そのゲームを買ったのは師走に入った最初の木曜日のこと。受験も推薦で決まり、ぶっちゃけると暇だった俺は、そのゲームに手を出した。『DUEL SAVIOR Online』DUEL SAVIORとはある日一冊の本を拾った主人公が英雄候補として世界を滅ぼそうとする破滅を倒すためにがんばるゲームだ。主人公は召喚器という武器をひとつ呼び出すことができ(中には複数の召喚器を持つ特殊なキャラもいる)、それを手に活躍するのだ。主人公が選択できるのは剣か魔術具でクラスも戦士系と魔術系に分かれる。時間設定があり、特定期間までにイベントを遂行しないとBADENDになる確率がかなり多く、あるイベントをクリアすると仲間にならないキャラなどもいて、フラグ管理ゲーと呼ばれることも少なくない。そして、このゲームの恐ろしいところはサブゲームが面白いのだ。服飾科のイベントをこなしたり、調理科のイベントをこなしたり、陶芸科のイベントをこなしたり、調理科のイベントをこなしたりと横道にそれている間に本編クリアする為の日数が足りなくなってゲームオーバー。アンケートではこれを独立してプレイしたいという声が大きく、メーカー側も乗り気でオンライン版の開発をスタートさせた。開発すること2年間、その間やれ他のゲームが地雷だ、機雷だ、テラマインだのいわれ続けたが、無事にクローズβ、オープンβの延べの千名の人柱によるバランス調整も終了。参加者の評価も上々ということで無事に販売ということになった。事実、この時点では致命的なバグは存在しなかった。かくしてゲーム評価サイトの事前評価でオール10点という貰うととても困る数字もあったが、予約者が殺到。違法にデータを得ようとしたものも居たが、正規のものを使わないと凄いサーバーに飛ばされるという念入りのイタズラもあった。逆にクソゲー面白いという声もあってワザとそっちをインストールした猛者が居たのを忘れてはならない。もっとも俺は正規版を買ったが。「えーと、名前を入れてください。名前考えるのも面倒だからKOUで」それから性別、髪の色、肌の色、瞳の色など決め、職業とを選択する。この職業というのは、アヴァターに飛ばされる前何をしていたかという項目で、例えば就職していると初期ステータスや選択できるスキルが優遇されている特典があり、逆に学生を選択すると育成機関であるフローリア学園の卒業試験に合格するまでのイベントがある。どちらが好みかという問題だと思うが、俺は学生を選択した。専攻は傭兵科で。傭兵はオーソドックスな職業と公式サイトではアナウンスされている。ここから騎士に派生することもあるらしい。ちなみにオンライン版では、主人公はあくまで英雄候補生なので最初から召喚器を手に入れることができるような配慮はされていない。更に今作では装備品については違いがあるようだが男女間のステータス的な差別も存在しない。そうDUEL SAVIORは主人公より女性の方が役に立つゲームなのだ。なにやら神に愛されているとかで。補正が掛かるのだが、とりあえずそれは無くなった。物語の始まりは召喚陣のある学園の塔、もしくは王宮地下のどちらかだ。当然学生である俺は学園の塔に飛ばされる。「フローリア学園にようこそ英雄候補さん」世界はアヴァターの世界そのままだった。ネットの技術の進歩によってこのような体感型の世界を作ることは簡単になったとはいえ、電子体でこういうゲームに参加するというのがかえって面白い。「まずは学校の教務課に向かって、登録をしてねん」この人はNPCだろうか。何となくNPCっぽいのだが確証が持てないリアルさ、いや今や俺はファンタジーの住人であってそういうことを疑う必要はないのだ。脳内でマップオンを選択する。「フラグが発生したのだろう、教務課への最短ルートが記されていた」もちろん、先に進むもよし、少し見学してもよし、俺は急ぐのも何だし少し学園内を歩くことにした。三日前にスタートしたばかりだが、すでに学園内は活況の様相を呈しており、多くのプレイヤーが活動していた。。「芳ばしい美味そうな匂いが」アバターを経由して入ってくる感覚は限りなく現実に近い。「おう、兄ちゃん買ってくか? 調理科秘伝の焼きそば?」「まだ、登録済んでないからその後で」「ははは、ならさっさと行ってこいよ。金が無い奴には食わせられないぞ」屋台の兄ちゃん(多分学生設定)と軽く相づちを打ち、本来の目的地である教務課に向かうことにした。DUEL SAVIOR Onlineというかアヴァターオンラインです。主人公であるkouと少年少女の成長の物語。ゲンハも出るよ!今回はアナウンスがありますので、詳しくはそちらに