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No.41763の一覧
[0] Fate all of the world(オリジナル聖杯戦争)[四条中](2016/04/06 19:36)
[1] Trailer=夢幻[四条中](2015/12/17 22:12)
[2] Prologue[四条 中](2016/01/16 19:54)
[3] 第一話 正義の味方を目指す者[四条中](2015/12/18 19:31)
[4] 第二話 淫蕩、或いは深愛Ⅰ[四条中](2015/12/27 20:11)
[5] 第三話 淫蕩、或いは深愛Ⅱ[四条中](2015/12/27 20:12)
[6] 第四話 淫蕩、或いは深愛Ⅲ[四条中](2015/12/27 20:14)
[7] 第五話 いと暗き陰翳、無上煌めく日輪Ⅰ[四条中](2015/12/26 19:55)
[8] 第六話 いと暗き陰翳、無上煌めく日輪Ⅱ[四条中](2015/12/26 19:55)
[9] 第七話 麗しのポリーナⅠ[四条中](2016/01/01 22:53)
[10] 第八話 麗しのポリーナⅡ[四条中](2016/01/06 21:22)
[11] 第九話 麗しのポリーナⅢ[四条 中](2016/02/08 22:09)
[12] 第十話 縛[四条 中](2016/02/19 23:35)
[13] 幕間 静息[四条 中](2016/02/21 21:52)
[14] 第十一話 百鬼夜行[四条 中](2016/03/04 17:07)
[15] 第十二話 百鬼夜行――矛担[四条 中](2016/03/20 22:51)
[16] 第十三話 百鬼夜行――玄陽[四条 中](2016/03/26 22:20)
[17] epilogue[四条 中](2016/04/06 00:04)
[18] Episode2 King of witch trial --notice[四条中](2016/04/16 20:55)
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[41763] 第十一話 百鬼夜行
Name: 四条 中◆96eb1072 ID:bb2d1dd3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/03/04 17:07
 ふわりと、風がレースのカーテンを持ち上げ、ベッドの角度を上げ窓から外の景色を見つめる女の髪を撫でた。
 瞬間、その横に寄り添う男の、女の手を握る力が一層に強くなった。
――風が運んできた女の匂いに、嘗ての彼女を感じなかったから。漂ってきたのは幾百幾千と老若男女様々な体臭と、雑多な薬の蓄積物の臭い。病院独特の、死の臭いとでも言うべきか。
 男は言い知れない不安に駆られたのだ。
 故に、強く、最早弱り骨と皮だけになったその手、壊れてしまうほど強く、知らず知らずに握っていた。

「痛いよ」

 言葉と共に返した、困ったような笑みは、ただでさえ濃く刻まれた女の目の下の隈をより一層に濃く見せる。

「すまない……」

 言葉を返しながら、男は女の顔から目線を逸らした。
 男の胸をじりじりと抉るには十分に過ぎる、重い沈黙が流れた。
 それに耐えきれなくなって、最初に口を開いたのは、女の方。
 今度は、溢れんばかりの喜色であった。
 
「虎か美女か――って分かる?」
 
突然の問いに男は顔を顰めた。

「分からないの?」

 何故か、勝ち誇るような笑みで追及してくる女に、男はあからさまに舌打ちをする。

「あれ? 怒った?」 

 そう男に訊ねる女の顔は何故だか、玩具で遊ぶ子供のような無邪気さであった。
 男は頭痛に頭を抑えるような、そんな仕草でもって

「俺が、そんなことで怒るかよ……」

 と、言った。

「それに、虎か美女かだろう? 知ってるよ、俺を誰だと思っている?」

 男は無気になって答えた。

「……とある国の王女が、貧民の男に恋をした。併し、それを許さなかった国王が、男をある刑に処す。それは、二つの扉を選ばせること。それぞれには虎と美女。虎がいる扉を選べば男は虎に食われてしまう。美女のいる扉を選べば、男はその女と結婚する。王女は死に物狂いで、それぞれの扉にどちらがいるかを調べ出し、王子に扉を指示しようとしてふと気が付く。虎を選べば、王子は死んでしまう。だが、美女と王子が添い遂げるのも、一人の男を愛する女としてとても耐え難い。さて、王女が選んだのは美女か虎か? そういう話であったな」

 女は、そうだねと言って頷いた。

「それが如何した?」

 男は訊ねる。

「此処で大事なのってぶっちゃけ、これが究極の選択ってことだけなんだけどね」

 男の顔を真剣に見つめながら、けれど果てしなく遠くを見つめるかのように、その瞳は伽藍堂であった。

「君にとってどっちが美女でどっちが虎なのか? ふと、気になってね」
「お前……」
「そんなに怖い顔しないでよ。ほら王女だって、どっちに何があるか調べたじゃん。それと同じ。大事じゃん?」

 満面の笑みを浮かべながらけれど、その奥はやはり屹度伽藍堂であった。
 男は内心で、憤りながら、そして心を痛める。

 ――如何してそれを聞いてしまうんだ?

