果わずかに浮いたハヤトは、前方からの猛烈な衝撃に押し出されて吹っ飛ぶ。バノッサのダッシュに迫る勢いで、路地の地面を転がるハヤト。そこらに転がるゴミや小石にハヤトの体は苛まれ、最後に路地の壁と衝突した。~~~~~「う……」うつ伏せていたハヤトが、目を開けた。少し意識を飛ばしてしまったらしい。その時間がほんの数瞬か数秒か、あるいは数分だったのか、ハヤトによくわからない。体を走る痛覚に辟易しながら、ハヤトはなんとか上半身を持ち上げた。そしてそのまま、衝突した路地の壁にもたれかかる。下半身と別れずに済んだハヤトだったが、右腕、右半身に強い痛みがある。壁と激突した部位がそこだった。しかし五体満足で、切り傷はどこにもなかった。「……(我ながら、よく生きてる)」どうやってバノッサの攻撃をしのいだか、ハヤト自身にもわかっていない。死と隣り合わせになったあの瞬間、ハヤトの体は無意識に動いたのだ。思考を超越して肉体を動かしたのは、ハヤトの精神内に潜む爆発力か、あるいはもっと別の……? しかしそんな事ハヤトにはわかるはずもなく、考えている暇もない。疑問と苦痛を押し殺し、ハヤトは周囲へ意識を向ける。ほどなくハヤトからわずか離れた場所で、ガゼル達が戦っているのが見えた。「生ぬるいんだよテメェらは!仲間も攻撃も、何もかも!」「くそおッ!!」「ガゼ、ルッ」バノッサの猛攻が、ガゼルを窮地に追い込んでいる。バノッサの2刀流が暇なくガゼルに肉薄。ガゼルも反撃に転じようとナイフを振るが、その全てが空を切っていた。「はやく、いかなきゃ」ガゼルを苦境から、救わなければならなかった。それをハヤトの力量でできるかあやしいが、それでもハヤトは自身にできる精一杯をやるつもりだ。幸運にも、共に吹き飛ばされた長剣『ベイグナート』は、彼のそばに転がっていた。ハヤトは痛む体に鞭を打ち、痺れの残る右手を伸ばす。「ぐうッ!?」長剣を掴んだ時、ハヤトの右手に鋭い痛みが走った。そのためハヤトは、長剣を取りこぼしてしまう。右手首が、わずかに腫れている。「……(壁に衝突した時、捻ったのか)」とっさに左手で右手首を抑えてみたものの、ジンジンとした痛みが引くわけがない。むしろ患部が焼けそうなほど熱く、赤くなっていくのを痛感するだけだった。ハヤトは以前――リィンバウムに召喚される前、ただの高校生だった時に、同じように手首を捻挫したことがあった。バスケの試合でのことだった。その時は怪我が軽度だったこともあって、テーピングだけして試合に復帰できた。だが今回はそうもいかない。仮に雁字搦めにテーピングしたとしても、今の戦いで、もう右手は使い物にならない。負傷したハヤトは、もう戦えない。「……ちくしょう」うなったハヤトの目には、涙がにじんでいた。それは痛覚に耐えかねた涙では無く、不甲斐ない自身に対しての、憤りの涙だった。今回の戦いについて「キミの責任ではない」とレイドは言っていたが、それでハヤトは納得できなかった。決着は彼自身の手でつけたかった。しかしみんなに大口を叩いた挙句、結局なにもできずにリタイア……そんな自身がたまらなく情けなかった。フラットのみんなが、ピンチなのに(フラットじゃないヒトもいるけど)。最初は敵対していたけど、後でキチンと話を聞いてくれて、ぶっきらぼうながら受け入れてくれたガゼル。暴走した召喚術にやられても、なんでもないと接してくれるエドス。厄介事を背負ってまで庇ってくれた、レイド。身銭を切ってまで、おいしい料理で出迎えてくれたリプレ、そして無邪気な子ども達。彼らに報いたい。そんな思いで戦いに挑んだはずなのに、現実が、体がそれについてこないで空回りしている。「……(チカラが欲しい)」己の無力に打ちのめされ、ハヤトは願った。「……(バノッサを倒すために欲しいんじゃない。ガゼルを、みんなを護りたいんだ。そのためのチカラが必要なんだ!)」生まれて初めて、全身全霊を込めて懇願した。「神様がいるなら助けてくれ」とも思った。しかしリィンバウムに『神』はいないので、懇願も無駄に終わるが……。ハヤトの非凡なる強い思念は、彼の体に眠るモノを呼び覚ます鍵となった。――……チ…………。「!?」願うハヤトに『声』が聞こえた。バノッサやガゼルの声とは明らかに異なる、女性的で穏やかな声色だった。辺りを見渡すハヤトだが、なぜか声の主は発見できない。――チ…………チィ。また声が聞こえる。