Infinity recall Sequence.2.5銀糸のような毛髪と、紫の瞳、全身を包む外皮は肌色。リィンバウムへと訪れたミュウツーは人の姿になっていた。集いの泉を覗き込み、呆然とするミュウツー。森の木々を撫でて走る風が泉に降り、その場の面々を包み込んだ。「っくしっ!」それほど冷たさを含んだ風ではないのだが、今のミュウツーの体を冷やすには充分だった。「あー・・・一応聞いておくが、お前さんの世界では、まさかその姿で生活するのが当たり前なのか?」近づいてきたヤッファが、気遣わしげに話し掛ける。「・・・いや、今のこの姿は、私であって私ではない。人の姿をしてはいるが・・・本来は全く異質の存在だ」軽いショック状態だが、話し掛ける相手に対して気を回すことぐらいはできる。ミュウツーは振り返り、苦笑する。「どうやら、この世界に来る前に願ったものが、叶ったようだな」不思議そうに首をひねるヤッファ。「ポケモンでも、人でもない私は、ポケモンとして分類されていた、 ならば、生まれ変わりというのがあるとすれば、 人として生きてみたいと、そう願っていた」「・・・つまりはあれだ、なんかよくわからんがともかく元の世界ではその格好で生活しているわけではなかったというわけだな?」「それはそうだが・・・どうした?」「気づいてねえのか、お前さん?」呆れた帰った表情で頭を掻くヤッファ。不思議そうにミュウツーは他の面々を見る。ファルゼンは、表情が見えないから解らないとして、キュウマは無表情で感情が読み取れず、アルディラは・・・軽く頬を赤らめ、視線をはずしている。「なぜ?」そこへ再び風が吹き、湖に波を作りながら走っていった。涼しい風にミュウツーは体を震わせ、「・・・何?」気づいた。「そういうことか」自分は全裸なのだと。「まあ、もともと服を着るような種族ではないからな、 人になった時に服を着ているわけがない」「いや、冷静に判断されてもだな・・・・・・あーそれでだ、 ここにゃ4種の世界の代表がいるわけだ、ファルゼンはべつとして、 服装もそれなりにそろってる。 お前さんの世界に近い世界の服装はあるかい?」「いいのか?」「あー・・・まあなあ、お前さんがそれでいいってんならかわましねえんだが」「・・・人であれば恥ずかしいという感情があるのだろうが、 残念ながら私は元から服を着る習性のある種族ではない、構わんぞ?」「かまうわ」少し上ずった声で話に割り込んできたのは、アルディラ。「この島に呼ばれて一定以上の知識があるのだから、 何処かの集落に所属してもらわないといけない、どこの集落にも、 服を着ない、なんて習性はないのよ」「女であるお前さんには目の毒か?」「ヤッファ」「すまんすまん、冷静沈着なお前さんが取り乱してるのを見るのは 久しぶりなもんでな、ついからかっちまった。 でだ、ミュウツー・・・だったか、どうする?」「ふむ・・・」少し考える仕草をしたあと、ミュウツーは各々の顔を再び見つめ。「わかった、従おう」と言った。ミュウツーは考える。前の世界で得た知識の中には、3人のどの服装にも近い格好をした人々がいた。「私のいた世界の人間は・・・化学繊維を含んだ服を着ている者が最も多かった。 そう言う意味では、恐らくはロレイラルの、アルディラの世界が近いのだろうな」ミュウツーの言葉にヤッファがニヤリと笑い、先ほどからこちら側にあまり目線をあわせようとしないアルディラが息を呑んだ。「というわけだ、ミュウツーをつれて来たのはオレだが、こっからはお前さんが面倒をみないといけないみたいだな」「ちょっとヤッファ、貴方面倒くさいから私に押し付けようとしてない?」「まさか、俺は充分すぎるほど世話を焼いてるんだぜ? それにこれからこの島の仲間になるミュウツーに、他の護人が助けてやらないってのはおかしいんじゃねえか?」