1. 他人をむやみに襲わない
2. 学園内ではおとなしくしている
3. 呼んだらすぐ来る
狩猟刀を渡す代わりにデュマに守らせた契約は、以上の3つだった。
本当は「部屋から出ない」や、「変な笑い方をしない」なども考えていたが、どうせ守れないと思ったのと、それ以上の約束を条件に加えれば駄々をこねそうだったのでやめた。
彼がその約束を必ず守るという保証はなかったものの、なぜだか大丈夫な気もしていた。
一応使い魔と主人ということで、何か繋がっているのだろうか・・・。
部屋の隅でニタニタしながら狩猟刀を眺めているデュマを見る。
好きになれそうな気はしないが、とりあえず落ち着いたなとラリカは小さく溜息を吐いた。
そんな矢先の事だった・・・。
「陛下ぁ、ちょっち見てくださいよ?」
気持ちの悪い笑顔で近づいてくるデュマ。
後ろに回している右手には多分狩猟刀が握られているはずだ。
使い魔と主人の関係である以上、急に自分を襲ってくることはないと確信はしているものの、この男の行動は不可解すぎるため油断できない。
「なんですか?」と愛想笑いをしつつ、杖を強く握り締めるラリカ。
「ばぁぁぁん!!」
頭の悪い叫び声と同時に、デュマは思いがけない行動に出たのだ。
そう、今しがた手に入れた狩猟刀を、あろうことか自分の腹に差し込んだのだ。
「な・・・何を・・・。」
あまりに不可解な行動に、目を見開いて何も言えないラリカ。
「ウヘヘ・・・、ビームが出せねぇんじゃつまんねぇから・・・、一回死なせてもらいますよ陛下・・・。」
ガクっと膝とつくデュマ。
不思議なことに血は出ていないが、その背中からは狩猟刀が突き出しており、彼の声も力ないものとなってきている。
「そしたら・・・、また陛下の肉片で・・・、オレを蘇らせて・・・くだ・・・グヘェ!!」
ガクっと、ラリカの目の前で倒れるデュマ。
まったく理解できずにその場で座りつくすラリカの目の前で、デュマは静かに息を引き取った。
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彼は人間だったのだろうか・・・。
ベッドの上で寝転がりながら、ラリカは考える。
あの後、デュマは狩猟刀だけを残してゆっくりと消えていってしまった。
なぜ彼はあんな行動に出たのかは今でも分からない。
もしかすると彼は自分の苦労を察して自殺したのかな?と、良い方に考えてみたが、結局答えは闇の中である。
なんだか釈然としない気持ちが残ってしまったが、ここで寝ていても仕方がないと判断し、ラリカはゆっくりと立ち上がる。
そろそろ昼食の時間だ。
先生に相談して、今後どうするかを決めよう。
彼女は、床に転がった狩猟刀を引き出しへと戻し、食堂へと向かって行った。
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つづく