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Date with mistress Megumi
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まだ続く未緒ちゃんとゆかりちゃんの連歌合戦から抜け出して、公くんは缶ジュースをあけていました。
「ぷはぁ。それにしてもあの二人、さすがだとしか言いようがないよなぁ」
ため息混じりに公くんが二人の方を見たとき、不意に回りの桜や桃が、ざわざわとざわめきました。
「何だ? どうわぁっ!」
何気なく上を見上げて、公くんは思わずその場に尻餅をつきました。
ゴゥンゴゥン
妙な音をたてながら、銀色の円盤がそこに浮かんでいたのです。直径は10メートルくらいでしょうか? 桜の木より上に浮いてるところを見て、20メートルくらいの高さにいるようです。
「ゆ、UFO!?」
思わずあんぐりと口を開けてしまう公くん。
と、
ぴるるるるる〜〜〜〜
妙な音とともに、青い光線がUFOの下部から発射されました。
その光が公くんを包んだかと思うと、公くんの身体がふわりと浮きます。
「わ、わわっ!!」
そのまま吸い上げられていく公くん。
「わーっ! キャトルミューティレーションはイヤだよぉぉ!!」
公くんの頭をUFO特番で見た映像がよぎります。慌ててじたばたしますが、空中に浮いてしまっている状況では、どうにもなりません。
めぐみちゃんとでぇと カーテンコール
第九話 「公くん! 今助けるわ!」
「!!」
優美ちゃんと望ちゃんの戦いを微笑みながら見守っていた詩織ちゃんは、不意に辺りを見回しました。
「誰か、呼んだ?」
「詩織ちゃん、どうしたの?」
めぐみちゃんが、詩織ちゃんの顔をのぞき込みました。そして、びっくりしたように息をのみます。
「詩織ちゃん、顔色が真っ青じゃないの。大丈夫?」
「う、うん」
そう答えながら、詩織ちゃんは胸に手を当てました。
鼓動が激しくなっています。それとシンクロするかのように、何かいやな予感が胸に広がるのを詩織ちゃんは感じていました。
「……何なの? このいやな予感……。前にも感じたことがあるような気もする……。ま、まさか!!」
不意に詩織ちゃんは立ち上がりました。そして、そのままロビーから駆け出します。
「詩織ちゃん!!」
驚いてめぐみちゃんが呼びかけましたが、詩織ちゃんは振り返りもせずにそのままホテルの外に飛び出していきます。
「なんだかおもしろそー。あたしも行こうっと!」
夕子ちゃんがその後を追いかけました。二人を追いかけようとしためぐみちゃんを、見晴ちゃんが止めます。
「やめといたほうがいいと思うな、メグちゃん。あの二人に走って追いつけると思えないし」
「……それもそうですね」
めぐみちゃんは納得して、望ちゃんと優美ちゃんの戦いの観戦に戻りました。
ちなみに、現在スコアは15点マッチの33対32、アドバンテージを取っているのは望ちゃんです。
「公さん!」
「主人さん、どうかなさいましたか?」
ゆかりちゃんと未緒ちゃんが、公くんの声に気が付いて駆け寄ってきました。そして、UFOを見て思わず息をのみます。
「こ、これは!?」
「まぁ。わたくし、このようなものは初めて拝見いたしました。一体何なのでしょうねぇ?」
公くんは叫びました。
「危ない! 二人とも逃げるんだ!!」
「まぁ、主人さんでは、ありませんか。何をなさっていらっしゃるのですか?」
ゆかりちゃんがのんびりと言う間にも、気を取り直した未緒ちゃんは高く右手を挙げていました。そして叫びます。
「“あ”は阿の草書体!!」
ゴウッ
風を切る音と共に、巨大な影が上空に現れ、UFOを押しつぶそうとします。
文芸部奥義、メガトン辞書です。元文芸部長の未緒ちゃんの必殺技ですね。
「あ!」
UFOは、公くんもろともふっと消えました。そして巨大な辞書が轟音と共に地面に落ちた後、何事もなかったかのように再び現れます。
「メガトン辞書が……。当たらなくては、効きませんね」
唇を噛む未緒ちゃん。さすがに公くんがさらわれようとしているこの状況では、プラカードを掲げる余裕はないようです。
と。
「それでは、参らせていただきます」
ゆかりちゃんが、例の大きなバックからテニスのラケットを取り出していました。そして、大きく振りかぶります。
「ひ〜〜〜〜の〜〜〜〜と〜〜〜〜り〜〜〜〜〜〜さ〜〜〜〜〜〜ん」
ぐぉぉぉっ ゆかりちゃんのラケットの軌跡が、炎となって渦を巻きます。その中から、全身を炎に包んだ巨大な鳥が舞い上がります。
テニス部奥義、火の鳥サーブです。さすがは元テニス部長ですね。
炎の鳥は、一直線にUFO目がけて飛びました。
再び、UFOはふっと消えてしまいます。そして、虚空を火の鳥が飛び去った後に、再び姿を現しました。
「まぁ、困りましたねぇ」
ゆかりちゃんは、ほっぺたに指を当てて考え込みました。そして、口に手を当てて、メガホンのようにして叫びました。
「火の鳥さぁぁん、お戻りくださいませぇ〜〜〜」
ゴウッ
空高く舞い上がった火の鳥が、くるっとターンして戻ってきます。でも、やっぱりUFOは瞬間移動でそれをかわしてしまいます。
詩織ちゃんは、駐車場まで駆けてくると、辺りを見回しました。
「はぁ、はぁ、藤崎さん!」
夕子ちゃんが、やっとのことで追いついてきました。
