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No.7277の一覧
[0] ケティ・ド・ラ・ロッタの事も、時々思い出してあげてください(ケティに転生)[灰色](2010/10/04 10:30)
[1] プロローグ[灰色](2009/05/07 01:14)
[2] 第一話 クラッシュできないフラグもあるのです[灰色](2009/07/02 19:17)
[3] 第二話 貴族の矜持はそういう所で発揮しない方が良いのです[灰色](2009/11/22 01:19)
[4] 第三話 引き際は重要なのです[灰色](2009/10/25 15:10)
[5] 第四話 思わぬ失態と収穫なのです[灰色](2009/11/22 01:22)
[6] 第五話 人を呪わば穴二つなのです[灰色](2009/04/13 23:59)
[7] 第六話 決戦に挑むは後の勇者たちなのです[灰色](2014/05/14 22:52)
[8]  番外編 ハーレム願望も程々にして欲しいのです[灰色](2009/11/22 01:29)
[9] 第七話 男はアホな生き物なのです[灰色](2009/10/31 23:38)
[10] 第八話 格好つかない日もあるのです[灰色](2009/10/25 15:11)
[11] 第九話 これが青春だ!なのです[灰色](2009/11/22 01:30)
[12] 第十話 男心も乙女心も複雑なのです[灰色](2009/04/14 00:01)
[13] 第十一話 気付けば矢面なのです[灰色](2009/05/17 15:13)
[14] 第十二話 介入し過ぎたのかもしれないのです[灰色](2009/04/24 09:58)
[15] 第十三話 裏切りとか、壮絶な最期とか、油断とか、なのです[灰色](2009/04/25 17:31)
[16]  プレ編01 杖と契約するまで[灰色](2009/05/17 15:13)
[17] 第十四話 嵐の合間の静けさなのです[灰色](2009/11/22 01:31)
[18] 第十五話 ファンタジーといえばクエストなのです[灰色](2009/05/17 15:12)
[19] 第十六話 ついて来る人来ない人なのです[灰色](2009/05/23 11:04)
[20] 第十七話 でっち上げ傭兵団、旗揚げなのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[21] 第十八話 往くぞ空の彼方まで!なのです[灰色](2009/05/29 17:05)
[22] 第十九話 男と女のエトセトラ、メカもあるのです[灰色](2009/11/22 01:32)
[23]  幕間19.1 トリステイン空軍の意地[灰色](2010/02/25 00:03)
[24] 第二十話 そして少年と少女は背景になった…なのです[灰色](2009/11/22 01:27)
[25] 第二十一話 姫様がはっちゃけ過ぎなのです[灰色](2009/07/12 11:32)
[26] 第二十二話 媚薬なんか作るからこんな事になるのです[灰色](2010/02/22 10:03)
[27] 第二十三話 羞恥心と後悔で死ねそうなのです[灰色](2009/09/08 21:57)
[28]  幕間23.1 女王誘拐[灰色](2010/02/25 00:03)
[29] 第二十四話 絶対に叶わない恋のお話なのです[灰色](2009/10/30 06:59)
[30]  幕間24.1 トリステイン銃士隊&約束を履行したりさせられたり[灰色](2010/03/10 18:34)
[31] 第二十五話 勤労精神と格差とガンマニアなのです[灰色](2010/02/22 10:04)
[32]  幕間25.1 艦隊再建[灰色](2010/02/25 00:04)
[33] 第二十六話 酒場にまつわるエトセトラなのです[灰色](2010/02/22 10:05)
[34] 第二十七話 何事も計画的に程々に、なのです[灰色](2009/10/30 07:01)
[35]  幕間27.1 探す人、あるいは貧乏人達の夜&微熱と熱風の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:30)
[36] 第二十八話 諦めた方が幸せな事もあるのです[灰色](2009/10/25 15:09)
[37]  幕間28.1 お買い物デートっぽい何かと女王の憂鬱[灰色](2010/03/10 18:44)
[38] 第二十九話 仕掛けは済んだ、後は…なのです[灰色](2010/09/25 01:44)
[39]  幕間29.1 王女と剣士の少年[灰色](2010/03/10 18:52)
[40] 第三十話 少し気まずい決着…なのです[灰色](2010/02/22 10:09)
[41]  幕間30.1 演歌は心で歌うもの そして、例のアレ[灰色](2010/02/25 00:07)
[42]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山01 [灰色](2010/11/01 10:27)
[43]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山02[灰色](2010/11/04 07:35)
[44]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山03[灰色](2010/11/04 21:36)
[45]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山04[灰色](2010/11/08 23:16)
[46]  番外編 タバサの冒険・ケティの物見遊山05[灰色](2010/11/19 22:08)
[47] 第三十一話 やっぱり男は必要なのです[灰色](2010/02/22 10:11)
[48]  幕間31.1 スイーツとビター[灰色](2010/02/25 16:55)
[49] 第三十二話 美容の為に命を懸けるのです(加筆修正+幕間部分を試験的に追加)[灰色](2010/03/10 18:57)
[50] 第三十三話 人間なので、間違えることも多々あるのです[灰色](2010/03/19 22:54)
[51] 第三十四話 ハードラックとダンスっちまった…なのです。[灰色](2010/05/08 06:59)
[52]  幕間34.1 舞台裏…って、裏とか言うな! ※ゴム存在に改定※[灰色](2010/05/19 10:20)
[53] 第三十五話 前半分は思い出したくも無いのです[灰色](2010/05/26 23:10)
[54]  幕間 35.1 ダータルネスの大艦隊[灰色](2010/05/30 15:46)
[55] 第三十六話 とんでもない事実なのです[灰色](2010/08/11 18:11)
[56] 第三十七話 才人はお酒を飲まない方が良いと思うのです[灰色](2010/06/19 00:40)
[57]  幕間37.1 漆黒の女王、情熱の娘[灰色](2010/07/01 06:57)
