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No.392の一覧
[0] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-[神威](2008/10/13 23:37)
[1] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第一話>[神威](2008/10/18 22:50)
[2] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第二話>[神威](2008/10/16 00:39)
[3] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第三話> 前編[神威](2008/10/20 19:32)
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[392] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第二話>
Name: 神威◆73420f02 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/16 00:39
サモンナイト『IF』
  -久遠の彼方-

第二話 再会



 俺達は今、外界に出るためにそこら辺にうちあがった物を補修した船に乗っている。
 島の周りには結界が施されているが、島の住民である俺達は其れに阻まれる事は無い。ちょっとした裏技だ。
 意気揚々と海原に出た俺達は、早速帝国を目指す事にした。

「アティ」

「はい?」

「伝え忘れてたけど、暫く島には戻らない」

 自分でも重要な事を伝え忘れたものだ、と今更ながらに思う。
 案の定。アティはキョトンとした表情になっている。

「ふぇ?」

「まぁあの子達が島に行く事自体は反対じゃ無いんだけどな。
 アルディラ達にも人と付き合う覚悟が必要だと思うし、何より俺達外界の事を知らな過ぎるだろ?」

 教える側としては其れは色々と駄目だろう。
 そう判断したからの決定だった。
 本来なら島を出る前、家庭教師の話をアティが請け負った時点で話しておくべき事だ。

「其れに召喚や戦闘の技術や原理を教えるだけじゃ無くて、他の都市についての最小限の知識は欲しいと思う。
 其の為には自分達の目で見るのが一番じゃないか」

 俺がそう言うとアティは唸り出して考え込んでしまった。
 行き成りだったし、全面的に俺が悪い。何度も言うが一言言っておくべきだったな。

「ま、初めての事だし何事も経験経験」

 俺はアティの肩を軽く叩くと、見えてきた港を見つめた。
 島を出て既に三日が経っているのだが内心結構早かったな、などと思ってたりする。
 島からの距離を考えると普段ならもう少しかかるからだ。

「ほら、港だ」

 アティの生徒となるベルフラウとアリーゼには、旅をしながら教える事となっている。
 これは以前、二人の父と決めた事だ。
 もし引き受けるならこうが良いと。

 連絡は定期的にとっていたので、引き受ける旨は伝えてある。
 四日後に此処、帝国の船着場で待ち合わせとなった。
 約束の日は明日なので今日一日は旅の為の道具を買う事にした。

 因みに、旅には乗って来た船は使わない。
 俺達が乗って来た船でもいいのだが人とのふれあいも大事だ、と言う事であえて定期船に乗る事にしたのだ。
 それもまた良い経験になるだろう。

 二人で軽く町をぶらつきつつ買い物を済ませ、丁度見つけた店で昼食を取る。
 買い物は午前中で殆ど終わってしまった。

「アティ、これから何処か行きたいとこあるか?」

 自然と暇になったので、何処かで時間つぶしをしようということになった。
 とはいえ俺自身は何度か来たことのある場所だ。
 そんな訳で初めてこの町に来たアティの希望をとったのだ。

「もうちょっと町をぶらつきませんか?」

「おっけー」

 特に断る必要も無かったので軽く了承する。
 宣言通り、二人で日が暮れるまで辺りをぶらついた。
 途中面白そうな物を見つけると子犬の様に走って行くアティの後姿を見ながら偶にはこんなのもいいなぁ、なんて思ったり。

「アティ、そろそろ宿に行くぞ!」

 広場で休んでいた俺は、少し遠くに行ってはしゃいでいるアティに声をかけた。

「は~いっ!」

 アティの返事が聞こえると、俺は声のした方に歩き出す。
 ふと、前からアティに似た青年が歩いてくるのが見えた。

 俺がアティの名を呼んだとき、青年の顔が強張ったのが見えた。
 でも其の顔に浮かんだのは紛れも無い歓喜で。
 探していた物を漸く見つけたような、そんな感じ。

 俺は直感的に感じた。
 この男はアティの生き別れの兄だと。



◆◇◆◇



 結局アティに彼女の兄らしき人物の事は伝えなかった。
 仮に違ったらぬか喜びをさせる事になる。その時のダメージは計り知れないだろう。
 それに俺としてはまた会える様な気がした、というのもあった。