 と。
 それを知らずになのか、知っていて敢えてやっているのか、まるで創作事にはありがちな探偵のその如くに、顎に手を当てながら女は唸り出す。

「――私がいない世界で、私が残したものを愛し続けるっていうのが、君にとって虎なのかな?」

 自分の腹を撫でてそんなことを言う女に男は、匕首で脇腹を刺されたかのように顔を歪めた。相も変わらず、女は無邪気に笑っているから。

「そりゃそうだよね! 君にとっての一番の美女って私だし! 消去法でそっちが虎になっちゃうよね!」

 からからと笑う女であったが、

「げほごほッ!」

 大きく咳込んだ。

「大丈夫か⁉」

 男は慌てて女の背中を擦った。
 ふと見れば、彼女の白い掛け布団に、真紅の染みが、一滴、二滴。

「そんな……」
「あははは……。肺もおかしくなっちゃみたい……。煙草、止めたのになぁ……」
 
 力無く、女からは乾いた笑声が零れる。
 

「俺が!」

 考えるよりも先に男は女を抱いた。


「俺がお前を救ってくれる人を探す。幾ら積んでも構わない。術士でも、医者でも、兎に角、取りこぼさずに、お前を救ってくれる人間を……」
「駄目よ」

 必死の言葉を女はたったの一言で打ち砕いた。

「君の目でも出来なかったんだから、そんなの奇跡でも、“魔法”みたいな奇跡が起きなきゃ、叶いっこないよ」

 男の肩を女もまた抱いて。
 そして、もう一つ、男にとっては酷く、残酷なことを……。

「――だからね、私の為にも、君には虎を選んで欲しい。月並みなロジックだけどさ、私は……」
「言うな!」

 男の叫び声は震えていた。

「――その牙が、首に食い込んでいる限りは、君は私のことを忘れはしないから。それで良いよ」

 ――そんなに愛しているなら、私、死んだって構わないよ。

「ねぇ――」


 †


「シキの旦那ァ! シキの旦那ァ!」

 杜に、明朗な少年の声が響き、それに呼応して鳥の羽音がけたたましく鳴った。
 時刻は草木も眠る丑三つ時。眠っていた草木も容赦なくたたき起こされたに違いないと、そう錯覚して問題ない、大声であった。
その声に、天を衝くような大木を背もたれに眠っていた男は――春夏冬詩生《あきなししき》は目を覚ます。
 なんとも縁起の悪い男であった。年齢は四十代程。黒の着流し、黒縁の眼鏡、無造作な黒の髪、更に黒革の編み上げ靴と頭からつま先まで黒以外の色が存在しない。
 眼鏡の奥の瞳は、見れば誰もがぞっとしてしまいそうな程怜悧でいて、そして一切の光もなく。
 また、大声で起こされた所為もあってか、酷い仏頂面をしていた。
 まるで、中東の紛争地域を梯子してきたような――。
 そんな顔を自分の名を呼んだ目の前の男に対して向け、

「やかましい、我道《がどう》。起こすなら静かに起こせ。給料差っ引くぞ、三万ほど」

 不平を述べつつ、億劫そうに頭を掻いて立ち上がる。

「そりゃないっすよぉ! アンタがスゲェよく寝てて全然起きないのが悪いんす! 詰りは自業自得ってヤツっすよォ!」

 そう涙目で叫ぶ二十代程の男に、詩生《シキ》は嘆息した。

 ――お前は本当に泥棒なのか。

 と。
 一般的に、一番物音に気を払っていると認識されている人種の一つであろう。
 併し、詩生の目の前にいる自称“嘘と盗みのエンターテイナー”の、一文字我道《いちもんじがどう》は如何にもやかましい。
 整髪料で逆立てられた檸檬色の髪、紅蓮のレンズのサングラスは、へらへらとした調子の良さそうな笑みと相まって、軽薄な印象を醸し出している。ただでさえ寂という言葉とは離れた見目だというのに、服装が更にそれを際立たせている。冬場だというのにハイビスカスが描かれたアロハシャツ。その上にシルバーでの過剰な装飾とペンキでの落書きを施した不可思議な意匠の濃紺のデニムジャケット。下はダメージ加工が施された、レンガ色のレザーパンツ。
 この男の素性を知らぬ人間は、屹度彼が泥棒だと考える事すらしないだろう。
 またこの男の素性を知り、そして盗みを頼んだ人間は一気に不安に駆られるだろう。
 ――日本に、世界にすら名前を知られた、“怪盗・ぬらりくらり”の一文字我道の実像を知らず、噂でしか聞かないならば。
 詩生は半ば微睡の中にある意識でそんなことを想いながら、

