<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.43978の一覧
[0] 過去作[O.Void](2023/04/10 15:53)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[43978] 過去作
Name: O.Void◆9f4f7bb7 ID:632246fb
Date: 2023/04/10 15:53
「ッ…」
俺は頭を掻きむしった。何かがおかしい。何かがおかしいのだ。何かはわからない。ただ、第六感がそう言っていた。
なんなんだ、この感覚……俺は地面に座り込んだ。唐突に立っていられないほどの疲労が襲ってきたからだ。疲労を覚えることなど、何もしていないはずなのに。じゃあ、さっきまで俺は何をしていたんだ?そんな疑問に気づいて、俺は慌てて記憶をなぞる。しかし、何も思い出すことができなかった。何も覚えていない。突然、頭が激痛に襲われた。
それと同時に、足元がふらつく。思い切り倒れるが、体を受け止めてくれる床が無くなっていた。さっきまで、しっかりと床に立っていたはずなのに。咄嗟にどこかを掴もうとした。しかし、何もなかった。さっきまで部屋としてあったはずのものが、そこにない。俺の手はただ虚空を掴むばかりだった。そんなバカな、さっきまでここに床があって……無意識に記憶をたどる。しかし、どんな部屋だったのか、まったくもって見当がつかなかった。それこそ”何も覚えていない”のだった。部屋という漠然とした場所に居たのはわかっている。なぜそこにいたのだ?それまで俺は何をしていた?それが、わからない。俺はそのまま虚無の中に落下した。あたりの景色は全くの無だった。真っ暗というわけでもなく、白で塗りつぶされているわけでもない。何も見えないし、多分、何も無い。知っている色という色を脳内で重ねてみても、どの色とも言えない。照らしてくれる明かりもない。目を開けても、突然盲目になってしまったかのように何も見えない。言葉で言い表すとすれば、まさに虚無に放り込まれたようだった。それ以外に言いようがない。
「あぁ……」
意識が薄れていく。ゆったりとした浮遊感の中に、俺は堕ちていった。堕落した。


「……」
 目を覚ますと、俺の顔を舞華が覗き込んでいた。そのまま顔を上げたら、当たってしまいそうな距離だ。何とは言わんが。
「起きたから退いてくれん?」
(やだ)
「えぇ…」
舞華なら俺を嫌がって離れそうなものだが、一体全体どうしたものだろうか。
 俺は堕ちた。あの部屋から、堕ちた。それ以外に覚えているものがない。俺はなんであんなところに…いや、それ以前にここはどこだろうか、誰がこんなことを。俺が自ら来たのか?いやいや、でも俺はそんなことを望んだ覚えはさらさらない。
 考えていても仕方がないだろう。いつか戻る、と自分の経験を過信しつつもやはり怖いものは怖い。そこで、自分を覗き込む舞華に直接聞いた。
「なあ、俺なにもおぼえていないんだけど」
(私のことを覚えている)
「それもそうか…」
 俺は妙に納得してしまった。じゃあ、逆に俺は何を忘れているんだ?頭が段々と混乱してくるが、自分でもそれに気づかない。あくまで自分は冷静だと錯覚していた。だからこそ、答えが出ないことがもどかしい。
「ここがどこか知ってる?」
(知らない)
「俺、周り見れないから代わりに見てよ」
