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No.41120の一覧
[0] 冬木防衛戦、深海棲艦『レ級』現る(Fateシリーズ×艦これ)新章始めました[ベリーイージー](2016/03/27 21:11)
[1] 序章・過去の出来事[ベリーイージー](2015/06/11 00:42)
[2] 一 聖杯戦争前夜[ベリーイージー](2015/06/11 00:43)
[3] 二 火種蠢く冬木にて[ベリーイージー](2015/06/19 00:21)
[4] 三 始まりの夜[ベリーイージー](2015/07/26 11:01)
[5] 四 二つの戦場[ベリーイージー](2016/03/06 01:48)
[6] 五 戦争二日目の出来事[ベリーイージー](2016/03/06 01:49)
[7] 六 狂気と狂喜[ベリーイージー](2015/08/30 22:26)
[8] 七 一人目の脱落者[ベリーイージー](2015/06/19 00:25)
[9] 八 因縁の始まり[ベリーイージー](2015/06/19 00:25)
[10] 閑話一 男の決断[ベリーイージー](2015/06/19 00:26)
[11] 閑話二 艦娘達と共に[ベリーイージー](2015/06/19 00:27)
[12] 九 地の底で[ベリーイージー](2015/07/26 11:14)
[13] 十 天に昇り、天から落ちて[ベリーイージー](2015/08/10 01:10)
[14] 十一 それぞれの亀裂[ベリーイージー](2015/10/04 21:03)
[15] 十二 戦いの後で[ベリーイージー](2015/10/04 21:04)
[16] 十三 うたかたの夢[ベリーイージー](2015/10/04 21:05)
[17] 十四 運命に続く日[ベリーイージー](2015/10/04 21:05)
[18] 十五 その先は見えず[ベリーイージー](2015/10/14 21:53)
[19] 十六 英霊達の宴[ベリーイージー](2015/10/14 21:54)
[20] 十七 離反者[ベリーイージー](2015/11/06 20:08)
[21] 十八 穢れた聖杯[ベリーイージー](2015/11/22 22:06)
[22] 十九 足掻く者と抗う者達[ベリーイージー](2015/11/25 02:27)
[23] 原点<ZERO>・一[ベリーイージー](2016/03/14 01:29)
[24] 原点<ZERO>・二(完)[ベリーイージー](2016/03/13 01:30)
[25] 幕間[ベリーイージー](2016/04/18 16:52)
[26] SN編前夜・・・AL作戦・序[ベリーイージー](2016/04/18 16:52)
[27] AL作戦・序二[ベリーイージー](2016/04/18 16:53)
[28] AL作戦 其一[ベリーイージー](2016/04/18 16:54)
[29] 幕間 時計塔の一日[ベリーイージー](2016/05/18 12:52)
[30] AL作戦 其二[ベリーイージー](2016/06/04 18:18)
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[41120] 十 天に昇り、天から落ちて
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:ce9d8c12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2015/08/10 01:10
ガゴンガゴンガゴン
キイキイキイッ

三人の艦娘達が砲塔を展開、対抗するようにレ級も生体火器を機動し、更に有機的な装甲を持つ黒の球体が空中から敵を狙う。
そんな一触即発の空気の中、まず探るような舌戦が交わされた。

「……戦艦と駆逐の王道編成に挑むとは……愚かですネー!」
「ハッ、良ク言ウゼ、主ヲ守ル為二『手』ヲ割カレルクセ二……」

レ級がライダーの後ろ、そこに立つウェイバーを見てからかうように言った。
だが、彼女はそれを無視して話を続けた。

「砲撃一発じゃ駄目そう、となると……フルファイアを連続で打ち込むとしますかネー?」
「……ヒヒッ、ソンナ魔力アンノカー?」

からかうようにレ級が言うと、ライダーのマスター、ウェイバーが腕の令呪を翳してみせる。

「その為に僕が居る……素で一二発、令呪込みで更に三発飛ぶと思え」
「チッ、前ノメリスギンダロ……(全部ガ本気トハ、流石二思エナイガ無視モ出来ネエ……サッキノ仕返シカ?)」