「道理ですね」「せいロんダ・・・」間髪いれずに残り二人の護人から賛同の声が上がり、アルディラは目を丸くした。(逃げたわね・・・)衣服というもの自体が魂の欠片から構成されているサプレスはともかく、キュウマは明らかに巻き込まれるまえに撤退した。(覚えておきなさい)目でキュウマにそう語り、アルディラ大きくため息を吐いた。「わかったわよ、ラトリクスの紡織機材を使って彼の服を用意します。 ・・・その前にキュウマ」「・・・なんでしょう?」無表情だが明らかに自分に話題を振られるとは思っておらず声が上ずっている。「貴方の服、彼に貸してあげてもいいんじゃない?」「いやまあ、別に貸してくれなくても構わなかったのだが」「貴方が構わなくても私が構うの、本当に人間じゃないのね」ラトリクスへと向かう道を歩きながら、キュウマの衣服を来たミュウツーがすこし動き辛そうにアルディラの後を歩いていた。「無論だ、元々衣服を着るような種族ではなかったし、 人となってもその違和感が無かっただけなのだが」ミュウツーの特に危機感の無い感想に、アルディラはため息を吐く。「人間になったのだから、これはから人間としての生活を身につけることね、人は衣服を纏い生活するものよ、なにも纏わず、好き勝手に野を走り、食物を漁る。それでは獣と変わらないわ」「覚えておこう、しかしそれではキュウマが獣と同じになっているぞ今は」「ああ、あれくらい彼は気にしないわ」さらり、と。即答で言ってのけたアルディラの影に暗いものが差したような気がして、ミュウツーは話題をそれ以上振るのをやめる。「ラトリクス・・・だったか、どういう場所なのだ?」「貴方は名も無き世界の住人だから、知らないのだったわね」リィンバウムを囲む4世界の一つ機界ロレイラル。4世界で最も科学の進む世界であり、ラトリクスはその住人達の住む都市だ。「他の世界の街に比べたら、見栄えするほどのものは無いわ、無機質な、科学の集合体のようなところだから」「・・・私のいた世界も科学はそれなりに発展していた、見栄えは無くとも、別に気にすることはない・・・とは思う」「そう言って貰えると助かるわ、ああ、見えてきたわよ」アルディラの肩先に覗く木々の隙間から、自然ではありえない光沢が輝いていた。巨大な塔のような建物が乱立し、忙しくなく動く機械の住人達。「ようこそ、ラトリクスへ、一応歓迎するわ」「一応・・・か」警戒心の壁を感じるアルディラの物言いに、ミュウツーは苦笑する。「ありがとう、一応でも何でも手を差し伸べてくれるというのなら、今は甘んじて受けよう」ラトリクスに到着したミュウツーが通されたのは、街中央に位置する巨大な建物だった。「ここがラトリクスの中心部、様々な設備への命令を出すことのできるコンピューターの集合体とも言える場所よ。貴方の衣服を作るためのスキャンをここでするわ」「御願いしよう」言って、ミュウツーが一歩建物に足を踏み入れようとした瞬間、一発の銃弾が、足元のコンクリを穿った。「何者です、アルディラ様から離れなさい」声の発する先を見ると、一人の少女が銃を片手に立っている。少女の姿に、ミュウツーは一瞬ポケモンセンターの看護婦を思いかべた。「大丈夫よ、クノン銃をしまいなさい」「・・・・アルディラ様?」「彼はミュウツー、ついさっきこの世界に呼ばれたの。 大丈夫、私は人質にとられてはいないし、敵意のある人間ではないわ」アルディラの言葉に、ほんの一瞬ミュウツーの方を一瞥し、クノンは銃を下げた。「失礼致しました」「構わん」非礼を詫びるクノンに笑いかけ、「ミュウツーと言う、今日からこの島の住人の一人となる、よろしく頼む」「ミュウツーさまですね、私は型式番号AMN-7H・看護医療用機械人形(フラーゼン)クノンと申します」「機械・・・人形?」