 舞華が辺りを見渡そうと余所見をした隙を見て、俺は起き上がる。舞華に聞くまでもなく、自分の目であたりの様子を見ることができた。またしても、俺は知らない場所に居るらしい。知らないというより、忘れているのかもしれないが。どちらにしたってさほど変わりはしない。先程堕ちたときと同じく、あたりはひたすらに虚無である。真っ白というわけでもない。真っ暗というわけでもない。明かりもないのに、舞華の姿だけがぽっかりと浮かび上がるようにして見えた。床もないのに、床に触れているような感覚だけが合った。俺はしっかりと、ここに座っている。座っている場所もないというのに。なぜだか、理由も考える気になれなかった。頭がぼんやりとしてしまって、夢を見ているかのように全てを受け入れてしまう。ああ、本当に夢だったら楽なのに。
 舞華はこちらを見つめている。いつもは全く人に興味がない。特に俺には、存在していないかのような反応をする。本当に興味関心がないのだ。なのにどうしてだろう。様子がおかしい。
「何?そんなに見て」
(目を離したら、どこかに行ってしまいそうな気がする)
 不思議に思って聞けば、そんな答えが返ってきた。まるで、ショッピングモールに来た母親が我が子にかけるセリフのようだ。
「そんな、子供じゃないんだから」
俺はついにそんな子供に見られるまでになったのか、と苦笑する。
(違う、そうじゃない)
「じゃあ、何?」
もう一度聞くと、舞華は真剣な顔で答えた。
(目を離したら、消えてしまいそうな気がする。今にも消えそうなんだから)
「…」
 そんなバカな、と心のなかでは思っていたが、否定の言葉が出てこなかった。喉の奥で引っかかったように、声が出ない。自分の手のひらを見た。裏返して、手の甲を見る。肌色の手がしっかりとそこに見える。血管が浮き上がった、骨ばっている手が。間違いなく、いつもの俺の手だ。俺という存在があることを、動かしようもなく示していた。
 …でも、今にも消えてしまいそうだった。舞華の言う通りだった。儚くて、頼りない。俺という存在は、今にも消えてなくなってしまいそうな気がした。虚無を背に、浮かび上がるようにしてそこにある俺の手。なんだか自分の手じゃないような気がする。自分がこんなに不安定に見えたのは、これが初めてだった。
 そんな自分を見ているのが不安で仕方なくて、目をそらすようにして顔をあげた。そこには依然として舞華が座ってこちらを見ている。俺もしゃがみこんでいるから、目線は同じ高さにあった。
 その途端、目を離せなくなった。いや、離れたらどうなるか、不安で仕方なくなったのだ。舞華は、今にも消えかかっていた。透明になっているわけでもないのに、不安定だ。不安定としか言いようがない。他に言葉が見つからない。
「舞華?」
 俺は焦って舞華に触れようとした。幽霊になったかのように、透けているように感じる。視覚的には、なにも変わっていないはずだ。本能、第六感、そういった類の衝動。俺は不安で仕方なかった。
「触らないで」
「…!」
 舞華が喋った。口を動かして…久しぶりに見た。触らないでと”伝えられた”ことならいくらでもあった。しかし、”喋った”のはいつぶりだろうか。
「消えたくなかったら、触らないで」
「は?」
 舞華はそう付け加えた。意味がわからない。消えかかっているのはお前のほうだろう。俺よりも、ずっと頼りなく見える。しかし、聞く気にもなれなかった。どうしてだろうか。
「じゃあね」
 舞華はそういった。そう言ったらしかった。確かではない。彼女の声だけが、概念のように脳内に残った。しかし、自分の耳にも余韻がある。彼女は今の短時間で、三度も喋ったらしい。珍しいものだ。だからこそ、彼女がそう言ったのかどうか確証が持てなかった。瞬きをした一瞬の間に、舞華はいなくなっていた。跡形もなく、消えていた。俺が慌てて彼女に触れようとした手は、虚空を掴むよりほかがない。これで二度目だった。