遠回しにさっきの反論、マスターの意義を見せられレ級が舌打ちする。
これで、そういった令呪の援護をも警戒せねばならなくなった。

『マスターを弱味と見るのは浅はかじゃな、深海棲艦?』
「……五月蠅エゾ、魔術師」
『いや黙らん、どうも思うように行かないようじゃし……彼はこの場を特定するのに役立ってくれた、この後も令呪で戦場にそれなりの影響を与えるじゃろう』

使い魔越しで判り難いが、明らかに嘲笑と共にレ級に言葉が掛けられた。
それまでのキャスターとやり合った経験を活かしてここまで辿り着き、また令呪による援護を厭わないウェイバーの脅威を臓硯が強調する。
どう見ても揺さぶりだが、これまでのことが有るので無視できない物でレ級は顔を顰めた。

「……撹乱カ、嫌ラシイヤリ方ダ」
『カカカッ、悩め悩め、そうすればこちらは……幾らか楽じゃからな』

レ級は蟲を、その奥にいる臓硯を不愉快そうに睨み、臓硯はカカッと人悪く笑った。

「いや、僕の肩に留まって……そういう言い合いは止めて欲しいんですが……」
『おう、出汁にしてスマンな……まあ精神戦は大事なことじゃよ』

肩に止まってるから纏めて睨まれたような気がして、心胆を寒からしめたウェイバーが愚痴った。
レ級に聞こえないようにウェイバーがクレームを入れ、臓硯も声音を落とし幾つか言い交わす。

『実際短時間にここを暴いたのはお主の手腕じゃ、令呪の援護にも説得力は有るじゃろ?……正直真正面からぶつかるのは分が悪い、まず『動揺』させねばな』
「……それはそうですが、でもこれで僕を狙ってくる可能性も高くなりましたよ!?」
『まあ確かに、『痛し痒し』……だが、元々射程内に居る以上その可能性はある、違うか?』
「…………むう、多少リスクを増やしてでもプレッシャーを、そういうことですか」

言い包められてウェイバーは渋々沈黙する、がそれでも恨みがましそうな彼に臓硯は苦笑気味に付け加えた。

『この短時間で戦闘に持ってこれたのは僥倖じゃが……どうせなら更に有利な条件を、そう思ってな』
「……こっちは大分肝が冷えますがね、相手睨んでるし」

臓硯と違って使い魔ではなく自分自らで、段違いのリスクを負っているウェイバーは嘆息する。

『まあその辺は仕方あるまい、念話は『ラグ』が出る……それは捜索でも、戦闘でもいい結果に繋がるまい』

相手の言葉にウェイバーはグッと詰まる。
確かに言い分は正しい、念話という英霊を介した情報では遅れが出かねない(特に三角しか無い令呪の無駄撃ちは出来ないし)

「……ええい、もう根性を決めてやるしか……」

自棄になった様子でウェイバーが令呪を見て、精神を集中する。
そうやって、彼が決意した(あるいは諦めた)瞬間だった、声が響いた。

『意外に勇気がある、感心感心……ところで、その状況なら分身とて役に立つのでは?』

空中から数人の『影』が湧き出て、トンっとウェイバーの周囲を守るように降り立った。
影の中で、特に小柄な仮面の少女が短剣(ダーク)を構えながらウェイバーに話しかけた。

「助っ人、要る?」
「……何時かのアサシン!?」

驚くウェイバーに構わず、暗殺者の少女は彼を守る位置に立って言った。

「……護衛に付く、それでライダー達を前に出せるでしょ」
「助かるけど……どうして?」
「主の命令、後深海棲艦の一人勝ちよりはマシだから……あれが消えれば艦娘も戦争から降りる、アーチャーを勝たせて聖杯の分前を貰うの」
『……それ、かなり難しくないか?』
「……その気もするけど、他に方法無いし」

苦笑しながら彼女達は明らかに援護の構えを取った。
元々レ級を否定する綺礼の命令で着いてきたらしい、何より『切実な理由』で聖杯が欲しいアサシンとしては何としてもレ級を落としたいのだ。

