「誰このブタ。」
ポカンとしているマリコルヌを指差して、こちらもポカンとしながら聞くデュマ。
もちろん連れてきたギーシュもポカンだ。
「へ?誰って・・・、お昼にあの場所に座っていたのは彼だよ?」
現状把握ができていないマリコルヌが、いたたまれずに作り笑いを浮かべる。
「こんな子豚ちゃんに用はねェのよギーシュちゃん。ナメてんのかよ?」
笑顔のマリコルヌの頬をペチペチやりながらデュマが困った顔で言う。
いつもならとっくにプッツンしてもおかしくないが、今回のデュマは寛容だった。
なにせ手がかりはギーシュ以外にいないのだから。
まだ事態を飲み込めていないマリコルヌだが、女の子にペチペチされて、まんざら嫌というわけではなさそうだ。
「オレが欲しいのはさ、もっと奇抜なヤツよ?分かってんの?」
「奇抜な・・・、という事は普通の男子生徒ではないということだね?」
ふぅむ、と考え込むギーシュ。
「何のことかさっぱり分からないのだけど、彼女が困っているなら僕も手伝うよ?」
ペチペチだけでなく、今度はムニムニと摘まれたり揉まれたりされはじめてしまった哀れなマリコルヌが言う。
姿はラリカなデュマに触られ続けてご機嫌な様子である。
「お?子豚ちゃん、お前も手伝ってくれんのか?」
アヒャヒャと笑い、今度は彼の頭を撫で始めるデュマ。
「食事の時に僕の近くにいた生徒以外の人なら心当たりあるけど?」
まだ考え込んでいるギーシュに、マリコルヌが口を挟んだ。
軽く驚く2人に、「案内するよ」と歩き出すマリコルヌ。
「鼻の聞く子豚ちゃんだなオイ。」
「君・・・、馬鹿にしすぎじゃないのかい・・・。」
ニヤニヤしながらマリコルヌの後に続くデュマに、軽く突っ込みをいれてギーシュも歩き出す。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「本当に心当たりあるんだろうね?」
歩きながら、隣のマリコルヌに話しかけるギーシュ。
デュマはその後ろでなぜかスキップを続けており、話に参加する気はないらしい。
「もちろんだよ。そんなことより、メイルスティアってあんなに明るかったっけ?暗くて目立たない印象だったけど?」
「実を言うと僕も少し不思議だったんだよ。でも・・・、まあ恋は女性を変えるっていうじゃないか。」
知ったかぶりの笑みを浮かべ、髪をかきあげるギーシュ。
その言葉に、マリコルヌは軽く驚いた。
「え・・・、じゃあメイルスティアは恋をしているのかい!?」
「ん?急に食いついてきたね?ってもしかして君・・・。」
2人がそんな話をしている頃、後ろでスキップしていたデュマは考えを巡らしていた。
(ゴミ共が次々にオレのカリスマに引き寄せられている・・・。この無様なメイルスティアボディでもこれほどのカリスマなら、本来の姿に戻ったら恐ろしいことになりかねねぇぜ!!ヒャッホウ!!)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「で・・・、このハゲは何者なんだ?眩しくて顔が確認できねぇよ子豚ちゃん?」
目の前に立つ魔法学院の教師、コルベールの綺麗な額を指差して言い放つデュマ。
今回もコルベールはポカンだし、ギーシュもポカンだ。
「き・・・君!!先生に対して失礼じゃないか!!」
慌てるギーシュだが、デュマは聞いていない。
眩しさをアピールするような格好でコルベールに近づくと、なんの躊躇もなく続けた。
「すげぇピカピカだなアンタ・・・。逆に渋いぜ・・・。」
「え・・・、ああ・・・ありがとうミス・メイルスティア・・・。」
事態をのみこめていないコルベールが、あの時のマリコルヌ同様に作り笑いを浮かべる。
違いは、ペチペチされていないことと、なぜか褒められている点だ。
そんな2人のやりとりとは別に、マリコルヌはどこかホッとした顔でデュマの横顔を眺めていた。
「先生でもないとは・・・、これじゃまったく分からないよ・・・。」
困った顔で頭を押さえるギーシュ。
それを見て、デュマが顔を歪ませる。
「マジかよオイ!?ヤベェよ・・・、リアルにヤベェよちくしょう!!なんて使えねぇヤツ等だよ!!」
地面に座り込み、空を仰ぐデュマ。
そんな2人の様子に、ようやくコルベールが口を出す。
「君達・・・、何があったんだい?困っているなら相談に乗るよ?」
「やったじゃないかミス・メイルスティア!!先生が強力してくれるなら百人力だよ。」
絶望していたデュマだったが、それを聞いて再び笑みを取り戻した。
(ヒャハ!!やっぱりオレのカリスマは宇宙最強だずぇ!!)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
つづく