※前回までの『金の派閥にケンカを売る(仮題)』※チーム「フラット」の花見は、ピクニックになってしまった。目をつけていたアルサック並木が、サイジェント貴族のパーティに占領されていたからだ。まあ本命は親睦会だから!ということで皆でピクニックを満喫し、そのまま終わるはずだった。ハヤトとガゼルが貴族のパーティに無断侵入するまでは。そして彼らが、会場の召喚師やら兵士やらに追いまわされるまでは!彼らを放っておくわけにもいかない。フラットの仲間といっしょに、少年『チャーハン・タベルナ』は会場へ急いだ。ゲレゲレー!晴天にブキミな鳴き声がこだまする、そしてカミナリが落ちる。はたから見れば、そこがパーティ会場だと誰も思うまい。「タケシーかあ……なぜこんなことに」貴族へカチコミだ!と意気込んだはいいが、少年『チャーハン・タベルナ』にだって不安がある。その1つがカミナリである。なぜかは知らないが、少年はあのカミナリ発生源が苦手だ。なぜかは知らないが。そして装備が乏しいというのも少年の不安をかきたてる。サモナイト石はともかく、宴会芸の小道具で何ができるのか。素性を隠す身の少年としては、おおっぴらに召喚術を使えないのも問題だ。このままでは足手まとい筆頭ではないか?少年でなくてもそう思う。だが、カチコミに行くと自分で決めたのだ。こんなところで知り合いの人生がダメになってしまうなぞ、看過できないから。そしてもう1つ。「せっかくサイジェント……いや聖王国……むしろリィンバウムで1番の花見日和が、この瞬間にあるというのに。トラブルとは無縁でいたかったのにッ!」心にわきあがる「花見を返せコノヤロー!」という怒りを抑えられないからである。結果からいえば、会場入りした少年は、先んじる3名と合流できなかった。「なにヤツ!」「うげっ」そればかりか、警ら中の敵兵士とばったり遭遇してしまう。他の兵士やパーティ客・スタッフがいないのがせめてもの救いか。「まさか、新たな侵入者。またか!?先ほども3名侵入したばかり……ハア、なぜこんなことに」溜息まじりの兵士が、ジリジリにじり寄る。一方の少年は、周囲に打開策がないかを必死に探す。どうにもこの一角はビュッフェのような食事スペースらしい。しかし戦場になったのか、客達がよほど慌てて逃げたのか、かなり荒れている。配置めちゃくちゃのテーブルたち、ズレたテーブルクロス、散らばる食器、給仕用の銀トレー、放置された料理、ドリンクのボトル、あとケーキを乗せる段になってるアレ。「客人の避難誘導。会場の警備。召喚師様への増援……まったくもって手がたりないというに、侵入者はまだ増えるか!」兵士は「せめて召喚様がカミナリを落とさねば、客人の避難はもっと迅速だったものを!」などとつぶやきながら抜剣。その刃には明確な敵意と、燃え上がるような怒りがこめられている。「いいかげんにしろよ!」「ぎゃあ!?」切りかかりを、少年はめざとく拾った銀トレーでガード! 「まった待った!」「命乞いなぞ無意味だ!」「違う。僕は『花見』という、誰もが享受できたはずの平穏をとり戻したいだけだ!僕がパーっと元凶をしょっぴけば、ひとまず騒動は終わる。このまま争えば被害がでるだけだ!」「最初に侵入してきたのはキサマ達だ。しかるべき報いをうけろ!」「ですよねえ! いやでも」「我々もなあ、諸々の失態を払拭するため必死なのだよ!」激情に身をこがす兵士は、技術もあったものではない、チカラまかせのでたらめに剣を振るう。まるでシルターンの『鬼』が棍棒を振り回すがごとく!「やめろっ!」とっさに跳び離れる少年!雑な太刀筋をうけるほど、少年は弱くない(強くもない)。しかし少年が危惧するところは、自分の安全ではない!兵士の剣が、周囲のテーブルを叩きくだく!