「私と同胞、直接戦闘向けのハサンで護衛する、艦娘達は攻撃を優先して……信用出来ないかもしれないけど」
「……ライダー、どう思う?」
「計略というには回りくどい、信じていいと思います、それに……『体を張って得たレ級の情報を無駄にするな』前回の言葉は嘘じゃないと思うから」
「ふむ……頼んだ、僕に付きっきりじゃ三人の脚を活かせない」
「わかった、頼まれた……流れ弾も艦載機も通さないから」

彼は暫し考え、ライダーの答えもあって受け入れることを決めた。
二人の言葉に頷きアサシンは隊列を組む。
そしてライダーは主という心配も消えて意気揚々と、雪風と曙を連れて前へと進み出た。

「イヤイヤ、予想外でしたが助かります……これで全力で戦える!」
「はい、行きましょう、旗艦『金剛!』」
「……チッ、言イ合イハ不利ダシ、オマケモ付イタ……最悪ダナ、オイ」
『……ふふっ、ご愁傷様っ(ガオッ!)』

ライダー達は顔を顰めたレ級に笑ってみせると、一斉に走り出す。

「それじゃあ……総員、攻撃開始デース!」
『了解(ガオ)!』
「……チイッ、来ヤガレ、艦娘共!」

叫んで両者は激しく砲火を交わす。
こうして、舌戦と乱入者を挟んで、戦いの火蓋は切られたのだった。



十 天に昇り、天から落ちて



その戦い、まずレ級が動いた、左半身と一体化したヲ級とともに艦載機を嗾けようとした。
だが、それを後手の身でありながら、悠々と追い抜いた存在が居た。

「……ライダー、やれ」
「イエッサー、第二の宝具……ドレッドノート発動!」

ダンッ

青い魔力を纏い、それを噴射しながらライダーが駆け出す。
淡い茶の髪を棚引かし、艦載機を蹴散らして彼女は一気にレ級の方へと踏み込んだ。

「クッ……チ級、ヤレ!」

意表を突かれたレ級だが、素早く背中に張り付いた二体に指示を出した。
漆黒の砲塔が並んで突き出て激しく輝く。

ズドンッ

弾丸が着弾し、ライダーの居た場所に激しく土煙を巻き上げる。

ヒュッ

「……甘いデース」

だが、その土煙を一つの影が裂く、ライダーは『跳躍』し頭上から降下体勢に、彼女は弾丸を飛び越え躱したのだ。

「あの時の、先輩を……参考に!」

ニッと笑って言いながら、彼女は艤装の右半分を振り被る。
キャスター戦で見せたランサーの突進宛らに、それを凶器に見立て振り下ろす。

「艦娘ノクセニ……上ダトッ!?」
「覚悟……デース!」

これには先程以上に意表を突かれ、だがぎょっとしながらもレ級は艦載機を操った。

「止メロ、艦載機!」
「……させません、曙」
「ガオッ!」

そこへ雪風達が突っ込む、二人は並走して走ったと思うとまず雪風が身を低くする。
彼女が真下から装甲板を跳ね上げ、それを足場にもう一人、曙が跳躍する。
ドンッと高々と、ライダーすら飛び越えた彼女は背面跳びの体勢から下方へ銃を向ける。

「知ってます?彼女、航空機飛び交う戦場初期の生き残りって……やっちゃえ、曙!」
「ガオッ!」

バラララッ

空を飛ぶ艦載機の更に上、頭を押さえるように機銃がばら撒かれる。
一撃で破壊こそ出来ないものの、その脚は確実に鈍る。
そして、その瞬間ライダーがレ級へ仕掛けた。

「ナイスです、二人共……ドレッドノート重ねがけ、はああっ!!」

ガギィンッ

降下の勢いのまま、更に追加した魔力強化を加え、頑強な装甲板が叩きつけられた。
レ級は慌てて両腕を交差させる、本当はチ級の砲で反撃したかったが間に合わない(発射直後で装填されていない)
だから選んだのは迎撃でなく防御、両腕の怪物魚を盾にした。

