「インカーセラス(縛れ)、インペディメンター(妨害せよ)、エクスパルソ(爆破)、エクスペリアームス(武器よ去れ)、チッ……、動きが速すぎて当たらない」
ハリーポッターは矢継ぎ早に呪文を唱えるが槍を持った対象は千変万化の如く変幻自在に肉体を動かし防衛する。月の光線が敵方を露にする。その姿は英雄の槍兵を呼称するに相応しい格好をしていた。白兵戦に特化させる為に無駄をそぎ落とした青い甲冑に人を殺害した返り血を受けたかのように血潮に染まった長槍、そして英雄特有のその威圧感。
その光景を目の当たりにすると同時に幾多の死地を乗り越えた英雄が今現界した事をハリーは再認識するのであった。
槍兵は獰猛に笑みを浮かべながらも辺り一帯が光線が差す前を悠然と前進し続ける。
さらにハリーにも視認が不可能なスピードにギアを上げるとそのままトップスピードにシフトし完全にその姿がその場から掻き消えた。
「くそっ! 一体どこにっ!」
ハリーポッターは焦燥にかられたかのように辺りをグルグルと見渡す。しかしその周りには結界呪文をかけたサークルの中にいる学生姿の遠坂凛唯一人。
ハリーは慌てて己のマスターの所に距離を詰める。
だがそれも叶わなかった。
「チッ、急所はギリギリ外したか。悪運だけは英雄クラスだな」
その声と同時にハリーは胸に激痛を感じた。その胸には真っ赤に染まる槍先が鈍く光っていた。
「ダンブルドア!? その腕っ!!!」
夜更け、イリヤスフィールは銃声の音とともに椅子から飛び起きた。
あれからダンブルドアは三日帰って来なかった。イリヤスフィールはイライラが頂点に来ていて爆発するまであと少しというところまで追いつめられていた。探しに行こうにもサーヴァントなしで行くほど彼女自身愚かではない。故にメイドに八つ当たり気味になりながらもこうして帰りを待っていたのだが、ある筈の腕がない守護者が帰ってきた。イリヤスフィールはパニック状態に陥った。
「遅れてすまぬのぉ、マスター。少し下手を打ってしまってのう、この通りじゃ」
ダンブルドアは自虐的に笑いながらもその亡くなった箇所を優しく擦る。顔色も何処か青白く衰弱しているのが明確化している。
イリヤスフィールはその箇所を見ながら聡明にも状況を判断しようと懸命に気持ちを落ち着けさせた。そして一度溜息を吐くと胸の内の不安視している部分を、我が子の様に自分を可愛がってくれる魔法使いにさらけ出す。
「……まあ、この際負傷した事は置いとくわ。それよりも三日も主人を放置とは職務放棄よ。……でも更に問題なのがそんな致命傷を受けてこれからどう聖杯戦争を勝ち抜くのよ?」
イリヤスフィールはそう問い質す。しかしダンブルドアは優しい笑みでイリヤにこう返すのであった。
「時が来れば」
執筆するにあたりその流れを紹介する。
構成(三十秒)<執筆(その残り時間)<投稿
こんな感じ