「……泣くな、貴様、そろそろ白寿も超えるだろうが。みっともない」

 その言葉に我道は直ぐにパッと明るくなり、

「いや、普通に嘘なんすけどね」

 とけろりと泣き顔を満面の笑みに変えた。

 我道の前に手を差し出していた。

「この手は?」 
「早くブツを出せ。そういう意味だが?」
「ばっちし盗み果せたかって、聞いとかんで良いんですかい?」

 その言葉に、詩生の鼻から息が漏れる。

「一文字我道が仕損じる? 在り得んな。盗窃なぞ、貴様にとってはジークフリートにとっての闘争のそれだろうよ」

 概念でさえなければ何でも盗める。
そう豪語し、そして実際に成してしまう我道の腕を知っているから、春夏冬詩生は命じたのだ。
 “仕事屋”――日本に拠点を置く、多国籍魔術犯罪集団、言うならば由緒正しくない魔術使いの首魁として、その一部門を統べる長に。

「そんなこと言わんでくださいよー! 俺っちにとっちゃ、盗みは冒険! こいつを手に入れるのにも、聞くも涙、語るも涙のドラマがあったんすから!」

 そう口を尖らせる我道が懐から取り出し見せびらかした白い骨の欠片、玄奘御弟大闡三蔵の聖遺骨を、盗み出すことを。
 然も、ただ盗み出すのではない。我道の名も、その影にある、詩生の存在も気が付かせずに、である。
 結果は語るまでもない。薬師寺が跡形も残らない爆発にも関わらず、我道の目撃情報すら一切なく、また捜査線上にも上がらない。更に、神秘に精通した武僧達の目ですら、我道が意図的に残した偽りの痕跡を信じてユグドミレニアにその怒りの矛先を向けている。
 ……尤も、詩生は総てに満足しているわけではないが。
 従って、あほんだらの部下の頭を小突くのは自明の理であった。

「いてぇ! なにするんすか⁉」

 軽く、拳大の石が爆砕する程度の力で殴りつけると、我道は喚いた。

「涙を流したのは此方だ、馬鹿者め。如何して爆破した?」
「すっごい爆破だったしょ? 如何見ても魔術にしか見えなかったっしょ? しょしょしょしょ?」
「嗚呼、舌を巻くばかりだったよ。少しでも神秘に精通しているモノが見れば、魔術的なモノだと勘違いしてしまうだろうな。美事、美事。いっそ盗人は辞めて、発破を生業にしたら如何だ、私が言いたいことはそういうことではない!」

 今度は逆水平チョップで我道の額を打ち抜く。
 ただ盗み出すならば、爆破の必要などないのだ。
 況して、薬師寺は国宝を多数蔵する、日本の名だたる寺院の一つ。
 隠密性を欠いているのは言うまでもなかった。
 果たして、凸を抑え涙目で唸る、我道から返って来た言葉は、

「いや、だってさ、相良豹馬くん。大した魔術師じゃないって話だからね? 嘘っぱち《フィクション》の中くらいは、偉大な魔術師気取らせてあげたくて、ね?」

 という、ふざけた理屈であった。
 頭痛に、顔を顰め、

「……すぐ滅ぶというのに。栄光も糞もないだろう」

 と指摘した。

「てかてかぁ! そこ! そこなんすよ! なんでユグドミレニア、滅ぼしちゃったんですか? カワイソウじゃあないですか」
「玄奘に纏わる聖遺物を求めるにあたって、如何しても八馬十尺と浄玻璃三十二衆が障害になったのでね。幾ら私やお前、厭、仕事屋総出で相対しても、成す術なく滅ぼされるのがオチだ。故に、尊い犠牲者が欲しかったのだ」

 淡々と、詩生は語る。
 そもそも詩生が頭目を勤める“仕事屋”とは富や権力の為ならばなんでもする、魔術使いや異能者の集団である。メンバーに妖怪を冠した異名で呼び合うという妙な慣例があること、本拠地が日本であること、構成員には人種の纏まりすらないこと、それ以外の全貌は一切不明とされる。一人一人が犯罪に精通したエキスパートであり、仕事の質の良さと、金さえ積めば何でもやる扱い易さ、そして芸術域の神秘隠匿と証拠隠滅能力が売りの――併しただそれだけの集団。
 殺人を生業としている構成員も――例えば詩生や盗窃部門の長でエースの我道がそうであるが――いることにはいる。
 だが、その全員を合わせた所で、全員の平均した力量が埋葬機関の末席と同等とも言われる浄玻璃三十二衆に敵う是非も無し。
 魔術協会の狩猟に長けた魔術師を三十ばかりも集めてしまえば無惨な敗走を決めるだろう。
 故に、盗み出すその前に、魔術協会の中に噂を流した。ユグドミレニアが聖杯戦争のことを嗅ぎまわっているという噂を。
 そして、我道をユグドミレニアの人間に化けさせ、ワザとその姿を目撃されたのである。

