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No.17244の一覧
[0] 竜と桃髪の地獄旅行(×ビーストウォーズメタルス)[梵葉豪豪豪](2010/08/03 21:52)
[1] 第1話 ぼくらはみんな生きている(前)[梵葉豪豪豪](2010/03/12 22:35)
[2] 第2話 ぼくらはみんな生きている(後)[梵葉豪豪豪](2010/05/04 20:25)
[3] 第3話 生きているからケンカする[梵葉豪豪豪](2010/08/03 21:51)
[4] 第4話 ビッグ・マグナム イザベラ先生[梵葉豪豪豪](2014/01/01 21:35)
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[17244] 第1話 ぼくらはみんな生きている(前)
Name: 梵葉豪豪豪◆dd30381f ID:754e2ad7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/12 22:35
第1話 ぼくらはみんな生きている(前)


 草原を少女のような女が駆ける。
 上体を殆ど真横とも呼べる程に倒し、両腕を流れるままに流す。
 事実だけを語れば、殺気立った戦場の真っ直中に身一つで突貫するバカヤローだ。女だけど。
 ただそのバカは速かった。人間の脚力を遙かに超えていた。
 この地には魔法と呼ばれる能力が存在する。だがそんな物に頼らず、純粋に肉体の力で1分間に1リーグ(約2km)駆けている。
 駆けるといっても、極端に歩幅が広い。というより殆ど水平ジャンプだ。着地点は抉られまくっている。

 ときにここは戦場である。進路上には傭兵だのメイジと呼ばれる魔法使いだの魔法使いに従えられた幻獣だのゾンビだのがいる。そういった戦う連中は彼女を「敵」と認め、攻撃する。
 弾丸、槍、爆弾、火球、氷矢、風の鎚、石礫、ありとあらゆる攻撃が女に降りかかる。
 だが彼女は速度を落とす事もなく、蛇行して全てを避け切る。

 その女の背後から、恐竜が駆け上がる。少女の右隣へと併走するまでほんのわずかの間だった。
 土色の一頭と桃髪の一人は、目だけを動かしお互いを見る。竜の背高は女よりずっと高いため、お互い見下ろし見上げる。だがお互いの立場は、どちらが上でも、下でもない。
 速えぇぞ、遅いわよ、そんな会話を目で語った。お互い信頼している証左である。両者とも、そう認識出来ているなら、それで満足だ。
 女はおよそ戦場に赴くような格好ではない。長い桃髪を束ねる事無く伸ばし、ブラウスに短パンの他には、籠手と臑当て、鼻先と顎を保護する程度の面当て、後は頭頂に2つ生えて防具と同じ光沢の、猫耳の形をした何かしかない。

 女の左の掌が開き、杖が飛び出す。呪文を唱え、真横に振る。有象無象の生物共の体表で爆発が起き、吹き飛ばされる。まぁ、死んではおるまい。
 そして開かれた花道を竜と桃髪は驀進する。


 さてここで物語は時系列を遡る。


 かの日、ダイノボットは死んだ。

 彼は宇宙を股に掛けるメカニカルな生命体、『トランスフォーマー』の一人であった。彼は孤独に戦い、それでも仲間を得て、仲間のために戦った。そして倒れた。
 死んだトランスフォーマーは須く『マトリクス』へ還る。名前の通り、母体となる存在だ。かくしてダイノボットは『スパーク』、いわゆる魂となり、マトリクスへと向かっていく。

 酷い生き様だったなぁ、そう彼は思う。ただ腕っ節で登り詰める事ばかり考え、周りが見えていなかった。自分の周囲に壁を作っていた。だが暖かい仲間に恵まれ、ようやく気付いた。他人を守るために生きてもいいものだ。
 そして守って戦死した事に後悔はない。
 ただ心残りはあった。

 あー、遂に○ー娘。に入れなかったなぁ。

 生きていたとしても出来もしない妄想事を悔やむのは馬鹿らしいのでやめた。

 かつて彼は一大勢力『デストロン』に与していた。だがただ登り詰めるために、彼らと軋轢を起こし、彼らを裏切り、敵対する勢力『サイバトロン』に与し、そのサイバトロンをも踏み台にしようとした。
 が、サイバトロンにいる内に、いつの間にかゴリラ司令官始め愉快な連中を『仲間』と思うようになっていた。

 悪くなかった。

 自分の死後恐らくサイバトロンはデストロンを倒しただろう。自身がそう信じて死んだのだから。そしてあの息の臭いデストロン司令官は最期にどうなったろう。どんな捨て台詞を吐いたのか。
 コンチクショー? 覚えてやがれ? また来週? いやいや、バイバイキ~ン?