 日が変わり、約束の時間が近づいたので俺達はそろそろ待ち合わせ場所の船着場に行く事にした。
 其処には所在無さげに立っているベル――俺はベルフラウの事をこう呼ぶ――とアリーゼの姿が。

 そして何故かウィルとナップの姿。
 その四人の傍らにはお付きのサローネさんの姿があった。

「や、待たせたかな?」

 軽く手を上げながら挨拶。
 顔見知りだから口調も軽い。

「いえ、私達も今来たばかりです」

 サローネさんが答えた。

「で、どうしてウィルとナップが?」

 俺の疑問に答えたのはウィルだった。

「僕らにも新しく家庭教師が付くことになったんです。僕はアキラ兄さんが良いと言ったのに、父は許してくれませんでした」

 軽く首を振りながら答える其の姿に苦笑。
 慕ってくれる事は非常に嬉しい。とはいえ俺には別の仕事がある。

「わりぃな。俺の方もアティの補佐で手一杯だし」

 ウィルの頭に手を置き、軽く撫でてやる。
 俺自身にも妹が居るからか、これはもう既に癖のようなものになっている。
 ウィルたちも別に嫌がらないので褒める時、慰める時にこうするのは暗黙の了解になっている。

「ベルフラウ達の嫉妬には注意して下さいね」

 何故か、そんな事を囁かれてしまった。
 嫉妬? と首をかしげて、合点がいった。
 ベルとアリーゼは俺の事を随分と慕ってくれているのだ。それこそ実の兄の様に。

「じゃ、アティ。軽く自己紹介して」

 雑談もそこそこに、後ろに居たアティを前に出るように促す。
 これから先生と生徒の関係になるのだ。第一印象は大切だろう。
 暫くは一緒に過ごすのだ。嫌な奴と毎日顔をあわせたい、とは誰も思わない。

「えっと、今度から貴方達(ベルとアリーゼ)の先生をやる事になったアティです。宜しくね?」

 何時ものほにゃっとした笑顔と一緒に言う。
 この笑顔を見れば大抵の人間は警戒感をなくしてしまうだろう。
 アリーゼもその笑顔にあてられたのかほんわかしている。

「はじめまして。長女の、ベルフラウと申します。此れから宜しくお願いしますわ、先生」

 もっとも、そのアティの笑顔もベルのきつい口調の挨拶により引き攣ったのだが。
 しかし俺の方にもそのきつい視線を送るのはやめて貰いたい。

「あ、あの、次女のアリーゼです。えっと、宜しくお願いします」

 次のアリーゼの挨拶には、あからさまにホッとしたようなアティが居た。

「一応二人も挨拶してくれるかな?」

 俺はウィルとナップにそう言った。
 会話するなら名前を知っていた方が良いからな。

「では先に僕が」

 ウィルが一歩前に出る。

「はじめまして、長男のウィルです。一応長子でもあります。宜しくお願いします、アティさん」

 軽く会釈しながら下がるウィル。
 流石、と言うべきか。かなり礼儀正しく挨拶をする。
 この年でこれ程礼儀正しい子も珍しいんじゃないだろうか?