「そもそも、ユグドミレニア没落の原因を作ったのは私達だからね。とどめも刺してやるのが慈悲というものだよ」 

 詩生は虚無的に笑い飛ばし――今この時だからこそ――述懐する。
 思い出されるのは未だ戦時中の頃。雑司ヶ谷の春夏冬亭に足を運んだ見目麗しい白い肌とブロンドの髪の女。貴族のような気品を持つ彼女は事実貴族だった彼女。自分の前で急に泣き出したことを、詩生は今もつい昨日のように思い出すことが出来る。

 ――望まない結婚を、両親に強要されている。私には好きで好きで、この身が裂けても良いくらい、大好きな人がいるのに。

 それを聞き、山のような金を積まれた詩生は、その結婚相手の魔術師に纏わる風聞を広めた。
 遠くない未来に、彼の一族の回路は枯れ落ち、その栄華は凋落すると――。
 当時の法政科長にその言を信じ込ませたこともあってか、その根拠のない噂は真実としてあっという間に流布し、結果その魔術師の一族は没落、女性は本当に愛する男と結ばれる。
 そしてその魔術師――当時、新進気鋭の魔術師と持て囃されたダーニック・プレストーン・ユグドミレニアは地位を失い、その末に生まれたのが、現在の烏合ユグドミレニアである。
 これを思い出す度、詩生は思うのだ。地獄の沙汰も金次第、見ろどんなに立派な志と誇りを持っていても、金の亡者に遠く遠く、遠く及ばない。
 そして同時に思う。こんな金の亡者すら操ってしまう愛の力とは何者にも勝ると。
 
「テメェが安全に強い英霊呼んで、聖杯戦争に勝ち残りたいつー我欲が! よりにもよって慈悲ときますか! くっはっはっは! こりゃあ、笑止だ!」

 そんな詩生を見て、我道は腹を抱えて哄笑する。

「誰に対するとまでは言ってないだろう?」

 詩生はしれっと返し、

「それよりだ。そんな詰まらんことを指摘する暇があるなら、魔法陣を書くのを手伝ってくれ」

 序でに、もう一つ仕事を押し付ける。

「ひゃっ? 残業代は出るのかにゃ?」
「馬鹿者め。サービス残業に決まっているだろう」

 我道の笑みが、絶対零度に凍結した。

 †

「俺は社畜だぜぇ~。何でもぉ~出来るぜぇぇ~」

 我道はボサノバ調の即興歌を叫びながら、杜の開けた空間に、円を描く。
 ライン引きを走らせて。
 然も、唯のライン引きではない。初等教育に於いて、体育の授業などで使われるそれとは違い、粉に用いられているのは消石灰などではなく、人骨の粉末であった。
 血液と比べればあまり一般的ではないが、人の骨も神秘を貯め込みやすいものの一つであり、儀式の魔法陣を描くのに使う魔術師も少数ながら存在する。
 今回は聖人骨を触媒に用いた召喚ということで、相性を考え、粉砂糖よりも細かく砕いた童貞の若者の骨が筆記具にチョイスされたのだ。
 大まかな個所を我道が、細かな個所を詩生が同じ材質のチョークで描く。
 描きながら、詩生はあることに気が付く。自分の絶好調は、東雲の頃。季節や時期に依らず、夜が橙色に燃え盛り始めたその瞬間に最も力を発揮する。
 詰り、このままの調子で黙々と作業を続けていると、魔法陣を書き立てたタイミングで召喚を始められない。

「――それはそうと」

 そこで、その時間の調節の為に口を開く。
 会話しながらの作業ははかどっているようでいて、その実殆ど進んでいないと言う場合が殆どであるから。時間稼ぎには丁度良いのである。

「なんすか?」 
「ロード・ユミナのことだが」
「って、誰っすか?」

 返って来た言葉に、詩生は脱力しそうになる。

「此の前、聖槍探索を頼んできた男だ。あれで私は鬼松の聖杯戦争を知ることになったんだが……」

 魔法陣を書き続けながら、詩生は我道の表情を確認する。
 全く覚えがないと言わんばかりに、口を半開き、呆けていた。

「ほら、あれだ。ゲッツの甥っ子の」
「ああ、アイツね! いっつもおじちゃんの足にひっついて離れなかった泣き虫坊やの、ナイトハルト坊ちゃんのことか! スッゴい立派になりましたよねぇ、アイツ。殺し合いにだけはなりたくねぇレベルの殺気つーね」
「……まぁ、そのナイトハルトなんだが」
「如何したんすか?」
「令呪を取られたらしい。然も、お前が絶対に避けたいと言った殺し合いでな」

