···身体中が痛い。
痛みを感じるということは一応生きているらしい。
目を開けようとすると激痛が奔った。
···どうやら一時的に麻痺しているらしい。
ならまずは、自分の状態を確認すべきだ。
腕は···指先が辛うじて動かせる程度か、
なら足は···だめだ、力を入れる事すらできそうにない。
「えっと、大丈夫ですか?」
急に声をかけられ、多少回復してきた目を開けると長いマフラーと赤い髪がかろうじて見えてきた。
アティさん?
···駄目だ、まだ視界がはっきりとしない。
「あの先生、その人大丈夫なんですか?」
女の子の声?それにアティさんの声もやけに低かったような···?
「アリーゼ、ちょっと下がってて。」
赤い髪の誰かが近くに立って呪文を唱え始める。
···回復の召喚獣でも呼ぶつもりなんだろう。
そんなものボクには意味無いのに···
「召喚リプシー」
身体が一瞬光に包まれたが、すぐにその光は消えてしまった。
「···送還された?いったいなにが···」
赤い髪の誰かは自分の召喚術が失敗したことに動揺しているみたいだ。
ボクにとっては当然の結果なのだがな···
さて大分回復してきたかな?
身体の痛みが我慢できる程度に回復したのを確認してゆっくりと目を開け手足に力をこめて立ち上がる。
目の前には長いマフラーと赤い髪が特徴的なアティさんとにた雰囲気の男性と
ウィルくんと同じ歳くらいのツインテールのおとなしそうな少女が立っていた。
「どうもありがとうございます。ボクは回復が効きにくい体質なので驚かせてすみません」
助けてくれようとした男性に感謝と謝罪の言葉をかける。
「えっでも効きにくいって送還された···いやこちらこそ大した役に立てず申し訳ないです」
混乱しながらもちゃんと返事をしてくるなんてこの人いい人だな。
「あのところでここって何処でしょうか?嵐で船から投げ出されてここに流れ着いたみたいなんですけど」
「えっあなたもなんですか?俺もなんですよ。さっき気が付いたばかりで···」
申し訳なさそうにうつむいてしまった。困ったな。
「そうなんですか?ボクはパスティスへ行く途中で海賊に襲われてしまって、そのまま嵐に巻き込まれてしまったんですよ」
「という事は同じ船に乗っていたんですね」
「たぶんそうなんですね。ところで一緒にここが何処なのか近くをしらべてみませんか?」
「ここにいるよりいいとおもいますけど・・・」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。ボクはルーファスといいます、あと敬語はいらないですよ」
「えっとじゃあ俺はレックスです。この子はアリーゼで家庭教師と教え子の関係です。あとこっちも敬語はいらない」
「すいませんボクはこれが普通なんでこのままでお願いします」
「ああ、分かった。よろしくなルーファス」
「はいよろしくお願いします。アリーゼちゃんもよろしくですね」
そういってアリーゼちゃんに笑いかけるとアリーゼちゃんはレックスさんの後ろにかくれてしまった。
「すまないルーファスこの子は人見知りが強いんだ。ほらアリーゼ挨拶して」
「はっはい、アリーゼですよろしくお願いします。」
レックスさんに促されアリーゼちゃんは顔だけだして挨拶をした。
「ああ、そうなんですか。気にしないでいいですよ。嫌われてしまったかと思って
しまいましたよ。」
アリーゼちゃんは恥ずかしそうに顔を俯かせてしまっている。
なんか可愛いなぁ。
「もしかしてルーファスってロリコンなのか?アリーゼはやらないぞ」
ボクがアリーゼちゃんを見て微笑んでいるのを見てレックスさんが警戒した目でボクにらむ。
···別にそういう趣味はないけど、レックスさんって子煩悩だなぁ。将来いいパパになるかも。
「安心してもらっていいですよ。ボクには婚約者がいますしその人を愛してますから」
レックスさんは驚いた顔でこっちを見て尋ねてきた。
「ルーファスっていま何歳?」
困ったな、正確に答えるわけにもいかないし曖昧に答えておくか。
「レックスさんよりは大分年上ですよ。それよりも向こうの方に煙が見えますし、人がいるかもしれませんしいってみましょう」
「あ、ああそうだな」
レックスさんはどこか納得がいかないようだったが、反論が思いつかなかったのかそのままボクの言葉に同意してくれた。