鋼の肉体が迷うことなく銃弾の中に飛び込み、仲間のピンチを救う。形勢は逆転し、彼らの勝利が確定した。「いや、主人公キャラだよなあ」俺はその光景を見て、多少演技じみているとは思いながらも両手を挙げて口から言葉を出した。「主人公ですか? 物語とかの?」「うん、元々あった天賦の才を努力で磨いて、友情に厚く、そして勝利をつかみ取る。人間生まれたからには、そういう立場に一度はなってみたいものだな」現実はともあれ、男として生まれたからには、誰もが正義の味方っぽい役割をしてみたいと思うのだ。勝利を飾ってハイタッチしている少女との関係は友達以上恋人未満といったところだろうか。前世では、それなりに男女の付き合いはあったが、やっぱり美男美女の組み合わせは嫉妬すら起きない。「私からしてみればジルベルトさんだって充分に主人公のような気がしますが」「そんなことは無いが、そうだな、レインは献身的なヒロインタイプだな」多分一度決めたら一途に尽くすタイプだろう。「そんな、でもそうですね。いつも側にいたいと思っています」何か納得しているようだが、だからこそ本当に悪い男に引っかからなければいいと思った。親御さんとはうまくいっていないようだから、男との関わり方の面倒を見なければと思うのだ。「お待たせしました」「お疲れ様。やっぱりリミッターをかけても真ちゃんは圧倒的か」いつものように試合を終えてきた真ちゃんの頭をワシャワシャと撫でる。〈もうジルベルトさん、あんまり子ども扱いしないで下さい」「悪いとは思っているんだけど、何となくね。それより相変わらずすごくトリッキーな動きしてよく酔わないね」あの凶悪なビットは本戦までは封印することを決めていた。だから、彼女は基本的に高速移動による接近戦だけで戦っているのだが、それでもそこらのユーザーでは相手にならない。この辺が才能なんだと感心していた。〈そんな、でもやっぱりシュミクラムで戦うととても楽しいです。こう水を得た魚のような〉「うれしいのは分かるけど思考漏れているよ」「あう」〈それなら、そうと早く言ってくださいよ!〉「まあ、何はともあれ、次の対戦相手は彼らだ」そう、遠距離、中距離、近距離ととてもバランスが取れているチームだ。「あ」「知り合い?」〈そうなんですけど・・・実は私がシュミクラムをやっているのを教えていないんです〉まあ、彼女も結構色々あるし、そうなると。「まあ、何とかなるだろう」こっちもあまり関わりたい訳ではない。どうもイメージなのだが、彼はトラブルに巻き込まれそうな予感がするのだ。「さっさと終わらせて撤退しよう」「そうですね」「はい」レインは俺の意図が分かったようだったし、真ちゃんもこの場ではあまり望んでいないのだろう。自分たちはほぼ専用機といってもいいシュミクラムを手に入れ、先生から筋もいいと評され、事実多少負ける事はあっても着実に勝ち続けていた。対戦チームは戦闘回数はそれほど多くなく、勝利したときも接戦であることが多かったので楽勝だと高をくくっていたのが過ちだったのだ。「本当にあいつらビギナーかよ! 雅、サポートできそうか」「無理だ。あの白い機体にがっちりマークされて動きようがない」千夏は・・・青い機体-多分スナイパータイプのジャマーとロングレンジからの攻撃でこっち所ではない。そして俺の前に相対している機体。どういう技術か分からないが、センサーに反応する地雷と、反応しない地雷があって迂闊に飛び込む事ができない。だが、動かなければ、青い機体ほどではないが遠距離からの射撃が飛んでくる。技量的には、白いのは俺より腕は上で、目の前の黒いのは俺と同じくらいだろう。青いのは接近戦さえできれば千夏なら容易に蹴散らせるが、問題は雅が白いのを止めておくのが無理だろうという点だ。無茶は承知でこの機雷源を突破するしかない。覚悟を決めた俺は飛び込むことにした。数は多いが、思った通りそんなに威力は高くない。