 我道は言葉を失った。
 ついさっきまで忘れていたというのにだ。それ程、思い出した彼に受けた印象というのがあまりに強烈であったということか。

「お上の威光で令呪を奪われたというならまだ分かる。君主として、政治屋としてのあの男はド三流だ。“ユグドミレニアが聖杯戦争に参加しようとしている”とたったそれだけを言ってさえ他の君主に胡乱がられるような、な」

 実際、令呪を奪われたことを貴族の誰もが嘲笑った。ナイトハルトを助け、令呪を奪った者を厳罰に処すではなく、嘲笑ったのだ。
 これは態々権力を使ってやるのも億劫だと周りから軽んじられているということ。
 ただ血の気の多い魔術が得意なだけの取るに足らない餓鬼を制御しておくために取りあえず与えた首輪としての君主の地位など、魔術協会側にしてみれば紙切れも同然なのである。 
 これで、当のナイトハルトは力で以て地位を奪い、研究費だけ取り立てることが出来る立場にあり付けたと喜んでいるのだから、道化としか言いようがない。

「だが、学究、戦闘屋としては一流だ。こと魔術が関わっている闘争で負ける事など在り得ない筈なのだ」

 詩生は何処か苛立ちを露わにしながら懐から黒い紙巻煙草を取り出し、一本銜え、マッチで火を点け一呑みする。
 チョコレートを思わせる甘さの中に、酸味を伴った苦味を持つ煙が、脳の神経を締め付ける痛みが、その苛立ちを緩和させる。
だが、動揺が完全に緩和出来たというわけではない。ナイトハルト・フォン・フッテンとは詩生にとっては古い友人の甥っ子で、その人生を殆ど見てきた一人だ。
 封印指定魔術師三十人切り、単独での死徒殺し、衛宮切嗣の再来と言われた魔術師殺し“エドウィン・キルケゴール”を仕留める等、武功に関しては枚挙にいとまがない。
 故に今回の聖杯戦争で最大の敵だと目していたし、相対を避けていた人物である。

「でも、実際負けてるんすよね? 一体誰がやったんすか?」

 その問いかけに、また詩生は紫煙を吐いて答える。

「“自涜”のヘルバという封印指定の執行者だ。貴族連中の間でお遊びのように広まっている“最強議論”に名を連ねるヤツだな。属性は風で、専門系統は魅了。催淫薬や毒薬の作成、他に宝石魔術も得意とする。短刀術の達人で、ナイフ一本でAランク相当の魔術を行使する犯罪者を殺害したこともあるほどの腕の持ち主、だそうだ」
「うは!これまたメンドーそうなのが出てきましたねぇ」
「そうだな――魅了を専門にするような輩は、一癖も二癖もある策謀家という連中が多い。恐らくユミナ教授も真正面から潰されたというより、二重三重に張り巡らせた罠に知らず知らずのウチに嵌ってしまったのだろう。……より厄介な人間が出てきてしまったものだ」
 
 顔を引き攣らせる部下を尻目に、詩生は吸い尽くした煙草を陣の外に吐き捨て、次の一本に火を点け、魔法陣の作成に戻る。
 
「やばいっすねぇ。そいつ以外の連中がザコだと良いんすが……」

 戦々恐々とする我道の方を一瞥もせず、詩生はチョークを走らせ続けながら、銜えた煙草を息継ぎ代わりに空いた片手に一旦置いておく。

「他……か。そうさな。現時点で分かる限りでは……。
まず我等やヘルバ嬢と同じ、外来の魔術師からはポリーナ・アフェナーシェフ。属性は地で、魔術系統は天使語。その道では神童と言われていたらしいが家が没落し、そこからの消息は家族ともども不明だったそうだ。……私の思うに、聖杯にかける願いは一族の復興だとかそういうものだろう。金や権力に固執する人間は恐ろしい。闘争を知らん、魔術上手の餓鬼と侮ると痛い目を見るだろうな」
「でしょうね。アンタを見ればよく分かる」

 一応は目上にあたる人間に対して、あまりに無礼千万に過ぎる言葉であるが、詩生はするりと流した。

「もう一人、外来の魔術師から――というか、これは代行者か。慈島理睲、まだ十七歳の少年だな。五十を過ぎた肉体で未だ前線で戦い続ける“熱心党”の慈島辰吏と、クラーキン家の元家長アリーナとの間に生まれた子で自身も十二歳から戦場に出ている。この歳にして、手に掛けてきた魔術師の数は両手の指では足りず、死都の殲滅戦にも積極的に参加し、中々の戦果も上げているらしい。生粋の戦士といった所だな」