今度は、もう少し大きな音量で。2つ目を聞いて、ハヤトはそれが『声』ではなく『鳴き声』だと気づいた。彼が今まで聞いたことも無い、おそらく彼の故郷のどの動物のモノとも合致しない、不思議な鳴き声。なぜ、ここにいない動物の鳴き声が聞こえるのか? 奇妙に思うハヤトには、それよりもっと奇妙に感じることがあった。「……(『手助けがしたい』って言ってるのか? 俺の?)」鳴き声の意味が、彼には分かるのだ。何故かは不明だが、とにかく「感じたことが真実だ」という確信だけが彼にはあった。まったく奇天烈な話である。だが藁にも縋る思いのハヤトにとって、理由なぞ問題ではない。「キミの手助けがあれば、俺はまた戦えるのか?」問うハヤトに対し、声の主は「はい」との鳴き声を発した。「……ありがとう」ハヤトは自然と呟いていた。再戦のチャンスを得た……それも喜ばしかったが、なにより声の主の厚意・やさしさが嬉しかった。「異世界でひとりぼっち」という孤独を味わいながらも、フラットのみんなに救われたハヤトだから。声の主がくれた厚意も、フラットのそれと同じくらい尊く感じた。「……(キミと、みんながくれたやさしさ。絶対に無駄にはしないから)」みんながくれた気持ちを勇気に変えて、ハヤトは弱っていた心を再び奮い立たせた。まだ体のアチコチに痛みが残っていたが、もう「情けない」と嘆いたままではいられなかった。もう一度戦う。そのために、ハヤトは地べたの長剣に左手を伸ばした。――よんで。長剣を掴んだハヤトに、再三の鳴き声が届いた。もはやハヤトには、その鳴き声がニンゲンの言葉に聞こえていた。――『サプレス』からじゃ、助けられないから。「……(よくわからないけど、そこって遠い場所なのか)」『サプレス』とは、リィンバウムを取り巻く4つの異世界の1つ、『霊界・サプレス』のこと。つまりリィンバウムとは丸っきり違う、別の世界だ。ハヤトと声の主、互いの間にある隔たりはとても大きかった。文字通り、それぞれが違う世界に生きているのだ。その隔たりをぶち壊さなければ、ハヤトは助力を得られない。しかも例え隔たりをどうにかできたとて、その時ガゼルがやられていては意味がない。つまり『物理的な距離』と『世界の境界』を無視しつつ、『一瞬で』声の主を手元に喚び寄せる術が、ハヤトには必要だった。そんな常識外れな術は、『ニッポン』の知識を総動員しても見つからない。しかしリィンバウムにはハヤトの常識から逸脱した技術が、物理法則すらも超越する術がある。――ぼくを、『召喚』して!つまりはそれが答えだった。「!」同時に、ハヤトに異変が起こった。今までも十分異変だらけだが、新たなる異変はハヤト以外にも認識できるものだった。淡く輝く光の粒子が、ハヤトのまわりに漂っている。しかも1つや2つではない。数えるのが億劫になるほど多数の粒子群。それらが黒・赤・紫・緑……それぞれ違った輝きを湛えながら、宙で妖しげに揺らめいている。さらに驚くべきことだが、光る粒子の発生源はハヤトだった。滲み出るかのように、彼の全身から粒子が絶えず放出されている。「……(不思議だ)」光に包まれるほど、ハヤトの肉体は活力を取り戻していった。どうやらこの妖しい光には、肉体活性化の作用があるらしい。戦いの疲労・負傷そのものは癒えないが、それらマイナスを打ち消すほどに体調や身体機能が上向きになっていく。「……(それだけじゃない。何をするべきかが、わかる!)」滾る肉体に後押しされ、ハヤトは立ち上がった。彼にはこれから行使する『術』への懸念があったはずだが、彼の肉体は淀みなく行動を続ける。今の彼には、バノッサの斬撃に対処した時と同じ感覚があった。ハヤトの中にいる何かが彼に囁き、彼の肉体を突き動かすのだ。「おおおオオォォッ!」ハヤトは左手に握る長剣、その切っ先を天に掲げた。するとハヤトを包み込んでいた光が、長剣に導かれるまま夜天へ昇る。昇った光はしだいに渦を巻き、空間をねじ曲げながら星々の輝きを飲み込んで。星空の中に生み出されたのは、闇夜よりも黒い穴――異世界へ通じるゲート。ゲートの向こうへと、ハヤトは叫ぶ。「来てくれ……『リプシー』!」すると『召喚術』に応じて声の主、サプレスの聖精がゲートから飛び出した。~~~~~~~~~~あけましておめでとうございますハヤトの初?召喚シーンにチカラを入れようと思ったら、思ったより纏まりませんでした。U:X4巻がでますね。