クノンの自称に、首を傾げるミュウツー、「クノンは人間じゃないわ、人をモチーフに作られたロボットなのよ」「・・・ほう、それは凄いな、どこからどう見ても人にしか見えないが」驚いたミュウツーはクノンに近寄るとまじまじと見つめはじめる。「私の世界にも人に似た姿のポケモンや、機械に近い種族のポケモンはいたが、人が科学でこれほどのものを作り出す技術は、未だ無かったな」「あの・・・・」「ああ・・・すまないクノン」物を品定めするような口調で喋り、同じく物を見るような視線でクノンをみていた事に気づき、ミュウツーは深く頭を下げて謝罪する。「いえ、それは気にしないで下さい、それに貴方の言い方は私を誉めるようなものでした、自分の性能を誉められるのであれば、とても嬉しいです」「無表情でそういわれても実感が沸かんが、そう言うなら気にしないようにしよう」「はい、気にしないで下さい。・・・ところでアルディラ様、ミュウツー様は何のようでラトリクスへ招かれたのでしょうか?」「ああ、彼の服を作ってあげるためにね体形スキャンをさせる為に連れて来たのよ」「・・・・衣服はもう着られていますが?ミュウツー様はシルターンの方なのでしたら、風雷の里のほうが合う衣服があると思われますが」「ああ、その服、それは彼の服じゃないわよ」アルディラの言葉に、理解不能とばかりにクノンが小首をかしげた。「その服、キュウマのなの」その発言は、高性能の看護医療用機械人形のAIが、主人の言葉を理解するのに数秒の時間を要するという偉業を成し遂げた。「科学の力は素晴らしいな」1時間もしないうちに出来上がった自分の衣服に袖を通し、ミュウツーは立ち上がる。「結構似合ってるじゃない、それが貴方の世界の服装なのね」「種類は色々あるがな」黒いシャツに袖を通し、幾何学模様の紗の入った白いフード付の上着を羽織る。ズボンは群青色のジーンズタイプ。靴はスポーツシューズ。別にミュウツーが衣服の注文をしたわけではない、ラトリクスのデータバンクに入っていた、自分の世界の人間が着ていたものに近しい衣服を選んでいるうちにこの一通りがそろったわけだ。「住むところが決まったら、何通りか着替えを作ってあげるわよ?」「それは助からるな、さすがに同じ服を着たままというわけには行かないからな。さて、集いの泉で震えているだろうキュウマの為に、急ぎ戻るとするか」「そうね、もう少しあのままでもいい気がするけど、許してあげることにするわ、それじゃクノン、もう少し出かけてくるけど、後を御願い」「畏まりました、行ってらっしゃいませ」深々と頭を下げるクノンを背に、ミュウツーとアルディラは再びラトリクスを後にした。てなわけで、2話と3話のあいだのおはなし。========書き終わってから気づいた。クノンの装備って槍でしたよね。ラトリクスの侵入者には重火器で応戦するって方向での納得、いっちょ御願いします。え~、お久しぶりです、ブラックメタルです。かなり長い間あけてしまい申し訳ありません、ぢつはモンスターハンター2とかで忙しかったんです(死嘘です、冗談です。さて、マルルゥにミュウツーをなんて呼ばすか、いきなりのあんな番外編での募集にもかかわらず、様々な案を上げてくださいました皆様に感謝感謝の気持ちでいっぱいです。今作を持ちまして、募集を締め切らせていただきます。[21]名前案様の、「不思議さん」で行こうと思います。有難うございました、単純でもそのネーミンググーだとお思います。他様々な呼び名を挙げてくださいました、見たい!!様、レンヤ様、エフィン様、立ち見様、D様、「」様、カシス様、RAIN様、孤高の渡り鳥様、嗚臣様、一括ではありますが、ここに感謝の意を表明して御礼の言葉を送らせて頂きます。ありがとうございましたm(_)mこれからも拙い小説ではございますが、よろしく御願いします。14話を期待の皆様、もう少々お待ちください。また少し掛かるかもしれませんが・・・・・。