[58] 第三十八話 ジュリオに始まりジュリオに終わるのです[灰色](2010/07/15 21:45)
[59] 第三十九話 勝ったのに御通夜みたいなのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[60] 第四十話 勝敗は兵家の常なのです[灰色](2010/08/11 21:17)
[61] 第四十一話 たった三人の撤退戦なのです[灰色](2010/08/19 20:14)
[62]  幕間41.1 血塗れの真紅の悪魔[灰色](2010/08/22 05:55)
[63] 第四十二話 泣いている暇なんて無いのです。[灰色](2010/09/11 08:53)
[64]  幕間42.1 よくコケる王様[灰色](2010/09/16 22:12)
[65]  幕間42.2 怪力娘と真っ黒王女[灰色](2010/09/29 10:22)
[66] 第四十三話 いいモノ持ってんじゃねえか?なのです[灰色](2011/04/20 21:37)
[67] 第四十四話 砲兵は戦場の神なのです[灰色](2010/10/11 15:56)
[68] 第四十五話 ウエストウッド村要塞化なのです[灰色](2010/10/19 11:50)
[69]  幕間45.1 青髪の王と可哀想な使い魔[灰色](2010/10/21 22:53)
[70] 第四十六話 骨の髄までしゃぶり尽くされるのが英雄なのです[灰色](2010/10/30 19:12)
[71] 第四十七話 飾って眺めるのです[灰色](2014/05/14 22:49)
[72]  幕間47.1 無茶振り女王とガンマニア娘[灰色](2010/12/09 00:06)
[73] 第四十八話 ああ!窓に!窓に!なのです[灰色](2010/12/17 12:04)
[74] 第四十九話 平和な時ほど物騒なのです[灰色](2011/01/11 07:06)
[75]  幕間49.1 よく考えてみれば新年度だったのです [灰色](2011/01/11 07:06)
[76]  幕間49.2 忘れてなんかいないヨ、本当ダヨ?[灰色](2011/01/14 10:03)
[77] 第五十話 未練たらたらなのです[灰色](2011/01/29 09:34)
[78]  番外編 チョコ無き世界のバレンタインデー[灰色](2011/02/14 10:22)
[79] 第五十一話 平行世界は色々あるのです[灰色](2011/02/25 01:05)
[80]  幕間51.1 タバサに関わる色々なもの 1[灰色](2011/04/21 07:55)
[81]  幕間51.2 タバサに関わる色々なもの 2 (若干追加)[灰色](2011/04/23 14:53)
[82]  幕間51.3 タバサに関わる色々なもの 3[灰色](2011/07/09 12:04)
[83]  幕間51.4 タバサに関わる色々なもの 4 (加筆修正)[灰色](2011/09/06 19:16)
[84]  幕間51.5 タバサに関わる色々なもの 5[灰色](2011/09/19 15:05)
[85]  幕間51.6 タバサに関わる色々なもの 6[灰色](2011/10/01 00:40)
[86] 第五十二話 久しぶりにのんびりまったりと…エロ話なのです[灰色](2012/05/29 21:55)
[87] 第五十三話 さあ、作戦を始めよう…なのです[灰色](2012/05/18 23:42)
[88] 第五十四話 霧とともに舞い降りるのです[灰色](2012/05/29 21:29)
[89]  幕間54.1 エルフとタバサ、そしてとある物語[灰色](2012/08/03 10:27)
[90] 第五十五話 悲しいけど、これって潜入任務なのよね!なのです[灰色](2012/09/25 20:17)
[91]  超番外編01 てりやきバーガーが食べたい[灰色](2012/11/04 07:57)
[92]  超番外編02 豆チョコ戦車、それは愛[灰色](2013/02/16 19:53)
[93]  幕間55.1 タバサの願う事[灰色](2013/04/24 19:03)
[94] 第五十六話 なるべくなら戦わずに勝ちたいものなのです[灰色](2013/05/26 19:58)
[95] 第五十七話 取り敢えずは逃げるのみなのです[灰色](2013/06/24 01:13)
[96]  幕間57.1 門を開放するまで / ガリアの変な面々[灰色](2013/06/24 20:22)
[97]  突発座談会 そんな名の罰ゲェム[灰色](2013/06/30 00:31)
[98] 第五十八話 人生初のゲルマニアなのです[灰色](2013/08/31 19:16)
[99]  幕間58.1 時の迷子マリー[灰色](2013/08/31 10:24)
[100] 第五十九話 秘密にし続けるのは無理なのです[灰色](2013/10/09 09:11)
[101]  超番外編03 This Is Halloween[灰色](2013/11/01 21:59)
[102] 第六十話 私は見守っていますよ。見守るだけですが、なのです[灰色](2013/11/04 23:47)
[103]  幕間60.1 鬼の居ぬ間に鬼が居る[灰色](2013/12/19 22:26)
[104]  幕間60.2 ケティの居ない学園アレコレ[灰色](2014/01/26 23:42)
[105] 第六十一話 久々の学院なのです[灰色](2014/05/05 07:25)
[106] 第六十二話  ロマリアの光と影なのです[灰色](2014/09/09 18:12)
[107]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼01[灰色](2014/08/06 19:03)
[108]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼02[灰色](2014/10/31 22:51)
[109]  タバサの冒険編 タバサとケティとついでに吸血鬼03[灰色](2015/02/24 20:03)
[110] 第六十三話  武器、治療。そして教皇あらわる。なのです[灰色](2016/01/03 00:15)
[111] 第六十四話 教皇との面倒臭い話なのです[灰色](2017/03/19 01:19)
[112] 第六十五話 私の弱点などどうでも良いのです[灰色](2017/05/26 20:55)
[113] 第六十六話 3度目のアルビオンなのです[灰色](2020/07/16 00:30)
[114] 第六十七話 知っていても話せないのです[灰色](2020/07/16 00:52)
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[7277]  幕間30.1 演歌は心で歌うもの そして、例のアレ
Name: 灰色◆a97e7866 ID:79909f1c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/25 00:07
「~♪」

