「アヒャヒャヒャヒャ!!恩にきるぜ先生。」
コルベールから渡された手のひらサイズの玉に、デュマは舌舐めずりする。
「一応危険なものだから・・・、気をつけて扱うんだよ?」
心配そうにそう言うコルベールを尻目に、デュマは玉に頬ずりしながらクスクスと笑っている。
「安心しなよ、悪いようにはしねぇ。」
去っていくラリカ(脳内デュマ)の姿を眺めながら、コルベールは「大丈夫かな・・・。」と心配そうに小さく呟いた。
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半日探し続けても見つからないデュマに、サイトもルイズも焦っていた。
デュマの発言から察するに、まだあの体の中にラリカは残っているのではないかと、そんな期待を2人は拭いきれないでいた。
まだ彼女が死んでいないのなら、一刻も早く助け出してあげたい。
「ルイズ、そっちはどうだった?」
「全然ダメ・・・、しばらく待ち伏せしてたけど、結局一度も・・・。」
眉をひそませ、顔を振るルイズ。
「オレもだ。アイツ、まさか学院を抜け出してたりしないよな・・・。」
「・・・。」
考え込む2人。
焦れば焦るほど時間の流れは早く感じる。
すでに空は茜色に変わっていた。
「ヒャ~ッハッハッハッハッハァ!!笑う笑う笑う笑う笑う笑うぅぅ!!」
2人が再び手分けしようとした時だった。
ラリカの声に、あの気の狂ったようなセリフ。
声のする方を振り返る2人。
大きく開けた庭に、探し続けたあの男が立っていた。
「デュマ!!」
同時に声を上げる。
「ヒャッハァ!!必死だねぇ・・・、オイ?あまりの必死さに、笑いすぎて涙が出るぜぇ!!」
ケタケタと笑うデュマに向かって駆け出す2人。
あと数歩のところで、デュマが手のひらを突き出す。
「おっと、そこまでだ。今のオレを刺激しねぇ方が身のためだずぇ?」
意味深に笑いを浮かべるデュマに、2人の足が止まる。
「どうせまだ・・・、でまかせでしょ!!?」
とは言うものの、結局何もできない2人にデュマは続けた。
「オレぁよう、しばらくこの体で行動してて感じたわけよ・・・。こんな不良品の体じゃ、オレ本来の圧倒的なパウワを微塵も発揮できねぇってよぉ!!」
デュマの足元に見慣れない魔方陣が描かれていることに気付き、ルイズが声を上げる。
「じゃあもしかして・・・?!」
「その通り、こんな使えねぇ体、貴様等に返品してやるよ!!ヒィヤッハァ!!」
バッと大げさに手を広げ、聞いた事もない呪文のようなものを唱え出すデュマ。
魔方陣にはまったく変化もないし、デュマの体にもまったく変化はないが、その姿を固唾を呑んで見守るしかない2人。
その時だった。
「アレ、ルイズなにやってるんだい?」
急に物陰からギーシュが話しかけてきた。
あまりに突然のタイミングで、2人の注意がギーシュに向かった瞬間だった。
カッと辺りが明るく光ったと思うと、爆音が鳴り響く。
ギーシュに気を取られて横を向いていた2人の視線が、またデュマへと戻るが、すでに煙が立ち込めているせいでどうなったのかが確認できない。
「なっ!!何が起きた!?」
「何なの!?ラリカは・・・ラリカは無事なの!?」
「わあ・・・、派手にやったねぇ・・・。」
驚く2人と、感心するギーシュ。
1人だけ反応が変だが、気にする余裕はない。
ゆっくりと晴れていく煙の中に、倒れたラリカの姿を見たときルイズとサイトは駆け寄っていた。
大きな爆発だったに関わらず、まったく汚れていないラリカの体。
「ラリカ?!ラリカ!?」
彼女の体を抱き、呼びかけるルイズ。
サイトもその横で心配そうに見つめている。
そして、ゆっくりと見開かれる灰色髪の少女の瞳。
「あ・・・れ・・・?どう・・・したの?」
ラリカの声。
あの狂気に満ちた声でなく、静かなラリカの声。
ワッと泣き出すルイズに、サイトの表情も砕ける。
そんな中、ラリカだけは何が起こったのか分からないといった表情で2人を見つめていた。
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つづく