舗装された道を電光石火で駆け抜けるランサー、その姿はさながら雷の如くであるがその直ぐ横で並走するアサシンの健脚っぷりは前にヨルに言ったことは伊達ではないという事を証明してみせている。
「我と並ぶその俊敏性、褒めてやろう若造」
「あんたに褒められても嬉しくないな」
「ふん、いい性格をしておるではないか」
「それだけが取り柄なんでな」
もう会話は済んだのか両者ともに地面を少し滑走するように立ち止まる、すると一歩ランサーが早く拳を放つとアサシンはそれを片手で反らしランサーの腹部へと蹴りを放つ。アサシンの足裏がランサーの腹部を抉りとりかねない程に深々と突き刺したかと思うと追撃でランサーの肉体に拳の一つや二つをお見舞いし態勢が後ろへ反れたところに回転を加えて蹴りを叩き込んでいく。
「グフッ!?」
「どうした神様?、とうとう死期でも訪れたか?」
そう皮肉を交えつつ膝をついたランサーへと追撃を試みるアサシン、だが放った拳はランサーの片手に受け止められてしまいランサーはそのままを握り潰す勢いで拳を閉じるとこう言った。
「あまり図に乗るなよ小僧、____宝具・・・・・」
「これはマズいぞッ!!?」
もう遅い....、雷霆ケラウノス______ッッ!!!
そうランサーが叫んだかと思うと次の瞬間には強烈な雷光が発生し思わず目を細めるアサシンを他所にそれはランサーの片手へと集中し一本の槍を形作っていく、その迫力はまさに雷の如く代物でランサーはその必殺の槍を力強く握りしめると自身の手から逃れようと足掻いているアサシンへそれを突き立てように躊躇いのない突きを放った。
「ちっ、宝具・・・・・・」
アサシンは逃れようもない状況を悟り自身の宝具を展開しようとする。しかし両者の視点は同時にある一点に向けられこちらへと向かって飛んでくる無数の矢を視界の中央にどちらも捉える。アサシンは隙をついて後ろへと大きく飛び退き、ランサーは何か悪態をつきながら必殺の槍を“飛来物”の見える方向へと突き立てる。
その直後、その槍からの一撃はまさに一撃必殺の如く威力が発揮され槍先から放出された超高電圧の雷の束がけたたましい雷鳴を轟かせながら向かい来る無数の矢を焼き払うどころか塵をも焼き消す勢いで消し飛ばしてしまう。
「勝負事に割り込んでくるとは無粋な輩よの」
遠くの方を睨みつけそう呟いたランサー、矢を放ってきたという事は相手の大体の予想は出来ていた。
「奇襲を仕掛けてこその“アーチャー”ではないのかな?」
姿を現したのは一人の男、手には木彫りの弓を所持し背には矢が数本入った矢筒を背負っている。
それとアサシン、この男と生前の頃に何処かしらで会っている覚えがあったが、どうも上手く思い出せない。
「久しぶりだねオロボネソス.....それとも、今はアサシンというべきかな?」
「顔見知りのようで悪いがアーチャー、何処かで会ったかな?」
「はて、私をお忘れになったという事でしょうか?」
「・・・・・見覚えはあるが....、さっぱり思い出せないな」
「そうでしたか.....、ならばいっそ死に顔を曝せッ!!」
忠告なしにアサシンへと矢を放ったアーチャー、これを軽々と回避したアサシンは二騎のサーヴァントに背を向ける形で直線上に駆け出していく。
「また逃げるのですかアサシンっ!?」
「またとか覚えてない奴に言われる筋合いはないと思うんだが.....」
「我との勝負を不問にするつもりかアサシンッ!!」
「チッ!、二騎のサーヴァントと同時に殺り合うつもりは俺にはない!」
そう言ってランサーの放った拳を上へ飛び退いて回避したアサシンは眼前に迫っていた矢を顔を反らして難を逃れるものの、ランサーと言いアーチャーと言いどちらもアサシンを殺る気充分の様子であった。
「お前らの相手をする気は更々ない、それじゃあな」
そう言い残すと自身のMAXスピードでこの場を駆けていくアサシン、だがその様子に納得のいかない様子の者達が怒号を交えて背後から追いかけてくる。
「我との決着をつけようぞアサシンッ!!」
「私に何をしたのか忘れたのかアサシンッ!!」
「あーもー五月蝿ぇな、今のお前らを真面目に相手するだけ無駄だからな。俺は正々堂々と逃げる!、これは戦略的撤退だ!!」
こうして何故か怒りを買ってしまったらしいアサシンは、戦略的撤退と言い通しつつ背後を追ってくる二騎のサーヴァントとの鬼ごっこを繰り広げる羽目となったのであった。