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No.41120の一覧
[0] 冬木防衛戦、深海棲艦『レ級』現る(Fateシリーズ×艦これ)新章始めました[ベリーイージー](2016/03/27 21:11)
[1] 序章・過去の出来事[ベリーイージー](2015/06/11 00:42)
[2] 一 聖杯戦争前夜[ベリーイージー](2015/06/11 00:43)
[3] 二 火種蠢く冬木にて[ベリーイージー](2015/06/19 00:21)
[4] 三 始まりの夜[ベリーイージー](2015/07/26 11:01)
[5] 四 二つの戦場[ベリーイージー](2016/03/06 01:48)
[6] 五 戦争二日目の出来事[ベリーイージー](2016/03/06 01:49)
[7] 六 狂気と狂喜[ベリーイージー](2015/08/30 22:26)
[8] 七 一人目の脱落者[ベリーイージー](2015/06/19 00:25)
[9] 八 因縁の始まり[ベリーイージー](2015/06/19 00:25)
[10] 閑話一 男の決断[ベリーイージー](2015/06/19 00:26)
[11] 閑話二 艦娘達と共に[ベリーイージー](2015/06/19 00:27)
[12] 九 地の底で[ベリーイージー](2015/07/26 11:14)
[13] 十 天に昇り、天から落ちて[ベリーイージー](2015/08/10 01:10)
[14] 十一 それぞれの亀裂[ベリーイージー](2015/10/04 21:03)
[15] 十二 戦いの後で[ベリーイージー](2015/10/04 21:04)
[16] 十三 うたかたの夢[ベリーイージー](2015/10/04 21:05)
[17] 十四 運命に続く日[ベリーイージー](2015/10/04 21:05)
[18] 十五 その先は見えず[ベリーイージー](2015/10/14 21:53)
[19] 十六 英霊達の宴[ベリーイージー](2015/10/14 21:54)
[20] 十七 離反者[ベリーイージー](2015/11/06 20:08)
[21] 十八 穢れた聖杯[ベリーイージー](2015/11/22 22:06)
[22] 十九 足掻く者と抗う者達[ベリーイージー](2015/11/25 02:27)
[23] 原点<ZERO>・一[ベリーイージー](2016/03/14 01:29)
[24] 原点<ZERO>・二(完)[ベリーイージー](2016/03/13 01:30)
[25] 幕間[ベリーイージー](2016/04/18 16:52)
[26] SN編前夜・・・AL作戦・序[ベリーイージー](2016/04/18 16:52)
[27] AL作戦・序二[ベリーイージー](2016/04/18 16:53)
[28] AL作戦 其一[ベリーイージー](2016/04/18 16:54)
[29] 幕間 時計塔の一日[ベリーイージー](2016/05/18 12:52)
[30] AL作戦 其二[ベリーイージー](2016/06/04 18:18)
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[41120] 幕間
Name: ベリーイージー◆16a93b51 ID:cc0b4777 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/04/18 16:52
『……てええっ!』

ドオオォーンンッ

何でもない日の午前のことだった。
英国、魔術師の巣窟『時計塔』に轟音が響く。
尚、先に述べた何でもない日との矛盾はない。

「……また『二世』か」
「大方何時もの『実験』、てか『実射』だ……放っとけよ」

若い者は面倒臭そうに、中堅層はまたかという顔をした後諦めるように黙りこむ。
対してそれが出来ない、頭の固い古参が頭を抱えた。
『前当主の遺体と遺品』手土産に、『エルメロイ』に取り入った男(但し本人にとって唯の師弟の義理、向うから持ち上げてきた)を古参連中は忌々しく思っていた。

「あー、報告を頼む」
「……はっ、実験施設でエルメロイ二世と取り巻きが……」
「それはわかる、で……」
「軍の払い下げの、『一四インチ砲』を各種魔術でレストア及び強化してぶっ放してます!」
「いや何に使う気だよ!?」

正解は『防犯』、更に言えば『相棒の武器をそれらしい名目』で使ってるだけ、そのうち常に共にある『水銀人形』が背負ってるだろう。
だがこれに、非常識だとかオーバーキルだとか誰も言えない。
何故なら上の一部、というか某『宝石翁』とかが面白がるというか爆笑しているからだ。
更に言えば、現代では自分達も科学と縁は切れず、寧ろ『魔術使いに成らない程度』に利用法を模索すべきという意見も有る(無自覚にだが某ロードがその筆頭)
『あの忌まわしき戦争』から『八年』、時間の経過と共に色々なものが変わっているということだ。