「どうしたん?」
「……」
夕子ちゃんには答えず、詩織ちゃんは駐車場の隅に駆け寄りました。
そこには、黒と紫に彩られた巨大なロボットが立っています。そして、その肩には、白衣を着た結奈さん。腕を組んでじっと丘の上の方を見ています。
「紐緒さん!」
詩織ちゃんの声に、結奈さんはじろっと詩織ちゃんを見ます。そして言いました。
「ゆけむり公園よ」
「ありがとう!!」
そう答えると、詩織ちゃんは身を翻して坂道を駆け昇っていきました。
「あ、ちょい待ってよぉ! 藤崎さんってばぁ! なにがあるってのよぉ!!」
そう叫びながら、夕子ちゃんもその後を追いかけていきます。
そんな二人を見送って、結奈さんはいらいらした声で訊ねました。
「まだなの、ロボ?」
機械的な音声が、答えます。
「しすてむちぇっく中。ゲンザイ54%終了」
「ちっ、こんな時に!」
結奈さんは舌打ちして、丘の上に視線を走らせました。そこには、銀色の円盤が浮いているのが見えます。
ぴるるる、ぴるるる
UFOから怪光線が発射され、地面や木に当たって爆発します。
「きゃぁ!」
「あらぁ〜〜」
「二人とも、俺はいいから、早く逃げるんだ!」
公くんは必死に叫びます。
ぴるるるる、ドカァン
一本の大きな桜の木が、怪光線を受けて真っ二つに裂けました。そのままメリメリと音をたてて倒れます。
その倒れる方向に、ゆかりちゃんと未緒ちゃんがいるのを見て、公くんは自分の状況も忘れて絶叫しました。
「あぶなぁぁい!!」
「きゃぁぁ」
未緒ちゃんは、悲鳴を上げたかと思うとそのままくらっと倒れてしまいます。そして、ゆかりちゃんは目を見開いて、その場に立ちつくしていました。
そして、その上にのしかかる推定樹齢200年の桜の木の約半分。
「くっ!」
思わず公くんが目を閉じました。
そのとき、朗々と二つの声が響きわたります。
「私のこの手が光ってうなるっ! 友を救えと、とどろき叫ぶぅっ!!」
「!!」
公くんは声の方に視線を向けました。
二人の真紅の髪の少女が、右手を、左手を掲げて叫びました。
「ひっさぁつ! シャイニング、背比べの跡っ!!」
「ひっさぁつ! シャイニング、クレーンアームッ!!」
ごぉっ その瞬間、桜の木は木っ端微塵に砕けました。
爆煙の向こうに二人の姿を見て、公くんは叫びます。
「詩織、朝日奈さん!!」
「まぁ、朝日奈さんではありませんか。どうもありがとうございます」
「んなこといいって。友達じゃん」
夕子ちゃんはぴっと親指を立てて見せました。ゆかりちゃんはにっこりと微笑みます。それから、未緒ちゃんの脇にかがみ込みました。
「朝日奈さん、少々手を貸していただけないでしょうか? 如月さんが気を失ってしまったようですので」
「あー、もう。のんびりしゃべってる場合じゃないっしょ!」
確かにそのとおりですよね。
「公くんっ! 今助けるわ!」
さて一方、未緒ちゃんとゆかりちゃんは夕子ちゃんに任せ、詩織ちゃんはUFOを見上げて叫びました。その右手が白く輝き、光の剣となります。
“シャイニング背比べの跡”の応用技、“シャイニング相合い傘ソード”です。
そのままUFOを追ってジャンプしようとした詩織ちゃんに、怪光線が降り注ぎます。
ぴるるるる「きゃぁ!」
とっさに光の剣で怪光線は跳ね返したものの、自分もはじき飛ばされた詩織ちゃん、そのまま地面にたたきつけられます。
「藤崎さん!」
「あのぉ、だいじょうぶですか?」
片方は慌てて、もう片方はのんびりと駆け寄る夕子ちゃんとゆかりちゃん。ちなみに未緒ちゃんはまだ気絶しています。
「大丈夫?」
訊ねながら引っ張り起こした夕子ちゃんの手を払い、詩織ちゃんはUFOを見上げました。
もうすぐ、公くんを飲み込んでしまいそうです。
「公くん! 今行くわ!!」
それでも追いかけようとした詩織ちゃんを、公くんの鋭い声が止めました。
「やめろ、詩織!」
「公くん!」
「みんなを連れて逃げてくれ!!」
「で、でも……」
「頼む!」
二人は、一瞬見つめ合いました。そして、詩織ちゃんはこくりと頷きました。
「うん。でも、きっと、ううん、絶対に助けに行くから!」
公くんはにこっと笑い、そしてUFOに吸い込まれていきました。
次の瞬間、UFOは急に高度を上げ、そして空のかなたに消えていきました。
詩織ちゃんは、唇を噛んでそれを見送っていました。
「公くん……絶対に助けるから……。絶対に!!」
その頃。
「まぁ、今回は見逃してあげるわ。でも、次はないわよ」
結局、真・世界征服ロボのシステムチェックが終わらず間に合わなかった結奈さんは、ようやくメンテナンスが終わったロボの肩に乗って、空に向かって中指を立てていました。
「地球は誰のものでもないわ。他ならぬ私のものよ!!」
と、不意に地面から声がかかります。
「紐緒さん、話したいことがあるんだけど、いいかしら?」
「え?」
結奈さんが地面を見ると、そこには晴海さん達が立っていました。
晴海さんが声をかけます。
「悪い話じゃないと思うわよ、紐緒結奈さん。貴女が単に世界征服を狙うだけじゃないのなら、ね」
結奈さんは眉をひそめました。
「どういう意味かしら?」
「ふふふふ」
晴海さんは妖しく微笑むだけでした。
《続く》

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