 詩生はまた、手に持った煙草を一呑みする。
 いつの間にか、がらがらと、ライン引きのキャスターが地面を鳴らす音が消えていた。

「如何した、我道? 手が止まっている。時は金也。時間を無駄にする人間に払う金は……」
「……旦那、アンタ如何してそこまで落ち着いてられるんすか?」
「我道?」

 ふと、詩生が我道の方を見ると、その表情は軽薄な笑みではなくなっていた。憐憫、困惑、呆れないまぜになったなんとも言えぬ顔で、首領を見つめていた。

「他人事だからへらへらしてられる俺が言えた義理じゃあありやせんが、アンタ、今、美貴夜サンがあんなんになって辛い筈だ。縋るモンは聖杯しかねぇ。なのに、展望は暗いときてる。だっつーのに、旦那はいつも通りだ。冷静だし、冗談も言う。言っちゃなんだが、不謹慎じゃあないんすか? もっとあるでしょうが、悲しむだとか、落ち着かないだとか」

 紫煙だけが揺らめいた。
 非情過ぎる人間に対する苛立ちか。或いは、詩生という人間に対する幻想か。
 後者かもしれないと、詩生は推察した。一匹狼の、根無し草の追いはぎで、食うにも困っていた我道を拾って一体どれほど時が過ぎたのか。信頼も、敬意も、身を焼く様に伝わってきている。
 成程、好きな役者がヒロポンか何かをやっていた知った時のあれに近いか。ようは自分の頭で築き上げた虚像と、そこに在ってしまった実像との齟齬を受け入れられない、その言いようのない時の失望。
 
 ――すまない。

 詩生の口から零れたのは、その言葉ではなく、煙であった。

「泣いて、そぞろに、それで美貴夜が、その肉に宿るモノが、助かるならばそうしているさ。だが、そうはならない。ならば、努めて尋常であった方が良い。アレは私に然う望むだろう」
「旦那……」
「それに、私が事を仕損じたことがあるか? ないだろう? ならば、常態であるに越したことはない。何しろ私は美貴夜を助けなければならないのだからね。異常であることは今の私には在り得てはいけないわけだ」
 
 でも、我道は言葉を繋いだ。

「それでも、辛い時くらいそういう風に振る舞うべきっす。じゃねぇと余計に辛くなりやすよ?」

 フンと詩生は鼻を鳴らした。

 ――有難う、我道。

 部下に感謝の言葉も出せずに。
 代わりに口をついたのは、事実を伴った強がり。

「……だがな、実際そう分の悪い戦いでもないんだ。危ない連中はこの三人だけ。所謂、御三家と呼ばれる連中は、取るに足らないな」

 次の煙草をと、懐に手を伸ばしたが、もう空箱であったようだった。
 チッと舌打ちをし、そのまま話を続ける。

「まず杉菜坂家からは長女で次期家長の永久子。協会に提出された書類に因れば、回路の量:EXに、質:B。歩く大源と評される程の魔力量を持つ化け物とのことだが、調査によれば魔術師的には破綻者で、自尊心が強いところはあるが人間的といえる範疇で生きているごく普通の少女だということだ。……簡単に言えば血の色も分からないトウシロだよ。いざ戦場に出ても右往左往が堰の山だろう」

 その言葉に、我道の顔に仄かに明かりが灯った。

「次に星居家からは、長女の実葉。才気に恵まれた次女が出てくると思ったが、如何いうわけか劣った方が出てきてしまったわけだ。回路の量:D、質:E-、回路編成:異常、過去に例を見ない程劣悪、泥が敷き詰められた煙突のよう……魔術協会がここまで扱き下ろしてくる例なんぞ滅多にないよ。というかこの例えのセンスにツボってしまった。笑いが止まらなかった」
「でも、星居家や杉菜坂家ともなれば結構な金持ち。聖遺物だって相当なモノを用意している筈。出てくる英霊に因っては」
「ああ、それは大丈夫だ」

 その言葉に我道はほへぇと、妙な声を上げる。

「御三家についてはどの聖遺物を手に入れるか、それも調べさせてある。まず、杉菜坂に関しては幅が広く、呂布、モーセ、スパルタスク、アリストメネス、アリスタゴラス……とその数三十にも及んだ。然もどいつもこいつも反乱や反逆、裏切りに縁が深いか、逆に依存とも思える強い忠義を主人に尽くした英霊ばかりだ。杉菜坂永久子は兎も角として、その親は典型的な魔術師であったというわけだ。神秘を蓄積した古い時代の英霊ばかりを、有体に言えば“強さ”ばかりを気にして選んでいる。然も、そいつらの性質なんかを度外視してな」

