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No.7773の一覧
[0] お惚け眼鏡と天然教師[ディエル](2009/04/19 05:58)
[1] お惚け眼鏡と天然教師1[ディエル](2009/04/19 05:58)
[2] お惚け眼鏡と天然教師2[ディエル](2010/07/30 00:47)
[3] お惚け眼鏡と天然教師3[ディエル](2010/08/22 02:19)
[4] お惚け眼鏡と天然教師4[ディエル](2011/03/10 09:14)
[5] お惚け眼鏡と天然教師5[ディエル](2011/12/23 07:05)
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[7773] お惚け眼鏡と天然教師
Name: ディエル◆8ed72309 ID:2d50e641 次を表示する
Date: 2009/04/19 05:58
この作品は、サモンナイト3のssです。

オリ主視点で物語を進めて行きます。

作者の独自解釈が多々ありますがご了承ください。

長い前置きは嫌われますので、そろそろ本編スタートします。












帝国のとある港。

多種多様な船が並ぶそこでは若干小さめな客船。とは言っても、小奇麗な船体はそこいらの船よりは目立っていた。

そんな船を間近で見上げる男がいた。

歳はニ十といった所だろうか?肩まで伸ばした小麦色の髪は跳ね放題で、掛けている眼鏡にも少し掛かっている。

その眼鏡の下では、何が楽しいのか細い瞳が笑みを作っていた。

南方の薄い生地で作られたロングコートをはためかせる姿は、場所が場所ならさぞ決まっていた事だろう。

出航までまだ一時間。周囲の人間は男を奇異の視線で見ていた。


(早く来すぎたな…)

周囲の視線に気付かない男、ユウ・ロックソルトはそんな事を考えていた。

軍を辞めてさてどうするか、と考えていた所を幼馴染であり、軍を辞める原因になった天然に捕まったのが全ての始まりだった。

彼の大貿易商、マルティーニ家の現当主に家庭教師を頼まれたのだ。

へぇ、おめでとう。と言ったら、そいつはとんでもない事を言った。

曰く、生徒は二人居ると。

曰く、一人で二人を見るのは新米教師には難しい。

そこで出てくるのが、天然と同じ立場にいた自分だ。

気付いた時にはこちらの承諾無しで話は決まっていた。

話を聞いた後、とりあえず苦笑いを浮かべている天然の頭を殴っておいた。

そりゃ殴りますよ。お前らのは何色だ!!と叫んだ後に仕方なく了承した。

そして今に至る。


「ん?」

視界に見慣れた物が映り、反射的にそちらを見る。

(あれは…海兵隊?)

客船の甲板。少し前まで自分が所属していた…部署は違うが…軍の人間をそこに見、疑問に思う。

先程から言っている通り、ユウの目の前にあるのは客船だ。

だが、なぜかそこに軍人がいる。

……厄介事には関わりたくないな~~。と言うか、海兵隊という事は、自分のよく知る人物の部隊かもしれない。

別れが別れなだけあり、今は万が一にも会う分けにはいかない。

もし会えば、涙か血の雨、どちらかしか見ることができないな~~……。

(………よし)

思考時間約三秒。最速でたたき出した最高の答え!!

それは………逃亡だ。

「船に乗れば会う可能性大ですから。そう、これはしょうがない事なんです。レックスには後で手紙でもだしておきますかね~~」

「…なぁ、さっきから何言ってるんだ?」

「へっ?」

呼ばれ振り向くと…天然、もといレックスがそこにいた。

「レックス…いつからそこに?」

「五分ぐらい前からだけど…気付かなかったのか?」

ええ全く。逃げる算段つけるのに必死でしたから。

なんて言える筈も無く。泣く泣く逃走は諦めた。





「でも、俺なんかに教師が務まるのかな…」

生徒が来るまでの時間に雑談をしていると、唐突にレックスがそんな事を聞いてきた。

知りませんよ。と言いたいが、レックスの考えは分かるので止めておく。

実際、彼程ではないが不安はある。

もっとも、恐らく自分とレックスの不安の種類は違うのだろう。

「まぁ、そんなに気張らなくてもいいんじゃないですか?こちらが新米だって言うのはあちらも分かっているでしょうし」

「そんなもんかな…」

「そんなもんです」

う~~んと唸るレックスは置いておいて、ここで疑問が一つ。

そもそも、なぜ自分達なのだろう?

