<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

ゼロ魔SS投稿掲示板


[広告]


No.21361の一覧
[0] アッカンベーしてさよなら(ゼロの使い魔 オリ主召喚 チラ裏から移動)[しがない社会人](2013/11/08 22:43)
[1] 第1話 鏡の中からボワッと[しがない社会人](2013/11/08 22:35)
[2] 第2話 外出[しがない社会人](2013/11/08 22:36)
[3] 第3話 使い魔[しがない社会人](2013/11/08 22:36)
[4] 第4話 初仕事[しがない社会人](2013/11/08 22:36)
[5] 第5話 まかない[しがない社会人](2013/11/08 22:37)
[6] 第6話 2のルイズ[しがない社会人](2013/11/08 22:37)
[7] 第7話 クリプトナイト(液体)[しがない社会人](2013/11/08 22:37)
[8] 第8話 決闘~消えるオッサン~[しがない社会人](2013/11/08 22:37)
[9] 第9話 決闘~ファン○ム大魔球~[しがない社会人](2013/11/08 22:38)
[10] 第10話 玉職人[しがない社会人](2013/11/08 22:38)
[11] 第11話 農夫[しがない社会人](2013/11/08 22:38)
[12] 第12話 千の風になって[しがない社会人](2013/11/08 22:39)
[13] 第13話 副収入[しがない社会人](2013/11/08 22:39)
[14] 第14話 伝説の剣[しがない社会人](2013/11/08 22:39)
[15] 第15話 コピーロボット[しがない社会人](2013/11/08 22:39)
[16] 第16話 訪問勧誘お断り[しがない社会人](2013/11/08 22:40)
[17] 第17話 特攻野郎ゼロチーム[しがない社会人](2013/11/08 22:40)
[18] 第18話 決闘2~また消えるオッサン~[しがない社会人](2013/11/08 22:40)
[19] 第19話 パイレーツ・オブ・アルビオン[しがない社会人](2013/11/08 22:41)
[20] 第20話 迷子[しがない社会人](2013/11/08 22:41)
[21] 第21話 ハルケギニア動乱 前半[しがない社会人](2013/11/08 22:41)
[22] 第21話 ハルケギニア動乱 後半[しがない社会人](2013/11/08 22:42)
[23] 第22話 帰ってきたヨッパライ[しがない社会人](2013/11/08 22:42)
[24] 第23話 ガウリンガル[しがない社会人](2013/11/08 22:43)
[25] 第24話 惚れ薬[しがない社会人](2013/11/08 22:45)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21361] 第21話 ハルケギニア動乱 前半
Name: しがない社会人◆f26fa675 ID:18adeda4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/08 22:41


「いやー、それでそのクマはプ○さんって名前にしようとしたんですけどね」

「はぁ……」

「でも色々ヤバい気がするし、俺もある意味ぷーさんだから、ややこしいねってなことで……」

「あのサイトさん……」

「結局、レオナルド熊ということで落ち着いたんですが、今度はサルモネラがこの名前は嫌だと言い出して……」

「……サイトさん」

「サルモネラは猿なんですけど……、でも猿なのにビフィズスじゃオカシイだろと口論になって……」

「サイトさん!」

「はい?」

「そろそろ、こちらの事情も話したいのですが……」

「ああ……スイマセン……、数カ月ぶりに人の言葉で会話したもので嬉しくて……」

嬉しくて寝起きなのに捲したてるように話してしまった。
ロングビルさんは少し引いているし、テファも困惑顔だ。

……。





さて、なぜ俺が素敵なログハウスでロングビルさんたちと向かい合っているかというと、どうやら俺は行き倒れたらしい。
それを助けてくれたのが偶然帰省中で、森歩きをしていたロングビルさんと妹のテファということだ。
二人に介抱され、しこたま御馳走になった俺が久しぶりのベッドで倒れるように眠りについたのは昨夜のこと。

