デュマは死んだ。
だが、彼は所詮闇の帝王の肉片にすぎない。
そう、彼は何度でも蘇るのだ。
「ウフフフ・・・、アハハハ!!ヒャァ~ッハッハッハッハッハッハァ!!」
肉片は驚くべきスピードで増殖し、闇の貴公子”ジャップル・デュマ”は復活した。
しかもただの復活ではない、もう1段階パワーアップして復活したのだ。
トサカのような髪は、触れば傷つくような鋭い刃のように。
そして、一番の違いはその身体にあった。
そう、デュマの身体は鳥になったのだ。
顔が人間で体が鳥、例えるならば人面鳥である。
「ウヘヘ・・・、なんてこった・・・、恐ろしい肉体を手に入れちまったみてぇだぜ!!」
バッと、両翼を広げてみる。
「飛べる」と、彼は確信した。
前回のようにピョンピョンと跳ね回るのではなく、今は大空を自由に飛べるのだ。
「ビームは出せないままだが、このパワーさえあればオレは無敵だ!!全てがオレに平伏すぞ!!」
「我が半身ながら、見事なものよ!!」
そんなデュマを嬉しそうに見つめるのは、彼の産みの親”アブダビ・ニュードバイ”、闇の帝王である。
「貴様の見てきた光景、このワシも拝見させてもらったが・・・実に面白い。」
「あの灰色髪の小娘、どうやってオレを洗脳したかしらんが、次に会ったらこの”デス・ブレード”で八つ裂きにしてくれる!!」
頭を小刻みに振り、鋭利な刃物と化した髪の毛”デス・ブレード”を揺らすデュマ。
どうやら、死ぬまでの記憶は残っているようだ。
「確かに、まったく似ておらぬのに、完全にお前はあの小娘をワシだと勘違いしておった・・・。何をやられたか覚えておらんのか!?」
「儀式がどうとか言ってたぜ? どうせ、オレが寝てる間に何かしやがったんだろ?」
「ラリカ・ラウクルルゥ・ド・ラ・メイルスティア・・・、恐るべき魔女よ!!」
「ああん? 何クルルだって?そんな長ぇ名前の魔女は今の話になんの関係もねぇっしょ?」
眉を潜めるデュマだが、驚いたのは帝王だった。
「お前、あの小娘の名前・・・覚えてないのか?貴様がヤツに呼び寄せられ、ビームが出なかったばかりに敗北した事あったよな?その時名乗ってたのを忘れたのか?」
「知らねぇ。っていうかオレが負けるわけがねぇ。」
「ほぅ・・・、なるほど・・・。」
「なになに?なんなの?もったいぶらずに教えておくれよ!!」
意味深な帝王の態度を見て興味を示したデュマは、ペタペタと歩いて帝王に近づき、耳を傾ける。
そこで、デュマが気絶していることを良いことに、何かの儀式を行って記憶を改変したに違いないと言う推測を、帝王は語って聞かせた。
とても分かりやすかったので、デュマも納得した。
「ち・・・ちくしょおおおおお!! ちくしょう!!ちくしょう!!ちくしょう!!」
両翼で地面を叩き、デュマは吼える。
その目からは大粒の涙が溢れている。
「あの野郎、オレをコケにしやがって!!陛下、陛下と慕うオレを見て、馬鹿にしてたに違いねぇ!!」
キッと帝王をにらみ付け、デュマは続けた。
「頼む陛下!!オレをあの世界へ!!憎っくきメイルスティアのいる世界へ戻してくれ!!」
「その意気よ!!行けデュマ!!貴様の全身全霊をもって、メイルスティアを葬るのだ!!」
帝王が勢い良く手を上げると、その頭上に禍々しい空間が現れる。
それを確認し、ニヤリと笑みを浮かべるとデュマは羽ばたいた。
「オレは闇の貴公子・デュマ!!待っていろメイルスティア!!貴様の髪の毛1本も、この世には残さぬ!!」
ショッキングピンクの羽毛に包まれた身体は宙を舞い、亜空間へと吸い込まれていった。
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つづく