こんばんは、「ダイ・ユマ」です。
そう、デュマデュマ言ってるからオレの事「デュマ」って名前だと勘違いしてるかもしんねぇけど、実の名前は「ジャップル=ダイ・ユマ」なの。
まぁ、めんどくせぇからデュマって言っちゃうんだけどな!! ヒャハ!!
というわけで、デュマは夜中の学園を徘徊していた。
「ウヘヘヘ!!最強の力はどこに隠れてやがるんだ?」
何度問い詰めても答えてくれないラリカに痺れを切らしたデュマは、彼女が寝た後に部屋を抜け出していたのだ。
まだこの学園の地理を把握しているわけではないため、とりあえず適当に動き回る。
「ウヒャヒャヒャ!!忍ぶ!!!忍ぶぞ!!」
しばらく歩き回ったところで、デュマの笑い声は止んでしまった。
キョロキョロと辺りを見回した後、力が抜け落ちるように地面にしゃがみこんでしまう。
「ヤベェよ・・・、探すの飽きちまったよ・・・。」
そう呟き、デュマはそのまま床に横になった。
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「なんでこんなトコで寝てるのよコイツ・・・。」
「さあ?」
部屋の前で寝転がっているデュマを発見したルイズがサイトに問いかけるが、サイトも頭にハテナマークだ。
「アンタ、コイツと仲良いんじゃなかったっけ?」
「いや、ラリカとは友達だけど・・・、コイツのことは全然・・・。」
「ふぅん・・・、じゃあラリカに知らせてあげたら?」
「おう、ってかお前ラリカの事、ラリカって呼ぶんだな。あっちはミス・ヴァリエールとか言ってなかったか?」
「ん・・・、ルイズって呼んでいいよって言っといたわよ。」
少し恥ずかしそうにそういうと、ルイズはいつものようにサイトに洗濯物を預けて部屋に戻っていった。
「なんでちょっと照れてるんだアイツ・・・?」
少し首を傾げた後、寝転がるデュマに目線をやる。
ジャップル・デュマ・・・。
確か俺と同じ異世界から召喚された使い魔。
俺のいた世界とは違う世界だろうが、もしかすると唯一自分と同じ境遇の人間なのかもしれない。
できればいろいろと話をしてみたいが、コイツの言動はなぜか上から目線なうえに、一貫性がなく、行動も不可解なことが多すぎる。
ご主人のラリカは良いヤツなのに・・・。
そんなことを考えながら、何気なくデュマを見ていると、肩を軽く叩かれて振り返る。
「ああ、ラリカ。丁度コイツの事で話に行こうかと思ってたんだ。」
そう言われ、ラリカはそっとデュマの寝顔を見やる。
「こんなところにいたんですね・・・。起きたら急にいなくなってて心配してたんですよ。」
「心配・・・か。ラリカはコイツの事、結構気に入ってるみたいだな?」
何気なく聞いたつもりだったが、それを聞いたラリカの顔が一瞬赤くなるのをみて驚く。
こんなピュアな反応を見たのはいつぶりだろうか?とさえ思ってしまう。
「いえ・・・あの・・・、使い魔ですから・・・。」
「へぇ・・・、でも羨ましいよコイツが。俺のご主人様なんてまるで俺を奴隷みたく思ってるんじゃないかってさ。」
呆れたように首を振るサイトに、ラリカが続けた。
「ミス・ヴァリエールもサイトの事は大事にしてると思いますよ。ミスタ・グラモンとの決闘の後、一番必死で看病していたのはミス・ヴァリエールですから。」
少し照れくさかったため、へぇ・・・と軽く受け流し、サイトは話題を変えた。
「それよりも、このデュマって・・・どういう人間なのかとか・・・、知ってるか?」
そんなサイトの質問に、少し間を置いてラリカは一言答える。
「いえ・・・、まったく・・・。」
主人であるラリカでさえ、把握できていないこのデュマという男は・・・、何者なのか?