「ではまずサイトさん、身体は大丈夫ですか?」

「へ?身体ですか……?」

そう言われて自分の身体をあちこち確かめる。

「サイト大変だったのよ。心臓が止まっ……」

「100日も彷徨っていたそうですからね!体に負担を掛けてしまっているかもしれないですしね!」

「ああ、心配してもらってありがとうございます。ところで心臓って……」

「あーっと!ちょっと心音を確かめますね!」

そう言うとロングビルさんは俺の胸に耳を当ててくる。

「……うん、鼓動が速いけど問題はないと思います!」

「そうですか……」

というか、そりゃ鼓動も早くなるだろ……。
いきなり美人に密着されれば……。

「それに、サイト骨もいくつか折れ……」

「骨……?」

「あーっと!テファ!そろそろあの子たちのご飯を作ってあげなきゃ!」

「え?まだ、あの子たち朝御飯食べたばかり……」

「サイトさん!今回の任務は骨が折れたでしょう!」

「ええ、まぁ……」

何なんだろう……、今度はロングビルさんがペラペラ喋りだした……。

「あっ、ごめんなさい姉さん。記憶を消したのに喋っ……」

「記憶?」

「だああああああっ!……さっ、テファは準備をお願いね!」

そう言いながら、ロングビルさんはテファを部屋から押し出してしまった。





一体どうしたっていうん…………、!!!??

「だあああっーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

とんでもないことに気づいてしまった!

「っ!……サイトさん。どうかしました……?」

「ルーンが消えとる!!!!」

「え?」

「左手の紋紋が無くなってるんですよ!」

「……。へー、そうですか」

えっ?反応うすい……。

「便利だったのに……、懐中電灯がわりで……」

サバイバル中は、この左手にずっとお世話になっていた。
学院にいた頃はフォークを持つたびにチラチラ光って欝陶しかったが。

「しかし、一体何が……。ルイズは死なない限りとれない的なことを言っていたのに……」

「…………」

「う~ん……電池切れかな……?」

しかし、何処から電池をいれたらいいんだ……。

「…………。まぁ、いいんじゃないですか?別に……」

「えっ?……まぁ確かにそうですけど」

やけにドライなロングビルさんの言うとおり、別にいいっちゃ別にいい。
公衆浴場に入れないという懸念事項も解消されたわけだし。

「さて、テファも席を外してくれたし、サイトさんが居なくなってのこと、戦争のことなど説明しますね」

「……ああ、はい。お願いします」

なんか、やけにサクサク話をすすめるな……。

……。





@@@@@@@@@@





「ではまず、王党派と貴族派の戦争についてですが」

「貴族派が勝ったんですよね?」

「そうです。しかし王党派は玉砕戦に挑む前に若い貴族を中心とした部隊がごっそり離反してしまいます。結局、王と年輩の貴族たちは半日も持たずに玉砕、若い貴族たちはレコン・キスタに降伏しました。これは、どうやら王子が亡命した場合の作戦として前々から考えられていたようです」

「へー……、レコン・キスタは若い貴族たちを受け入れたんですか?」

「はい。王党派の旗色は元々圧倒的に悪かったので、土壇場での離反は怪しまれたようですが……。だけど王を見殺しにしているわけですからね……信用されたようです。しかし、その為今でも離反した彼らの評判は悪いですね」

なるほど。
王子も名誉を捨てて亡命したから、自分たちも名誉を捨てて後々の為にってことかな?

「後に王子が亡命したことが判明して、アルビオン共和国内で色々あったようですが……今はもう、あまり関係ないですね」

「?そうなんですか?」

「はい、レコン・キスタはクロムウェルを神聖皇帝として神聖アルビオン共和国建国を宣言したんですけど……。噂によると戦争の数日後からクロムウェルが急にオドオドし始めたようで……」

「オドオド?」

「はい。さらに求心力の要であった虚無の魔法を披露することも無くなったそうです。トップがそんな状態なので建国を宣言する頃には、レコン・キスタはまとまりを欠いていたようです」

「クロムウェルさんも大変ですねぇ」

「クロムウェルは少し前に行方をくらませてしまいました。さらに丁度その前後から何故かギアスが解けたかのように、貴族派からも王政復古の主張が出始めたそうです……」

「じゃあ、王子さまがアルビオンに戻って即位したんですか?」

「いえ、まだそこまでは……短い間に事態が二転三転して情勢も不安定です。それにレコン・キスタも完全に無くなったわけではないですし、その思想も残っています。しばらくの間は共和制を続けていくのでしょう」