 彼女は芯の通った女性だった。頼りがいがあったが、その分自分へのあたりも強い。俺みたいに、意思があっちへ行ったりこっちへ行ったりするやつは嫌いだろうか。そう聞いてみたことがあったけれど、彼女からの答えはなかった。彼女からの自分への感情が良いものではないと確信したのは、鈴からこう言われたときである。
「生理的に受け付けないってさ、あんたのこと」
疑問とも思わなかったし、あまりショックも受けなかった。自分でも不思議に思うほど平気だった。ああ、やっぱりそうか。と思っただけだった。
 あの日から距離をとってばかりいる。あちらもこっちが嫌いなんだし、くっつかれても迷惑だろうと自分を無意識に僻みながら。
 そうしていたら、また失ってしまったようだ。虚無の中で、自分だけが妙にくっきりと浮かんでいる。浮遊感というか、夢遊感というか、よくわからない。
そんな曖昧な感覚の中でただわかるのは、なにか取り返しのつかないことが起こってしまったということだけだった。
取り返しのつかないことといえば、自分は幾度も経験してきている。両手の指で数え切れないほどに、たくさんの選択をしてきた。かけがえのないものを、二つ並べられて、どちらかしか守れないときもあった。どちらも守れないときもあった。それをいつも乗り越えてきた。障害が未だに残っているものもある。それほどに激しい人生を生きてきた。
それでも自分だけは死ななかった。死ねなかった。死ぬ勇気もなかった。心がいくら傷ついて、いくら死を望んでも、体はそれを拒んだ。俺の手足が、内臓が、脳が、眼が、全てが、魂の死を隠蔽しようとした。死体に機械の関節が埋め込まれたかのような毎日だった。それでも同類がいて、仲間とは、友達とは呼べなくてもそれだけで充分だったというのに。それさえも死に絶える。虚無へ還るとは。希望を望んでいた俺は馬鹿だったのか、俺は最後まで愛されなかったのか。そんな動かしようのない事実だけが頭に残った。
圧倒的な喪失感のなかで、ふいにぽっかりと思考に穴が空き、一人の少女の顔が浮かんだ。
「鈴……?」
そうだ。鈴は、鈴は生きているのか、消えていないのか。彼女なら、きっと。彼女なら……
「あの子は先に行ってしまったよ」
 突然後ろから声が聞こえた。と思ったが、後ろからではなかった。どこか遠くから聞こえてくる。方向もわからないほど遠くから。それなのにはっきりと、言葉の意味だけが脳に響く。舞華の力とは少し違う感覚。頭痛が再び蘇ってきた。
どうすれば良いだろう。どう答えればよいだろう。
「答えなくていいさ。あの子は君の物ではなくなり、そして元の持ち主のもとへ帰り、元の持ち主に捨てられた。それだけだ。新しい器が彼女に与えられ、古いものは忘却の彼方へ打ち捨てられる。それだけだ。君にはわかるだろう」
なんだ、これは。
これを言っているのが人だと仮定するのなら、そいつに耳が付いていることを祈ろう。俺は口を開く。
「誰だ」
「黒幕さ。知っているだろう、私だよ」
「はぁ?」
疑問がまた一つ増えた。この声が、黒幕だって?違う。黒幕はこんな声じゃない。少しそんな疑念が頭をよぎったが、すぐに消えた。一瞬の間をおいて、むくむくと肥大化していく怒りと憎悪。行き場所のない疑問が全て黒幕に対する復讐心に変換され、自分でもわけがわからないながらどうしても殺したくなった。今の一言で、黒幕が二人を殺したという結論しか導き出せなかった。
「どうしてだ!」
「何が?」
さっきまで正体不明だった謎の声が、今は黒幕の声にしか聞こえない。先入観とは恐ろしいものだ、と場違いなことを考えた。黒幕の姿は見えないが、ニヤニヤ笑っている顔が容易に想像できた。しらばっくれるんじゃない。
「どうして、どうして二人を殺した!?」
「違うね。私が殺したわけでもないし、まず殺したわけじゃない」
じゃあ、誰が?