「ふ、ふふっ、やはり某『∨社』の火器は素晴らしい……国外だが、何時か大和の主砲とか弄ってみたいなあ」

砲煙でちょっと煤けながら、ロード(英国面)がニヤリと笑った。
英国帰りの艦娘と共に戦った彼は見事『英国面』に、主に火力に魅入られていた。

ドオオォーンンッ

「大艦巨砲主義、懐古かも知れないが、だが魔術が肩身狭く小さく縮まりがちな今なら……寧ろイケるのでは!?」

いや無えよと、常識ある者は思った。
そのロード(英国面)こそ、嘗てウェイバーと名乗っていた少年の成長した(あるいは染まった)である。



幕間一



『……続いて、てええっ!』

ドオオォーンンッ

『まだだ、リロード……てええっ!』

ドオオォーンンッ

ロード(英国面)がやらかすのは日常茶飯事だ、なので反応も其れなりだ。

「……本当に自由だなあの人」
「仕方ないって、英国面だし……」

あるゼミの生徒達が、轟音とそれに戸惑う魔術師達を同情する。
件のロード・エルメロイ二世の教え子達だ。
共に実射に出ている手遅れな先輩達と違い、まだ『浅い』者達は冷静だった。

(はあ、艦娘って……何というか、変な中毒性が有るんだなあ)

その中で深い溜息、『黒と青を混ぜたような髪色』の少女(間桐の薬物知識を扱う内に変質した結果である)がはあと嘆息する。
『これで二人目』なのだから。

「どうしたの、サクラ」
「ああ、ちょっと呆れてるだけ……」

溜息を聞きつけて、同じゼミの、そしてルームメイトでもある『金髪に青いドレスの娘』が心配する。
極東嫌いで有名な人物だが、年下相手には大人げないのか普通に相手するし意外に世話も焼いてくれる。
この『姉』にどこか似た先輩に、『齢十四』で時計塔で学ぶ『遠坂桜』が笑みを返した。

「大丈夫です、エーデルフェルト先輩」
「そっ、良かった……ロード達が馬鹿やるのは何時もの事よ、早く慣れちゃいなさい」
「はいっ!」

心配してくれた先輩にペコと頭を下げて、元気よく返事し彼女は勉学に戻った。
何故なら、『現場』で『最先端の魔術』を出来るだけ学ぶのがその役目なのだ。

(遠坂が蓄えてきた物は姉さんが何とかする……だから、私も全部覚えて帰らなくちゃ……)

姉が遠坂を『前の状態』まで立て直し、妹が知識を持ち帰って『それ以上』にする。
互いの役目を完璧に熟すと約束し、敢えて二人はもう一度別れたのだ。

「……姉さんも頑張ってるかな」

何となく彼方を、東の空を見て、桜は姉のことを思った。



その頃姉は『ある同級生』の喉元絞め上げていた。
がそこで力加減を間違え、相手がガクンと項垂れて、動揺から彼女自慢のツインテールが空を滅茶苦茶に踊った。

「……おうふ」
「……やべ、やっちゃった?」
「何で、さ……ご、ふっ」

赤毛の少年が悶絶し、下手人こと遠坂凛が顔を青くした。



少し遡り、始まりは『夕方の校庭』のある光景だった。
ある中学で、学生服の少女が首を傾げた。

「……あら?」

凛は『やや無理な』棒高飛びを繰り返す赤毛の少年が気がつく。
彼女は授業の調べ物で図書館に残っていた、当然既に陽が落ちかけている。
そんな中に熱心に良くやるものだと最初は思った。
それと少年の身長と比べ、(背丈のコンプレックスか見栄か)適性よりやや高いバーに挑むのに苦笑もする。

「……ああ、ん?」

が、次に抱いたのは呆れ、そして『怒り』だった。

ダン
ガッ

「ぐっ……」

少熱が跳躍し、がバーに引っ掛かって体勢を崩す、そして凛にとっての問題はそこから。

「お、お……うあ!?」

高飛びに失敗しマットに落ちる、だがその瞬間咄嗟にだろうか『身体強化』が為され落下の衝撃に耐えたのだ。
それから少年は体の具合を確かめた後、痺れたか両足に『軽度の治癒』をやってから立ち上る。
そうして、彼は再び跳躍を試す。