「なるほど」

「アルビオン情勢については以上です」

「あれ?」

「?どうしました?」

「俺は何でアルビオンに来たんだっけ?」

「…………」

ロングビルさんの視線が冷たい……。
俺のアホさ加減に愛想を尽かしているのか……。

「ふふっ、相変わらずですね。……ではトリステインの話をしましょうか」

あれ?
冷たいと思ったけど、そんなことはなかったぜ。
微笑んでくれた。
それにしても笑うと、メチャクチャ綺麗だなこの人……。

「それでは説明しますね。まず、サイトさん達が出発してから2日後の昼すぎに風竜に乗ってアンリエッタ王女、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ。さらにシッポに縛り付けられたウェールズ王子が魔法学院にやってきました。」

ああ、そういえばアルビオンへ王子様を誘拐しにきたのか……。

……。





@@@@@@@@@@





サイト出発から2日後のトリステイン魔法学院。


「ふぅ、まさか2日で帰ってくるとはのう……」

「あら、ずっと偏在で監視していたのでは?」

「そうじゃが、結局、出番は無かったのう」

まぁ、白仮面の中身は判ったんじゃが……。

「そういえば、アイツがいないようだけど……?」

「アイツ~?サイトくんのことかの~?……彼が気になるのかの~?」





バキッ!





「……殴らなくてもいいじゃろう」

「くだらないこと言ってないで、どうなんだい?」

「どうやらアルビオンに行ったようじゃが……偏在はアンリエッタ王女に(こっそり)付きっきりじゃからのう。フネの上から先は判らんなぁ……」

「…………」

「まぁ、彼なら大丈夫じゃろ。スッ転んだ拍子にレコン・キスタの大将をアルビオンから突き落とすぐらい、やってのけるかもしれんぞ?」

「そんなわけ……………………、いや…………やりかねない……」

「さて、おしゃべりはこのくらいにしてミス・ロングビル。ウェールズ王子を連れてきてくれんか」

「…………」

む?