ギイッ

「イ級!?」

ギシッとその身を軋ませ、駆逐イ級を犠牲に何とかライダーの打撃を受け止めた。
レ級はややヒ歪んだイ級達に顔を顰め、ライダーの肩越しに見えるウェイバーを睨んだ。

「随分トマア、大盤振ル舞イジャナイカ……保ツノカオイ?」
「問題ない……アサシン、遠坂と組んでるのはもうバレバレだ、魔化した『宝石』が有るならくれ」
「……誤魔化すのは無理か、はい」

ポイっと投げ渡された宝石をウェイバーは即使用、先程の宝具分の消費はそれで贖われた。

「……予備弾薬が有るからね、派手に行こう」
「オマッ、他人ノダカラッテ……」
「ああ、良いだろう?何より別に自分の懐が痛む訳じゃない……どんどん行け、ライダー!」
「……ハーイ、そういう訳で、もういっちょ……ドレッドノート!」
「……コノ、オダイジンメ!?」

二度目の宝具による強化、今度は魔力を拳に纏わせてライダーは叩きつけた。

ズドンッ

「……チイッ、デース!?」

拳が異形の怪魚にめり込んだ、咄嗟にレ急が翳した左腕、そこに一体化したイ級がその身で拳を受け止めていた。
ひしゃげる姿にレ級は顔を顰めた。

「ワリイナ、イ級……ホネハ拾ッテヤル」

悶絶し力なく鳴く彼に詫びながら、レ級は右腕を振り被った。
右のイ級が牙を剥いた。

「……オラッ、返スゼ!」
「NO、そんなの……要らないデース!」

ガシイッ

咄嗟にライダーが向こうの鼻先を掴む、まだ続いている魔力強化を活かし押し留めた。
だが、レ級はニッと笑った、右のイ級もニタリと笑った。

ジャキンジャキンッ

イ級が体を揺らす、鱗めいた表皮が裂けて無数の銃口、内部火気が飛び出した。

「ゼロ距離ダッ、行……「ガオッ」駆逐ノ方カ!?」

だが、その引金を引く前に曙が走り込んで来た。
軽量かつ加速に秀でた後期吹雪型の速度(40ノットの島風に次ぐ38、因みに雪風は36)を活かし強く地面を蹴る。
ダッと勢いよく跳躍し、半ば上から踏みつけるようにイ級を蹴りつけた。
キイっと、悲鳴を上げた彼は上からの衝撃で砲塔の向きを真下へ向けられた。

ズガガガ
ブワッ

「オイオイ、アノ糞ガキ、フザケタ真似ヲ……」

寸前での変化に間に合わず発砲、土煙が辺りを包む。
舌打ちしながらレ級は尾を伸ばし、更に肩のチ級の砲門を動かす。
ようやくそちらの再装填が終わったのだ。

「……反撃ト行コウカ」

トンっと後退し距離を取ると、レ級が三つの砲を土煙の中、ライダーのいた方へそれ等を向ける。
目を凝らせば影が一つ、ニヤリと笑ってレ級は引鉄を引いた。

「オラッ、ブッ飛ベヤ!」

ズドンッ

三つの砲火が並んで空を裂いて、土煙の中の影へと飛んだ。

「……ううっ、貧乏籤です」

一つ目を躱し、二つ目もぎりぎり躱し、だが三つ目を受けて『海兵服姿の双眼鏡を腰に掛けた少女』が高々と空を飛んだ。

「……アン?」

それはどう見てもライダーではなく、一瞬レ級は唖然とする。
ベチャと地面に腰から落ちた少女、雪風は痛そうに背を擦った。

「うう、流石に三つは無理かあ、回避は自信あるんだけどなあ……そ、それはともかく囮は成功、今です!」
『……ナイスです、雪風(ガオッ)!』

土煙を迂回し、左右からライダーと曙がレ級へと走る。
その時間を稼ぐ為に雪風はギリギリまで引きつけた。

「……今度はこっちの番デース!」
「ガオッ」

まず先手は曙、直に狙わずレ級(と左半身のヲ級)の足を払うように機銃を撃った。

バララッ

「ヲヲッ!?」
「グッ、牽制、小細工ヲ……」

戦艦であるレ級、それ以上の耐久を持つヲ級のダメージにはならないが、僅かに体勢を崩し動きを封じられた。
そこへライダーが丁度辿り着き、魔力を纏わせた拳を振り被った。