兵士の剣が、テーブルクロスを引き裂く!兵士の剣が、食器を粉砕する!兵士の剣が、ケーキを乗せる段になってるアレをはじき飛ばす!そして料理だったものが、残飯にかわっていく!「ぐぬぬッ」少年とて理解している。ここの料理を客が食べることはない。多くのニンゲンが慌ただしく動き回り、埃、砂粒、汗や血なんかが降りかかった物を、貴族は口にしない。ここには破棄される運命にある食べ物しかない。そして少年とて、兵士に同情している。ある種の同士、花見にトラブルを持ち込まれた者同士として、一方的なシンパシーすら感じている。だが!散らばるサラダ!潰れるサンドイッチ!慢幕にへばりつくケーキ!地におちたフルーツ!ころがる骨付きチキン!「恨めしい!なぜマジメに警備していた我々が、うかれて酒飲んで職務放棄した同僚(バカ)どもの、尻ぬぐいをせねばならんのだあ!」なにやら兵士が口走っている。きっとそれが事件の元凶の元凶なのだろう。しかし、それより宙に舞うフィンガーフードのほうが気になっている少年は……キレた。ゲレゲレー!「ああ、にくい憎らしい……なぜこんなことにッ」そうこぼしたのは30歳前後の男。茶髪のオールバック、鼻に丸眼鏡を引っかけ、仕立の良い服で着飾っている。その指には大きな石のついた指輪をはめている。彼こそ金の派閥の召喚師『イムラン・マーン』。サイジェントの政務担当であり、悲しいかな、パーティの諸々の責任者である。「……(右手に清きアルク川、左手に満開のアルサック並木、そして十分なスペース。ここはパーティの目玉スポットだというに!)」イムランが相手をしているのは、客人ではない。かといって会場のスタッフでもない。まさかの平民の小僧ども、招かれざる2名の客である。憎んでも憎み足りない『賊』どもだ。今より十数分前、賊を発見してしまったイムランは、3名の兵士(手が空いてる兵士のすべて)とともに、逃げた賊を追いかけまわした。それは『時間』とか『労力』とか『客人の心象』とか、色々なものを犠牲にしながらの追跡だった。やたらと運動神経がいい賊であり、やたらと人手不足であったりしたので、逃走劇は非常に長引いた。しかしイムラン達も、ムダに苦労をかさねるばかりではない。ここの右手側は、幅も深さもあるアルク川。そちらから逃げるためには悠長に泳ぐなりしないといけない。泳者は(幸いにもいた)弓兵やイムランの召喚術の餌食となる。奥側は、幔幕で仕切られており、その向こうはパーティの備品置き場になっている。つまり左手側、アルサック並木の方を固めておけば、逃げ場はなくなるということだ。目玉スポットを潰すという苦渋の決断の末、ソコに賊を誘導したところから話は始まる。「随分とてこずらせてくれたものだ、薄汚い平民風情が!」「ケッ!その平民風情にこんな手こずるたあ、『ショーカンシサマ』ってのも思ったより大したことねえな。なあハヤト?」「ガゼル……それは……色々と返答に困る」「まだ減らず口をたたく元気があるとは、ますますもって憎らしい……イタタタッ!?」顔をしかめ腹をおさえるイムラン。彼は、医者がさじを投げるほどの胃痛もちだ。元々、花見の準備や客人へのおべっかでストレスフルなイムランは、彼の胃は限界に足を踏み入れかけている。「あのう、イムラン様」アルサック並木のあたりをかためる兵士の誰かが、おそるおそる口を開く。「あとは我々で捕縛しますので、イムラン様は休憩なされては?」「断る」「……しかし」「私が直々に罰すると言った!」一括してなお、兵士達は「イムラン様ホントに大丈夫かな?」という表情を浮かべている。それがまたイムランの胃を圧迫する。たしかに賊は肩で息をするほど、目に見えて疲弊している。このまま兵士を突撃させるだけで、賊どもはたやすく捕縛されるやもしれん。