「どうかしたかの?」

「……いえ、それでは行って参ります。オールド・オスマン」

………………。

…………。

……。






10分後。


「お待たせしました、オールド・オスマン」

ミス・ロングビルはそう言いながら扉を開けると、全長2メイル程のゴーレムで担いできたウェールズ王子を学院長室に投げ入れる。

ゴロンゴロンと転がる王子。

「……ちょっと乱暴すぎやせんか?」

「あら、そうですか?」

ふむ?
……ミス・ロングビル……なんか、ちょっと怖いのう。

「……アンリエッタ王女の様子はどうじゃった?」

「マザリーニ枢機卿が大大大お説教中です。ミス・ヴァリエールたちも一緒に」

ゲルマニア訪問の一行は、王女の体調が崩れたということにして今日まで魔法学院にとどまっていた。

「枢機卿も大変じゃのう。鳥の骨になるわけじゃ」

まあ、王女の失踪が表沙汰にならなかっただけマシか……。

「あと、王子のお付の二人が亡命を嘆願しているようでした」

「そうか……」

しかし枢機卿が受け入れることはないじゃろ。
となると、学院で……か。

……。

「それにしても、王子はまだ石化したままか……」

「ゴーレムで2、3回、引っぱたいてみましょうか?」

「…………君、なにか王子に恨みでもあるのか?」

「いえ、別に」

……。





しばらくして。


「ぐっ……、ここは…………」

部屋の真中で倒れていた王子がゆっくりと起き上がる。

「おお、目が覚めましたか殿下」

「アナタは……?」

「儂はトリステイン魔法学院の学院長、オスマンというものです」

「トリステイン……、そうか……私は生き恥を晒してしまったか……アンリエッタに迷惑をかけて……」

「ふむ……、アルビオンに帰らなくていいんですかな?」

「いや……、私がここにいるということは、……全て、私が亡命したときの手はずで動いてしまっているでしょう……」

「そうですか……。口惜しいでしょうが、アンリエッタ王女や部下の方々の気持ちも汲んでやってくだされ」

「………………はい……」

……。





「さて早速ですが、これからの話しをしましょうかの?」

「はい」

「今、殿下のお付の二人がトリステインのマザリーニ宰相に亡命を嘆願していますが、おそらく受け入れられないでしょうな」

「ええ……、当然です」

「というわけで、秘密裏に魔法学院に潜伏してもらうという形になると思いますが」

「……いや、しかし……ここに迷惑を掛けるわけには……」

「なあに、迷惑なんてことはありませんよ。それにマザリーニ宰相も、そのつもりでしょう」

「え?」

「今回のことは、うちのお姫様がやらかしたことですからの。公に受け入れられないとはいえ、突っぱねるようなことはしませんよ」

「…………」

「それに市井に紛れるよりもいいでしょう。木を隠すのは森の中、メイジを隠すのは…………の?」

「…………。……そうですか、……ありがとうございます」

……。





「しかし、堂々とお客様扱いするわけには行きませんからの」

「はい、なるべく目立たないかたちで……」

「では丁度その服を着ていることですし、ここでは殿下にサイトくんとして生活してもらいましょうか」

「?……そういえばこの服は?」

「フネの上に居たでしょう?彼はミス・ヴァリエールの使い魔のサイトくんです」

「使い魔……?」

「彼のような生活をしていればアナタがウェールズ王子だと疑うものは皆無ですよ」

「いや、学院の人たちも気づくでしょう……?」

「彼は学院に居着いた野良犬みたいなものですから。彼の変わった服は覚えていても顔までは覚えられてないんじゃないかのう」

「彼は何なのですか……、いったい……」

「犬猫の顔なんて見分けがつきませんじゃろ?」

「いやいや、でも……彼が帰って来たら……」

「サイトくんが2人になっても皆、気にしないんじゃなかろうか?」

「そんなバカな……」

「まあまあ、詳しい話はミス・ヴァリエールに聞いてくだされ。話は通しておきますから」

「はあ…………」

「では、ミス・ロングビル。怖い顔をやめて、殿下をご案内して差し上げなさい」

「……はい」

……。





@@@@@@@@@@





時は戻って、ウエストウッドのサイト達。


「いやいやいやいやいやいや」

どういう事やねん!
野良犬って!

急に2人になったらみんな気にするだろ、さすがに!
アメーバじゃないんだから!

「さすがに気づくでしょう!シエスタとかマルトーさんとか!」

「…………」

「あれっ……?」

「えっと……じゃあ、続きを話しますね……」





@@@@@@@@@@





ウェールズのサイト生活1日目(トリステイン到着翌日)


さて。

「ミス・ヴァリエールに聞いた、彼の生活その1・・・・調理場に行って餌をもらうとあるが……」

メモを読みながら学院内を歩く。
昨晩ミス・ヴァリエールが書いて渡してくれたものだ。

なんでも彼のような生活はダメ人間がおくるもので真人間が真似してはいけないらしい。
ましてや王族がするような生活ではないと……。

私がどうしてもと頼み込んで彼と同じ生活をさせてもらうことになったが……。

確かに藁の上で寝ることになるのは予想外だった。
しかし、女性のベッドを奪うわけにもいかない。
そもそも、女性と同室というのもどうかと思うが……、使い魔ということだし仕方ないのか……。

これを書いてもらうまでにも随分時間がかかってしまった。

「あらっ、サイトさん。朝御飯ですか?」

1人でふらついているとメイドの女の子に声をかけられた。
ちなみに2人の部下は学院の衛士として潜伏しているので別行動だ。

「え、と?……君は……」

「やだ、たった2日間お出かけしただけで忘れちゃったんですか?シエスタですよ」

「……そ、そうだったね。シエスタ……」

「まったく、サイトさんは相変わらずですね」

メイドの少女は可愛らしい笑顔でそう言いながら、私の手を引っ張る。

「さっ、マルトーさんも心配してますよ。サイトさんが3日もご飯もらいに来なかったから」

「いや、あの……」

……何で気づかないんだ……。

……。





「よう、我らの球!どうしたんだよ、食って寝る以外しないオマエが3日も飯をもらいに来ないなんて!」

調理場に案内されると、威勢のいい料理人に出迎えられた。
それにしても、我らの球とは、いったい……。

「マルトーさん、酷いんですよ!サイトさんったら私のことを忘れてたみたいなんです!」

「はははっ!我らの球は相変わらずだなぁ」

何で誰も気づかないんだ……?
というか彼は皆にどう思われているんだ……?