 まぁいいや。
 そういや何で俺、トップになろうだなんて思ってたんだろう? それこそまぁいいや。

 そして思い起こすのは仲間と、ついでにかつて属していた組織の面々である。
 コンボイ、チータス、ラットル、シルバーボルト、翻ってメガトロン、タランス、メタルスジャガー… あぁ、こいつら…


「俺も○リキュアに出りゅぅううう! ……あれ?」

 気が付けばそこは草原だった。死ぬ直前までいた惑星エネルゴアと呼ばれた地球とは、似ているようで微妙に違う植生だ。そこにはやけに貧弱そうな体格かつ知的な有機生命体が群れていた。大多数がどよめいている。

「やった! 遂にやりましたミスタ・コルベール! 竜です! 竜を召喚しましたぁぁ!!」
 妙に背の低い桃髪な生命体が叫んでいた。何をそんなに喜びに満ち溢れマクっているのか、ダイノボットにはさっぱり判らない。

「やりましたねミス・ヴァリエール! 貴女のガンバリが遂に報われたのです!」
 トランスフォーマーのボディばりに光沢を放つ、そんな頭部を持つ生命体も叫ぶ。やっぱり判らない。

「あの…どちらさん?」
 ダイノボットの問い掛けを誰も聞いてはいなかった。


 ここは桃髪の少女の部屋。部屋の主の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール。ダイノボットを「召喚」した張本人だ。その彼女はベッドに座り込み、あれやこれやと考えを巡らせていた。
 何度も失敗した挙げ句、サモン・サーヴァント、つまり召喚は成功した。だが、コンタクト・サーヴァント、つまり契約、というかキスは失敗した。
 あの竜が教師であるコルベールと話し込んでいる隙を狙ったのだが、こちらも見ずに前肢でルイズの顔面を遮られたのだ。
 そして今ルイズは、あの凶悪そうな面構えの竜を何としてもモノにしてやる、と自分の部屋に泊まらせた。いかに隙を突いて「契約」に漕ぎ着けようかと頭を巡らせている。
 その竜が大人しく付いて来た点を疑問に思うまでには至っていない。

「おい」

 考えて、考えるのよルイズ、もうここまで来たら障害なんてクックベリーパイ1ラウンド10秒で平らげるより簡単よ。訂正、15秒で。それにしてもあの竜失礼ね! あー失礼! 私の顔を掴むだなんて。あの何でも切っちゃいそうな爪で!

「おい!」

 そもそもこっち向いたっていいじゃない。何よミスタ・コルベールと話してばっかり。…あれ? …えーと、ミスタ・コルベールと、話を、していた?

「手前ぇ聞いてんのかこっち向けこの野郎!」
「あ……」

 竜が喋ってるー! などとアニメばりに状況説明を口に出来る程ルイズに余裕はない。ただ口元をひくつかせて硬直するだけだ。

 対するダイノボットも考えを巡らせていた。あのおっさんは驚きながらも納得した様子を見せていた。少なくともこの土地では、彼ら以外に言語でコミュニケーションを取る生命体は珍しい様子だ。まぁ皆無でもないし、知識として存在を知っているのだろう、程度に捉えた。
 そして親切にもこの場所について教えて貰っていた。ここはトリステイン王国のトリステイン魔法学院と呼ばれる土地という。
 トランスフォーマーの社会には国家や学校の概念はないが、「何故か」ダイノボットは違和感なく理解していた。
 話によると、実習として召喚が行われ、彼が喚ばれたのだと言う。進級が掛かっているので使い魔になって欲しいと懇願された。
 だが一方的に自分の都合ばかりベラベラ並べられて奴隷ぽい身分になれなどと言われてホイホイ従う程、ダイノボットは底抜けのお人好しではない。人ではないが。
 さしあたっては召喚した当事者に文句の一発でもカマしてやろう、とルイズに付いて来たのだ。