「……そこまでするなら、踏み込む時も強化しちゃいなさいよ」

思わず独りごちる、最低限のプライドか少年は踏み込み時の強化はしないのだ。

「いや違う、そうでなくて……」

突っ込んでから我に返る、それより凛にとって大事なことがある。
彼女は冬木の『霊地管理者(セカンドオーナー)』、そして少年は見知らぬ魔術師だ。
つまり、ここですべきは断じて突っ込みではなく。
スウと大きく息吸って、彼女はガアッと咆哮した。

「こらあっ、そこのモグリ野郎!」
「うおっ!?」
「……セカンドオーナーの目の前で、魔術の無断使用とは挑発かしら!?」
「え、あ、君も魔術、あっいや、オーナというと遠坂だっけ……」

何かに気づき、『聞きかじりの知識』を思い出しながら少年は言い訳しようとし、がキレた凛は無視して掴みかかる。
過度の運動で動きの鈍い少年の手を掻い潜り、凛の両掌が相手の喉元をガシと捉える。

「ぐえっ、苦し……」
「ようし、黙りなさい、軽く揉んで……」

が、ここでアクシデント、遠坂凛という娘は激情家で且つ妹や保護者というストッパーがここには居ない。
更にモグリの存在への怒り、見逃してきた自分の不甲斐なさ、二つが合わさって『半ば無意識的な強化』が発動してしまった。

メキ
ゴキンッ

『あっ……』

その結果『嫌な音』が少年の首から響いた。

「……おうふ」
「……やべ、やっちゃった?」
「何で、さ……ご、ふっ」

正しく厄日だった、凛にとっても『赤毛の少年』にとっても。



『ねえ、シロウ……』

銀髪の少女の悲しげな顔。
ふと過去を思い出す、特に『大火災の後に会った人』を。

『シロウはどんな大人になりたいの?』

侍従のセラ(ある戦争で、雇われかつ入婿を世話したりした)に連れられ冬木を訪れた『親子』と仲良くなった。
特に娘の方は少年の魔術の先生だ、こっちにとっては夢で自衛の手段、あっちには現当主との勢力争いの逃避だろう。
そこで、発端は忘れたが彼女が問いかけたことが在った。
その時は素直に『正義の味方』になりたいと言って、すると彼女は少し顔を曇らせた。

『そう、でも一つ考えて……正義の味方にも色々あると思うの』

どこか影のある笑みを浮かべ、師であり姉でもある人、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが幾つか例を並べていった。

『悪い人を殺、まあ何とかする、乱暴だけどそれも一つの形、理不尽を許さず実際にそれに立ち向かい続けるのもそう……他にも沢山有るかな?』

彼女は傭兵と(正確には色々違うが)その騎士を例とし、それから少年へと重ねて問いかけた。
『誰か』を思い泣くのを堪えるような儚げな表情で。

『シロウ、貴方は……どういう正義の味方に成りたい?それ次第で『泣いちゃう人』も居るかもしれないよ?』

この問いは少年の心に残っていた。
ただ漠然と憧れていた少年は『正義の味方という夢』はそのままに、『方向性』を模索し続けてた。
慎重にそうしなければと迷いながら、彼は学生と魔術使い見習いの二足草鞋な日々を生きていた。

『そうだ、俺は……』

だけどこの日、そんな迷いの中にある『正義の味方見習い』は一つ望みを抱いた。
痛切なまでに、彼はあることを望んだ。

『……そこそこ運の良い、女難じゃない正義の味方がいいなあ』

薄れていく意識の中で、今よりマシなら何でも良いと思った。
心の底からそう思った。

「し、しっかりしなさい、前科者は嫌よ!」

首絞めつつ少女が言い、なら離してくれと、『――士郎(衛宮邸に入り浸るので偶に衛宮と呼ばれる)』は心の中だけで叫んだ。



因みに、士郎はあっさり蘇生した。
『聖剣の鞘』、戦争時は衛宮切嗣が肌身離さず所持し、死後に綺礼の手を経てアインツベルンに渡った宝具の持つ効果だ。
蘇った彼に、凛はパニックの果てにゾンビと言ったり、やはりパニックから呼び出された『外道な保護者』に泣きついたり。
そんな幾つもの黒歴史を彼女は作ってしまった。

「……うう、泣いていい?」
「いや、頚椎逝きかけた、俺が泣きたいんだけど……」
「ふっ、面白い(……そうか、これが愉悦か!?)」

羞恥に泣いて、仏頂面して、何かに気づきかけてと三者三様。
これから後に、冬木で時々見られる光景の始まりだった。



幕間二・それぞれの日々



少年がウツラウツラという感じに頭を揺らす。

(……懐かしい『夢』見てた気がする、というより忘れたい『悪夢』……)