 召喚されるサーヴァントには人格がある。魔術師の多くは強い使い魔程度にしか認識しないそれであるが、明確な意思や感情の方向性というものがある。
 それを考えて、わざわざ玄奘三蔵の聖遺骨などというものを選んだ詩生にしてみれば、上げられた英霊を敢えて選ぶなど論外に等しかった。
 サーヴァントなど呼んでみるまで如何いった人格の者が出てくるか分からないのだ。況して、奴隷解放の指導者や裏切りに生きた武人などにはその思考に“従う”という回路が存在していないかもしれない。また逆に忠臣であったならば、現世の主人を主人と認めず、その所為で齟齬が生じるかもしれない。
 兎に角、ただでさえ不確定な存在を呼び出すのだ。敢えて、裏切りの可能性を持つ者を呼ぶのはあまりにも危険を孕み過ぎている。

「……況して、杉菜坂永久子は素行調査の結果を見るに、周りから持ち上げられることに慣れてしまっているきらいがある。それを鑑みるに、自爆という可能性も在り得なくはない」
「じゃあ、星居家はどうなんすか?」

 そこで、クツクツと詩生は突然噴出した。

「黄金に輝く鳶の羽根……だそうだ。十中八九、神霊級の大英霊に違いないが、星居実葉のような劣等の身には余るだろうな。恐らく、聖遺物なしの召喚で弱小の英霊が現れるか、召喚を敢行してそのまま枯渇で死ぬか、二つに一つと見た」
「で、最期のメンドーサは?」

 瞬間、詩生は顔を覆うようにし、
  
「はっはっはっ!」

爆発するかのように高笑いを始めた。

「旦那?」

 心配そうに、我道は詩生の顔を覗き込む。

「いや、すまない。これが、調べていったなかで一番のハイライトでね。いや、これほどの僥倖があってたまるかと思ったよ」
「勿体ぶってないで早く言って下さいよォ!」

 咽るような笑声を、咳払いで掻き消すようにして、詩生は答えた。

「メンドーサ家のマスターは既に敗退していた」
「え?」
「監視を任せていた“狂骨”からの報告を聞いてね、私も驚いたのだが。メンドーサ家の当主、ディエゴ・メンドーサは召喚したハサン・ザッバーハと思われるサーヴァントの手に掛り死亡、そのサーヴァントも直後に消滅した……と、いうことだ」

 動画もあるぞと、詩生は懐から携帯を取り出し、隣に来いと我道に手招きした。
 半信半疑の儘、隣に座り、携帯の画面を覗く。

『た、助けてくれヤメロ! ヤメロォ!』

 動画の冒頭から携帯が壊れそうな程の叫び声が響いた。
 映し出されるのは、魔獣の死骸や瓶に浮かんだ人間の頭蓋、生物としての体を辛うじてしか守っていない歪な形の蜥蜴のような生き物が入ったゲージと、典型的な魔術師の研究室。
 そして、その部屋の隅へ、隅へと追いやられていく男が一人。
 モスグリーンの軍服めいた服に身を包んだ、三十代半ばほどのラテン系の精悍な顔立ちをした中背が、如何やらメンドーサ家の家長ディエゴであるようだった。
 右手を抑えている。正確には、右手が在った箇所を、か。彼の右手は切り落とされていた。
 其処に令呪があったことは、詩生や我道の想像に難くなかった。
 
『その命令《オーダー》には否。儂は貴様を殺すと決めている』

そして、画面の隅から両手に短刀を持ち、その男ににじり寄る異相。
 不自然なほど絞られた痩躯と、体の八割を足が占めた異様な体のバランス、棒のように細くそして地に着くほど長い両腕、そして黒いローブを纏い、覗く貌は髑髏の面。
 ハサン・ザッバーハ。暗殺教団と言われた、イスラム教ニザール派、またの呼び名をサーヴァントのクラス名の一つであるアサシンの語源となったハッサシン派の長に代々受け継がれてきた名。冬木式の聖杯戦争に於いてはアサシンのクラスで呼べる唯一の英霊である。

『な、何故だ! 貴様も聖杯が欲しいのだろう? なのに如何して⁉』
『知れたこと。暗殺者と揶揄されようとも、儂はムスリム。腐肉を貪る術師にこの身を預けてまで願いを叶えようなどと、そのような卑しさをムスリムは持たぬ。それだけよ』
『くそう、くそう!』

 ゆらりゆらりと、揺らめく影絵のように、アサシンはゆっくりとディエゴを追い詰めていく。

『こ、これでも食らえェ!』

 ディエゴはやけぱちに叫びながら、懐から何かを取り出し投げつける。
 それは、小型の屍喰鬼。体内から肉を貪り食らうようにプログラミングされた小さな暴食《タイニー・グラトニー》。
 併しアサシンの体はそれをはじき返した。

