「失礼、あなたが門倉甲?」黒を基調とした鳳翔の制服が良く似合った少女だ。緩やかなウェーブが入った鮮やかな赤毛と整った容姿は、否応なしに周辺の視線を集める。ましてやここは星修学園の校門前であり、帰宅時間で賑わっているこの場所に鳳翔の生徒がいるのは嫌でも目立つ。「ふーん、どこにでも居そうだけど、そうね顔は悪くないわ」「着いてらっしゃい」と手招きされた甲はこれ以上注目されたくないこともあり、彼女に着いていくことにした。表通りから少し中小路に入った場所にある古びた喫茶店。銅板に掘られたプティアンジュという名前と天使は芸術分野にあまり興味が無い甲でも趣味がいいなと思った。「おや、リーズが男連れとは珍しい」彼女に誘われて中に入ると30代後半くらいだろうか、オールドムービーに出てきそうなヒゲを蓄えたダンディなおっさんが二人を出迎える。「そうかしら? それより、私はいつもの。あなたは?」「え? じゃあコーヒーで」見知らぬ女性と喫茶店で話す事なんて今まで無かったので、どうすればいいのか分からなかった。沈黙が続く。やがてコーヒーと紅茶にスコーンが運ばれてきた、目の前に置かれたコーヒーを口に含むと普段寮で飲んでいるものより数段上の複雑な味わいがした。もっともインスタントのものと、豆から挽いたものを比較するのがおかしいのだが。付け合わせのクッキーを食べて心が落ち着くと意を決して甲は優雅に紅茶を飲む少女に対して口を開いた。「あの・・・君は誰?」「そうね、差し詰めリーズと呼んでくれればいいわ。私の家族や友人は大抵そう呼ぶから」リーズとは多分愛称なのだろう。リーズと音を出して確認する。「私はあなたに興味があったの」「興味? 俺が君に興味を持たれる事なんて」「兄を2回退けたわ。確かに私に比べれば劣るし、私の行動や服装にあれこれ文句を付けてくるけどそれなりに信頼しているのよ。あなたのシュミクラムが特別なのか、あなたが特別なのか。私はセカンドとかデザイナーズチャイルドとか関係なく、強い男を好きになりたいの」甲は強い意志をもって語る彼女に本当のエリートってこんな感じなのだなと得心が行った。多少口は悪いが嫌みを感じさせない風格を持ったリーズに、甲も興味を抱く。鳳翔はエリート主義だが、威張り散らすだけの嫌なやつというイメージがある時からできあがっていた。それは先輩から聞く話であったし、実際にトラブルになったこともある。しかし、目の前の少女を見て、ひとまとめにするのは鳳翔がセカンドをひとまとめにして蔑むのと同じ愚を犯していることに気がついたのだ。「俺が強いかどうかは知らないけど、俺の先生は俺よりもっと強いよ」「久利原直樹だったかしら、確かに彼の噂は聞いてるけど、在り方が歪んでいる人はダメね」「在り方が歪んでいる?」「優秀なのも努力しているのも認める。でも生き急ぐ人はどこかでつまずくのよ。その時、自分だけがつまずくならいいけど、周囲を巻き込むことも多々ある。現に、西野亜季と前如月寮の人たちは巻き込まれたわけだしね」「亜季ねえはそんなこと」「彼は彼なりに誠実で他者を巻き込まないようにしてるんでしょうけど、あるいはあなたは師からも従姉からも秘密を話に値すると思われていないか。まあ私にとってはどうでもいい話だったわね」「・・・どこからその話を」「断片的な情報はネットから拾ったわ。チップの発達で膨大な情報量から答えを出す能力は磨きが掛かったかもしれないけど、少ない情報から答えを予想する能力は先人達より劣っているのではないかと危惧している人たちもいるの。お偉いさんほどネットによる処理じゃなくて書類で決済するのはそれね。それで久利原直樹は黒に近い灰色。あなたにとっては気のいい話じゃないかもしれないけど、何なら従姉に聞いてみればいいじゃない」三口目に飲んだコーヒーは冷めていたのが原因か分からないが、酷くまずかった。そして意を決して自分の中に生まれたドロドロとした感情をコーヒーと共に飲み込んだ後、甲は話題を変えることにした。「リーズの兄貴って何者なんだ」「私の名前はリゼット・ジルベルト、分を弁えない兄がいつもご迷惑をおかけしています」衝撃的な話を色々した気もするが、とても嬉しそうに微笑む彼女の笑顔だけが印象に残る日だった。続かない久しぶりの投げ捨てるこんな分岐シリーズ没理由六条クリス(ノーマル)との差別化ができなかった。実力を伴ったエリートおぜうさまが好みの男の子を染め上げてパートナーにしようとする話。これだけ優秀な一個下の妹が入れば、ジルベルトも捻くれるだろう+でも妹には甘い+妹に近寄るやつはぶっつぶす=じゃあ兄より強そうな人を選べやいいや的な流れなのです。CV的には喜多村英梨さんかなあ。一点特化じゃなくてトータル的に何でもできる才女何て私的には需要ないしね。ダメ人間万歳最終的にリアルで殴り合って「お前は気に食わんが、リーズの選んだ男なら信用する」と言って去っていくジルベルトが男を見せる展開なのだけど続けるつもりが全くないのでお蔵入り