 ダイノボットに真正面から睨まれたルイズは、ようやく声を絞り出した。

「あ、あの……もしかしてあなた、韻竜?」

 喋る竜として自身の知る絶滅種の名前を口にした。が、ダイノボットがそんなローカルな単語を知る筈もなく、知っている単語に聞き間違えた。

「淫獣だぁ!? 誰が淫獣だぁこの野郎! あぁナニか? 触手とか出すと思ってんのかぁ? あぁ何、そっち方面の奴隷求めんの? 言っとくが出ねぇぞ! 出ねぇからな!」

 余談だが、まさか自分の死後、彼の仲間だったネズ公が身内でその言葉を流行らせた、などとはダイノボットの知る由ではなかった。

 ダイノボットの剣幕に呑まれたルイズは、再び固まった。しかもこの竜、顔が半端無く怖い。人間食ってると言われたら納得しかねない、凶悪な面構えだ。
 尚、今のダイノボットは恐竜のヴェロキラプトルやデイノニクスの姿をしている。
 尤も現代の地球では、2種類とも羽毛を備えたサンバ臭いお茶目な出で立ちの復元図が主流となっている。
 お陰でもはやダイノボットの元ネタは誰っすかコイツ何ラプトル? 助けて所サーティーン先生! になってしまった。が、そこはアニメの作られた時代を鑑みてさら~っと流して頂きたい。

「ななな何よ何よ訳わかんないわよ! とにかく! あんたは! 使い魔に! なる! の! よ! 判ったの韻竜!?」

 ようやく反論したが、どもってしまった。語彙も単純だ。それでも指を突き出して竜に真っ向から口喧嘩を挑むのは、賞賛すべきかもしれない。

「ダァー! 俺様はトランスフォーマーだっつーの! 宇宙を股に掛けるステキ生命体だぁ! でもって俺様の名前はダイノボット! D! I! N! O! B! O~T!
 大体どーやって生き返らせやがった!? ボディがおっ死ぬ前そっくりド新品ってどーゆーこったい!? プロトフォームですらねぇって何しやがった!? しかも翻訳プログラムまでぶち込みやがって! 消せねぇぞコレ!?
 そもそもここはどこの惑星だ!? セイバートロンじゃねぇのかよ! それともヴァーチャルリアリティか!? あーもしかしてドッキリか? ドッキリなのか!? おいカメラどこだ~ァ!」

「あ~もぅ! 1から10まで言ってる事判んないじゃない! とにかく契約よ契約! いいからとっとと落ち着いてそこに直りなさい! 直ったらそこに! 黙って! カ! オ! 近づける!」

 ダイノボットのテンションに吊られて、ルイズまで無駄にテンションを上げてしまっていた。ついでに乗馬用の鞭をちらつかせ、椅子に片足を乗せて威嚇している。
 そしてダイノボットは、ルイズの攻撃的な物言いから、使い魔=ねじ伏せられる関係=こりゃやっぱ奴隷だと認識していた。

「あ~、やるか? 俺様は奴隷になる気はねぇぞ! ついでにこっちは恐竜止めちゃうよ? 恐竜止めちゃうよ?」

 ルイズに、ダイノボットの水谷豊チックな物真似が判る道理はなかった。しかし彼が何かをやろうという点だけは察する事が出来た。

 ルイズはダイノボットを見上げる。相手は背高だけで2メイルを超える。ルイズより遙かに高い。当然顔のある位置は更に高い。そして目つきは超悪い。従ってルイズは急角度で見上げている。口で勝てる気が全くしない。怖い。
 それでもただ意地だけで睨み付けていた。

 何をこいつはそこまで意地張ってんだ、と、腹の底では冷静に訝しんでいたダイノボットだった。が、さしあたってどうでもいい、というか負ける気がしないので構わず一丁脅しを掛ける。

「ダァー! ダイノボット! 変身!」

 胸部から人型の両脚が飛び出し、床を踏む。前肢は収納され、その位置に後肢が移動する。尻尾は腰に横付けされる。開いた胸部に頭部が折りたたまれ、首元から人型の頭がせり上がる。最後に肩当てが被さり、恐竜は人の形へと変化した。

 身体構造を自在に変える生命体。これがトランスフォーマーの真骨頂である。中でもダイノボットのように他の生命体に擬態するタイプは『ビースト戦士』と呼ばれる。
 そして今、恐竜のビーストモードから、人型のロボットモードへとトランスフォームした。ルイズからすると変身したように見えた。ダイノボット本人も変身と呼んだだけに。