「ドレッドノート再起動……やああっ、デース」

ドガッ

「グッ!?」
「良し、まず一撃デス……」

拳打がレ級の胴を穿った、強化された拳の威力に押し切られ彼女は浮き上がる。
すかさずライダーが背負う艤装の砲塔を展開した。

ガコンッ

「ドレッドノート継続……通常弾セット、シュート!」

ズドンッ

狙い澄ました砲撃が空中で身動きの出来ないレ級、その『左』の胴を貫いた。

「ヲ、ヲッ……」
「……ちぇ、ヲ級の方がカバーに入りましたカ」

ライダーが顔を顰めた、直撃の寸前左半身のヲ級が右側のレ級を庇ったのだ。
高耐久の彼女によって砲撃は不発に終わる。
フラフラとレ級は立ち上がり、半身の血だらけのヲ級を労るよう撫でる。

「ワリ、助カッタ……モウ少シ、頼ムナ」
「……ヲッ!」

二人は呼吸を合わせ、艦載機を同時に操った。

バララッ

「ふぉ、フォローです!」
「……ガオッ」
機銃の雨の中、慌てて横から雪風と曙がライダーに飛びつき、押し倒した。

「うわっ!?」
「ガオッ!」
「……曙は寝てろと、私も同感です、宝具使いすぎ!」

二人はライダーの身を低くさせると(強引にだが)、空の艦載機に向けて砲と機銃を向けた。

「ハンッ、タッタ二人、ドウ止メル!?」
「……ガオッ!」

レ級が嘲笑い、するとピピッと数機の艦載機を順に指さした。
それを見たレ級の顔が一瞬凍りつく。

「……ガオッ」
「あ、訳します……艦載機の制御が二種類ある、片方がレ級、もう片方がヲ級……アサシンに既に読まれたレ級側を囮にするんでしょ?」

雪風が狂化で喋れぬ曙の言葉を訳す、図星を突かれたレ級は顰めっ面に成る。
その反応にニッと笑って、二人の駆逐艦娘は対空攻撃を行った。
それに長けた曙が情報の無いヲ級側の艦載機を、既に情報のある艦載機を雪風が撃つ。
バララッと四方に一見滅茶苦茶に、だが正確に砲撃、更に弾丸が撃ち込まれ、瞬く間に艦載機を撃ち落としていく。

「サ、下ガレ!」
「ヲッ!」

慌ててレ級とヲ級は艦載機を引かせる、一方二人の駆逐艦に手を借りて立ったライダーは笑みを浮かべた。

「……ご愁傷様ネ、それとお見事デース、曙……レ級の方を調べてくれたアサシンもネ!」
「ガオッ!」
「……いえいえ」

ライダーの言葉に曙が胸を張り、後方のアサシン少女がはにかんだ笑みを浮かべた。
そして、分が悪しと見て僅かに下がったレ級に砲を突き付ける。

「どうやら……僚艦五枠の選抜を間違えたようですね」
「チッ、否定デキナイナ、特二空母ヲ級……ソッチノ駆逐ノ対空ノセイデ、役立タズダ」
「ヲッ!?」
「……左の子、凄いショック受けてますが」

対空戦の経験豊富な曙によって、無力化されたヲ級が(レ級の言葉の方が大きいかもしれないが)涙目になった。

「アア、冗談ダッテ……耐久ノ底上ゲニナッテルシナ」
「ヲ、ヲ……」
「……マ、代ワリニ、雷巡辺リヲ入レタ方ガ十倍役立ッタ気モスルガ」
「ヲッ!?」
「……慰めたいのか弄りたいのか、どっちなんデスカ?」
「……ツッテモ、私ノ方モ余裕ナイシナア」