とサイトが戦慄していると、再び部屋のドアが開き、ルイズが顔を出す。
ラリカが来たのに気付いてドアを開けたようだ。
「あ、おはよう・・・ラリカ・・・。」
なぜか上目遣いでモジモジしながら言うルイズは可愛らしかったが、なぜそんな緊張しているのかと疑問に思いながら、サイトは再びラリカに目線を戻した。
「おはようございます、ミス・ヴァリエール。」
優しく微笑むラリカだったが、ルイズはなんだか不満そうだ。
「あの・・・、ルイズでいいって・・・。」
頬を赤らめながら言うルイズに、ラリカは慌てて言い直す。
「おはようございます、ルイズ。」
そんな彼女に、ルイズの顔が急に明るくなる。
何がなんだかさっぱり分からないサイトを尻目に、半開きだったドアを開けてルイズが笑顔で繰り返す。
「おはようラリカ!あの・・・、じゃあ・・・一緒に食堂とか・・・、行かない?」
「誘ってくれてありがとうミス・・・、ルイズ。でもデュマが寝ているので・・・。」
「あ・・・、そう・・・。」
落ち込むルイズを見て、申し訳なさそうなラリカ。
そんな姿を見ていたサイトが口を挟んだ。
「あ、じゃあ俺がコイツの面倒見とくから、2人で行ってこいよ。」
瞬間、ルイズの顔が明るくなる。
「そ・・・、そうよ!!アンタ達は使い魔同士仲良くやってればいいのよ!!だから、あの・・・。」
そこまで言われてはラリカも断れないようで、「ではよろしくお願いします。」と、サイトに残して2人で行ってしまった。
なんだかやけに上機嫌なルイズを見て、サイトも心なしか嬉しかった。
ルイズは、ラリカと仲良くなりたいのかもしれないな・・・、なんて事を考えてニヤニヤしてると、床に寝ていたデュマの目がパッと開く。
「うおっ!!」
軽く声を出してしまったサイトを、寝たままに状態で睨み付けるデュマ。
「あんだテメェ・・・、このデュマ様の顔を見てニヤついてんじゃねぇぞコラ?」
「それは大至急誤解だ。」
冷静に切り替えしたサイトに、それ以上デュマは追及しなかった。
ゆっくり起き上がった後に、服についた埃を軽く払って辺りを見回す。
「おい小僧、メイルスティアの野郎はどこにいる?部屋か?」
「え・・・?ああ、ラリカなら今さっきルイズと・・・。」
「あんだと!!?まさかあの野郎、あの桃毛の小娘と抜け駆けするつもりじゃねぇだろうな!?」
「は?なんの話か知らないけど、お前が思ってるみたいな変なことはしてないと思うけど・・・。」
更にキョロキョロと辺りを見回し始めるデュマ。
呆れた顔でその姿を見ていたサイトに、再び話しかける。
「そういや・・・、テメェは弟だったよな?」
「・・・、はい?」
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なぜか急に馴れ馴れしくなったデュマと共に、サイトは洗濯場まで来ていた。
ジャブジャブと洗濯をしている彼の後ろで、デュマが腕を組んで立っている。
「なあ、そんなとこで堂々と立たれてても困るんだけど・・・。暇なら手伝ってくれないかな?」
背中を向けたままデュマに語りかけるサイト。
「手伝う?何の事だかサッパリ分からんが、早くその意味不明な行動をやめてオレの話を聞け。」
「・・・。」
少し間を置く。
いろいろと想像してみたが、多分デュマにとって今自分が行っている「洗濯」という行為は「意味不明な行動」らしい。
生活習慣がまったく違うのだろうか・・・。
「じゃあちょっとあっちで待っててくれるか?」
ここでデュマと口論をしても始まらないと考え、サイトは彼に少し離れた場所で待つように伝えた。
「チッ、テメェがヤツの弟で情報を持ってなかったらとっくに殺してたぜ・・・。」
などと、また意味の分からない事を口走った後、デュマはその場所へ移動する。
そんな彼を横目で見ながら、サイトは考えを巡らせていた。
もしデュマが自分と同じ境遇ならば、何か情報共有ができないものかと・・・。
そして、一緒に自分達の世界へ帰る方法を探せるようにならないかと・・・。
ギーシュとの一件では、なぜか自分を救ってくれたデュマを心のどこかで信じていたのかもしれない。
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つづく