ケティが緊張した面持ちで歌っている。
激しく、それでいてなんとなく物悲しく、異国チックなその曲の名は…。


「夜桜お七…。」

才人がボソッと呟く。
確かにその曲…歌詞はトリステイン語だし、楽器もトリステインで使えるものを使って演奏されているが、まさしく『夜桜お七』だった。


「その前に歌ったのは『海雪』で、その前は『恋の奴隷』で、一番最初が『天城越え』…ケティって演歌好きだったのか…?」

「~♪」

有名な曲とは言え、10代で曲名が全部わかってしまう才人も才人だが。
しかも、どれもかなり激しい恋の歌だったりする。


「では…これで最後の曲となるのです…。」

そう言いながら、ケティは楽団に目配せする。


「…曲名は、『空と君のあいだに』」

「…って、何でいきなり中島みゆき!?」

カオスだった。
ちなみに、アンコールでリリーマルレーンを歌って更にカオスな感じになったものの、初めて聴く曲ばかりで『魅惑の妖精亭』の客は大満足だったらしい。



「ふぃ~…。」

歌い続けて流石に疲れたのか、バックヤードで椅子に座ったケティがたれていた。


「お疲れ、水持って来たぜ。」

「ありがとうございます…温い。」

ねぎらいついでに水を渡したが、ここは良くも悪くも中世ファンタジー世界であり、水は温かった。


「いや、魔法も使えない、冷蔵庫無い環境でそんな無茶言われてもだな…。」

「冷やしたいものを入れた容器を水を含ませた布で包んで、ひたすら団扇で扇いであげれば、気化熱冷却で飲み物を冷やす事は可能なのですよぅ…。」

そう言いつつも、才人から渡された水をごくごく飲むケティ。


「そう言いながら、飲んでるし。」

「んぐ…とは言え、歌いっぱなしで喉が渇いていましたし、この水は有難く戴くのです…んぐんぐ。
 ざっと一時間ほど扇ぎ続ければ、とっても冷たい水が…んぐんぐ…飲める筈なのです…ぷは。」

