衛宮士郎一行は聖杯戦争に参加の旨を伝えに行くべく教会に歩みを進めていた。
衛宮士郎は学生生活の平凡さの名残は既になく一魔術師としての顔を併せ持っていた。
その少し後方には霊体化したセイバーがマスターの護衛宜しく先程士郎から渡された手作りドーナツを頬張っている。如何やら既に餌付けされたみたいだ。
暫く一行は他愛無い話をしながら歩みを進めると目の前に西洋の建物が飛び込んでくる。暗闇に浮かび上がるその教会は、この冬木の街並みと一線を区切る不気味さを持っていた。
例えるなら対人関係。
表向きは良好な関係を築いているように見えるが蓋を開けてみると、実は一方が嫌悪の対象としてもう一方を見ていたみたいな感じだ。
つまり、この教会も表向きは良好な教会を体としているが、深いところは負の部分が凝縮されていて表に出てないだけ。
歩みを進めている士郎達もそれをなんとなくだが肌で感じているのであった。
教会に戦争参加に名乗り上げにいく衛宮とは対照的にハリーポッターは防戦一方であった。防衛術を駆使しながらマスターからランサーを遠ざけようと奮闘する。杖腕と逆の腕は夥しい出血を手で抑えている。
しかしその間にもハリーの肉体は敵の得物により徐々にボロボロにされていく。
「おいキャスター、どうした先程から防戦一方じゃねーか。このままだとあの娘諸共お陀仏だぜ? 」
そう言いながらもランサーは手数を増やしていく。その顔には落胆の色が隠せない。
彼自身もっと血潮滾る決闘を求め聖杯戦争に名乗りを挙げているのでこんな骨もない戦いに興味が薄れるのは必然というところだろう。
「……もういいだろ、終わりにしようや。だが唯では殺さない。お前は仮にも英雄。お互いに宝具を出して決着と行こうか?」
ランサーは動きを止め息を切らして片膝をつくハリーにそう言い放つ。
ハリー自身ランサーがそう発言した事には驚いたがその問いに是と言うように頷いた。それに対しランサーは不敵に笑みを浮かべ槍を構える。ハリーもそれに習い杖を構えた。辺りは音の欠片もなく二人の空間は異様にそして静かに盛り上がっていく。
刹那、槍兵の影が細長く伸びあがる。ハリーの目には5m弱まで跳躍した姿が目に飛び込む。ランサーは大きく振りかぶりこう詠唱した。
「刺し穿つ死棘の槍ッッ!!」
投衡された槍は真っ直ぐにハリーの心臓目掛け向かう。だが、迫り来る死にハリーは表情無く悠然と佇んでいるだけであった。