やれやれと隣の涙目のヲ級から目を逸らし、疲れた様子で肩を竦める。
だが、その後彼女はニッと笑って、奇妙なことを言った。

「アア、仕方ネエ、不確実ナ方法ハ好キジャ無インダガナ……『運』二頼ルヨウナ……」

バッ

残念そうに言って彼女は何かの束を放り投げた。
それは長く緩く弧を描く、尖った先端と後方への羽を持つ、黒光りする何かだった。
艦娘達はそれを知っていた、皆持っている。

「……素の」
「魚雷?」

百以上有るそれに一瞬首を傾げ、だがレ級の行動でその顔が青ざめる。
レ級は空高く放った束に、尾の大顎から伸びた大砲を向けた。

「……コウスルンダヨ!」

ズドンッ

放った凶器は砲火に飲まれ、爆炎が爆ぜる。
それは辺りに、何の区別なく、火の雨を降らした。

ボウッ

「ヒヒッ……見テナ、面白イコトニナル!」

だが、被害は偏りがある、レ級には僅かしか落ちなかった。

「私ノ、幸運ステータスハ……Aだからな!」

言って彼女は火の中駈け出した、その口元には悪意のある笑みが浮かんでいる。
それに対して、ライダー達はレ級のように散発的な被害ではない。

「NO!?」
「ガ、ガオッ……」
「金剛、曙!?」

ライダーと曙は爆炎を浴び怯む、被害から逃れられたのは雪風だけだった。

「これは……幸運のステータス?こうも被害に差があるのはそれ!?」

この瞬間雪風以外は無力化され、その光景にレ級は邪悪に笑った。
そして、今見せる隙を逃すかとばかりに、走り出した。

「……ハッ、無事ナノハ雪風、手前ダケミタイダナ!?」
「さ、させない、二人が戻るまで……」
「邪魔ダッ、宝具ノ手前ナンゾ!」
「きゃあっ!?」

慌てて阻もうとした雪風は尾の一振りで吹き飛ばされる、サーヴァントではなく宝具によるイレギュラーの召喚では地力の差がありすぎた。
一気に彼女を突破し、レ級はその奥のライダー達に照準する。

「サア、落トスゾ……ヲ級、泣イテル場合カ、手伝エ!」
「ヲッ!?ヲ、ヲヲ……」

ガコンとレ級は尾の砲塔を伸長し、涙目だったヲ級も促され頭部の面に突いた砲塔を動かす。
火砲が動けないライダーと曙を捉えた。

「サア……」
「ヲッ!」
「……フッ飛ベ、艦娘!」

ジャキンッ

突きつけられた砲塔が不吉に輝いた。
だがその寸前だった、最初はおっかなびっくりに、しかし力強く声が響いた。

「……令呪よ、ライダーに力を……炎を振り払い反撃を!」
『エッ(ヲッ)?』

そこだけポッカリ炎の降っていない隙間、そこに立つウェイバーがその手に輝く令呪を翳し叫んだ。

「幸運のステータスか、どうやら僕はツイていたらしい」
「……うわイイな、暗殺者として羨ましい、搦手の成否に直結するし」
「まあそれはともかく……やれ、ライダー!」
「イエッサー!」