この国の夏は日本に比べると格段に空気が乾燥しているので、水の気化熱冷却でかなり冷やす事が可能だったりする。


「ケティちゃん、お疲れ様~。」

スカロンが、クネクネしながら現れた。


「冷えた水、用意しておいたわよ。」

「うぉぅ…これは冷たいのですね。」

早速飲んでみたケティだったが、その冷たさに感嘆の声を上げる。
才人に教えた方法を、実は既にスカロンに話していたケティだった。


「この前、ケティちゃんに言われた方法でやってみたのよ。
 魔法も使わずに、ここまで水が冷えるなんて、なんてトレビアンなのかしら。
 これでビールを冷やすっていう案、お客さんを喫茶店から呼び戻すいい方法になりそうだわ。」

「是非ともやってみてください、ビールは冷や冷やに限るのですよ。」

こっちの世界の温いビールもなかなか乙だが、やはりガツンと冷えたビールが飲みたいケティだった。


「キャバレーといい、この冷却法といい、ケティちゃんには色々とお世話になってばっかりよね。」

「いえいえ、こちらも色々と無理を聞いてもらっているので、お互い様なのです。」

王家からの命令とは言え、色々と融通を利かせてくれるスカロン。
実に侠気あふれる漢だった…心は乙女だが。


「ケティお疲れさま…って、なにその水滴の浮いたコップ!?」

「スカロンが用意してくれた、よく冷えた水なのです…飲んでみますか?」

そう言って、ケティはルイズに冷えた水を渡した。


「んぐ…何これ、凄い冷たい!?美味しい!?
 よくもまあ、水と風のメイジなんか見つけてきたわね。
 タバサでも呼んだの?」

「いいえ、それは魔法無しで冷やしたものなのです。
 実は…(中略)…と、言うわけでして。」

ルイズに気化熱冷却による水の冷却法を伝えたが…。


「何でそれで水が冷えるのか、原理を聞いてもさっぱりだわ。」

ルイズはちんぷんかんぷんだった。


「まあ、百聞は一見にしかずとも言いますし、一度才人にやってみてもらえばいいのですよ。」

「それはいい考えね。」

わからなかったものの興味はあるらしく、ルイズはゆっくりと頷いた。


「え!?俺がやんの!?」

「たまには使い魔らしい事の一つくらいして見せなさいよ?」

びっくりして自分を指差す才人を、ジト目で睨むルイズだった。


「へーい…。」

そんなわけで、気化熱冷却の実験が始まったわけだが…。


「つまらない…物凄く暇だわ…。」

「さっきから延々あおぎ続けているのに、ひでえ…。」

まあ、壺に濡れた布を巻き付けてパタパタ団扇で扇ぐだけなのだから、ヴィジュアル的には超地味。
なので、ルイズが飽きてしまったのは、仕方が無いといえば仕方が無い。


「くー…。」

「ケティなんか寝てるし…。」

まだ起きているだけ、ルイズの方がましかも知れなかった。


「歌った後だし、何だかんだで疲れたんでしょうね。」

「なるほど、確かにな。」

よく寝てよく食べる、若い証拠である。


「寝ていれば、年下だっていうのがよくわかるのにね。
 この、無駄な、脂肪の塊二つが無ければ、もっと年下な感じなのにっ!」

「くー…にゅ…うにゅ…。」

眠りこけて無抵抗なケティの胸をぐわしと掴むルイズ。


「うふふふふふ…相変わらず触り心地の良い塊だこと…。
 やっぱり無駄じゃないわ、これは無駄じゃないのよ…。」

「あー…ルイズ、いくら同性だからといっても、限度ってもんがあるからなー?」

そのまま眠りこけるケティに抱きついて胸にすりすりし始めたルイズを、『セクハラだぞー』とか思いつつ、ジト目で見る才人。
それでもパタパタと扇ぐ手は止めない。


「だって、ケティってすっごい触り心地良いのよ、いっぺん触ってみたらわかるわよ。
 触ったら粉砕するけど。」

「粉砕するって何をデショウ?」

才人の問いに、ルイズはただにっこり微笑むのみだった。


「ケティ風の脅し方、やめれ。
 怖いから、なんだか想像が膨らんですげえ怖いから。」

ナニかを粉砕される想像に、才人は思わず身を震わせた。