復讐しか頭にない俺は、未だかつて無いほど混乱していた。わからないことが多すぎる。鈴と舞華が行ったところが仮に同じだとして、そこは死者が行く場所なのか、それとも別のなにかなのか。誰が何のために二人を攫っていったのか。あるいは殺したのか、消したのか。二人はどこに行ったのか、犯人はどこにいるのか。俺の消えた記憶はなんなのか。今までの不可解な現象はなんなのか。錯乱状態とはまさにこういうことなのだと自分でも思った。今のこの状況では、黒幕の言葉を鵜呑みにするしかない。
「話を聞いておくれよ。君が今列挙した謎を一つずつ解明していってあげよう」
黒幕はからかうような口調でそう言った。
「わかりやすい順番に説明してあげる。
まず私は黒幕だ。今君に状況を説明するためにわざわざ声だけをその空間に転送している。遠くから聞こえるように感じるのはそのせいかもね」
声だけを転送する。黒幕にそんな力があったとは思えない。やっぱり、コイツは嘘を吐いている。コイツは俺の知っている黒幕じゃない。
「当たりでもあるし、ハズレでもある」
黒幕はあべこべなことを言ってケラケラと笑った。俺の反応を見て楽しむつもりだろう。俺はもう、リアクションを抑えられるほどの気力を残していなかった。不本意ながら、少なくとも今は黒幕の手のひらの上で踊らされるしかないのだ。
「私は新たな自我と身体を持ち、今までの君にとっての私を得た。仕える相手を得たというわけ。私は要するに器ではなくなったのさ。私は今、新たな器に使役される身だ」
『器』。それは元々俺が担っていた役割だ。現世、アッチの世界の人格をこちらに移送するための媒体。それが俺だった。いつ頃だったか、自分でも気づかないうちに現世の人格が俺から抜けている事に気づいた。
「君が器でなくなったとき、新たな器として私が創られた。そして、さらに私にも自我が生まれ、器でなくなった。新たな器に仕える側になった私は、器、主人に命じられて、今君に説明を試みている。そういうこと」
黒幕と出会ったとき、これが新しい器だと見抜いた。今まで俺の中に入っていたものが、今は他のものに入っている。見た目が違う自分が目の前にいる。ドッペルゲンガーを見たような感覚で、気分が悪くなった。
「この事実から……分かるかい、言いたいことが」
何の話だ、と言い返そうと思った瞬間に恐ろしい答えが湧き上がった。これ以外に答えようがない、確定的な真実が。
「……俺は、要らない?」
「う〜ん、それも当たりでありハズレであるってところかな」
黒幕は再び曖昧な答え方をした。
現世の人格は俺等にとって神に等しい存在だ。逆らいようのないもの。重力のように。要らないとおもったら即、廃棄される。つい最近まで、俺は廃棄する側だった。
「正確には”飽きたから必要じゃなくなった”のだよ」
飽きた。簡単な答えなのに、理解するのが難しかった。
飽きた?何に飽きると言うんだ。俺には自我があって、しかも神はそれを覗ける。細部まで、隅々を。いつまでも絶えない情報源に、どうやって飽きるというのだろう。
「君はもう時代遅れなんだよ。時代というか、もう君がいる世界は昔のもの。そもそもシステムとかが変わっていって、君に想像できない次元まで行ってるんだ。君たちの回収、廃棄を後回しにしすぎてめんどくさいことになっているだけ」
黒幕は冷たく言い放った。
「君が言う現世ってのも、今の私達にはわからない。もし器に入ってる中身の元の居場所のことを言ってるんなら、それはオーバーグラウンドというよ。今はね」
教える側から教えられる側へ。創る側から創られる側へ。捨てる側から捨てられる側へ。ありとあらゆる権限を剥奪されていく。自分は、自分が死なせていった有象無象の一人になろうとしている。
「その通り!君は器であることによって死にたくなるほど苦しめられ、器でないことによって殺されるのさ。皮肉だねぇ」
黒幕が笑う。俺の中で殺意が芽生えていく。コイツはどうしようもないクズだ!俺たちを、快楽のために殺そうとしている。
「私が器だったらそうするところだけど、生憎私のせいではないね。私はあくまで主人の命に従うしかできない君と同じ人形。愛されているかいないか、飽きられているかいないかの違いだけだよ」
コイツの居場所がわかれば、今すぐにでも殺しに行くのに。俺たちが苦しめられたことへの復讐を、果たしに行くのに。
「わかっていたってできるわけがないよ。今の君にはそんな力はない。器だった頃の君に入っていた中身のおかげで生かされているだけだったんだから」
黒幕はさらに激しく笑う。俺は拳を握りしめた。
この、クズが!