だがイムランはそれをしない。そもそも会場の警備が万全ならば、賊の侵入はなかったはずだ。警備をしてした兵士たちを、イムランは信用しがたい。そしてなにより、相手は『つまみ食い』というくだらない理由でやってきた上に、イムランに「召喚師っぽくない」などと吐かした奴ら。小僧とはいえ、それをイムランは許さない。よって賊を討つのは、イムランが最も信頼し、かつ賊が己の行動を悔やむほどの暴力でなければならない。すなわち召喚術あるのみ。「さあ、『タケシー』よ!」「ゲレレー!」イムランの背中から、黄色で丸っこい生命体が飛び出して宙を舞う。こいつこそがサプレスの魔精タケシー、カミナリの発生源たる召喚獣である。ただでさえ電撃を得意とするタケシーは、術師からの魔力供給によってそのチカラを乗算的にはねあげる。「さあ今までの無礼の数々、その身を焦がして……」「は・や・とぉーーーーッ!」「……んん!?」降ってわいた少女の怒声が、イムランの左耳を叩いた。全員が、アルサック並木の向こうを見る。するとなんとアルサック並木の向こうから、それぞれ大剣・斧・ナイフで武装した3名(男2・少女1)が爆走してくるではないか。 あからさまに凶悪な賊なのだ!「兵士、これはどういうことだ!?」「敵の援軍かと!」「そんなわかりきったことを訊くわけがあるか!?なぜ侵入者が次から次へとくるのか! 会場の警備はどうなっているのだ!?」「あ。それは。その」「ええい憎らしい!」言い淀みぐあいが、警備のザル加減を雄弁に語っている。またしてもイムランの胃にダメージ。そして兵士が行動をおこすより早く、混乱から回復したイムランが指示を出すよりもなお早く、動いたのはナイフの少女。少女はナイフを左手に持ち替え、右手でポケットから『何か』を取り出すと――それを投げた。投じられたのは何か?刃物・煙幕・爆薬・薬物……候補はいくつかある。しかしアルサックの枝をかいくぐるそれは、誰の目にも、ただの『黒い石』にしか見えない。とすると原始的な石投げとしか考えられない……が、放物線の先にはイムランもタケシーもいない。となればイムランのすべきことは1つ。「ちっ!兵士は新たな賊を討て!」「うわっ!?」イムランが指示をとばしたのと、ハヤトなる賊が顔面スレスレで石をキャッチするのとは同時だった。それが明暗をわけた。「ふん、黒い石ころ1つ手にしたところで」何ができる――そう言いかけたイムランが、とまる。何もできないはずの小僧が、挑戦的な笑みをうかべているからだ。「やってやるさ」とでも言いたげな表情だからだ。イムランは一抹の不安を覚える。なにかを失念している気がする。たじろぐ彼の左手が『ソレ』に触れたのは、きっと必然だ。それは右ひとさし指を彩る『指輪』だ。権力の象徴めいた、ハデな装飾のアクセサリ。指輪につけた大ぶりの石は、職人の手で宝玉もかくやというほど美麗に加工された、そしてタケシーとの誓約を刻んだ、紫色の『サモナイト石』――!「まさか」イムランは思い至る。己こそまさに、石1つですべてをひっくり返しうる魔法の使い手だということに。そしてもし。もしも万が一、相手もまた使い手ならば?恐ろしい想像だった。「ちい、タケシーッ!」怖気に駆り立てられるまま、イムランは速攻を仕掛けんとする。彼がタケシーに命じるのは、ごくごく簡単で単純な、タケシーから相手へまっすぐ走る電撃。威力こそ最低、なれど最高の速度で飛んでいく電気の矢だ。もともと攻撃待機中だったタケシー・誓約による強制力・そして何よりイムランの確かな技量……すべてを合わせた一撃が放たれようとしている。時間にして数秒後、彼の自己ベストを更新する速度で放たれるはずの必殺技は、しかし。それでも――ハヤトを貫くには遅すぎた。「俺の声に応えてくれ、『ウィンゲイル』!」