「にゅ…にゅ!?
 な、何なのですか、つめたっ!つめたいっ!?」

眠りこけていたケティの顔にいきなり滅茶苦茶冷たい水の雫が振ってきた。


「うひゃあああああぁぁぁっ!」

そして、そのまま悲鳴とともに、座っていた椅子から滑り落ちた。


「な…何なのですか…?」

いつの間に眠ってしまったのだろうかと思いつつ、立ち上がったケティがあたりを確認すると、悪戯小僧の顔になったルイズと才人が居た。


「流石のケティも、眠っていきなり顔に冷水の雫をかけられたらひとたまりもないようね。」

「そりゃまあ、私は歴戦の武人じゃあありませんし、常在戦場というわけには行かないのですよ。
 先程の感触から察するに、冷水が出来たのですか?」

ちょっと怒りたい気分を抑えつつ、ルイズに尋ね返すケティ。


「出来たよ…あーごめんな、俺は止めろって言ったんだが。」

「な…ちょ!?
 ノリノリでケティの顔に雫垂らしたのあんたでしょ!?」

ルイズが責任を押し付けようとした才人を小突いた。


「げふぅ!?」

小突いたはずだったが、才人は壁にめり込んだ。


「あら、ちょっと強めに小突きすぎたかしら?」

「お…おま、ルイズ、これは小突くとかいうレベルじゃねえぞ。
 つーか、俺じゃなかったら死んでるぞ、これは。」

ルイズの虚無は、今日も絶好調だったようだ。
そして、才人も変態的な生命力だった。


「ルイズも才人も、修繕代出すの私なのですから、もう少し控えめに。
 それで水…は…。」

「あらー…。」

よく冷えた水はルイズが才人を強めに小突いた衝撃で、見事によく冷えたカーペットの染みと化していたのだった。





「ケティ、メイジが足りないわ。」

王城に召喚されたケティに、アンリエッタは開口一番そう言った。」


「私はドラえもんでは無いのですよ、姫様。」

無茶振りされたケティは、思わず青狸の名前をを口走った


「ドラえもん?」

「あー、才人の世界の物語の登場人物で、色々と便利な道具を出してくれる狸のガーゴイルなのです。」

ロボットの説明が面倒臭いので、ファンタジー風に説明するケティだった。


「んー…主人よりも使い魔と親しくなるとか、一般的に言っても感心できる事ではないわよ?」

「へ?いや、御心配無く、ルイズと才人は間違いなく相思相愛なのですよ。
 ただ、ルイズがあまり才人の世界に興味が無いというだけで。」

アンリエッタの注意に、ケティは少し面食らったような表情で返した。


「それはつまらないわね…。
 もっとこう、秘密の寝室で才人殿と抱き合うとか、情熱的にキスするとか、そこをルイズに発見されるとか、そういう泥沼的な展開は無いの?」

「姫様は、私とルイズ達に、どうなって欲しいというのですか…。」

アンリエッタからの提案は、どっかで聞いたような話だった。


「…で、話は最初に戻るけれども、メイジが足りないわ。
 新式銃も銃士隊に回すので精一杯、とてもじゃあないけれども量産して兵士全員にってのは無理でしょう?
 だから、手っ取り早く従来どおりの戦力であるメイジを増やしたいのよ。
 何とかする方法を思いつかないかしら?」

「メイジの傭兵を雇う以外で?」

アンリエッタは、ケティの問いに無言で頷いた。


「方法はある事にはありますが…バレたら貴族制度の根幹を揺るがしかねないのですよ?
 ついでに言うと、ロマリアから破門されるやもしれない上に、戦力化したいなら10年はかかるのです。」

それは間違い無く禁忌の方法だと、ケティは思っている。


「それはまた、随分と物騒な話ね…で、何?」

「平民の子供に、杖との契約の儀式を行わせてみるのですよ。」

それは結果如何によっては、貴族と平民の区別がつかなくなる。


「平民の子供に杖を?
 でも、契約なんかできないでしょ、平民だし。」

「そうとも言い切れないのですよ。
 今まで貴族の御落胤がどれだけ市井に流れたと思いますか?
 それがざっと数千年…本人が気づいていないだけで、メイジの資質を持った者は結構な数居る筈なのです。」