 この地において異質な生命体、トランスフォーマー。その中でもダイノボットのようなビースト戦士は、宇宙に散らばるあらゆる有機生命体のDNAをコピーして擬態する、小型の新世代トランスフォーマーである。
 彼らを生み出した工場星『ヴォック』は、「セイバートロン星に有機生命を復活させる」というやましい目的のために、ビースト戦士を通じてこっそりとDNAを収集し続けている。
 そのヴォックの背後には色々ややこしい出自を持つ意思の集合体が潜んでおり、もう一つ裏の目的を持っている。既に絶滅した地球人類の復活と繁栄を目論んでいるのだ。
 そのためにダイノボット達を時間を超えて太古の地球に送り込んだり声の素敵なゴリラ司令官にチャネリングさせたりと、あの手この手で策を巡らせてきた。
 更に旧世代にまでビースト戦士の能力を付加させて順次アップデートし手駒の一つに加えるという手の込み様である。
 ついでに地球人類の記録を可能な限り保存するため、ビースト戦士の電子頭脳に片っ端から記録を蓄積させている。
 お陰でビースト戦士は国家や学校の概念を知る事が出来、熱帯に生える多年草の果実がバナナだと知り得て、バナナを使ったコントを最低3通りは思いつき、見た事のない地球人類の芸能人の物真似すらもこなす。そんな真似をビースト戦士達は自覚無しにやってしまう。

 ダイノボットは片膝を付いた姿勢になっていた。身長が5メイル超えになったので天井が近い。いっそ立ち上がって天井抜いたろかあぁん? という誘惑を抱きつつ、ルイズを睨んでいた。
 対してダイノボットに睨まれたルイズは、驚きと恐怖とその他何か諸々漏れ出しそうになっていた。
 ルイズの知識からすると、無機質な人型といえば魔法で動く人形の総称『ゴーレム』である。
 そして韻竜は自分達と違う魔法を使えて変身が出来る、と幼少時に読んだ『わくわくハルケギニア図鑑~幻獣編~』で知ってはいた。
 が、変身したのがゴーレムで、見た目凶悪な鎧騎士だとはさすがに予想の斜め上を飛んでいた。
 彼の真っ青なマスクの口に牙が並んでいたのを、ルイズは見た。見てしまった。見せつけられた。そして遂に辛抱溜まらず、意識を手放した。幸運にも、かろうじて膀胱は頑張った。


 翌朝、ルイズの部屋の前で、隣に住むオンナが待ち構えていた。18歳だからギリギリ少女の範疇になる年齢だが、男性遍歴がアレでナニなのでオンナで構わないだろう。魔法少女と言ってはいけない。
 名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハンツ・ツェルプストー。ルイズをからかうのが日課と化している赤毛のお茶目さんである。ついでに肌は茶色い。

 ノックするつもりでキュルケが扉を叩くと、扉は勢いを受けてゆっくりと開いた。施錠がされていなかったのだ。というか留め具そのものが壊れている事に彼女は訝しんだ
 部屋から現れたのは、妙に疲れた表情のルイズであった。背後にダイノボットがいる。

「何見てんのよ……」

 ルイズは昨晩から着の身着のままである。つまり制服のママ着替えずに朝を迎えたのだ。そしてつい3分前に飛び起きたばかりである。寝癖を直す暇しかなかった。
 そんなルイズをからかうキュルケ。夕べから何騒いでたのよ男でも連れ込んでたの云々。そんなキュルケを真正面から受けるルイズ。んな訳ないでしょアンタじゃあるまいし何か栗の花臭いし云々。

 そんな二人をまるっと無視してダイノボットは廊下に出た。そして彼はキュルケの使い魔と目が合う。人間に近いサイズの赤いトカゲだ。彼は『サラマンダー』であり、名はフレイム。
 尻尾の先から炎を灯している。体内の余剰なガスを燃焼させているのだろうと、ダイノボットは想像した。それほどガスを大量に醸成するのなら、肉食で大食漢なのだろうと連想する。
 首を振って「付いて来い」というジェスチャーを取り、フレイムは外へ歩き出した。とりあえずダイノボットは付いて行ってみる事にした。一応、この辺りのルートや地形は大まかに把握したので特に迷う事はない。