すでにハヤトの『召喚術』は完成している。イムランとハヤトの中点、そこの地面がグニャリと歪む。異世界へつながる門(ゲート)が口を開ける。「なッ」歪んだ大地を突き破るように出現した『ウィンゲイル』は機界ロレイラル産、メタルボディの機械兵器である。角ばった頭部・胴体・先端に巨大プロペラを搭載した2本腕、という姿。足がないのは、驚異の科学技術によって浮遊しているからである。そんな機械兵器が攻撃の射線上で仁王立ちをし始めたのだから、イムランの心中と胃の中は穏やかじゃない。止められない・曲げられない・さほど威力もないタケシーの電撃は放たれるや、文字どおり鉄壁のウィンゲイルへまっすぐ飛んで、その腕のひとふりによって弾かれる。驚愕にフリーズするイムランの耳に、「ガシャン」という音が届く。それは振り上げられたウィンゲイルの2つの腕が、目標に狙いをつけた音。腕が、巨大プロペラが、イムランの方を向いている。 「コマンド・オン!『ダブリーザー』!」プロペラが回転をはじめる。「あ」すなわちプロペラでかき混ぜられた空気が、暴風となってイムランへと襲いかかるということである!「ああ……ああ憎らしい!私がなぜこんなことに!」「ゲレゲレレーーーーーーッ!?」暴風はうずをまき、アルサックから零れた花を巻き上げて、薄紅色の竜巻となって殺到した。桜吹雪に飲み込まれ、召喚獣タケシーは彼方へ吹っ飛んだ。そして近くの術師は、どうなったかわからない。その惨状の目撃者は、イムランと相対するハヤト・ガゼルだけではない。アルサック並木のふもとで戦う3名の賊と、3名の兵士も同じだ。「イムラン様ああああああああッ!?」「あ、おいアホ!」そのうちのヒトリが、なんともなさけない絶叫をあげる。パーティ責任者であり上司であり、『召喚師』というリィンバウムの最強の代名詞がピンチなのだ。衝撃はどれほどのものだったのか。しかそれは、敵へ向けるべき注意を疎かにするということで。「スキあり『ロックマテリアル』!」ナイフを持つ少女――『カシス』の目がキラリと光る。ナイフと逆の手には、無色透明のサモナイト石を握る。彼女もまた召喚師だと知っていれば、兵士の対応も違っただろうに。カシスの頭上に現れるのは、こぶし大の石。かつて天より落ちた隕石のかけら。それがまさに流星のごとく、アホ面をさらした兵士へ飛んでいく!「あ゛っ!?」隕石が直撃したのは兵士の足だ。鋼鉄のブーツがひしゃげる威力だ、数日は腫れが引かないだろう。「いげ!?」そして機動力を奪われた兵士の横っ腹を、大剣をもつ男――『レイド』の一撃が叩く。金色の鎧がひしゃげる威力を受けて、兵士はダウン。後日の叱責は免れないだろう。ここぞとばかりに、残り2名となった兵士を、斧の男――『エドス』が、押し込みにかかる。「兵士は我々が請けおう!」「ハヤトとガゼルは任せた」「うん!」カシスは駆け出し、エドスがこじ開けた道を走る。追いかけようとしても、そこにはレイドが立ちふさがってどうしようもない。カシスは無事、ハヤトとガゼルが避難している、ウィンゲイル背後へ滑り込んだのだった。「もー、キミ達ムチャしたね」「カシス、それにみんなも……みんな?」刹那、ハヤトは「誰か足りない」気がした。しかしそれを深追いする余裕はない。カシスもカシスで、謝罪したげなハヤトとガゼルを「積もる話は後!」と制する。今だ敵陣の中なのだ。「ウィンゲイルがいる間に早く逃げ……たかったけど、上手くいかないみたい」カシス達が垣間見たのは、ヨロヨロになってなお立ち上がるイムランだ。地面に必死こいてへばりついていたのだろうか、暴風をかろうじて耐えたらしい。「ぐ、うう」しかし彼のダメージは大きい。おまけに体が花びらまみれで、色々だいなしだ。「にくい……憎い!憎い!