たしかに、今ここにいる自分らは能力が高い。それは、軍学校を主席で卒業したレックスだって自負しているだろう。

剣術、召喚術、戦術戦略、その他諸々の知識と実際に行った経験。

才能と努力の積み重ねで勝ち取った、軍人としての、戦士としての力。

当主はそれを見込んで自分達に家庭教師を任せたのだろうか?あるいは、別の何か?


(駄目ですねぇ…情報が足りません)

これ以上は思考の無駄。

そう考え、下を見た所で目が合った。

綺麗なオレンジ色の瞳がジィっと此方を見ている。

(可愛い子だけど…僕に用かな?)

見ると、レックスの方にも少女が居た。

ただし、そちらはいかにも気の強そうな少女で、自分の目の前にいるお姫様の様に可憐な少女とは正反対だった。

しかし……反応が無い。レックスなど、何故か服装のチェックをされていると言うのに、こちらはだんまりである。

「えっと…僕に何か用でもあるのかな?」

「……あ、あの…その……」

あと一歩と言う所で黙ってしまう少女。

ああ、神よ…僕にどうしろと?

思わず神に祈りを捧げる。と、神の使い(?)が現れた。

「お嬢様!」

速足でこちらに向かって来た初老の女性には見覚えがあった。

「ばあや…」

目の前の少女は、こちらに分かるぐらい肩をビクリとさせる。

反対に赤い帽子を被った少女は、どこか尊大な態度だ。ほんと、正反対だねこの二人。

「あなた方ですね、新しい家庭教師というのは。…あら?そちらの方は…」

「どうもサローネさん。お久しぶりです」

こちらに気付いたサローネさんが驚いているのを見て、苦笑しつつ挨拶をする。

驚いたのはレックスも同じなのだろう。こちらに耳打ちしてくる。

「知り合いだったのか?」

「まぁ、少し。後で話しますよ」

「確か…ユウさんでしたよね?あの時はありがとうございました」

「いえいえ、大したことでは無いですよ」

レックスの問いかけを軽く往なして頭を下げてくるサローネさんに続きを促す。

「コホン、では改めまして。私サローネと申します。亡き奥様に替わりまして、お二人のお見送りに参りました」

「はあ、お疲れ様です」

「です~~」

簡潔に自己紹介を済ませるサローネさん。変わってないなぁ。

と、なぜか事の成り行きを見届けていた二人の少女の方を見た。

「それにしても。アリーゼ様、ベルフラウ様。お二人だけでは行かれないよう言った筈ですが?」

きつい視線を向けられ、アリーゼが泣きそうになりながら答える。

「あ、あの…早く先生にお会いしたかったから…」

「アリーゼ様」

「…ごめんなさい」

こちらにとっては嬉しい事を言ってくれるアリーゼだが、一言で轟沈。

恐るべきばあやだ。

その矛先が、今度はベルフラウに向こうとするが、すんでの所でレックスが止める。

……何か釈然としない。

「お二人ともたいそう優秀だと聞いております。
武術と召喚術、どちらがお得意なのですか?」

「武術です」

「…召喚術ですかね」

サローネの問いに、先にレックスが答え、若干の間をおいてユウが答えた。

「なるほど」





ボォォォォオ



丁度その時出航準備の音が聞こえてきた。

「さ、アリーゼ様、ベルフラウ様は先にお乗りください。私はまだお二人にお話がございますので」

「分かりましたわ。ばあや、言っておきますけど、くれぐれも余計な事は言わないように…」

「姉さん!
すいません。先に乗ってますね」

なぜか喧嘩腰のベルフラウがアリーゼに連行されていった。

苦労しているんだなぁ。




その後、幾つかの注意点を聞かされたユウとレックスは、内心かなり不安に思いながら船に乗り込むのだった。








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