「じゃ、次俺な」

 次いでナップが前に出る。

「俺はナップ! 将来は兄ちゃんみたいな男になることだ!」

 相変わらず元気一杯な声で喋る奴だ。
 因みに、兄ちゃんとは俺のことらしい。

 ウィルからは兄さんと呼ばれるし、ベルからはお兄様だなんて呼ばれる。
 あの内気なアリーゼにすらお兄ちゃんと慕われる始末。
 ま、悪い気はしないんだけどな。
 色々と遊んでやるうちにそんな呼び方が定着してしまったらしい。

「それで先生は召喚術と武術、どちらが得意なんですの?」

 自己紹介が終わった時、ベルがアティに聞いた。

「どちらかと言えば、召喚術ですね」

 俺は召喚はそんなに使う方じゃなかった。
 どちらかと言うと肉弾戦中心だったのでアティに教えるのも自然とそちらに傾いたのだが、どうも召喚の方の才能があったらしく、基礎を教えただけであっさりとその才能が開花してしまった。
 武術も人並み以上に出来る上に召喚術の人並み以上に扱える。
 それはつまり戦術のバリエーションが増える、と言う事だ。
 俺としては正に嬉しい誤算と言うやつだ。

「そうですか……」

「ベルに、他の皆は?」

 今度はアティが逆に聞き返した。

「私も召喚術ですわ。一応弓術も出来ますけど」

「あの、私も召喚術です……」

ベルとアリーゼが答える。

「僕は武術、中でも剣術ですね」

「俺も剣術だな」

 ウィルとナップが答える。
 こうして聞くと、性別で見事に分かれているようだ。

「そうですか……。でも、二人共最低限の武術は教えますからね?」

 アティがそう言うと、二人は景気良く返事を返した。
 まぁ姉のベルフラウは自己紹介の時も言ったように、弓術の基本は出来ている。
 彼女に関しては俺もあまり心配していない。
 問題はアリーゼだ。彼女は争いを嫌うからなぁ……。
 ここら辺は先生になるアティの腕の見せ所、かな。

「それで、お兄様との関係は?」

 サローネさんの話では、もう一人の先生と更に其の生徒になるウィルとナップも俺達と同伴するらしい。
 もう一人の先生が来るまでの会話だったのだが、ベルのその質問により空気の温度が下がった様に感じた。

「お兄様?」

 笑顔だが目が笑ってないアティ。

「勿論アキラさんの事に決まってますわ」

 対して黒いオーラを背負っているベル。
 心なしかアリーゼの周囲も黒くなってる気がする。

「そう……」

 あ、アティ? 何か笑顔が黒いぞ?
 というか視線を向けられてない俺がこんだけ怖がるってどうだろう。

「で、お兄様との関係は?」

 ベル、何時からそんなに黒くなった?
 おにーさんはそんな子に育てた覚えはありません!
 ………まぁ、性格に影響が出る程世話をした訳じゃないんだが。

「私は何時もアキラと一緒の布団に寝る仲です」

 いや、何時も寝る仲って、昔の事だろ?
 しかも呼び方まで変わってるよ……。

「そ、そうですか」

 今度はベルの髪が逆立っている。地味に怖いぞ。
 その背後には黒いオーラ。

「それでベルとアリーゼは?」

 相変わらず真っ黒な笑顔で問いかけるアティ。
 アティは俺の育て方が悪かったんだろうか……?
 いやいや。アティはミスミたちと一緒に育てたようなものだからそれはないか。

「私達は一夜を共にした仲ですわ。ね? アリーゼ」

(こくこく)

 問いかけるベルと頷くアリーゼ。
 いやね? 一夜って偶々一緒に寝ただけだよ?
 だからさ、アティ。そんなに黒い笑顔で俺を睨むな。

 というか何でこんな事になってる?
 いやまぁ、ウィルの言った嫉妬なんだろうけど。
 アティのこれも多分嫉妬だろうし。
 とはいえ、生徒と先生になるんだから俺としては仲良くして欲しい。

「うふふふふふふふふふ♪」

「おほほほほほほほほほ」

(じー)