憎い憎い憎らしいッ!平民が召喚術なぞ、分不相応にもほどがある。憎らしいにもほどがあるぞっ!?」「ここからが本番ってわけか。いくぞウィンゲイル!」機械兵器がうなりをあげる。「はい、ガゼルにはナイフ」「すまねえ。くそ、オレも召喚術がつかえりゃあ、アイツにぎゃふんといわしてられるのによお」「あー……頑張ればできるよ?相性や才能にもよるけどねー」「はあ?召喚術は召喚師しか使えねーんじゃねえのかよ!?」「それは思い込みっていうか、聖王国ではそういうことになってるというか」「ええい私を前に雑談なぞしおってからに!」イムランが顔を真っ赤にして怒っている。「平民の小僧だと思い、命まではとるまいと情けをかけたというのに……無下にしおって」ガゼルは「ウソつけヤル気だったじゃねえか」と野次を飛ばすが、それはイムランの耳に届かない。「もう知らん。召喚師に楯突いたその罪、我が奥義でもって償ってもらおう!」イムランに漲る魔力は、実際、ハヤト達の肌がひりつくほど凄まじい。それすなわち今までの攻撃が、彼にとってただの児戯であった証左だ。「気圧されちゃだめだよ。気を強くもって、体に魔力をめぐらせて対抗するの」「わかった!」場の緊張感と魔力が最高潮に達したその瞬間――それはやってきた。ファンシーな毛玉だった。バスケボールサイズの、いかにも柔らかな純白の球体。ハヤトにはそう見えた。それが、無防備なイムランの後頭部をプニッと襲った!「あばッ!?」むろんイムランに大したダメージはない。だが衝撃のせいか、つんのめったイムランは高めた魔力を霧散させてしまう。術は不発!そのまま毛玉は地面におちて、転がりながらどこかへ消えた。「なんだ今のは!?」それは、この場の全員の疑問だった。まさか毛玉が意思を持って飛ぶはずがない。ハヤト達も、本気の召喚師に内心ビビっていた兵士達も、レイドとエドスでさえも手を止めて、「誰だ誰だ」と闖入者を探す。「あそこだ!」誰かが叫んだ。目撃者のいくらかが指さした。背後をふり向いたイムランは、そいつを見た。「もうやめにしよう」男が、川べりを歩いてくる。いや背格好からして『少年』が正しいだろう。くぐもった声。首もとには、闇夜のごとく黒い石をつけたネックレス。上半身は肌着1枚。茶の作業着めいた上着を腰に巻き、そして質素なズボン。もっとも特筆すべきは、少年の顔だろう。赤ら顔に白ひげ、そしてニンゲンにあるまじき長い鼻があった。視力に自信あるものは、少年が『仮面』をかぶっていることに気づいた。知識あるものは、その仮面が鬼妖界シルターンの伝説的妖怪『テング』を模しているとわかった。「これ以上のドンパチは、たとえ『界の意思(エルゴ)』が許すとも自分が許さん!」少年の右手には、ベコベコに凹んでいる銀トレー。ソレには赤黒い液体がべったり付着しており、テング少年の激しい怒りと暴力性が垣間見える。「誰だお前は!?」「そんなことはどうでもいいんだよお!」どうでもよくねえよ!――と、誰かが叫んだ。テング少年は無視した。「良き花見の日。ハメをはずすのも良いだろう。多少のケンカもあるだろう。だが花見と花見料理を破壊するようなドンパチは……よろしくない!」言い終わるとテング少年は、どこからか取り出した土まみれの骨付きチキンを仮面の裏にツッコミ、ムシャムシャと咀嚼しはじめた。怖い!「……ん。重要なのは、今!パーティ会場の誰もが花見をしていないということだあ!」ズバリと指差しする様は、あからさまに狂人だった。「お前達だけではない。会場を歩けば、恐れ慄き逃げる客とスタッフばかり……そんな事態を終わらせるために、自分はここに来た!」狂人を見たらそりゃあ逃げるだろ――というリアクションを誰もがした。~~~~~~~~~~お久しぶりです。大変おまたせ致しました。