陽が土蔵に差し込む、夜が明けて、少年の意識がユックリと覚醒した。

「……ふわ、また『落ちてた』か」

ウツラウツラと座ったまま寝ていた『赤毛の少年』が、――士郎が寝ぼけ眼擦りつつ立ち上がった。

「寝落ち、何とかしないとなあ……にしても、まだ慣れないな、魔力流すの……」

起きた直後の混乱から立直り、士郎は気不味そうに頬を掻く。
こうなるのも彼の未熟さから。
魔術師の基本である魔力行使で一々負荷が掛かっているということだ。

「それにしても、イリヤが教えてくれた……強引に何度も魔力回路を作るの、何か神経にビリビリ来るんだよなあ」

実は間違った方法を教わったと気付かず(鞘があるから死にはしないという一種スパルタなやり方)、彼はもっと頑張らねばと意気込んだ。
そうやって、敢て負荷を掛けて魔術師歴が数年の彼を強引に伸ばしてるのだと、未熟な彼はまだ気づいていない。
そんな疑うことを知らない少年は姉貴分兼師匠に良いように使われていた(曰く『騎士』に鍛え上げるとのこと)

「はああ、上手く行かないなあ、っと……飯、準備しよ」

自分の未熟さに焦った顔をし、それからふと時間を確認した彼は慌てて土蔵を出る。
『七年前の大火災』の被害者である親は入院しがちで、それを心配したアイリの好意で屋敷に住ませて貰ってる、この朝食作りは彼なりの代価だった。

「ま、朝だけでもやっとかないと……セラさんが過労死しかねないし……」

また、自分以外料理が出来るのがアインツベルンから付いてきたメイドのみ、彼女が潰れれば家全体が不味いので出来ることだけでもやらねば不味いのだ。
流石に家族と離れた直後は作れなかったが、何だかんだ和食だけだが(当然ながら食べ慣れてるし)最近はそれなりに食える物が作れている。
多少は馴れた手付きで、せっせと彼は白米と焼き魚と味噌汁という黄金セットを仕上げ机に並べた。

「……よし、そろそろ完成です!」
「……うう、ありがと、シロウ君」

寝室から寝ぼけ気味なセラの声、士郎ほど早起きでない彼女に言付け頼んで、お握り数子包んでから学校に向かう準備をする。

「……俺は出ます、ご飯は冷めない内に食べちゃってくださいね!後オバさんも起こすように!」
「はあい、そうします……」

ノソノソと起き出すメイドに注意して、それから士郎は家を出て通う中学へ。
尚家主である先代聖女(夫を偲んで残っている、又今代聖女である娘の基盤を脅かさないのもある)はもっと朝が弱いので今も夢の中である。
一応は彼女が腹減って出てくるタイミングと料理の冷め時を前者がやや前に調整してあるから問題はないが。

(……あの人の夜行性、何とかしないとなあ)

とはいえ、息子(のようなもの)としては何とかしないと思わず考えた。
勿論士郎にも(火災の後遺症で入院続きだが)両親は居る、だが何だかんだ会えないから今は衛宮の者達も家族のように思えてきていた。

「……よう、今日も早いな、衛宮の坊っちゃん」
「雷河の爺さん、だから衛宮じゃないっての……」

時々衛宮亭で入り浸るからこんな風に言われ、でも心のどこかで認めている自分もいるので割りと手遅れかもしれない。

(……お、遠坂が今日は早い、珍しいな)

自分の家庭環境に悶々としながら、登校した彼は友人に挨拶しつつ教室へ。
そこで、優雅に微笑みながら読書する少女、遠坂凛を見つけた。
初対面では波乱が有ったが、互いに接触したかった(第四次のグダグダを再びしたくなかった)凛とアイリで『色々』と話をつけたので今は普通の友人だ。
だから世話になってるアインツベルンと深い付き合いならと『脛骨折り』の件を忘れることにしておいた(尤もその程度で戦争相手とは知らない、間桐も同程度だ)

ペコ

「……おはよう」
「ええ……」

但し知り合いとわかると周りが五月蝿い、互いに思春期の同級生の玩具になりたくないので表向きは挨拶する程度に留めてある。
すれ違い、それから『本の内容』をチラと見た士郎は一瞬凍る。

(八極拳の教本……この間兄弟子に負けてたからなあ、負けず嫌いめ)