黒い機体が慌てて後退するが俺はレセクトンブレイド を叩きつけた。完全に手応えが入ったと思った瞬間、周囲が真っ白になりセンサーが全部効かなくなった。「何が起こった」その直後外部からの衝撃。耐久ゲージがレッドラインを割り、シュミクラムは動かなくなった。3対2となった以降はいう必要も無いだろう。まず、雅が撃破され、その後千夏が3対1となって倒された。ここまで、鮮やかに敗北を喫したことは今までなかった。「負けたんだな」試合終了後、俺は対戦相手、あの黒い機体の使い手を追いかけて走った。「おい!」その男は年頃は俺と同じくらい。ルビーを溶かしたような赤い髪が印象的だった。美形というのはやっぱり世の中には居るのかと妙に納得させられる。彼は俺を見るとアゴに手を当てて考え込むようになそぶりを見せ、その後肩を叩いた。「まあ、人生色々あるけど頑張れ」よく分からない言葉を掛けられてぽかんとしている俺を余所に男は去っていった。隣にいた美人さんも軽く会釈をして小走りで男を追いかけていった。まるで狐につままれたような錯覚に陥った俺は雅と千夏の元に向かうと正直な感想を告げる。「世の中広いよなあ」同世代とは思えない異質さは本戦で当たるとすれば驚異だろう。「でも、次はもっと練習して勝とう甲」「そうだな、今回は相手が上手だったけど、次は負けないぞ」こいつらが仲間で良かった。俺たちはライバルの出現に心躍らせるのだった。「まさか、この段階でカードを切る羽目になるとは思わなかった。我慢できない相手に助かったけどな」俺の持っている手札の一つ、ファントムは動く物に反応するロジックを組み込んだ幻影なのだ。攻撃をすれば強力なEMPを展開してセンサー系を行動不能にするが、使っている間はメモリの消費が激しく他の行動に移行できない。さらに長時間展開できるものでもないので、持久戦になったらアウトという欠点だらけである。もちろん一度使えば二度目は警戒するだろうから一発ネタなのだが、他にもバリエーションあるし、戦術的にはネールエージュのカードの方が遙かに重要なのだ。「確かに強かったですね」「荒削りだけど最初に見たときより、強くなっているとは思うよ。才能か、よほどいい師匠が付いているのだろう」「でも、私たち負けませんよね?」「さてな、優勝できないと俺が自腹で君達を温泉に連れて行かなければならないし、全力を尽くすよ」そう、そもそも俺たちがこの大会に参加することになった事の発端は優勝賞品の温泉旅行だった。ノイ先生との約束で勝っても負けても温泉に連れてかなければならないのだ。「さしずめ『陰謀、闇討ち、勝利』といったところか。卑怯すぎない程度に勝利をもぎ取るとしようか」今の表情を後日レインはこう評した。「悪の幹部ですね。それもまたジルベルトさんの魅力なんですけど」律動を書く→うまくいかない→気がついたら0シリーズ、ヒロインロリ聖良ネタを書いていた→まあ、展開がR指定なのでとりあえずジルベルトネタを進めた。ジルベルトさん主人公(ヒーロー)と相対する。ジルベルトの中の甲の印象はジャンプ的主人公。甲のジルベルトに対するイメージは不思議な存在。二つのラインが交わる時、物語は始まるってのが禁書目録ですが、バトル的な意味で出番があるかどうかは・・・。恋愛ゲー的な意味では千夏フラグをじゃんじゃん立てているので、そろそろルート確定かな。六心合体コーダインとか作りたいんですけどねえ。分岐した世界の情報が流れすぎて超優柔不断になった甲の話とか。というわけでジルベルトワールド3も3でおしまい。終わったら4、そろそろ伏線回収おば。ジルベルトの中の人はレインの好意には気づいていますけど、それはとても危ういと思っていて、ダメだこいつ何とかしないと的な意味で優しく見守っているつもりなのです。真ちゃんに関してはちょうど頭が撫でやすい位置にあるのが悪いのですが。そういや、ノイ先生登場しなかったなあ。