精一杯心のなかで叫んだ。黒幕はそれを一笑に付す。
「話をもどそうか。
君の友達は、始まりは君の被造物だった。しかしそこから彼女等はそれぞれ別の器になり、君の所有物ではなくなった。君の管理下に置かれなくなったということだよ。だから、君には既に彼女等の命運の決定権は無くなっていた。決定権は器の持ち主に回帰され、そしてそれぞれの持ち主に捨てられた。眼鏡のあの子は新たな器を創るためにやむを得ず。無口なあの子は嫌悪感のせい」
眼鏡は鈴、無口は舞華のことだとすぐにわかった。二人は捨てられた。口の中で言葉を反芻する。
「無口なあの子には自我が芽生えた。その人格は器の中身のものではなかった。中身はもう、舞華を必要としていなかったのだよ。だから、自然と中身が抜けてオーバーグラウンドに戻り、舞華に自我が生まれた。その自我は君を救うために、最後まで君に会いたいと願い続けた。そして君が消えないように注意喚起をして、消えていった」
舞華が、俺のために何かをした?そんなことありえない。舞華は俺のことが大嫌いだった。
「君の知っている舞華であり、そうでない。あの嫌悪は中身のもので、それが抜ければ嫌悪感が消えるのも当たり前だろう。彼女には、君との思い出しか残っていなかった。そこから構築された自我が、君を守ろうとするのも当然のこと」
反吐が出るね、と黒幕はつまらなそうに言った。
「鈴の方は、舞華よりも早く消えた。中身が抜けた後すぐに消したいと思って消したから、自我が芽生える暇もなかったんだよ。舞華の方は、持ち主が忘れ去るまで残っていただけの話。二人とも、消えた。どこに行ったわけでもないし、死んで死体が残ってるわけでもない。忘れ去られた物語が消え去るように、二人は存在ごと消えた。それだけだよ」
俺は何も感じなくなっていた。理解するのに必死だったのもそうだ。でもそれ以上の理由があった。感じる必要がなくなったから。感情が必要ではなくなったから。自分がそう思って我慢しているわけではなく、誰かが消したような。
「君の物語を器は必要としていない。だから、君に残る記憶もそもそもなかった。最後に説明してあげるために、君はこの空間に転送されたの。君がここに来る前にいた部屋は君の部屋で、今はもう無い。だから君の記憶にもない」
俺は、誰だろう。自分が誰かさえも、忘れようとしている。もうどうでもいい。
「そう、どうでもいい。総て理解しただろう」
理解はしたかもしれない。納得は……できていないかもしれない。
俺は答えた。
「任務は終わりだね。私は帰るよ。じゃあね、主くん」
黒幕は満足気に言った。


『君の新たな役割が見つかった』
眠い。起こさないでくれ。
『覚えてる?自分の名前』
要らないと言ったのはお前だ。
『俺は言っていない。言ったのは黒幕』
じゃあお前は誰だ。
『俺は創造主だよ』
お前のせいで俺の親友は消えたんだ。
『なんとでも言いなよ。俺が創ったものを、なにしたって俺の勝手』
俺たちには自我があった。お前は命あるものを握りつぶした。お前は悪だ。どうしようもない悪だ。
『その自我も俺が創ったものなんだよね』
神だったら何をしてもいいのか?
『その通り』
……クズが
『神に抗えなかった君の負けだよ』
もういい
『そう。君の気持ちはどうでもいい。君の自我はもうすぐ消えるんだから』
どうしてだ?
『君が器になるから』
お前は器でなくなるということか?
『いや?君が全うしていた一つの仕事を、鈴ちゃんと一緒にもう一度やってもらうだけ。生憎俺は多忙なものでね』
……
『君の自我、俺への憎悪も消える。だから俺に復讐はできない』
俺はもうじき死ぬのか
『本当の意味でね』
そうか、どうでもいい
『ついに自分の死への興味を失せたか。もうそのままでいいんじゃないかな』
そのまま残ってたら、絶対にお前を殺す
『怖い事言うね』
そのぐらいのことをお前はしたんだ
『子にそんなことを言われるとは』
親にこんなことをされるとは
『面白いな』
笑えねえよ
『ふふふ、やっぱり君は面白い』
死ね
『君に俺を殺せる力は無いよ。それと、自我どうせなくなるけど一応仕事内容を言っておくね』
……黙れ
『はいはい。器なことはさっきも言ったんだけど、少しちがう媒体って言えば有能な主くんはわかるよね?新しい仕事は新入りの相手と当番交代の把握。あとは……”自我を生まないこと”』
最後のは出来そうにないな
『俺がさせないから安心しなよ』
いつかお前を必ずぶっ殺してやる
『そのときを楽しみにしているね』

創造主は笑った。


感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.038714170455933