一瞬彼女の『演じる』お嬢様に似つかわしくない内容に吹き出しそうになった。
が、その寸前相手が睨んでいることに気づき動揺する。
下手なことを言えば本の内容を『実践』だと目が語った。

「……な、何でもない」

キュッと思わず士郎は腹を、内臓を押さえて誤魔化す。
相変わらず『女に頭が上がらない』、衛宮を名乗らなくても彼も十分衛宮の男のようだった。



キーンコーンカーンコーン

「さて、今日はと……」

甲高い音が鳴ってその日の授業が終わる、士郎はさっさと立ち上がる。
が、その向かう先は家ではなかった。

「……はあ、あの根暗神父か……」

向かう先で待つ人物を思い少し暗くなる、そう彼は教会に向かおうとしていた。
が、その前に向かうところがある。
彼は敢て遠回りし、冬木各所、更に態々離れの『被災地後』を見てからやっと教会へ。

ギイッ

教会の扉を開き、そこで待つ『暗い瞳』の男が士郎を見た。

「……汚染魔力の残り、何箇所かヤバそうなのが有ったぞ」
「ご苦労、相変わらず……解析だけはやるものだな」
「五月蝿え、解析だけって言うな……そっちで浄化しとけよ、神父」

彼の魔術行使(といってもその本質は偏った一種で、解析はそれの副産物だが)相手にとても微妙な褒め方された(多分態とやってる)
一々引っ掛るような言葉を挟む神父を睨み、士郎は地図に印をつけて見せた。
呪いの四散から何年も経ち、だけど一部はまだ残っている、自身も被害者として思う所のある士郎はこうやって報告するのだ。
それを受けて教会が浄化、そこまで出来なくとも人に害がない程度に沈静化するのだ。

「……そっちにも『見れる』のは居ないのか?」
「残念だがアサシンくらいだ、それも……」
「それも?」
「人形の体に変えたことで、能力が不安定化し……感知力も下がっているから、そちら程の精度はない、暫く頑張ってくれ」
「へいへい、了解……」

教会付きの英雄(但し文体の一部)を頼ろうにもそう上手くは行かないらしい。
因みに、前回の数少ない生き残りのサーヴァント達は折角生き延びたのだと『曰く付きの人形遣い』を探し、体を用意させて今は人として生きていた。
彼女達のことを聞いた士郎やイリヤ達が大いに驚いたのは記憶に新しい(尤も士郎達からすればエキゾチックな気紛れ美人なのだが)

「……そういやアサシンさん達は?」
「……あいつ等なら『暇』だと……」

ポロンポロン

ふと問いかけ、するとピアノ演奏が始まる。
やたらと俗で情熱的な、明らかに賛美歌と違う、どこか異国情緒溢れる曲が教会中に響いた。
そして、並んでそれを弾く大小褐色娘が答えた。

『あ、ここでーす』
「……エキゾチックな音楽が響く教会ってどうよ?」
「聞くな、私は気にしないことにしている……何言ってもどうせ聞かないし」

自分探しに熱心な神父は相変わらず呆れられている(というか半ば舐められてる)ようだった。

「……何です、『元』主、何か問題でも?」
「いや……」
「なら、黙ってて……(ぼそ)はあ、これの自分探しが一段落せねば『会わせられない』な」

何かを企むような、綺礼達に聞こえない声音でリーダーのアサシンが物憂げな顔をする。
彼女も彼女で色々有るらしかった(個人的な話だが、最近良く異国の教会を訪れてるらしい)

「……で、ああ、話を戻すが……」
「ああそうだった、さっさと浄化やら沈静化やらやっとけよ……誰かが傷つく前に」

綺礼は弱味有り過ぎて何も突っ込めず、士郎も興味はないので話を戻す。
特に士郎は残留する呪いに怒ってるように、繰り返し対処を頼んだ。

「わかっている、『衛宮』よ……それにしてもボランティアなのに真面目なことだな」
「五月蝿えって、あれは……俺にとっちゃ『仇』なんだよ、まだ父さん達は病院から中々出れないし」

からかうように言葉に言い返し、そこで一瞬だけ士郎は『危うい』色を見せた。
自分もまた被害者で、だから仇討ちと言いつつ、それでいて(何もなければ熱意が燻ぶるだけで)呪いの存在にどこか充足感を感じているかのように。

「ほう、どこか……敵を待ち構えているように見えるぞ、正義の味方?」
「うっ、それは……」
「……難しい問題だな、正義の味方とて……鍛えた力をぶつける先がなくば唯の『隠者』なのだから」
「う、あー、わかったようなことを……」

