オレの名前はダイ・ユマ。
手からビームは出るし、跳躍力もハンパねぇ。
魔界じゃあ、闇の貴公子と恐れられ、敬われる存在だ。
そんなオレが、そんなオレが・・・なぜにWHY!?
なぜにWHY!?
なぜにほわぁぁぁぁぁぁぁいいい!!
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ようやく視界が晴れると、ラリカ(脳内デュマ)はゆっくりと立ち上がる。
服が所々破れてはいるものの、あの爆発のわりにダメージは少ない。
少し離れた位置にサイトが倒れているが、ヤツは完全に気を失っているようだ。
キョロキョロと辺りを見渡すと、予想外に離れた位置にルイズがいることに気付いた。
どうやら爆発でここまで飛ばされたらしい。
それを考え、一瞬戦慄するデュマ。
サイトの焦げ具合から察するに、自分が軽傷で済んだのは運が良かったとしか考えられない。
「フゥへへ・・・、やるじゃない?」
ニヤリと卑屈な笑みを浮かべるデュマとは対照的に、ルイズの顔は険しい。
無言で杖を向け、何か小声で呟いている。
そんな姿を見て、デュマの表情が強張った。
「ッチ!!あのガキ、またやりやがる気か!?」
瞬間、デュマは回避行動に入った。
素早い反復横跳びである。
右、左と常人離れしたスピードで繰り出される反復横とびは、見事としか言いようがない。
そんなデュマの表情は、もちろん自信に満ち溢れていた。
「ヒャ~ッハッハッハッハッハッハ!!捕らえられるか!?このオレの華麗な舞いに絶望しろ!!このオレの圧倒的なパワーにぜつっ!!?」
「ぶふぇ!!?」
言い終わる前に、またもや爆発が起き、彼は吹き飛ばされる。
ぎゃあああ、と叫びながら宙に浮き、グへっと呻いて地面に落ちた。
「ブヘェ・・・、い・・・いてぇ!!いてぇよおお!!」
ゲホゲホと咳をしながら転げまわるデュマ。
体はラリカだが、その行動からはすでにその面影は見られない。
しばらく転げまわったあと、息を落ち着かせるが、再びルイズを確認して顔を引き攣らせる。
杖が、また向けられているのだ。
「ッ!!クソがぁぁぁぁ!!」
大きく叫び、今度は踵を返して逃げ出した。
たまに後ろを振り返りながら、グイグイと距離を離していくデュマ。
そんな彼の姿を、冷めた目で見つめるルイズ。
「はいや~~~!!」
ある程度離れると、デュマは急に前方へ飛び込み前転を行った。
綺麗にキまると、そのままゴロゴロと回り続けながら笑い出す。
「ヒャハハハハハ!!パーティーだ!!回転パーティーだずぇ!!!」
奇怪な行動を取るデュマだが、ルイズの表情は変わらない。
「戦慄しろ!!このオレの絶望的なパワーの前に、戦りっ!?」
「うばはぁ!!」
回転した先に発生した爆発で、デュマは逆方向へゴロゴロと転がり、そのまま地面にベタリと伏した。
一瞬気を失っていたものの、ビクンと跳ねると目を見開く。
「げへぇ・・・、なんちゅ~パワーだよあの野郎。このデュマ様をコケに!!?」
そこまで呟いたが、ルイズがゆっくりと自分に近づいてきていることを察すると、体勢を整えた。
その目線の先には、やはりルイズの翳す杖がある。
そして、彼女の瞳は感情を失ったかのように冷ややかである。
「余裕ぶっこきやがって!!もうゆるさねぇ!!」
今まで避ける、逃げるを繰り返していたデュマだったが、一転、額に血管を浮き立たせて叫ぶ。
「ぶっころっ!?」
「ぎゃあああああ!!!!」
瞬間、またもやデュマは爆発に巻き込まれた。
大きな衝撃を受け、立ち込める煙から抜け出すように転がり、地面に仰向けになるデュマ。
その鼻や口からは血が溢れ出ており、すでにラリカとは言えない状態である。
「ち・・・ぢくしょおお・・・。ゴミクズの分際で・・・!?」
そう呟き、ゆっくりと起き上がったところでデュマの表情が変わった。
何かを思いついたらしく、その表情には再び卑屈な笑みが戻ってきている。
「ウヘヘヘ・・・、ちょっと待てよピンク。死んだと思ってたメイルスティアの野郎、まだ生きてるかもしんねぇぜ?」
その言葉で、初めてルイズの表情に変化が起きる。
それを見逃さず、デュマは続けた。
「お利口さんじゃねぇかピンク?オレは自由に精神をこの肉体から開放できる。だから、テメェが爆発をどんだけ繰り出しても、メイルスティアの体が傷つくだけで、オレは無傷ってことだ。」
鼻血を拭いながら、クスクスと笑うデュマ。
「メイルスティアの体に限界がきたらオレはすぐに逃げ出すぜ?そしたら・・・、めでたくテメェの爆発で、あの女を殺せるってわけだ!!そして、テメェが殺したいほど憎んでるこのオレは・・・ヒャハハハ!!言わずもがなだよなぁ!!」
ギャハハと汚く笑うデュマに対し、ルイズは杖を下ろすしかなかった。
悔しそうな彼女に、デュマはフラフラと近寄って行く。
「・・・、どうすれば・・・。」
「ああぁん?」
「どうすればラリカを返してくれるの!?」
キッと睨みつけるルイズに、デュマの表情が更に緩む。
「そうだなぁ・・・。」
ルイズの目の前まで来ると、杖を強引に奪い取り、流れるような動きで彼女の頬を張った。
地面に崩れるルイズに、奪い取った杖を向けるデュマ。
「テメェが死んだら考えてやるぜぇぇ!! ヒャハハハハハ!!!」
「ック!!」
「粉微塵になりやがれクソ野郎!!」
そう叫んで杖を振るうデュマに、ルイズも驚いて目を閉じた。
一瞬の静寂、だがもちろん何も起こらない。
爆発するに違いないと思っていたデュマの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「あれ? 爆発しねぇ・・・?」
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つづく