……。





「彼の生活その2・・・・玉っころを投げたり転がしたりして遊ぶ……」

なんだコレ……?

「この広場に落ちてる金属球を転がせばいいのか……?」

……。

メモのとおり、金属球を投げたり転がしたりしてみる。

「…………」

…………。

「何が面白いんだ……これは……?」

良く解らん……。

……。

「あっ、サイトじゃない!」

「ん?君は……?」

この遊びの面白さを見いだせないでいると、キレイな縦ロールの女の子に話しかけられた。

「ちょっとサイト!ギーシュはいつになったら帰ってくるのよ!」

「え?いや……」

「私をほったらかして、ルイズともう一人の女の子と旅行にいくなんて……!」

なにやら、この女の子からは、とてつもない威圧感を感じるが……。

「ルイズとサイトは帰って来てるっていうのに……!」

そう言うと彼女の目から光が消え、なにやらブツブツとつぶやき始めた。

「ふふっ……後3回だったけど……もういいわ……。……を手に入れて……作って……ギーシュに飲ませて……」

女の子は不穏な言葉をつぶやきながらフラフラと行ってしまった。

「なんだったんだ……?」

というか、やっぱり私に気づかないのか……。

……。





「彼の生活その3・・・・使い魔仲間と昼寝……」

メモに書いてあるのは、ここまでだ。

「…………」

どういう事だ……?
彼はこの3つをするだけで、1日を過ごしているのか……?

いや……、その1とその3は食事と睡眠だしな……。
実質、毎日何もしていないのと同じではないのか、これは?

……。

「しかし、使い魔仲間とは……」

あのサラマンダーとか風竜とかモグラとかバックベアードとかのことなのか?
と、広場で戯れる幻獣たちを見ながら考える。

「…………」

とりあえず寝てみるか……。

「あら、サイトじゃない」

広場で寝転がろうとしたら赤髪の派手な女の子に声をかけられた。
それにしても良く声をかけられるな、彼は。

「あら?アナタはウェール…」

赤髪の女の子が私の名前を呼ぼうとすると、隣にいた青髪の女の子が素早くその口を塞ぐ。

初めて気づかれたようだ……。
そういえば彼女たちはアンリエッタと一緒に居たな。

「今はサイトくんとして振舞っているので、そう呼んでくれないかな?」

「んぐぐぐぐ、……プハーッ。……分かったわ、サイト」

よし、一応聞いてみるか。

「ところでサイトくんは、毎日何をして過ごしているのかな?」

「え?サイト?」

どうも、このメモは信じられない。
こんな何もしない生活、人間が1日たりとも耐え切れるとは思えない。

「サイトは毎日、食べて寝て遊んで……それだけよ」

「…………」

どういう事だ……。

……。





@@@@@@@@@@





再び、ウエストウッドのサイト達。


「そうですか……、王子と会ったことのある……キュルケとタバサだけが……」

思いがけず、心に傷を負ってしまった……。

「あ、あのー。元気だしてください、サイトさん」

「ははっ……、俺なんか野良犬みたいなもんですから……顔も特徴ないですし……」

自分探しの旅に出ようかなぁ……。
100日間も1人旅した直後だけど……。

「サ、サイトさん!そういえばシエスタはサイトさんのこと好きだって言ってましたよ!」

何っ!

「マ、マジですか!?」

「はい」

……。





@@@@@@@@@@





ウェールズのサイト生活30日目


慣れたくもないこの生活に慣れてきたと実感している今日この頃。
私はシエスタに呼び出された。

「シエスタ、こんなところに呼び出してどうしたんだい?」

「あの……、わたし……サイトさんにどうしても伝えたい事があって……」

ふむ?
一体なんだろうな?こんな人気のないところで。

シエスタは顔を赤くして、なにやらモジモジしているが。

「わたし…………、サイトさんが好きです」

「ありえないだろう!!!!」

「え?」

「あ……、いや」

つい大声を出してしまった……。
だが、これは私が答えていいのかな……?

どうしたものか……。

シエスタは働きものだし、とても優しい子だ。
もし恋仲になれば、彼のような人間は彼女に頼り切りの爛れた生活をおくるに違いない。
まあ、現時点でも言えることだが。

そもそも、彼の何がシエスタを惹きつけたのか……。
それとも……、今の態度からも有り得ないとは思うが……彼女は私の正体に気づいているのか……?