綺礼が見透かすように言う、士郎の中には何か危うい炎が燃えていて、それをぶつける何かを欲していると。
そんな心の底まで探るような視線に、士郎は居心地悪そうにする。

「俺は、別にそんなんじゃ……」
「ふむ、まあ……悩むことだ、熱意に従うか抗うか、それは……近似値という形で私の『IF』に繋がるかもしれないのでね」
『……結局自分の事なのか』

刺激するだけ刺激し、結局自分探し(似た者同士、何かしら参考になると)まだ諦めてない綺礼にアサシンが突っ込む。
そして、散々弄られてから放っとかれた士郎は頭を抱えた。

「もう嫌だ、こいつ……遠坂が苦手にするのもわかる」
「ふう、善良な神父に酷い言い草じゃないか」
『……聞き流しとけ、少年』

頭痛を堪える士郎に綺礼が抜け抜けと言って、アサシン達が経験からアドバイスを飛ばす。

「……あっそうだ、後は一人で演奏お願い、リーダー」
「構わないが……何か予定でも?」

アドバイスの後、ふと時計を見て、小さい方のアサシンが演奏を止める。
何の用事かと問えば、彼女は何時もの無表情を崩し笑う。

「新しく開く模型店……『金剛のガレキ』を買うの!」
「……英雄?」
「聞くな……」
「あ、そういや、間桐の長老も行くって……『大和型』と『妙高型』を揃えるんだって!」
「……魔術師?」
「聞くな、飲まれるぞ……」

こんな感じに、少年と少女と元マスター達は破茶目茶な冬木で日々を生きていた。



「時間が流れるのは早いものね……いや子供の成長が、かしら?」

ふふと、美しい銀髪の淑女が笑う。
彼女は落ちる夕日の中軒先で娘達の衣服を繕い、ふと特に理由がないが仏壇に置かれた『遺品』を何となく見やる。

「ふふっ、今は未熟だけど、士郎君なら……違う『道』が見つかるかもしれない、そう思わないかしら『アナタ』?」

悲しいことが沢山在った、それから後は大変だったし、この先だってまだまだ見えない。
だがそれでも彼女は家族との時間を、立ち直りつつ有る冬木を精一杯楽しむつもりだった。
それが生き残った、後を任せれた者の役目だと思っているから。
そう思って、だから頑張ろうと、『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』は夫の遺品に頷きかける。

「さあ、ご飯の準備……は、セ、セラにさせるとして、お風呂炊かないと……」

不器用で料理下手でも、箱入り娘なりでも、それでも頑張ろうと。




自分で書いて何ですがロード変わり過ぎ、いや英国面の侵食が酷いのか・・・それと某親子関係が大分原作と乖離してる・・・
次から、ややシリアス・・・

コメント返信
三年寝太郎様
虫爺はオープニング飾った関係でどうしても目立っちゃいますね、対して神父は・・・ある意味これから、主な会話相手になる士郎が来たので前より目立つはず。

ご都合主義様
ええ、本当に別物です、やり過ぎました・・・まあ間に色々挟みつつも、原作つまり第五次まで行くのは決定ですから(まあその五次も変わりますが)
とりあえず、最終決戦に折角出してしかも逃げ延びた・・・ほっぽvs戦艦妹sを書いてきます、ついでに第五次への伏線とかも。

ネコ様
最後は総力戦というのは決めてました、一応全員に見せ場はやれたはず・・・続投組と新規は半々くらいの割合ですね、後新顔も前と繋がりを持たせる予定。
最後の三人は・・・残念ながら未だ会えてません、既に上司への尊敬捨てたアサシンが慎重にドッキリの準備やってます。

WW様
遠坂姉妹は環境考え色々変えて、能力的には『特化』予定、方向性の差はありますがそんな強化はしないかな・・・あっ妹は(性格は兎も角)曲者になるかも。

rin様
原作との変化が早速出てます、基本的にはキャラの配置の変化から逆算し・・・合わせて関係性も色々変わってます、まあまだ前回参加者が様子見ですが。
特に変わったのはウェイバー、『英国面』に完全汚染されてます、金剛の影響が数年後しに出た感じ・・・で、弟子もまあ影響は避けられないかな。
尚ほっぽですが、敵側の強キャラ同士で何となくレ級とコンビのイメージが・・・で、ヤンチャな姉と背伸びする妹な風に書いてます、偶にその妄想が溢れたり・・・


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