活性化した魔力を全開にし、ライダーは纏わりつく炎を振り払う。
そして、自由になった彼女は向かってくるレ級を殴りつける。

ドゴッ

「ガッ!?」
「……まだデス!」

宝具による強化以上の魔力、それを纏わせた拳がレ級を叩き伏せた。
地面に叩きつけられた彼女へ更にライダーは追撃、装甲板のアッパースイングで打ち上げる。

「やああっ!」

ドガッ

「グアッ!?」
「……今デース、ドレッドノート!」

ライダーは宝具による強化も追加、二条の強化の中で砲撃体勢へ、すかさず砲を空中のレ級へ向ける。
その日最大の輝き、最大の轟音、限界を超えた砲撃が天へと放たれる。

ドゴオォンッ

空中で爆発的な魔力が炸裂し、レ級は愚か天井まで貫く。
ガラガラと有機的装甲の残骸が落ちる。

「やったか……どうだ、ライダー!」
「いえこれは……」

空を見上げウェイバーが喝采を叫びかけ、がライダーが止める。
その視線の先には『下半身のやや欠けた影』が一つ。

「ヲッ!?」
「……無事ダ、危ナカッタガナ」

レ級が心配そうなヲ級に、硝煙発する砲を展開した彼女に何とか言葉を返した。

「……助カッタゼ、ヤッパ空中ジャ空母ガ上カ」
「ヲッ!」

着弾の寸前ヲ級が横へ砲撃し強引に躱したのだ、ヲ級に命を救われたレ級は笑みを浮かべ、それを見上げるライダー達は顔を引き攣らせる。

「……惜シカッタナ、ダガモウ油断シネエ……艦娘ニモ、人間ニモ目ヲソラスカヨ」
「くっ、同じことは出来そうにないですね……」

命拾いしたレ級は気を引き締める、さあ再開と彼女は意気込んだ。

『艦娘にも、人間にも……それはつまり……』
「エ?」

が、反響し響く声、どこか遠くからの声に彼女は固まった。
ヒュッと風が吹く、ライダーの空けた大穴を通って『小柄な影』が飛んだ。
それは衝角が振り抜いて、レ級の胴を強打する。

ズドンッ

「ガグッ!?」
「つまり、今来た私は……艦娘ロイアルアーサーは見えてない、ですよね?……風王鉄槌(ストライクエア)!」

そのまま更に至近距離から風を叩きつけ、地下道へとレ級を送り返した。
ドガンっと轟音立てて彼女は落下し、それに遅れて小柄な影、ランサーが降り立った。

「直感よ、ありがとう……おかげで隙が付けた、その上対処法のない潜水艦も居ないしね」
「……ああ、そりゃ駆逐艦が複数いるのに出さないって……美味しいとこ持って来ますね、先輩」

ちょっと呆れてる様子のライダーにランサーがニヤリと笑う、彼女は得物である衝角を一振るいした。
ヒュッと深海棲艦の青黒い血を払うと、衝角を後滅茶苦茶に荒れた落下現場のレ級へ突き付ける。

ビシイッ

「……ということで私も参加です、第二ラウンドって奴ですね……覚悟しなさい!」
「クッ、飛ンダ乱入者ダナ!?」

地下深くで、深海棲艦の悲鳴が響いたのだった。



「……忙しい女だ、さっさと降りて行きおって……口説き損ねた」

そして、空中で残されたアーチャーが嘆息した。
そんな彼に念話が入る、(認めてないが)主からだ。

(英雄王、そちらの近くで魔力反応が……状況は)
「時臣か……地下で艦娘と深海棲艦がやり合ってるのだろう、大分派手にやってるから深海棲艦にライダーにランサー、バーサーカの宝具も居るな」

すると彼は何か考え込んだ。

(さようで……そうですか、『粗方の面子』が揃っているのですか)

明らかに何か思いついた様子で、アーチャーは何か嫌な予感を覚えた。

「……時臣、何を?」
(いえいえ、気になさらないよう……『まだ』早いでしょうからね、そう決着の付く辺りが『美味しい』かと)

貴族趣味の男が笑ったのがわかった、顔を合わせた訳ではないのに。
唯アーチャーは何かが、流れというべき物が変わったと直感した。




一応念のため、10だからって題名に天を続けて訳じゃないです・・・
・・・ウェイバーって原作のステルス的にどう考えても幸運高いよね?そんな話・・・いやまあクライマックスじゃやれないネタなので今やっただけですが。
でまあ、ようやく主役っぽくなったランサー(アルトリアさん)が突っ込んだ所で次回へ。

以下コメント返信
ネコ様
サーヴァントが7騎な以上枠が足らず、レ級+aはそれでも出すための設定改変でした・・・少し厳しいけど、艦隊戦をさせる為のご都合ってことで。
アルトリアさん後輩のチャンスを活かしました、何か出待ちっぽいだけど・・・というか直感スキルが便利すぎたかな?

rin様
臓硯は公式で『挺身型ヒロイン』に弱いから大和とも相性はいいでしょう・・・姫とかは捕食で強化したレ級にくっ付くかなと、前戦争は殆ど決めてませんが。


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