ケティの予感としては、メイジの資質が遺伝するものだとして、おそらく杖と契約をさせたら、かなりの平民の子がメイジになれる筈だという確信めいたものがあった。


「素晴らしいわ、すぐやりましょう。」

「杖を持たせた殆どの平民の子が杖と契約できたとしても…なのですか?」

劣性遺伝なら数はぐっと減るだろうが、優性遺伝ならメンデルの豆みたいに圧倒的多数がメイジの資質を持っている可能性がある。
それは、メイジと平民の差というものを決定的に破壊しかねない、危険なものでもあるのだ。


「…それは有り得る事態なのかしら?」

アンリエッタも流石にびっくりしたのか、眉を顰めてケティを見る


「それが有り得るくらい、メイジと平民の血はおそらく混じり合っているのです。
 貴族の殿方に麗しい女性と見れば平民も貴族も関係無い方が多いのは、姫様もご存じのとおりですし。
 貴族の殿方が始祖以来の数千年間、地位と権力を駆使して平民の女性相手に腰を振りまくりながら過ごしてきた結果なのですよ。」

「あー…それを言われて物凄く納得したわ。
 でもケティ、10代半ばのレディが腰振るとか言わないで。」

アンリエッタは頬を少し赤らめてケティを睨んだ。


「うぅ…説目に集中し過ぎて表現が下品に…。
 と、取り敢えず、何処かの孤児院を囲い込んで実験してみる必要があるかと。」

ケティも表現が下品になっていた事に気付き、顔を真っ赤にしながら話を続けた。


「そうね…こっそりやって、まずかったらちょっとずつ増やしていく形で行きましょう。
 孤児なら、貴方は実はとある貴族の御落胤だったのよとか言って置けばいいわけだし。
 …そっち方面には定評のあるモット伯とかもいるしね。」

「…それはモット伯家で流血の惨事が発生しかねないので、是非とも止めて戴きたいのです。」

ひっそりと彼の預かり知らない場所で、命の危機が訪れつつあるジュール・ド・モット伯爵…彼の明日はどっちだ!?


「それと…姫様に見せたいものが。」

そう言って、ケティは古ぼけたレポートをアンリエッタに手渡した。


「これは…何?
 …って、ド・ワルド!?」

「ええ、ワルド卿の母君が書かれたレポートの断片です。
 書いた本人が発狂してしまって、殆ど散逸してしまっていましたが。」

ケティとしても流石に『何で知ってんだ!?』と何度も問われるのが嫌なので、証拠を集めてから情報を伝えることにしている


「800メイル以下の地下に風石の大鉱脈が成長中…このままだと、ハルケギニアの各地が浮き上がるですって!?」

「いやはや、困ったものなのです。」

淡々と語るケティの顔はあんまり困っているように見えなかった。


「これ、本当なの?」

「間違っていたら、発狂しないでしょうね。
 ワルド卿もグレなかったかもしれません。」

アンリエッタはケティが騙しているのではないかと思ってよーく見てみるが、やはり嘘を言っているようには見えなかった。


「よく冷静にしていられるわね?」

「そりゃまあ、ラ・ロッタは浮きませんから。」

ひでえ話だった。


「…なんで浮かないのよ?」

「山の女王が、縄張り一帯の精霊の力を広範囲に少しずつ吸い取って、生きる為の補助としているからなのですよ。
 流石幻獣、おかげでラ・ロッタ周辺からは火石も風石も水石も土石も一切産出されません。」

何が幸運に転じるのかわからないものである。


「まあ、大丈夫なのですよ。
 時が来れば、伝説が…虚無が解決してくれるでしょう。
 山の女王もそう言っていました。」

「う…まあ、そういう事なら、私は私の仕事をするだけだわ。」

山の女王のくだりは思い切り嘘だが、今焦ってもどうにもならないのも事実だった。
クレイジー・ジョゼフに知れたら、何やらかすかわからんし。


「アルビオンみたいに、トリステイン丸ごと浮いてくれないかしら?
 それなら、統治が楽そうだし。」

「その場合、ラ・ロッタだけハブられるのですよ…。」

絶海の孤島と化したラ・ロッタ…それはそれでありかもしれなかった。


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