『断想体温《ザバーニーヤ》。儂の体は総てを通さぬ至硬の鎧。そんな玩具が通用するか』
『ひぃぃぃ!』

 にじり寄って、にじり寄って、にじり寄って。
 追い詰めて、追い詰めて、追い詰めて。
 ディエゴの希望が総て失せ、残り余さず、絶望に堕ちたその瞬間――。

『――それではさらば《アッラーアクバル》』

 断末魔と共に、バラバラに裂かれ、噴出した血しぶきと、肉しぶきとで画面が真っ赤に染まった。

「……うはぁ、B級ホラーみてぇ」

 我道はまず、率直な感想を。

「でも、如何してアサシンがディエゴを殺したのか、理由が分かんねぇなぁ……」

 次に、率直な疑問。

「言葉の通りであろう」
「いや、だからそれが分からんのですよ」
「メンドーサ家の系統は、錬金術《アルケミー》と死霊術《ネクロマンシー》の融合……さて、死霊術で一番有名なのは死体を紡ぎ作成する死喰鬼であるが、あれの源流は果たして何処の伝承だったかな?」

 詩生の言葉に、我道はあっと声を漏らした。
 ブードゥ教の動く死体《リビングデッド》ゾンビと結びつけられがちなグールであるが、元をたどればその発祥はアラブの死体を貪り、そして食らった人間の姿を真似る力を持ったハイエナの姿をした魔獣である。
 アラブ……詰り、イスラム教発祥の地と同じ。そして、アラブ人にとって、グールとは忌避されるモノ。死肉を食らうことが、イスラム教に於いては禁止されているからだ。
 暗殺教団も元を辿れば、イスラム教。その長であるハサンと、死肉と関わり続ける死霊術師《ネクロマンサー》をは致命的なまでに相性が悪いのである。

「ディエゴが何を思って最弱と言われるアサシンのクラスのサーヴァントを呼んだかは分からんが――とんだチョンボだよ」
「まぁ、真正面から戦うより寝首を掻いた方が確実と思ったんしょうね」
「だから、チョンボだ。聖杯戦争が英霊との相性が、見かけで分かる性能よりも重要になる。その証明じゃあないか」

 その言葉に我道はついにほくそ笑んだ。

「なるほど。確かに、こりゃあ分の悪い賭けじゃあなさそうだ」

 相性、相性、相性。
 詩生が連呼するその言葉。

「読めたぜ、旦那の腹が」

 何故、我道に玄奘三蔵法師の骨を盗ませたのか。自分と相性が良い英霊が彼の聖人だと考えたからか?
 否、違う。そもそも、詩生は玄奘三蔵法師を呼ぶ気も無いし、呼べるとも思っていない。
 その本当の狙いとは――。

「孫悟空、猪八戒、沙悟浄。旦那はその内、相性の良いサーヴァントを呼ぼうって算段だな!」


 †


 アサシン陣営、敗退。

【元ネタ】史実
【CLASS】アサシン
【マスター】ディエゴ・メンドーサ
【真名】ハサン・ザッバーハ
【性別】男
【身長・体重】233㎝・77kg
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力B 耐久A++ 敏捷E--- 魔力D 幸運E 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断B+
【固有スキル】信仰の加護A+:信仰から得られる、自分の肉体に対する絶対性。ダメージによるスタン、及び魔術などによる精神汚染を無効にする。高い為、精神が大分イスラム原理主義寄り。
戦闘続行A:往生際の悪さ、生命力の高さを表す。致命傷を受けても活動可能。
石包みA:石造・岩への体の変化と石壁、石床への同化を複合した特殊スキル。変化、または同化の最中はサーヴァントとしての気配は世界から完全に消失し、また同化状況下に於いては魔力を石から供給することが可能。ただし、このスキルの使用中は、行動不能になる。
自己改造B:自分と異なるものを付与するスキル。これが高ければ高い程英霊としての格が落ちる。
【宝具】『断想体温』ランクB 対人宝具
生前ハサンが肉体改造により得た、皮膚や血肉を硬質化する能力。あらゆる武装を弾き返す鎧であり、その拳はあらゆるものを粉砕する破城槌である。
【Weapon】ジャンビーヤ:湾曲した形状の大振りのナイフ。アラブ圏では、成人した男子にこれを与える風習がある。二刀流でにじり寄るように戦うのがアサシンの戦法である。
【解説】何代目かのハサン・ザッバーハ。通称“岩の血肉”のハサン。“巌の魂”のハサンとも。生まれついて障害を持ち、歩行困難な身でありながら、強い信仰心と血のにじむような努力、全身改造に耐える鉄の精神でハサンになった人物。“明日も食うモノに困る子供がいない優しい世界”が聖杯にかける願い。信仰心篤く、取りあえずイスラム教を薦めてくる。
『儂と契約してムスリムになるのだ!』
ムスリムとして高潔過ぎた為、死霊術師が受け入れられなかった。



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