 アティとベルの笑顔の押収にアリーゼの視線。
 どれも黒くて正直声がかけられない。
 と、その時勇気ある者が出た。

「あの~、家庭教師を頼まれた者なんですけど………」

 でも一斉に睨まれると辛いよな? 俺にもわかるよ。
 だってアンタの顔、滅茶苦茶引き攣ってるもん。

「ウィル坊ちゃま、ナップ坊ちゃま。こちらの方がお二人の家庭教師です」

 その家庭教師は先日見かけた青年だった。
 俺の感も捨てたものではないな。
 しかし思ったよりも随分早かったな。

「えっと、とりあえず自己紹介するね?」

 そう言って青年は微笑む。

「俺はレックス。得意なのは武術だから、君達にはどちらかと言えば武術を中心に教えてく事になる。
 一応、召喚術も人並み以上には出来るから並行して勉強する事になる。宜しくね?」

「僕はウィルです。宜しく」

「俺はナップ、宜しくな!!」

 三人で自己紹介をし合っている中、俺はアティの様子がおかしい事に気がついた。
 彼が自分の兄かもしれないと言う事に気が付いたのだろう。

「アティ?」

 軽く呼びかけてみるも、レックスの事を凝視している。
 暫く様子を見る事にして俺達も自己紹介をする事にした。

「はじめまして」

 軽く会釈して、名乗る。

「俺は樋口 晶。こっちの子達の先生の補佐をさせて貰う」

「私はベルフラウ。ベル、と呼んでもらって構いませんわ」

「あの、アリーゼです。宜しく」

 最後はアティなのだが、彼女は相変わらずレックスを凝視している。

「………私はアティ」

 そう言うと、彼女の瞳から少量の涙が零れて来た。
 ここまでくれば流石の俺でもわかる。

「貴方に、生き別れた妹は居ませんか?」

 そう問いかけるアティの表情はこわばっている。
 否定されたら、と思うとそんな表情になるのも頷ける。

 アティは兄の事を忘れていなかった。
 俺が見つけたのはアティだけだったけど、彼女は兄は生きている、と信じていた。
 だから俺もそんなアティの為に、偶に来る買い物のついでに彼女の兄を探す事もしていた。
 アティは彼の名前も特徴も全部憶えてたから、探すのは難しくなかった。
 でもやはり世界は広い。特定の人物を探す事は難しかった。

「……久しぶり。きっと生きているって信じてたよ、アティ」

 そして彼も憶えていた。
 彼も妹の事を探していたのだろう。
 この広い世界の何処かで生きていると信じて。

 そして気が付いた時には、二人は熱い抱擁を交わしていた。

 実に八年ぶりの再会だった。
 皆は行き成りの展開についていけず、ぼうっとしている。
 俺もアティの事情を知っていなければ同じような反応をしただろう。

「良かったな、アティ」

 俺がそう言ってやると、彼女は嬉しそうに微笑んだのだった。











後書き

冒頭にある結界に関する設定は本作独自の設定です。
原作でそのような事実は確認されていませんので、ご注意下さい。
原作でそれが可能ならば、ジャキーニ一家は島を出る事が出来たでしょうし、同時に主人公たちも島を出る事が可能だった事になってしまうので。
一応それに関しての対策は考えてありますので、物語が成立しなくなるようなことはありません。

修正その二。
今回は修正前の二話と三話を繋げました。
同時につなぎの部分を修正。
また、他にも文章を若干修正、増量しました。



10/16 00:36
文法のおかしい箇所を修正。
同日 00:46
後書きに文章を追加。



■補足■

・ウィル………マルティーニ家の長男。
物静かで言いたい事はスパッと言うタイプ。

・ナップ………マルティーニ家の次男にして末っ子。
何時も元気一杯のやんちゃ坊主。
尚、マルティーニ家の子供の年齢順は長子からウィル>ベルフラウ>アリーゼ>ナップとなる。
サモンナイト3本編では年齢に違いはありませんが、今作では差別化を図る為にあえて年齢を変えています。
四つ子にするには若干無理がありますからね。

・レックス………アティの実の兄。
武術を得意とするも、その実力は未知数。
朗らかな性格で、明らかに年齢より容姿が幼かったアティを一目で看破するほどシスコンだったり。


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