 実のところ昨晩ルイズが気絶した後、ダイノボットは学院内の敷地を探検していた。扉の錠前を叩き壊し、周囲を走査しつつ、人間を避けて周り回って情報を集めていた。
 そして得た結論は、「ここを抜け出すには情報不足でリスクが高過ぎる」であった。
 衛兵が常時詰めていて巡回しているという事は、一定の秩序があり治安の概念がある社会と考えられる。またその治安も、夜中敷地内を遊びに出歩く住人が多い事から、危機感を持たない程度に平和を維持出来ていると察せた。
 建築物と服装から、一定水準の技術力はあるだろう。更に、舗装された道路が外へ続いていたので、隔離されて完結した集団ではなく一定以上の人の往来があると考えられる。
 まぁつまるところ、蟻や猿レベルではなく一定水準の文明を持つ生命体なので、ナメてかかると痛い目に遭うだろうと結論付けた。
 トリステインという国家の勢力圏がどのくらいの規模かも判らないし、下手に事を荒立てて国家を敵に廻すのは勘弁したい。
 これで宇宙に進出する程の技術水準持ちだったら、有機生命体でない余所者の異質な自分をどう扱うか、全く読めない。
 とはいえ、実はこれ全部ヴァーチャルリアリティでしたー! などという疑いを捨て切れない。

 などと昨夜得た情報をちんたらと整理している内に、フレイムと共に中庭に着く。使い魔が屯していた。その面々の種族はバラエティに富んでいた。烏合の衆とも言う。
 黒髪のメイドが手押し車をバックさせて餌を落としていく。形状がてんでバラバラの屑肉と屑野菜が地面に落ちていく。使い魔達は我先に群がっていく。
 この地における使い魔の、引いては自分の社会的地位をダイノボットは理解した。しかも彼らは言語を操らないので、餌を配るメイドとはコミュニケーションもままならない。どいつにどの餌が最適かも伝わらないだろう。
 実際は主人がちゃんと世話をしたり使い魔が自力で餌を確保するケースが大抵であるが、ろくな説明もせずに学園の平民に丸投げもしくは放置というケースも多い。
 この地に留まるなら、まず使い魔の地位向上を目指さなければならねぇなぁ。そうダイノボットは心の中でため息を吐く。
 どうやって生き返ったかという謎よりも、今日明日どうやって生きていくかは切実な問題である。


「ここここ~のぉバカ竜ううううぅぅぅ!」

 桃髪娘が雄叫びを上げて走り寄って来た。たぶん全速力で。
 現場にいた黒髪メイドのシエスタは後にこう語る。

「えぇ、ヴァリエール様が、こう、物凄い形相で雄叫びを上げて走ってきたんです。地響きを立てて、なんか視界が傾きました。白い物も見えました。あ、洗ったの私でした」

 尚、彼女はこの時絶食ダイエット2日目に突入していた。

 ルイズはダイノボット目掛けて飛び蹴りを放つ。しかしバカ竜は人間の腕よりごっつい鉤爪であっさり流す。後は無様に転がるルイズがいた。

「ああああんたねぇ! 勝手にどっか行ってんじゃないわよ!」

 ちなみに彼女が使い魔(予定)がいないことに気付いたのは、朝食を終えてからであった。キュルケにMA・NU・KE☆とからかわれてしまっていた。

「あぁん? 俺はお前の司令官かお母さんか? 何で言われもしねぇのによぉ、ついてかなきゃーなんねーんだっつーの」
「とと、とにかく! 付いてきなさい!」
「どこへ?」
「教室!」

 その後もルイズが口喧しく説明しつつ、一人と一頭は校舎へと消えていった。残されたシエスタは、喋る竜がいた事に、あーそんなんもいるんだー世の中広いなーと妙に感心していた。使い魔のサルが更なる食料を求め彼女のポケットを探っていたのに気付くのは20秒後である。



:次回予告

「あぁ? ここは養鶏場か?」


次回 ぼくらはみんな生きている(後)


:あとがき

 ダイノボットの身長について。

 公式にはビースト戦士は5m台と、トランスフォーマーの中では小柄な部類となっています。その中でロボットモードのダイノボットは映像を見る限りは長身の部類に入ります。そこから察するに、彼は6m行くか行かないか? いずれにせよ民家2階分程度の身長はあると推察出来ます。
 そこから更にトイの機構とヴェロキラプトルの体型から考えて、当SS内では背高は2mを超えるとして扱いました。きゅいきゅいとタメを張れるサイズですね。ルイズの身長の4倍を超えるでしょうか。


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