「あー……、シエスタは私なんかの何がそんなに……」

「サイトさんは私があの貴族様に連れて行かれそうになったときに助けてくれましたし……」

ふむ。
やっぱり、私の正体に気づいているわけじゃないのか。

「サイトさんは、強くて、優しくて、何があっても動じなくて、キリッとして、かっこ良くて……」

「いや、それはない」

何があっても動かなくて、の間違いではないのか?

どうやら1回助けたことで(それも怪しいが)、彼女の中で彼はだいぶ神格化されているようだな。

…………うん。

よし!断ろう!

それが彼女のためだ。
彼のフリをしているからとはいえ、私はシエスタにとても良くしてもらっている。
この子は、とってもいい子だ。
そんな彼女が、不幸な人生を歩むのは見たくない。

「いいかい、シエスタ。私は食べて寝て遊んで、毎日働きもせず過ごしている、動物以下のダメ人間なんだ。君のような素敵な女の子とは釣り合わないよ」

「…………」

「君にはもっと素晴らしい人が……」

「サイトさん……、わたしじゃダメなんですか……?」

「いや……」

私(サイト)が、ダメ(人間)なんだけど。
断るための方便とかじゃなくて、本当に。

しかし、困ったな……。
これ以上、彼を卑下していいものか……。
女性の誘いを断るのがこんなに難しいのは初めてだ。

……。





@@@@@@@@@@





またまた、ウエストウッドのサイト達。


「DAMN IT!!!!」

「サ、サイトさん……?」

思わずアメリカ人になるほどの衝撃!

「あの王子様、なんで人の告白を勝手に断ってるんだ……」

オカシイだろ……。
色々と……。

第一級犯罪じゃないか。
24歳童貞に巡ってきた恋愛フラグを勝手に折るとか……。

「うわー!女の子が俺に好意をもつなんて10回輪廻転生しても有るか無いかというミラクルなのに!」

というかシエスタも告白するくらいなら気付こうよ……それ王子さまだよ……。

「………………はぁ……。それで……、結局どうなったんですか……?」

「はい、サイトさんはシエスタの兄代わりということで落ち着きました。あの子は兄弟でも一番上で、年上の兄や姉に憧れていたらしいんです」

「そっすか……」

「今では、その好意は恋愛感情じゃないと完全にウェールズ王子に丸め込まれたようです」

さすがイケメン王子様……、女性に断りを入れるのがウマイんだろうな……。

一等当選の宝くじをヤギさんに食べられた気分……。

それに……。

「なんていうか、王子様に俺のパーソナリティが完全に乗っ取られてませんか……?」

「……まあ、ウェールズ王子に気づいているのは、フネの上でウェールズ王子に会った面々とオールド・オスマンと私ぐらいですからね」

……。
どうなってるんだ、あの魔法学院は……。

「あっ、そういえば」

「え?他にも気づいてくれてる人がいるんですか?」

「いえ……、ミスタ・グラモンはフネの上で王子に会ったようですが、成りすましに気づいていませんね」

「…………」

ギーシュ……、マヌケにも程があるだろ……。

あれっ?

「と、言うか、アイツ無事にトリステインへ帰ってるんですか?」

「ええ、アンリエッタ王女たちが帰還した翌日の夜に、酷い二日酔い状態で……」

アイツ……俺が牢屋にぶち込まれてたのに、王宮で饗されていたというのか……?

「ミス・タバサがサイトさん達を迎えに風竜を飛ばしたらしいんですけど、ミスタ・グラモンだけを咥えて帰ってきたようです……」

「そのとき、俺は牢屋にぶち込まれてたからなぁ……」

はぁ……。

それにしてもタバサは優しいな……。

よし!
タバサや、みんなのために何かアルビオン土産を買っていこう。
俺の存在感を増すためにも。

……。





ただしギーシュ、テメーは駄目だ。





@@@@@@@@@@





*いつもより長くなったので21話は分割しました。
*ルイズやアンリエッタたちの話は後半で。
*後半は1週間以内に推敲して投稿するつもりです。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024562120437622